SSブログ

その絆は対角線 日曜は憧れの国 [読書・ミステリ]


その絆は対角線 (日曜は憧れの国) (創元推理文庫)

その絆は対角線 (日曜は憧れの国) (創元推理文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/10/21
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

引っ込み思案な暮志田千鶴(くれしだ・ちづる)、
明るいムードメーカーの先崎桃(せんざき・もも)、
要領良く生きることが身上の神原真紀(かんばら・まき)、
読書家で博識だが堅物の三方公子(みかた・きみこ)

性格も学校も家庭環境も異なる中学2年生の女子4人組が
知り合う切っ掛けとなった四谷のカルチャーセンターを舞台に、
そこで出会う ”事件” を描く ”日常の謎” 系ミステリ連作集の2巻めだ。

今作では、あらたにエリカ・ハウスマンというキャラが
サブレギュラーとして登場する。
日英のハーフでケンブリッジ大卒、外資系企業勤務を経て
カルチャーセンターの講師になったが、
最近マスコミへの露出も増えているという才人だ。

「その絆は対角線」
エリカの講座を受講した千鶴は、彼女のポジティブさに影響され
最近姿を見せない桃の家まで誘いに行くが・・・

「愛しき仲にも礼儀あり?」
講師・糸数慶子のマナー講座を受講した桃。
その講座の直後、質問しに行った女子高生に対し、
慶子は突然激高してしまう・・・

「胎土の時期を過ぎても」
美術ライター・羽生潔から、不思議な話を聞いた真紀。
骨董コレクター・大東が脳溢血で死ぬ直前、
コレクションの中で最も高価な銀漢天目茶碗を自ら割っていたという。
4人はその理由を推理するのだが・・・
”本物” と ”贋物” の違いについて考えさせられる話ではある。

「巨人の標本」
小説家・奥石衣の創作講座に参加している公子。
奥石は、参加者の中でも熱心な者を集めて合評会を開いていた。
各自が持ち寄った創作を批評し合う会なのだが、
その日奥石は体調不良で参加できず、代わりに
ゲストで来ていた編集者・信楽が批評をすることになった。
信楽は公子を含めた参加者たちの作品に厳しい評を下していくが
「巨人の標本」という、作者名がない作品だけは激賞する。
公子はその作品の作者を探し始めるのだが・・・
いちおう最後に作者は明らかになるんだけど、
こんなので傑作を書かれたらプロの作家さんはたまらんだろうなぁ。

「かくも長き別れ」
マスコミの寵児となったエリカは、
カルチャーセンターを ”卒業” することになり、最後の講演会を開く。
しかしそこで彼女のタブレット端末が盗難に遭ってしまう。
4人組の活躍で犯人は見つかったものの、
なぜかエリカは警察に連絡せずに犯人を許してしまう・・・
これまで4編で随所に顔を出し、4人の中学生たちに
いろいろな影響を与えてきたエリカ。
彼女の抱えていたある ”秘密” が明らかになる。


評価がちょっと辛いのは、前作よりは
ミステリ要素が薄いかな・・・と思ったから。
いちばんミステリらしい出来なのは最後に置かれた「かくもー」かな。

それぞれ個性は違えど、みな基本的には
真面目なお嬢さんばかりなので好感が持てる。
中学生時代特有の葛藤を描いた青春小説としてはとても面白いと思う。

できれば、続きが読みたいな。
彼女らが高校生になった時の話もいいんじゃないかと思う。

nice!(4)  コメント(4) 
共通テーマ: