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天体の回転について [読書・SF]

天体の回転について (ハヤカワ文庫 JA コ 3-3)

天体の回転について (ハヤカワ文庫 JA コ 3-3)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/09/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★

小林泰三ってホラー作家のイメージが強いんだけど
SFも書けるんだなあ・・・って思ったら
「あとがき」で「自分は本質的にはSF作家だと思ってる」
そうで、実際この短編集は立派な(?)SF作品集になってる。
些かホラーっぽいのも含んでるけどね。

「天体の回転について」
はるかな未来、科学技術が忘れ去られた世界で成長した青年が、
謎の美少女(表紙のイラストの子)に導かれて遙か天空へと旅立つ。
30年くらい前の古き良きジュブナイルの雰囲気を醸す作品。
こういうの、嫌いじゃない。

「灰色の車輪」
小惑星上で開発されたロボットが引き起こす災厄を描く。
進歩したロボットの恐ろしさと切なさを併せて描いている。
これ、○○○○○○のオマージュだね。
作中に出てくる対ロボット用の武器の名前で気づくべきだった。

「あの日」
遠い未来、地球外を生活の場にするのが当たり前の状態になったら、
地球上で暮らしていた頃を舞台にした小説は
「歴史小説」や「時代劇」になっちゃうんだろうか。
歴史考証以前に、この作品みたいな "勘違い" が
横行するようになってしまうんですかねぇ・・・

「性交体験者」
扇情的なタイトルだけど中身はけっこう真面目なSF。
自分が男なだけに、この設定はかなりショッキング。
でもまあ、男が幅をきかせているうちは世に争いは尽きないのかも。
こういう世の中になった方が世界は平和になるか?

「銀の船」
惑星探査機が撮影した地表に写っていたのは "人面岩" 。
ちょっと懐かしいネタから入るこの作品は、
"人面岩" に魅せられたヒロインの成長&冒険譚・・・
なんだが、ラストで見事に背負い投げ。

「三〇〇万」
これ、タイトルとモチーフは映画「300」から取ったのかな?
遙かな宇宙を超えて "蛮族" が地球に攻めてくる話。
大昔のスペースオペラ全盛の時代には、
こんな宇宙人はありふれてたんだろうなあ。

「盗まれた昨日」
人類が短期記憶を保てなくなった時代のお話。
人々は記憶をメモリーチップに収めて、必要に応じて検索する。
人の "アイデンティティ" とは肉体にあるのかメモリーにあるのか・・・
そのチップを巡って "自分" と対決するヒロインの物語。
主人公のその後がとても気になる。

「時空争奪」
これ、既読だった。「NOVA」だったかなあ・・・
いつの間にか歴史が何者かによって "書き換えられて" いく世界。
うーん、再読したんだけど、やっぱり途中で
よく分からなくなってしまいました。
"時間" と "河川" のアナロジーが私には理解不能。スミマセン。