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友達以上探偵未満 [読書・ミステリ]

友達以上探偵未満 (角川文庫)

友達以上探偵未満 (角川文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公は三重県立伊賀野高校の女子高生、伊賀ももと上野あお。
2人は放送部所属ながら実はミステリマニアで、
将来は探偵になることを目指している。

直感のままに突っ走るもも、冷静沈着なあおと
タイプの違う探偵コンビが遭遇する3つの事件が綴られる。

「伊賀の里殺人事件」
忍者の里として有名な伊賀を盛り上げようと
『伊賀の里ミステリーツアー』が開催される。
その取材のために、ももとあおは会場となる上野城公園を訪れるが
ツアー参加者の女性が殺害されるという事件が発生、
現場には芭蕉の俳句に見立てたかと思われるような遺留品が・・・
もともとはNHKーBSのミステリドラマの原案として作られた話らしいが
そのせいか登場人物がけっこう多く、しかもツアー中は
それぞれ色分けされた忍者の装束を着るコスプレをしていた、という設定。
映像としてみたら分かりやすいのだろうが、文章だけでアタマの中に
それぞれのキャラの色を思い浮かべるのはけっこうしんどい。
もちろん、容疑者たちの着ていた服やその色が推理のカギになるわけで
これはなかなかハードルが高いなぁ・・・って、そう思うのは私だけ?

「夢うつつ殺人事件」
伊賀野高校美術部の相生初唯(あいおい・うい)は
放課後、校舎の外壁にもたれかかってうたた寝をしていた。
その夢うつつの中、彼女の耳に男女の会話が聞こえてくる。
それは美術部員の愛宕匡司(あたご・きょうじ)の殺害計画だった。
初唯はももとあおに相談するのだが、
その3日後、愛宕の死体が学校の敷地内の堀で発見される・・・
示される真相の中で、○○の意味が明かされる。
でもねえ・・・たしかに作者は嘘は書いてない。
読者が勝手にそう思い込んだだけなのだけどね・・・
うまくダマされたなぁ・・・って褒めるべきなのだろうけど。

「夏の合宿殺人事件」
これは過去編。ももとあおの中学時代の話が語られる。
父親の転勤に伴い、東京から伊賀へ転校してきたあおは
将来探偵になることを目指していた。
同じく探偵を目指すももと知り合うが、
自分のワトソン役に仕立てようと密かに決意する。
そのためには、ももの探偵願望を打ち崩さなくてはならない。
そんなとき、ももとあおが所属する文芸部は
高原の合宿所で夏合宿を行うことになる。
そこではバレー部の夏合宿も同じ時期に行われていたが、
バレー部の女子部員が合宿所内で死体で発見される。
あおはももより先に殺人事件を解決して
探偵能力の違いを見せつけようとするのだが・・・

「伊賀の里ー」「夢うつつー」では ”読者への挑戦” まで挿入されるという
ミステリファンへのサービスまである。

ももとあおは、お互いの欠点を補完し合う探偵コンビなのだが
初めからそうだったわけではなく、
そこにいくまでの紆余曲折が語られるのが「夏の合宿-」。
ワトソン役というのは探偵役にとって何なのか、というテーマについての
作者の ”解答” も示されていてなかなか興味深い。

文庫版の表紙は、制服姿の美少女二人が萌えキャラふうに描かれていて
いかにもライトノベルな雰囲気なのだが、
もちろん麻耶雄嵩のことなので一筋縄ではいかない。
まあそれがこの作者の持ち味だからね(笑)。


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ミステリークロック / コロッサスの鉤爪 [読書・ミステリ]

ミステリークロック 「防犯探偵・榎本」シリーズ (角川文庫)

ミステリークロック 「防犯探偵・榎本」シリーズ (角川文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 文庫
コロッサスの鉤爪 (角川文庫)

コロッサスの鉤爪 (角川文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

防犯コンサルタント(本業は泥棒?)の榎本径(えのもと・けい)と
美貌の刑事弁護士・青砥純子(あおと・じゅんこ)のコンビが
さまざまな密室殺人事件に挑むシリーズの一編。

