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見えない殺人カード 本格短編ベストセレクション [読書・ミステリ]

見えない殺人カード 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

見えない殺人カード 本格短編ベスト・セレクション (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/01/17
  • メディア: 文庫



評価:★★★

発行年月日を見たら、何と3年近く "積ん読" の山に埋もれていた。
そういえばページの端が心持ち変色しているような・・・

おかげで、収録されている10編のうち、
3編はその作者の短編集で読んでしまっていたよ。

3割くらい損をしたような気分・・・


「はだしの親父」(黒田研二)
主人公は、ある事情により実家と音信不通だった次男坊。
父親の死を知り、葬儀のため6年ぶりに家に還ってきた。
その夜、兄と弟の3人で、幼少時の思い出を語り合ううちに、
父の死に隠された秘密に気づいていく・・・
いやあ、親というのはありがたいものだ。
ラストで明らかにされる父親の真意は感涙もの。
本書中、一番気に入った作品。

「ギリシャ羊の秘密」(法月綸太郎)
短編集で既読。
ホームレスの老人が殺された事件で
フリースが持ち去られていた理由が最後に明かされるんだけど
私にはあまりピンとこなかった。
だって○○○って言ったら、某有名○○○の○○○○の方を
連想する方が普通だと思うんだもの。
私は異端者なんだろうか・・・

「殺人現場では靴をお脱ぎ下さい」(東川篤哉)
これも短編集「謎解きはディナーの後で」で既読。
部屋の真ん中で靴を履いたまま殺されていた女性の謎に
超セレブお嬢様刑事と腹黒執事が挑む(笑)。
短編集の記事にも書いたけど、
本作よりも、同書に収録の「二股にはお気をつけ下さい」の方が
ミステリとしては良くできてるような気が私はするんだが・・・
あ、このアンソロジーを組んでる時機には
まだ発表されてなかったのかも・・・

「ウォール・ウィスパー」(柄刀一)
天才・天地龍之介を探偵役とする一編。
龍之介のライフワークである "学習プレイランド" の建設中に起こった
ある出来事から、40年前の犯罪が明らかにされる。
不可思議な現象が科学的にきっちり解明されるのは、この作者らしい。
でもまあ、これを言っちゃおしまいなんだけど
関係者の皆さんの記憶力の素晴らしさに脱帽。
私自身、ここ数年の物忘れのひどさに呆れかえってるだけに・・・

「霧の巨塔」(霞流一)
私立探偵・紅門福助が登場するシリーズの一編。
山奥の村まで映画ロケに来た一行。
主演俳優が近くの温泉までバイクで出かけたところ事故を起こし、
その現場で巨大な塔を目撃するが、村にそんな塔は存在しなかった。
そして、ロケメンバーの一人が殺される・・・
ラストの犯人指摘に至るロジックは良くできてると思ったけど
"塔" の正体はねぇ・・・いくらなんでもそれは無いんじゃない?

「奇偶論」(北森鴻)
民俗学者・蓮丈那智とその助手・内藤三国が登場する一編。
一般向けの民俗学市民講座を受け持つことになった三国くんだが
講座のメンバーを連れて町中を歩くうちに騒ぎが持ちあがる。
メンバー間の諍いに見えたその裏に潜む意外な真実を、
解き明かしてみせる蓮丈那智もいいけど、
三国くんのヘタレぶりも相変わらずで、とても他人に思えない。
この作者の新作が読めないとは残念でならない。
遺作となった、蓮丈那智シリーズのラスト長編「邪馬台」も
手元にあるんで近いうちに読もうと思っている。

「身内に不幸がありまして」(米澤穂信)
資産家の丹山(たんざん)家に拾われた少女・夕日(ゆうひ)の目を通して、
深窓の令嬢・吹子(ふきこ)との幸福な日々が綴られていくが、
吹子の兄で道楽息子の宗太が凶行に走り、
やがて丹山家に連なる親類も殺されていく・・・
フィニッシング・ストロークって言葉、初めて聞いたかな。
俗に言う「最後の一行」のことをこう言うらしいが。
昔聞いたけど忘れてしまってたのかも知れない。
私ってホントにミステリファンだったんだろうか?
やっぱここ数年の物忘れのひどさ(ry
狙い通り、ラストの切れ味は本書中でダントツ。
「よりによって、そこかよ!」ってツッコミもありそうだけど。

「四枚のカード」(乾くるみ)
この作者、デビュー作「Jの神話」を読んで
ぶっ飛んでしまったよ、悪い意味で。
(実際、ホントに本を投げ出しそうになったし。)
それ以来、スルーしてきた。
でも今回読んでみて、処女作のゲテモノぶりとは打って変わって
堂々と展開される論理のアクロバットにびっくり。
あんまり驚きすぎて途中でついて行けなくなってしまった。
やっぱ私はアタマが悪いです。スミマセン。

「見えないダイイング・メッセージ」(北山猛邦)
これも短編集で既読。引きこもり探偵・音野順シリーズの一編。
殺された被害者が最後に撮ったポラロイド写真に秘められた謎。
写真の秘密も意外なんだけど、もっと意外なのは
これを解き明かすのが順ではなく、兄貴の要(かなめ)ということ。
兄は弟と違って世界的な指揮者として活躍している。
"名探偵の兄は、弟よりも頭がいい" ってのは
ミステリ界ではデフォルトなんでしょうか。

本書のラストには、
評論「自生する知と自壊する謎-森博嗣論」(渡邉大輔)
が載ってるんだけど、森博嗣はここ数年興味が失せてしまった。
Vシリーズと四季シリーズあたりまではともかく、
GシリーズもXシリーズもなんだかよく分からなくて
面白いと思えなくなってきたんだよねえ。
というわけで読まずにパス。スミマセン。