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皇帝のかぎ煙草入れ [読書・ミステリ]


皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)

皇帝のかぎ煙草入れ【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

おっとりとしていて人を疑うことを知らない美女、イヴ・ニール。
25歳でネッド・アトウッドと結婚し、
フランスの避暑地ラ・バンドレットで暮らし始めたが
ネッドの浮気と(今で言うところの)DVに苦しめられ、3年後に離婚。

ネッドは出て行ったが、イヴはラ・バンドレットの家で暮らし続けた。
やがて、真向かいの家に住む純真な青年、トビイ・ローズと親しくなり
婚約するに至る。

しかしトビイの父親・モーリスが殺害され、
向かいの家に住むイヴが容疑者となってしまう。
さらに彼女にとって不利な状況証拠が次々と現れる。

しかし、イヴはアリバイを主張できなかった。
殺害時刻には、彼女の家に侵入してきた前夫ネッドが
寝室にいたイヴに対して復縁を迫っている最中だったのだ・・・


世間知らずのお嬢さんだったイヴを騙くらかして(笑)結婚しただけあって
ネッドという男は徹底して下衆に描かれている。
性格は最悪だが女性に対する魅力はムンムン(古い表現だね)という。

対するトビイは、その純真さが "間違った方向を向いた純真さ"
であることがだんだん分かってきて、ガッカリさせられることばかり。

イヴさんは「男運が悪い」のか「男を見る目がない」のか・・・

イヴに雇われているメイドのイヴェット、そしてその姪のプルー。
トビイの母ヘレナ・妹ジャニス・伯父ベンジャミン。
ミステリだから当たり前なのだけど、
ネッドとトビイ以外の登場キャラもみな一癖ありそうで胡散臭い。


本作はカー屈指の傑作と呼ばれているのだけど
なるべく予備知識を持たずに読まれることをオススメします。

実は私は、本作のネタバレを
40年ほど前に何かで読んで知っていたはずなんだが
いかんせん記憶があいまいで(笑)
結局のところ、しっかり最後まで引っ張り回されてしまいました。

カーがトリックの考案やストーリーテラーとして
一流であるのはもちろんだけど
何よりも "小説巧者" であることがよく分かる一編。

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