もともとは『ミステリークロック』という表題で
一冊の短編集だったのだが、加筆を経て2分冊で文庫化された。

「ゆるやかな自殺」
暴力団塗師(ぬし)組の野々垣は組から禁じられていたシノギに手を出し、
それを咎めてきた若頭・岡崎を殺害する。さらに、野々垣の犯行に
気づいた可能性のある弟分のミツオまで殺してしまう。
塗師組事務所のドア解錠のために呼び出された榎本は、
事務所の中にミツオの死体を発見するが、現場は密室状態だった・・・
一歩間違えるとバカミスレベルになってしまうトリックだが、
それをそう感じさせずに読ませる手腕は流石。

「ミステリークロック」
ミステリ作家・森怜子の山荘に招かれた榎本と純子。
そこには怜子の前夫をはじめ同業の作家、編集者などが集まっていた。
怜子が蒐集した8つのアンティーク時計が披露され、
その値段当てゲームが催される中、怜子の変死体が発見される。
怜子の夫・時実玄輝(ときざね・げんき)は
この場で犯人を暴くと宣言するのだが・・・
現場となった屋内のあちこちに時計が置かれ、
さらにリアルタイムの時刻が「九時三十分」などと
太字で記され、否が応でも時間を意識させられる描写と展開。
時計の進みに何らかの仕掛けがあるというのは予想されるものの
ラストで明かされる真相は実に驚嘆すべきもの。
物理トリックと心理トリックを巧みに組み合わせて
犯行可能な時間をひねり出しているのだが、
図と表を用いた詳細な解説部分を読んでいると
これを考え出した犯人(作者)の執念には鬼気迫るものを感じてしまう。
文庫で約230ページという、長編に迫るボリュームもすごい。

「鏡の国の殺人」
新世紀アート・ミュージアムの館長・平松が殺され、榎本に殺人容疑が。
防犯カメラの映像から、犯行時刻に現場に入ったのは彼だけだったのだ。
容疑を晴らすべく、榎本は純子の協力で犯人捜しを始める。
美術館の企画展で作品製作をしていたアーティスト・稲葉が疑われたが
彼が現場に入るには複数の監視カメラを欺かなければならない・・・
犯人が現場に入ることができなかったという、いわゆる ”逆密室”。
ここでも物理トリックと心理的な盲点を効果的に組み合わせている。
途中で出てくる「日本ルイス・キャロル学会特別顧問」なる肩書きの
萵苣根功(ちしゃね・こう)というキャラの珍妙さに驚かされるが
単なるギャグ要員ではなく、ちゃんと真相解明に一役買うのは流石。

「コロッサスの鉤爪」
民間企業・大八洲(おおやしま)海洋開発の実験船『うなばら』は、
小笠原諸島・母島沖合で新型ソナー(海中聴音機)のテストをしていた。
その職員・布袋は、夜釣りの最中に何者かに海中に引き込まれてしまう。
彼の遺体には、鉤爪でつけられたような謎の傷跡が。
布袋のボートがあったのは『うなばら』から200m離れた海上で、
ソナーはスクリュー等の推進音は一切キャッチしていなかった。
海底300mには潜水していたダイバーたちがいたが、
31気圧の海底から水面まで上昇するには
10日以上かけてゆっくりと減圧しなければならない。
誰も現場に近づけない ”逆密室” の調査を依頼された榎本と純子だが。
 タイトルの「コロッサス」とは、ダイオウホウズキイカのこと。
 ダイオウイカを超える体重と鋭い鉤爪をもつ巨大イカだが、
 南極海に生息していて小笠原近海にはいない。
いやあこのトリックにはびっくり。まさかこんなものが出てくるとは。
いわば ”一発ネタ” なんだけど、”使ったもん勝ち” だよねぇ。
こんなモノをあんなコトに使おうという発想の勝利か。

