SSブログ

他人の城/憎悪のかたち 日本ハードボイルド全集3 [読書・ミステリ]


他人の城/憎悪のかたち: 日本ハードボイルド全集3 (創元推理文庫 M ん 11-3)

他人の城/憎悪のかたち: 日本ハードボイルド全集3 (創元推理文庫 M ん 11-3)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/01/19
  • メディア: 文庫

評価:★★☆


 日本ハードボイルド小説の黎明期を俯瞰する全集、第3巻。
 表題作の長編に加え、中短編5作を収録。

 作品中には、現在の基準では穏当を欠く表現もあるのだけど、本編中で使用されている単語については本記事でもそのまま使用していることを予めお断りしておく。


「他人の城」
 作家の高田晨一(たかだ・しんいち)は、三村隆一という若い医師から「妹を探してほしい」という依頼を受ける。彼女の名は真理。22歳の大学生で、一週間前に失踪したという。
 戸籍上は隆一の実妹だが実は養女で、両親が亡くなって三村の家に引き取られてきた。彼女の実父は朝鮮戦争で死亡、母親は出産後間もなく病死という、いわゆる "戦争混血児" だった。
 高田は2年前に戦争混血児をテーマにした署名記事を雑誌に掲載したが、その雑誌が真理の部屋に残されていた。記事の最後には、わずかだが真理についての記述もあった。そこから、三村は高田に捜索を依頼してきたのだ。
 記事執筆のたたき台となった取材をしていのは黒木重郎というライター。彼によると、真理の消息はケイという青年が知っているのではないかという。本名は斎藤敬作、新宿にたむろするヒッピー(死語だなぁ)たちのボス的存在で、一年前に真理と一緒にいたところを目撃されていた。
 真理とケイの消息を求めて、新宿の街や店で様々な人たちと出会っていく高田。このあたりは典型的な "人捜し" のパターンで、真っ当な人間もいれば裏社会につながる者もして多士済々。しかし二人の行方は杳として知れない。
 そんな中、ケイが死体となって発見される。山下公園近くの海に浮かんでいたという。高田は警察関係者にも接触し、情報を集めていく。
 やがて、ケイの実家と真理の関係、さらには三村家との意外なつながりがあったことが明らかになっていく・・・
 単純な人捜しから始まるのだけど、登場人物がとにかく多く、しかも彼ら彼女らの関係性が複雑で、さらに高田が接触したことで新たな動きが出てきたりと、とにかくダイナミックに事態が変動していく。
 私のアタマでは少々荷が重いみたい。読んでいて、途中で迷子になってしまったよ。メモでも取りながら読まないと理解できなさそう・・・


「憎悪のかたち」
 譲司(ジョージ)は戦争混血児。彼を引き取り、育ててくれていたじいさんが、ひき逃げに遭って命を落とした。その直後、二人が住んでいたアパートには刑事を名乗る男がやってきた家宅捜査をしていった。じいさんの死に裏があると踏んだ讓治だが・・・


「溺死クラブ」
 "おれ" は、ある "パーティー" へとやってきた。そこには "おれ" を含む5人の男たちがいた。みな殺し屋だった。彼らはかつて異なるボスの下で、互いに命を狙い合ったこともあった。
 しかしこれからは共存共栄を図ろう、という趣旨の会合だったが、そんなお題目が通用するはずもなく、パーティーは渾沌と暴力が支配する修羅場へと変貌していく・・・


「殺しに行く」
 増井組のチンピラ・石井は、幹部の後藤に呼び出されて22口径の拳銃を渡される。近々警察のガサ入れがあるらしいので、武器を分散させているのだというのだが・・・


「ガラスの街」
 "私" は、新宿のフーテン族(これも死語か)を扱ったTV番組を制作した。主人公に取り上げたのは "ミミ" という少女。番組の放映から一ヶ月後、"私" は警察から呼び出しを受ける。"ミミ" こと湯浅ミチ子の死体が浄水場跡で見つかったのだという。ミチ子の姉は激しく "私" をなじるのだが・・・


「腐ったオリーブ」
 夜の銀座の街を歩く黒人ギル。コートの中に軽機関銃を隠し持つ彼を狙って、何者かが襲ってきた。彼を救ったのは、日系二世の三郎だった・・・


 ボーナストラックのエッセイは太田忠司。前半は、ハードボイルドそして河野典生に出会った十代後半の頃の話、後半は「他人の城」への思い入れを綴っている。


 河野典生という作家さん、本書に収録した作品はハードボイルドと銘打ってあるけど、内容としてはミステリの範疇に入るもので、大藪春彦みたいにぶっ飛んだ内容だったりはしないし、文章が難解ということもない。
 だけどなぜだか、読みにくいというか、読んでいても内容が頭の中に入ってきづらいんだよねぇ。
 語り口というか文章のリズムというか、微妙に波長が合わないものを感じる。文庫で600ページも読んだのだけど馴染めないのは、もうこれは相性が悪いのでしょう。たぶん(笑)。



nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ: