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AI崩壊 [映画]


近年、AIと聞くとあまり良いイメージがない。
人間から仕事が奪われてしまうんじゃないかとか
暴走して人間の手に負えなくなってしまうんじゃないかとか。

特に後者は、古くからSFのテーマになっていて
AIという言葉は使われていなくても
「進化した機械知性」や「超コンピュータ」なるものが
人間に悪さを仕掛けてくる作品には枚挙にいとまがないだろう。

そんな中、製作されたこの映画。
いったいどんな ”悪さ” が描かれるんだろうと観にいってみた。

見終わって思ったのは、「邦画としては頑張ってるなぁ」。
いま、この時代に制作・公開されたことに意味があるとも思ったし。

ネットの評価の中には厳しいものも多いみたいで、私も観ていて
「おいおい」ってツッコミを入れたくなる場面も少なからずあったけど
130分ほどの上映時間中、とりあえず退屈はしませんでした。

AIhoukai.jpg
AI研究者である桐生浩介(大沢たかお)は、創薬AIを開発するが
国の認可が下りず、妻・望(のぞみ:松嶋菜々子)の癌を治療するための
新薬製造ができず、彼女は亡くなってしまう。

妻の遺志を継いだ浩介は、医療用AI「のぞみ」を完成させる。
国の認可も下り、「のぞみ」の正式稼働を見届けた浩介は
後事を義弟の西村悟(賀来賢人)に託し、研究開発の現場から離れて
一人娘の心(こころ:田牧そら)とともにシンガポールへ移住する。

そして5年の月日が流れ、2030年を迎える。

その間、「のぞみ」は広く利用されるようになり、
全国民の8割近くの医療情報を一元集約し、
健康を管理するライフラインにまで成長した。

その功績によって政府から表彰されることになった浩介は、
心とともに日本の土を踏むが、それと時を同じくするように
突如として「のぞみ」が暴走を始める。

すべての医療機器が活動に異常を来して、
多くの人間が死亡する事態が発生、社会は大混乱に陥ってしまう。

警視庁のサイバー犯罪対策課の理事官・桜庭(岩田剛典)は
AIを暴走させたテロリストとして浩介の追跡を命じるが
身の覚えのない浩介は、必死の逃亡を開始する。

なかなか身柄を拘束できない浩介に対して、
超法規的な措置を次々に発動し、実弾発砲さえも命じる桜庭の
強硬な態度に反発するベテラン刑事の合田(三浦友和)は、
捜査一課の新米・奥瀬久未(広瀬アリス)とともに独自の行動を起こす。

一方、浩介の娘・心もまた「のぞみ」の暴走に巻き込まれ、
「のぞみ」のサーバールームに一人閉じ込められてしまう。
テロリストの攻撃を想定したサーバールームの扉は
鉄壁の堅牢ぶりを示し、外部からの救出を拒む。
さらに「のぞみ」はルーム内の急速冷却を開始し
氷点下の冷気によって心に凍死の危機が迫る。

そして「のぞみ」は、ついに ”人間の選別” に取りかかる。
集約した情報を元に人間の ”有用性” を算出し、
その基準に満たない者の命を奪うことを決めたのだ。
選別開始までのタイムリミットは6時間・・・


なぜAIが暴走するのか。私の第一の興味はそこだった。
観る前は、AIが自らの知性で推論した結果、
人間への反抗を始めたのかと思ってたんだが
この映画でのAIの暴走は、悪意ある人間のハッキングによるもの。
つまり ”原因は人間” なわけだ。

 まあ、AIのシンギュラリティは2045年って言われてるから
 2030年のこの時点ではまだそこまでいってないのだろうね。

医療用AIの異常によって社会が大混乱に陥る描写は、
細かいところまでよく描かれているように思う。
観ていて「なるほど」って思うところもあったし。

逃亡する浩介を追う桜庭の側も、捜査用AIを駆使して追い詰めていく。
あらゆる防犯カメラ、車載のドライブレコーダーのカメラ、
スマートフォン搭載のカメラなど、およそ
ネット接続されているカメラを総動員して浩介の行動を追い続ける。

そこには、当然個人所有のものも含まれるわけで、
桜庭には「個人情報保護」とか「基本的人権の尊重」とかの理念はなく
ただただ ”凶悪犯” を追い詰めるには法の逸脱も辞せず、という思想が。

権力者がこういうITインフラの悪用を始めたら
とんでもない世界になってしまう、ということも描かれてるんだが
昨今の風潮を考えたらあながち夢物語でもなさそうな。

人間の価値は「生産性」だけで決まるものではもちろんないけれど
それで格付けしようとする人もいないわけではないし。

 定年でセミリタイアした私なんて真っ先に粛正されてしまうだろう。

いろいろ考えさせられることの多い映画ではある、と思う。


そんな映画ではあるけれど、ツッコミどころも多い(笑)。

浩介が当局に対して無実を訴える前に、
まず逃亡を決めてしまうというのは、考えてみればちょっと唐突だ。
まあ、桜庭の行動を見てれば、それが通るはずもないのだけどね。

一人で逃げ回る浩介がなかなか捕まらないのも考えてみれば不思議。
情報も人員も物量も圧倒的に警察側が勝っているのに。

特に、フェリーから冬の太平洋に飛び込んでも無事に生きてたりして
浩介の不死身の超人ぶりに驚かされる。

まあ、途中で捕まったり死んじゃったりしたらそこで「終」だからね。

さらに、浩介の ”天才ぶり” も半端ではない。
開発の現場を離れて5年も経つのに、ノートパソコン1台で
警察の追跡システムをハッキングしたり。
(だいたい彼の専門はハッキングやセキュリティではなかろうに)
「のぞみ」のプロトタイプのデータが残っていたからとはいえ
暴走したAIを ”正気に戻す” プログラムをあんなに短時間で書いたり。

極めつきはラストシーンかな。
”真犯人” が犯行動機と、社会のあり方についての自らの持論を
浩介に対して滔滔と語ってみせるのだが、
「おいおい、こんなところでそんなこと言っていいのか?」
あまりにも周囲が見えてなさ過ぎる・・・

シナリオというかストーリーについては、いろいろ無理が多いというか
穴が多いというか・・・このあたりで評価を下げる人が多いのだろう。


俳優陣は熱演してると思う。

大沢たかおは全編走りっぱなしでごくろうさんです。

松嶋菜々子さんは相変わらず美しいのですが、美しすぎて
病人という感じがあまりしないのはいかがなものかと(笑)。

冷徹な捜査官役の岩田剛典、浩介の義弟で
「のぞみ」の管理運営会社の社長を演じた賀来賢人もいい案配です。

三浦友和はいつのまにか渋い俳優になりました。
まもなく古希ですね。走るのが辛そうで(笑)いい味出してます。
広瀬アリスも頑張ってるので、もっと目立たせてあげたらいいのに。

特筆すべきは心役の田牧そらちゃんですね。
正統派の美少女で、まだ13歳なのに堂々と演じてます。
主人公は大沢たかおだけど、ヒロインは間違いなく彼女です。
ラスト近く、母の名をもつAI「のぞみ」を救ったのは
間違いなく心ちゃんですからね。

あと3年もすれば、グラビアを賑わせるようになるのでしょうな。


最後にどうでも良いことを。
映画の主題歌を歌ってるのがAI(人間の歌手のほう)というのは
分かってやってるんでしょうなぁ、もちろん。

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