毎回、密室や不可能犯罪に対して
純子が繰り出す脱力もののトンデモ解釈、
そしてそれを聞いた榎本が目を回す、
というお約束の展開も健在。

もちろん実際は、読んでいる方が唸ってしまいそうな
奇想天外とも言える様々なトリックが惜しげもなく投入された
贅沢なつくりの本格ミステリになってる。

しかもこのシリーズの特徴は、物理トリックがけっこう多いこと。

小説の世界では、物理トリックは心理トリックより一段下に見られがち、
というか、新しい物理トリックはもう出尽くしている、と思われてる。
でも、この作者はどんどん情報をアップデートしていて
現代的な物理トリックを次々と発想している。
この姿勢は素晴らしいと思う。

とは言っても、先鋭すぎて「読者が推理する」のはほぼ不可能。
当てずっぽうでも当てられる人はまれだろう。
読んでいると、高名なマジシャンがステージ上で
次々に華麗なマジックを披露する様を、口をあんぐり開けて
「はああ~」って眺めているような気分になる(笑)。
それはそれで快感なんだけどね。

物理トリックは映像と相性がいいので、
この作品群もドラマや映画になったら観てみたいと思わせる。


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攻殻機動隊 ARIZE [アニメーション]

Netflixにて。2020年の11月下旬~12月上旬にかけて。


TVシリーズ「攻殻機動隊SAC」の過去を描いたエピソード。
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物語は ”公安9課” が設立される前から始まる。
冒頭から登場するキャラも草薙素子と荒巻の2人。


素子は、特殊義体の実験開発部隊である501機関に所属、
同機関のマムロ・ギイチ中佐に兵器密売に関わる収賄容疑が持ち上がり、
その最中に暗殺されてしまうという事件の捜査に関わることになる。

その中でバトーをはじめ、後の公安9課のメンバーと出会っていく、
というストーリー。

CVキャストも一新されている。

草薙素子を演じるのは坂本真綾。
攻殻機動隊のファンにはもう、素子は田中敦子のイメージで
できあがってると思うんで、他の人が演じるのはたいへんだろうなと
思ったんだが、坂本真綾も意外と違和感なくハマってる。
田中敦子が築いたイメージを崩さず、
若き日の素子はこうだったんだろうと思わせる。

他のキャラのCVも全員入れ替わってるのだけど、私は全然OKだったよ。
まあ、熱心なファンの人にはまた違う意見があるかも知れないけど。

「攻殻機動隊 ARIZE」はOVA4編(60分×4)からなり、
その後は「攻殻機動隊 ARIZE PYROPHORIC CULT」(25分×2)、
そして「攻殻機動隊 新劇場版」へと続き、
これが ”公安9課” としての最初のエピソードとなる、という構成。

実は数年前に「ARIZE」のOVA第一話「border:1 Ghost Pain」を
観たんだけど、なぜかそれっきり放置してしまっていた。
観るのを止めてしまった理由が思い出せないんだが(おいおい)
今回あらためて第一話から見直したら、するすると
「新劇場版」まで続けて観ることができたよ。

「大好き」というほどではないんだけど、気になるシリーズではあるし
この作品世界が嫌いではないんだなあと今更ながら気づかされたよ。


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コルトM1847羽衣 [読書・冒険/サスペンス]

コルトM1847羽衣 (文春文庫)

コルトM1847羽衣 (文春文庫)

  • 作者: 了衛, 月村
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/11/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

主人公は女渡世人・羽衣お炎(はごろも・おえん)。

江戸でも指折りの侠客の娘として生まれたお炎は
両国川開き祭りの夜、薩摩藩士の三男坊・青峰信三郎と出会う。
ときにお炎11歳、信三郎13歳。

二人の交流は成長しても続き、やがて信三郎は
お炎を妻に迎えることを決意する。

しかしお炎が22になった年、信三郎は藩の御用で
木更津へ出かけたまま失踪してしまう。

傷心のお炎は信三郎の消息を訪ねて諸国を旅していたが
その途中、一人の老人の窮地を救う。
老人は西国の豪商・四海屋幸兵衛(しかいや・こうべえ)であった。

恩義を感じた幸兵衛は信三郎の探索に協力し、やがて新しい情報を掴む。
佐渡の金山に送られた無宿人の中に、信三郎らしき人物がいたという。

タイトルの「コルトM1847」は、南蛮渡来の6連発拳銃。
佐渡に向かおうとするお炎に対し、幸兵衛から贈られたものだ。
彼女は血の滲むような特訓に耐え、百発百中の腕前を誇るまでになる。
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しかし、佐渡島へ潜入したお炎は、その現状に驚愕する。
金山の鉱夫を中心に広まった ”オドロ様” なるものを信仰する
謎の邪教集団 ”オドロ党” が島全体を支配していたのだ。
佐渡金山の奉行までもが ”オドロ党” と結託し、
しかもその背後には脱藩した薩摩浪士たちの姿も見え隠れする。

