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敗者の告白 [読書・ミステリ]

敗者の告白 (角川文庫)

敗者の告白 (角川文庫)

  • 作者: 深木 章子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/08/25
  • メディア: 文庫

評価:★★★

実業家・本村弘樹は音大出身の女性・瑞香(みずか)と結婚し、
8歳の息子・朋樹、2歳の娘・由香がいた。

しかし由香が湯を張った浴槽に落ちて事故死し、
さらにその2か月後、山梨県の山地にある別荘で
瑞香と朋樹が二階ベランダから転落、死亡するという事件が起こった。

ところが、瑞香が死亡する直前に知人に送ったメールには
夫が浮気相手と共謀して自分たちを殺そうとしているとの内容が。
弘樹は無罪を主張するも、容疑者として拘束されてしまう。

しかし、捜査が進むにつれて次々と意外な事実が明らかになっていく。

生前、朋樹が祖母に送っていたメールに記されていた驚愕の内容、
瑞香が夫に隠れて奔放な異性関係を持っていたこと、
そして朋樹の ”真の父親” ・・・

本書は、弘樹の供述調書や朋樹のメール、瑞香の残した手記、
事件の前夜に食事を共にした友人夫婦や
瑞香と愛人関係にあった男たちなどの供述が
列挙される形で綴られていく。

探偵役となるのは、本村弘樹の弁護人・睦木怜(むつぎ・れい)。
彼女は関係者の供述や証言を突き合わせ、
細かい矛盾点を拾い集めていくうちに
事件の様相を一変させるような真相へ到達する。

ミステリーを読みなれた人なら、
真相を見抜くこと自体はさほど難しくないんじゃないかな。
だって私でも見当はついたから(笑)。

それでもなお、最後まで興味を失うことなく読み続けられるのは
犯人当てに留まらない大きなテーマが描かれているからで、
(それが何かを書くとネタバレになってしまうが)
人間の業を描いた物語としても一級品だからだと思う。

本書に登場する弁護士・睦木怜は、
女性であること以外の情報がほとんど描かれていない。
風貌も年齢も不詳だが、行動を追ってみると
フットワークは軽そうなので、けっこう若そうではある。

他の作品にも登場しているようなので、
そちらではもう少し ”正体” が明らかになるのかな?


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