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ご近所美術館 [読書・ミステリ]

ご近所美術館 (創元推理文庫)

ご近所美術館 (創元推理文庫)

  • 作者: 森福 都
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/05/29
  • メディア: 文庫

評価:★★★

主人公はサラリーマンの海老野くん。
ある日、職場近くの五階建て雑居ビルに
小さな美術館が入居していることに気づいた。

正式名称は「西園寺英子記念四コマまんが美術館」。
西園寺英子は長谷川町子と同世代だが、遥かにマイナーな漫画家。
英子の息子さんが建て、館長も務めている。

それ以来、海老野くんは昼休みをそこで過ごす常連さんになっていた。
しかし館長が持病の悪化により辞任、新館長になったのは
館長の遠縁に当たる川原あかねという22歳の女性。
実はコミケで活躍する同人漫画家だった。

さらに半年後、館長が再び交代した。
今度の館長は川原董子(とうこ)。あかねの姉だった。
失恋の痛手から引きこもり状態になってしまっていた彼女に、
リハビリを兼ねてあかねが館長職を押しつけたのだという。

董子に会った海老野くんは彼女に一目惚れ。しかしその矢先、
金持ちで渋くてダンディーなライバルが出現する。

ラブコメみたいな導入部で
いったいどこがミステリなのかと思われるかも知れないが、
実はこの美術館、訪れる人が様々な謎を持ち込んでくるのだ。

強敵出現を前にして、何とか董子の気を引きたい海老野くんは
謎解きに挑戦していく、という連作ミステリになっているわけだ。

主役兼探偵役兼語り手の海老野くんなんだが、
名探偵にありがちなエキセントリックさとは無縁で
推理能力以外は至って平凡で人畜無害な人(笑)。

眉目秀麗な董子さんとぽっちゃり体型のあかねは対照的な姉妹だ。
あかねさんの容貌の描写を読んでいて頭に浮かんだのは
安藤なつさん。メイプル超合金のカズレーザーの相方だ。
まあ、あちらよりは体重は少なそうだが(笑)。

収録されているのは全7編。
「ペンシル」「ホワイトボード」「ペイパー」「マーカー」
「ブックエンド」「パレット」「スケール」と、
みな文房具のタイトルが並んでいるが、内容はバラエティに富んでる。

日常の謎系から盗難、殺人事件まで、
そして安楽椅子探偵ものや暗号の登場するものもあり、
意外な物理トリックが使われていたりとなかなか楽しませてくれる。

とはいっても、最終的な興味はやっぱり海老野くんの恋の行方だが
なんとなく「このへんが落とし所かなぁ」って感じてたところに収まる。
これはこれでいいんじゃないかと思う。


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