島全体を敵に回し孤立無援かと思われたお炎だが、心強い味方も現れる。

佐渡に渡って早々に知り合った娘・おみんは、
その軽業師並みの身の軽さと正確な投擲の腕前で大活躍。

さらに四海屋幸兵衛は、お炎のバックアップ部隊として
子飼いの私兵集団ともいうべき〈玄人衆〉を差し向ける。

鉱山の最深奥の闇の底から現れたという ”オドロ様” の正体、
その ”オドロ様” の ”宮司” を名乗る謎の男・蝉麻呂、
そして蝉麻呂と〈玄人衆〉の頭・与四松との意外な因縁、
佐渡を支配下に置いた ”オドロ党” の、真の目的とは・・・

そしてお炎の想い人・信三郎の安否は如何に。

「莫大な黄金と幾多の謎を巡り、女渡世人・羽衣お炎が
 拳銃一挺を手に、血風渦巻く佐渡を駆け抜ける!」
・・・ってキャッチフレーズが書けそうな王道エンタメである。

行く手を阻む非道な奴らに、鉛玉を食らわせて血路を開く、
お炎の壮絶な戦いが全編にわたって描かれていくのだが
彼女を動かすものはただひとつ、信三郎への思慕の情。
一途なまでのお炎の想い、そしてその覚悟に惹きつけられる。

サブキャラも魅力的だ。

おみんは15歳と最年少だが、明朗快活元気溌剌。
ともすれば暗くなりがちな物語の雰囲気を救っている。

〈玄人衆〉もいい。いずれも一騎当千の強者揃いで、
最初は四海屋の命令で動いていたが、
後半になるとお炎の心意気に共鳴・感化され、頭の与四松ともども、
彼女のために一命を賭して ”オドロ党” に挑むようになる。

その与四松と ”ある因縁” で結ばれた ”オドロ様の宮司”・蝉麻呂。
いわゆる ”悪の組織の大幹部” だが、彼にも彼なりの大義があり
自分の行為に意義と矜持を見出している、敵ながら天晴れな存在。

そして ”ラスボス” となる ”オドロ様”。
こちらは読んでのお楽しみだ。

まさに ”王道エンタメ”。間違いなく
楽しい読書の時間を約束してくれるだろう。
「面白い本を紹介してくれ」と言われたら、
今の私は迷わずこの本を薦める。

ラストシーンまでもが王道で、
最後の1ページまで楽しめる傑作だ。


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東四柳心霊相談所 それ、霊のしわざですよ!? [読書・ファンタジー]

東四柳心霊相談所 それ、霊のしわざですよ!? (ポプラ文庫ピュアフル)

東四柳心霊相談所 それ、霊のしわざですよ!? (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2020/11/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

主人公は暴力団松岡組の構成員見習い・銀次。
ある日、兄貴分の沢田からの電話で昼寝からたたき起こされる。
彼の命令で近所の商店街に向かう銀次。

そこで彼が見たものは。松岡組と敵対する荒鷹組の連中が
ひとりの女子高生を拉致しようとしている現場。

荒鷹組の連中から女子高生を救った銀次は、
松岡組組長・源之助から直々に彼女のボディガードを命じられる。
彼女は源之助の「命の恩人」なのだという。

彼女の名は東四柳千早(ひがしよつやなぎ・ちはや)。
その日から、銀次は千早が家を出たときから帰宅して寝るまで、
つかず離れず警護する羽目になってしまうのだが・・・

ライトノベルであるから、登場する暴力団についても
エグい描写はない。(裏ではいろいろやってるんだろうが・・・)

