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ヲタクに恋は難しい [映画]


元々この映画、観にいく予定はなかったのですが
(興味はそれなりにあったのだけどね)
なぜか突然、かみさんが「観にいきたい!」って言い出した。
いったい何が彼女に起こったのでしょうかねぇ・・・

というわけで、観にいったのですけど・・・
うーん、観てる間にいろんな事が頭をよぎったのですが
最終的な結論はこれですね。
これは「高畑充希という希有な才能を愛でる映画」ですな。

wotakoi.jpg
ヒロイン・桃瀬成海(ももせ・なるみ)は会社の同僚と交際していたが、
腐女子であることがバレたことがきっかけでフラれ、
その同僚と顔を合わせづらくなり転職する。

転職先で、成海は幼馴染の二藤宏嵩(にふじ・ひろたか)と再会する。
彼は「廃人レベルのゲーヲタ(by成海)」であり、
成海にとっては、自分の趣味を隠すことなく付き合えるヲタク友達。
ただ「タイプじゃない(by成海)」ため、宏嵩と交際する気はなかった。

しかしある夜、宏嵩は成海に自分と交際した際のメリットを説き、
(まあ要するに「ヲタク同士だから気楽につきあえるでしょ」と)
それを受けて2人は交際を始める。

とはいっても、ヲタク同士で不器用な二人はギクシャクするばかり。
そんな二人の、山あり谷ありの恋愛模様を描いていく。


とはいっても、ストーリーがあるようで、ほとんどない映画だ。

起承転結のうち、起(職場での再会、そしてつき合い始める)、
承(コミケに行ったり、デートしたり、宏嵩の家に行ったり)ときて
かみ合わなかった二人の中が、やっと上手く回り始めるかな・・・
ってところでエンディングを迎える。

つまり、いわゆる普通の映画で言うところの、
”感動のラスト” へ向けての ”転”・”結” となる盛り上がりが
ほとんどなく、終わってしまうのだ。

観客の多くは「え? これで終わりなの?」って思うだろう。

いろいろ考えたんだけど、この映画は
普通の ”尺度” で計ってはいけない作品なんだよ、きっと(笑)。

タイトル通り、「ヲタクの生態」が細かく描写される。
成海が喫茶店で隣に座った男性二人組を観てBL的妄想に耽ったり
居酒屋で憧れのコスプレイヤーに出会って舞い上がったり
コミケに出す薄い本を作るために睡眠時間を削って編集してたり。

とくにヲタク用語が頻出する台詞や、登場するヲタの方々の言動は
正直いって意味不明なところが多いのだけど、それらの解説は一切無い。

 まあ、私も「昭和オタク」の端くれのつもりだから、
 一般人よりは ”耐性” ができてるとは思うんだけど、
 そんな私でも、「令和ヲタク」の皆さんについていくのは
 なかなか容易ではなかったよ。ていうか半分くらいは置いてきぼり。

普通、こういう ”特殊な世界”(笑) を描くのなら、
メインキャラの中に ”普通人” を一人混ぜ、
彼または彼女の視点から描くのが定石の方法だと思うのだけど
そんな ”普通人への配慮” も一切無く、
延々と ”説明抜きのヲタク描写” が続く。

これはもう「分かる人に分かればいい」って割り切ってるんだね。
ストーリーを見せることよりも、現代の ”ヲタクあるある” を描いて
同じ嗜好を持つお客さんたち(この映画の観客の7割は若い女性らしい)に
「わかるー」って言わせる。ただそれだけを目指しているんだろう。

それに加えて、登場人物が劇中、
突然歌い出し踊り出すというミュージカル仕立て。
そっち方面が苦手な人には辛い映画になるかも知れない。

だから、ヲタク属性をほとんど持たない私のかみさんは、
途中で寝落ちしてしまいました(爆)。
でも私は最後まで寝ずに観ましたよ、もちろん。


俳優さんもリミッターを解除したような濃厚な演技で答えてる。

主人公二人の同僚で、アイドル声優オタクの
坂元を演じてるのは賀来賢人。
アイドル声優を熱く語り、劇中では見事なオタ芸を披露する。
この怪演ぶりは素直にスゴい。
『AI崩壊』で見せた真面目な役柄とは対照的で、
演じられる役の広がりを感じさせる。

主人公二人の上司である樺倉を演じたのは斎藤工。
職場では仕事の鬼、酒が入ると泣き上戸という落差が素晴らしい。
撮影中に高畑充希が「笑いが止まらなかった」というのも頷ける怪演。

妖艶な美女・小柳花子を演じる菜々緒。彼女は実は・・・
いやあ、これは未見の人のために書かないでおこう。

そして、二藤を演じたのは山崎賢人。
クールで感情を顔に出さないが、実は成海のことを深く思っている。
こういう男に巡り会えた成海は幸せ者だよ。

そしてそして、主演の高畑充希。ヲタク女子のぶっ飛んだ演技に加え、
劇中で披露する歌の上手いことに驚く。
wikiで見たら、歌手としての活動もしてる人なんだねぇ。
さらに、映画のあちこちで披露されるダンスシーンも素晴らしい。
バックにダンサーさんを従えての登場だけど、
本職のダンサーさんに引けを取らないキレッキレぶり。
とくに、コスプレしてのダンスは眼福(おいおい)。
演技・歌唱力・ダンスと三拍子そろったまさに完璧超人。


ストーリー映画としては如何なものかと思うが(笑)、
記事の冒頭にも書いたけど、この作品はまさに
「高畑充希という希有な才能を愛でる映画」
と考えるのが正解なのだろうと思う。

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