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プリンセス刑事 生前退位と姫の恋 [読書・ミステリ]


プリンセス刑事 生前退位と姫の恋 (文春文庫)

プリンセス刑事 生前退位と姫の恋 (文春文庫)

  • 作者: 喜久, 喜多
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★

2000年以上もの間、”女王” によって統治されてきた
パラレルワールドの日本が舞台。

現女王の妹宮の娘(つまり姪)にして、王位継承権第5位のプリンセス、
白桜院日奈子(はくおういん・ひなこ)殿下がなんと刑事となって
若手刑事の芦原直斗(なおと)とパートナーを組み、
凶悪事件と対峙していくシリーズの第2巻。


東京都下で、段ボールに仕込まれた爆弾が爆発する
連続テロ事件が起こり、いずれも近くにいた者が犠牲となっていた。

段ボール箱にはいずれもオレンジ色の鷹のマークが印されていた。
それは日本の隣国・エミシ王国(こちらの世界での北海道に当たる地域)
の国旗と同じデザインのもの。

日本とエミシ王国とは、古代から文化的な交流が盛んで
言語も同じ日本語を母国語とし、しかもビザなしで行き来できる。

しかし80年前には両国は戦争状態にあり、武力に勝る日本が
エミシ王国を圧倒、その後15年間にわたり併合していた時期もあった。
エミシ王国が独立を取り戻してから60年以上経った現代にあっても
両国の間には感情的なしこりが残っている。

今回のテロ事件にも、日本に反感を持つ勢力の暗躍が疑われたが
日奈子と直斗の捜査は難航する。

そんな中、王室で問題が持ち上がる。現女王・喜和子陛下が
健康問題を理由に、譲位(生前退位)を検討しているというのだ。
しかしそれには王族典範を改正しなければならない。

さらに、女王の次女にして王位継承権第2位の紫桜院理紗子殿下は、
王位継承順位まで合わせて考え直すべきだと主張しはじめた。

理紗子の姉にして次期女王が予定されている優美子殿下、
妹で現役女子高生でもある真奈子殿下、
日奈子の母である白桜院英里子殿下、そして日奈子。
王位継承権を持つ5人の中から、ふさわしい者を選ぶべきだ。

後半に至ると、理紗子の言い出した王位継承問題が
意外な形でテロ事件とつながっていることが明らかになる。


犯人当てのミステリ要素はほとんどないけれど、違う意味で読ませる。
王室といえども人間であり、さまざまな喜怒哀楽を抱えて生きている。
王室の一員として生きるか、一個人として生きるか。

本書を読んでいて連想するのは、「王冠を賭けた恋」として有名な、
イギリス国王エドワード8世のエピソード。
離婚歴のある平民のアメリカ人女性と結婚するために
わずか325日の在位の後、国王の地位をなげうってしまった人だ。

王室の誰がどんなふうに悩んでいるかというのは
ネタバレになるので書かないが
物語は日本とエミシ王国の将来に関わる話へと広がっていく。
王室の人間をメインに据えると、こういう展開も出てくるんだろう。

浮世離れしたお姫様と、世間一般の認識とのズレを楽しむコメディで
始まったはずなんだが、第2巻にしてちょっと路線が変わったかな。
このまま行くのか、次巻からはまた元の路線に戻るのか分からないが。

ちなみに王族典範では、王室の女性は王室の血を引く男性としか
結婚できないという条項があるのだけど、
今後の展開では、これに縛られない事態も生じそう。
直斗君にも一縷の望みが出てくるのか?(笑)

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