主役である銀次も、でかい図体と腕っ節の強さで
見た目は迫力満点だが、性格はいたって素直でお人好し。
しかも「霊」とかのオカルト系の現象には全く耐性がなく、
ちょっとしたことで震え上がってしまう。

一方の千早だが、子どもの頃から「見える」体質だったようで
高校生となった今は「東四柳心霊相談所」なるものを開き、
「相談料500円、除霊3000円、交霊5000円」
というメニューで営業(笑)までしている。

この2人が遭遇した、「霊」がらみの不思議な事件を描いていく。

「第一話 押し入れの向こう側」
「第二話 古い写真の中のひと」
「第三話 足跡ふたつ」

オカルト風味の話なのだけど、その中で合理的な解釈も示される。
とくに第二話は ”日常の謎系ミステリ” としても面白い。
とはいっても、100%すべて説明がつくわけではなく、
程度の差はあれ、三話とも理屈では説明できない余地も残される。

千早は感情をあまり表さないクールな性格で
銀次のことも、最初はストーカーまがいの
鬱陶しい存在としか見ていなかったが、
ともに事件を解決していくうちに少しずつ心を開いていく。

千早を巡っては、松岡組や荒鷹組とは別の ”謎の一味” も登場するし
そのへんの伏線は全く回収されていないので、
続編の予定があるのかも知れない。

銀次にしても、あの性格では ”真っ当なヤクザ(笑)” には
とてもなれそうに思えない。
遅かれ早かれ、どこかで更生する道を選ぶように思うのだけど
それと千早がどう関わるのか、あるいは関わらないのか。
そのあたりも知りたいと思う。


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ULTRAMAN [アニメーション]

Netflixにて。2020年の11月下旬頃。

原作マンガのほうは、書店で立ち読みしたことがあるんだけど(失礼!)
アニメになってたんですねえ。しかも3DCGで。
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今までの「ウルトラマンシリーズ」と最も異なるのは、
登場するウルトラマンが巨人ではなく、等身大であること。
そして、〈ウルトラマンスーツ〉と呼ばれる
パワードスーツを着用して戦うことだ。

世界設定は『ウルトラマン』(初代)から30年後の世界。
ウルトラマンと同化していたハヤタ隊員こと早田進(はやた・しん)は
防衛大臣にまで登り詰めていた。
ウルトラマンと同化していた時期の記憶は失っているが、その名残として
彼の肉体は ”ウルトラマン因子” を示すようになっていた。
すなわち、常人とかけ離れた超人的な身体能力を身につけていたのだ。

科学特捜隊は表向きは解散したが水面下で活動を続け、
宇宙人の起こす事件に対処するのと並行して
早田のウルトラマン因子の解析をすすめ、
〈ウルトラマンスーツ〉の開発をしていた。

主人公は早田の息子・進次郎、高校2年生の17歳だ。

 父・早田の年齢設定はアニメ版では57歳(原作マンガでは68歳)と
 かなり年齢が離れてるけど「結婚が遅かった」という台詞がある。
 ちなみに母親については言及がない。

彼は生まれながらにしてウルトラマン因子を受け継ぐ存在であり、
超常的な身体能力を除けばごく一般的な高校生だが、
自身の強大な力の制御に悩んでいた。

そんなとき、進次郎は ”ベムラー” と名乗る宇宙人に襲われる。
早田は息子にウルトラマンと同化していた過去を明かし、
自らプロトタイプのウルトラマンスーツを着用、
ベムラーに挑むが、老齢はいかんともしがたく(笑)、絶体絶命に。

進次郎は、彼自身のために開発されていた
ULTRAMAN SUIT A-TYPE を着用、父の救援に向かう・・・

本編開始の7年前、地球は宇宙人たちの同盟組織である ”星団評議会” に
加盟しており、その結果、地球には大量の宇宙人が流れ込んでいた。
その中には不法滞在や犯罪者もいるわけで、
そういう者たちが引き起こす事件に進次郎も巻き込まれていくわけだ。

