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レディ・ヴィクトリア 謎のミネルヴァ・クラブ [読書・ミステリ]

レディ・ヴィクトリア 謎のミネルヴァ・クラブ (講談社タイガ)

レディ・ヴィクトリア 謎のミネルヴァ・クラブ (講談社タイガ)

  • 作者: 篠田真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/06/22

評価:★★★

舞台は19世紀のロンドン。ヴィクトリア朝の時代。

女王陛下と同名の貴婦人・ヴィクトリアと、
人種も国籍も様々で、型破りで個性的な使用人たちで構成された
“チーム・ヴィクトリア” のメンバーが
ロンドンに起こる謎の事件に立ち向かう、冒険探偵譚、第4作。

女性冒険家レオーネ・コルシは数年前にエジプトを旅行中に
1体のミイラを入手し、それをロンドンへ送った。
しかしそのミイラには、”夜中に目を覚ましてさまよい歩く” という
怪談じみた噂が立っていた。帰国したレオーネは
噂を確かめようとしたが、既にミイラは行方不明になっていた。

皇太子の侍従武官を務めていたペンブルック伯爵は病を得て
南海岸の地にある「アルカディア・パーク」と呼ばれる邸宅を
隠居所として入手したが、件のミイラはそこにあった。
屋敷の前の持ち主が購入していたのだ。

そのペンブルック伯爵からヴィクトリアのもとに
別荘お披露目のパーティへの招待状が届いた。
しかし彼女は参加を逡巡する。
ヴィクトリアと伯爵の間には、死別した夫・シーモア子爵を介して
浅からぬ因縁があったからだ。

しかし友人アミーリアの説得により、ヴィクトリアは
メイドのローズを伴ってパーティへ参加することに。

そしてヴィクトリアのもとには、もう一通の招待状が届いていた。
”ミネルヴァ・クラブ” なる謎の集まり(?)が、
アルカディア・パークでヴィクトリアを待っている、と。

パーティに集まってきた客はみな一癖も二癖もありそうな人物ばかり。
彼ら彼女らについてきた侍女たちもみな、何かしらの裏がありそう。

そして翌日の夜、吹き抜けになった図書室の二階から
ペンブルック伯爵が何者かに突き落とされるという事件が起こる。
その背には短剣が刺さり、現場にはミイラの入った棺が安置されていた。

”密室状態” の図書室の事件で使われるトリックは
意外ではあるがシンプルなもの。
しかし、本書のメインとなるのはこの事件ではない。

伯爵家の抱えている秘密であったり、
”謎のミネルヴァ・クラブ” の正体が本書のキモだ。

基本的にはミステリなのだけど、本シリーズのもう一つのテーマは
本書のあとがきにもあるように、
19世紀のイギリスにおける女性の人権問題だ。
家庭を守ることを強要され、社会に出て活躍する者は少なく、
その上、男性からは非難の目を向けられる。
さらには性的な暴行/搾取に遭っても泣き寝入りしかできない。
シリーズの既刊でも、そんな様々な抑圧や虐待に苦しむ女性が
描かれてきたが、今回はそれがより前面に出ている。

ヴィクトリアは男尊女卑の権化のような伯爵の悪行を暴いていくが、
本書に登場する ”ミネルヴァ・クラブ” のように
女性のためなら何をしてもいい、という立場にも与しない。

あとがきによると、全5巻ということで始まったシリーズなので
次巻が最終巻となるのだけど、構想的にはまだ半ばらしいので
なんとか続きを書けるよう鋭意努力中らしい。
私も続きを読みたいな。期待しましょう。


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