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Mystery Seller [読書・ミステリ]

Mystery Seller (新潮文庫)

Mystery Seller (新潮文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/01/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★

約600ページ弱の中に8編と、
比較的長めの作品を集めたミステリ・アンソロジー。


「進々堂世界一周 戻り橋と彼岸花」(島田荘司)
京都大学に通っていた頃の御手洗潔が登場する。
とは言っても彼の経歴が皆目わからないのでwikiを見てみたら
どうやら70年代後半あたりの話らしい。
御手洗が語り手である "ぼく" に、大学で聞いたという
太平洋戦争末期の "秘話" を語り出す。
朝鮮半島から連れてこられた姉弟が、秘密裏に関わった風船爆弾の製造。
それにまつわる、ある不思議なエピソード。
冒頭の導入が長くてなかなか本筋に入らないし、
メインのお話もあんまりミステリって感じではない。
でも終わってみれば確かに島田荘司のミステリ以外の
何物でも無いんだけど。


「四分間では短すぎる」(有栖川有栖)
有栖川版「九マイルは遠すぎる」(ハリィ・ケメルマン)。
有栖が使った駅の公衆電話で、横のブースにいた男が話した言葉。
「四分間しかないので急いで。靴も忘れずに。いや、Aから先です」
有栖が小耳に挟んだこの一言だけを手がかりに、
名探偵・江神二郎率いるミステリ・サークルのメンバーが
様々な推理を披露していく。
やがて、ある種の犯罪を示唆する意外な解釈が浮かび上がるが・・・
ここまでの展開も充分面白いんだけど、ラストにまたもう一捻り。
やっぱり有栖川有栖はすごいねえ。


「夏に消えた少女」(我孫子武丸)
幼い少女を襲うシリアルキラーの話・・・なんだけど
ラストの切れ味は抜群。
本書の中では短めなんだけど、これで充分。


「柘榴」(米澤穂信)
容姿に恵まれた娘・さおり。長じて結婚し、二人の娘をもうける。
長女の月子も次女の夕子も美しく成長していくが・・・
「古典部」や「小市民」とは打って変わって
暗めのサスペンスなストーリー。
ミステリとしての出来はともかく、この手の話は苦手だなあ。


「恐い映像」(竹本健治)
テレビに映ったある "風景" に、とてつもない恐怖を感じた主人公。
撮影場所へ行ってみると、そこはかつて
自分が小学生の一時期を過ごした場所であり、
そしてまた、ある "事件" が起こっていた場所でもあった・・・
うーん、良くできた話だと思うけど、ちょっと作りすぎのような気も。


「確かなつながり」(北川歩実)
この人の処女作「僕を殺した女」も、かな~りややこしかったが
これも負けてない。
女子高生が失踪し、父親である井波が探偵に捜査を依頼する。
かつて井波の恋人だった女性を妻にした男性・原山が
井波に対して怨恨を抱いていると見られたが・・・
ラスト近くで物語が二転三転。とくに最後のものはスゴイ。
スゴイんだけど、それと好きになれるかどうかは別なんだよなあ。


「杜の囚人」(長江俊和)
この人は映像作品の演出家が本業らしい。
内容も映像作家さんらしく。カメラを通じて
ある兄妹の様子を録画・記録し続けていくのだが、
その裏に仕組まれた "からくり" が次第に明らかになっていく・・・
これもラスト近くで背負い投げを食ってしまうのだが
こちらが床に倒れたあと、さらにトドメの一撃が待っている。


「失くした御守」(麻耶雄嵩)
平穏な生活に退屈しながらも、夢が持てない高校生の目を通して
彼が住む霧深い田舎町で起こった事件が語られていく。
最初はてっきり "駆け落ち" かと思われた恋人たちの失踪は、
二人の死体が発見されて "心中" へ、
そして二人の死因から "殺人" へと様相を変えていく。
ラスト数ページで真相が明らかになったあとの
主人公(と犯人)の行動が・・・ええ?
いや、これでこそ麻耶雄嵩なのかも知れない。


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