地球の技術だけであれだけのウルトラマンスーツの開発ができたのか?
なんてことも思っていたが、地球外文明から得た
オーバーテクノロジーも投入されているのだろう。

私のようなオールドファンにも嬉しい設定がいくつか。

まずイデ隊員が健在なこと。
現在は科学技術研究所所長・井手光弘。
天才的な技術力をもってウルトラマンスーツの開発にあたっている。

科学特捜隊本部ビルは「光の巨人記念館」となっているが
その地下では科特隊の活動は続いている。

この世界では『ウルトラセブン』以降の物語はなかったことにされているが
ウルトラマンスーツには〈セブンスーツ〉や〈エーススーツ〉などの
バリエーションがあり、それを着用する諸星弾や北斗星司という
キャラも登場する。

アニメ化されたのは、まだ原作の序盤部分のようで
すでに〈シーズン2〉の製作も決まっているとのこと。

wikiを見ていると、まだまだ面白そうな設定があるので
期待して待ちたいと思う。


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GENE MAPPER -full build- [読書・SF]

Gene Mapper -full build-

Gene Mapper -full build-

  • 作者: 藤井 太洋
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/04/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

時代は2037年。
コンタクトレンズに映像を投影して、現実の上にCGグラフィックを
重ねて見せる ”拡張現実” が広く浸透した近未来。

農作物も「遺伝子組み換え」のレベルを超え、
”蒸留植物(Distilled Crop)” と呼ばれるものを創り出していた。
これは目的とする植物の遺伝子をすべて調査して必要なものだけ残し
新たな機能を付け加えた、いわば「人工植物」ともいえるもの。 

主人公・林田は ”蒸留植物” の遺伝子設計を生業としている。
タイトルの Gene Mapper とは、
彼のような遺伝子デザイナーのことを指す言葉だ。

林田は、”蒸留植物” においてトップシェアを誇るL&B社からの
依頼を受けて、新種のイネ・SR(Super Rice)06の遺伝子設計を行った。
しかし、そのSR06を試験栽培している農場から
生育に異常が発生しているとの知らせが入る。

農場の一角から、SR06が何か別の植物へと ”化けて” いるらしい。
SR06の ”遺伝子崩壊” が疑われたが、変異した植物から採取した
DNAサイズは、なんと200GBを超えるもの。

しかもその中には、”蒸留植物” 登場以前の
”旧世代” のイネのDNAも含まれていた。
しかし、どの品種のDNAなのかを同定するには、
広大なネットの底に沈む膨大なデータの中から、
イネのDNAデータを ”サルベージ” しなければならない。

そのために凄腕のハッカー・キタムラの協力を得ることを決めた林田は、
L&B社のエージェント・黒川と共にホーチミンに向かうのだが・・・

読んでいてまず驚くのは、全編にわたって
本物の現実と見紛うばかりの ”拡張現実” の世界が描かれること。
主人公も含め、ほとんどの登場人物は ”拡張現実” の世界を生きていて
”現実” の世界は視界の下層に覆い隠されている。

だからときおり、(たいていは何らかのアクシデントが原因だが)
”拡張現実” の表層が剥がれて現実世界の様相が現れるのだが、
その落差に(登場人物も読者も)驚かされることもしばしば。

生きるために口にする食物さえ、DNAを完全フルスクラッチしたもの。
本書は、その究極のDNA操作に関わる光と闇を描いている。

”事件” は植物ひとつの不具合に納まらず、中盤以降では
意外な広がりを見せていき、最終的には
人類の行く末を左右するような命題へと変貌していく。

登場するキャラもいい。

林田の相棒となる黒川は、中盤で意外な過去が明かされる。
これはまさに本書のテーマそのものといえる。

試験農場の技師で、変異した植物と対峙しているテップは
ずっと農場にとどまっているのだが、”拡張現実” を介して
ストーリーに絡んできて、終盤の盛り上げに一役買う。

ハッカーの腕は確かながら、いまひとつ正体不明なキタムラだが
登場人物の中で(おそらく)いちばん年長なせいか
読んでいて最も親近感を憶えたキャラだったよ。

21世紀に書かれた作品でありながら、
ラストの決着のつけ方から感じたのは
意外に古風なSFの雰囲気、のようなもの・・・

私も「人間を信じたい」と願う者の一人だ。
(これでは何のことか分からないね。スミマセン)

作中の ”拡張現実” の描写は、現在のITの進歩を思えば
そう遠くない時代に、これに近い世界が実現してしまいそうにも思う。

作者はそのあたりの技術的な解説を
自分のサイトで詳しく書いてるらしいのだけど
「あとがきにかえて」に載ってるURLを検索したら
この原稿を書いてる時点では消滅しているみたい。

なにせ本書の原型を電子出版されたのが2012年で、
加筆増補した長編版(本書)が刊行されたのは2013年。
もう8年も前なのだね。ネットの世界では8年前なんて大昔なのだろう。

作者の現在の公式サイトは別にあるんだけど、
そっちに内容も移転してるのかな?


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隠蔽人類 [読書・ミステリ]

隠蔽人類 (光文社文庫)

隠蔽人類 (光文社文庫)

  • 作者: 鳥飼否宇
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/10/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

形質人類学者・日谷隆一(ひたに・りゅういち)が率いる調査チームは
アマゾン川の奥地で未知の民族・キズキ族を発見する。

彼らは文明と隔絶した世界で暮らしてきた未接触民族で
身体的特徴も生活様式も、近隣の他の先住民とは大きく異なっていた。

どの民族と近縁なのかを調べるために彼らのDNAを調べたところ、
なんと現生人類であるヒト(ホモ・サピエンス)とは
3.8%の差異があることが判明する。

 ヒトの場合、遺伝的に一番離れた民族・人種間でも
 その差異は1%未満だという。

キズキ族はヒトとは異なる別種の人類、”隠蔽種” だった。
大発見に驚く調査チームだったが、その直後
チームのメンバーの一人が頭部を切断した死体で発見される・・・

これが第一話「隠蔽人類の発見と殺人」。
ラストで真犯人が明らかになるのだが、
その直後、物語は ”衝撃のラスト” を迎えてしまう。

そしてこの後、”隠蔽種” を巡る物語は
「隠蔽人類の衝撃と失踪」
「隠蔽人類の絶滅と混乱」
「隠蔽人類の発掘と真実」
「隠蔽人類の絶望と希望」
と続くのだが、なんとどの話も ”衝撃のラスト” を迎え、
その結末を受ける形で次の話が始まる。

つまり第二話以降の内容を説明するのが難しい。
というかネタバレなしには不可能なつくりになっている。

ネタバレしない範囲で書くなら、
”隠蔽種” にまつわる意外な真実が次々と明かされていき、
最終話「隠蔽人類の絶望と希望」では
予想外に壮大なスケールの物語へと変貌していく・・・くらいかな。

私は途方もないホラ話として楽しんだけど、
究極のバカミスだといって怒り出す人もいるかも知れない。
さて、あなたはどちらだろう。


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蒼穹のファフナー THE BEYOND 第7話~第9話 [アニメーション]

映画館にて。2020年の11月半ば頃。
本来は半年前の5月公開だったのだけどコロナのせいでこの時期に。
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ということは、前回の第4話~第6話は去年11月の公開だったんだね。
あの ”衝撃のラスト” からもう1年か・・・(T_T)

第7話「帰らぬ人となりて」
前回の衝撃も冷めやらぬうちの、アバンタイトルの時点で
絶望感を味わうとは思いませんでしたよ。
相変わらず胃と心臓に悪い作品です。

第8話「遺されしを伝え」
無印の頃から観ていると、各キャラの変化(変貌?)が感慨深い。

第9話「第二次L計画」
まあ、ここまでファフナーを観てきた人にはまずいないと思うが
「無印」の前日譚「RIGHT OF LEFT」を未見の人は、
是非そちらを観てからにしてください。絶望感がより増します(笑)。

「無印」のとき、メインキャラの年齢が14歳。
「HEAVEN AND EARTH」の時が17歳くらい。
「EXODUS」の途中で20歳を迎えて
「THE BEYOND」がその5年後だから25歳。
作品内の時間で11年くらい経ってる。
(「RIGHT OF LEFT」から数えると12年くらいか)

一部のキャラでは世代交代も起こっていて、
さながら年代記か大河ドラマの様相を呈してきたが
いつまでもずるずる引っ張るのは如何なものかとも思う。

「THE BEYOND」全12話のうち、9話まで公開されたことで
今回の「THE BEYOND」で、物語がどこまで進むのかが
なんとなく分かってきたように思う。

 要するに前作「EXODUS」最終回で起こった ”意外な展開” を
 回収するところまで、なのだね(あくまで個人の見解です)。

謎の宇宙生命体だったフェストゥムも人類を知り、
人類もまたフェストゥムを知っていき、
両者の戦いも、この11年の間にかなり様相も変わってきた。

この戦いがどのように決着するのか、
(あるいは決着しないまま物語は終わるのか)
ファフナーの物語の完結は、まだかなり先になりそうだ。

 まあ「THE BEYOND」で終わると思ってた人はいないと思うが(笑)。

最低でももう1クール(12話)か、2時間映画1本分くらいは必要かなぁ。
制作陣はもっと長く続けたいかも知れないが・・・

大好きなシリーズなので続くことは嬉しいのだが
各キャラの運命の変転が心に痛いので、
早く終わって平和になって欲しい、とも思うんだよねぇ。
少なくとも、私が生きているうちには終わってほしいなぁ(切実)。


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新・新本格もどき [読書・ミステリ]

新・新本格もどき (光文社文庫)

新・新本格もどき (光文社文庫)

  • 作者: 霧舎 巧
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/04/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★

前作「新本格もどき」の文庫版が出たのは2010年。
読んだのもたぶんその頃か、ちょっと後。
もう10年近く経っているので、内容をほとんど忘れてしまっていたよ。

ネットでちょっと前作の内容を検索してみたんだが、
正直あんまり覚えてない。大丈夫か私のアタマ。

主人公は、記憶喪失に陥った探偵・吉田さん。
前作の最後でめでたく記憶を取り戻したは良いが、その代わりに
記憶喪失中に関わった仲間たちとの記憶を失ってしまう。

吉田さんに思いを寄せる看護師・上岡エリは、
なんとか自分のことを思い出してもらうために
毎回、自分が ”名探偵” になりきり(もちろんコスプレもして)、
吉田さんを無理矢理巻き込んで、次々に起こる怪事件に飛び込んでいく。

彼女に協力するのは、ミステリマニアのてんぷら屋の大将とか、
コスプレマニアのお姉さんとか個性的なメンバー。

彼らが出くわす事件は、みなどこかで聞いたような名前ばかり(笑)。

「人狼病の恐怖」
 元ネタは「人狼城の恐怖」(二階堂黎人)

「すべてがXになる」
 元ネタは「すべてがFになる」(森博嗣)

「覆面作家は二人もいらない」
 元ネタは「覆面作家は二人いる」(北村薫)

「万力密室!」
 元ネタは「念力密室!」(西澤保彦)

「殺人史劇の13人」
 元ネタは「殺人喜劇の13人」(芦辺拓)

「夏と冬の迷走曲(どなた)」
 元ネタは「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)」(麻耶雄嵩)

「《おかずの扉》研究会」
 元ネタは「《あかずの扉》研究会」(霧舎巧)

基本的には一話完結なのだけど、それぞれの事件の裏には
謎のカルト教団が暗躍していて、最終話に至ると全体が
(ゆったりとだが)ひとつながりの話に収まるようにできている。

それぞれの事件も、題名こそ有名作品のパロディだが
内容はもちろん、作者オリジナルのトリックとストーリー。

ただ、登場する名探偵やレギュラーキャラの名前のもじりなど、
元ネタを知っていた方が楽しめるのは間違いない。
とはいっても、元ネタの作品を全部読んでるのは
かなりのミステリ好きな人だろう。
そういう意味では読者を選ぶ作品だと思う。

 私はどうかと考えてみたら『念力密室!』以外は全部読んでた。
 おお、けっこう読んでるね私。
 西澤保彦の作品は、初期のものは読んでたんだけど
 なんとなく波長が合わないみたいで、途中から離れてしまった。

本作以降、続巻は出ていないみたいなので、これで完結なのかな。


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