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探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます [読書・ミステリ]


探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます (幻冬舎文庫)

探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます (幻冬舎文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2020/10/07
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 31歳の "なんでも屋"・良太と、名探偵・綾羅木(あやらぎ)孝三郎の一人娘・アリサ(10歳)のコンビが、地元で起こる怪事件(笑)を解決していくシリーズ、第2巻。


「第一話 名探偵、夏休みに浮かれる」
 孝三郎は、アリサを連れて知人の高橋さん一家と共にキャンプに出かける予定だった。しかし、事件の依頼が入ってしまった。そこで彼の代わりに良太がアリサと一緒にキャンプに参加することになった。
 一行は奥多摩のキャンプ場に到着する。そして午後のひととき、川で遊ぶアリサたちの前に水死体が現れる。遺体はキャンプ場管理事務所のスタッフだった・・・
 小学生を連れた胡散臭い三十男の良太が、行く先々で変質者扱いされてしまうのも、お約束の展開で笑いを誘う。アリサが真相に気づくきっかけが面白い。子どもを探偵役にした意味がある。


「第二話 怪盗、溝ノ口に参上す」
 近頃、"怪盗ウェハース" なる窃盗犯が南武線沿線に出没してるらしい。そんな中、孝三郎に事件の依頼が入る。老舗焼き鳥屋『鳥男爵』を経営する鳥山直次郎のもとに "怪盗ウェハース" から犯行予告状が届いた。「三代伝わる秘伝のタレをいただきに参上する」と。
 他の事件の依頼で動けない孝三郎に代わり、店の警備を任された良太だが、予告の時刻にまんまとタレを盗まれてしまう。しかし建物は衆人環視の中にあり、誰も出入りはできないはずだった・・・
 ストーリーは二転三転の後、"怪盗ウェハース" の正体と目的が明らかに。これは盲点。


「第三話 便利屋、運動会でしくじる」
 良太のもとへ竹本洋輔という会社員から依頼が入る。小学生の娘・理奈の運動会を撮影してほしい、というもの。竹本は当日出張が入っていて見に行けないのだという。理奈は、アリサと同じ小学校へ通っていた。
 そして運動会当日。良太の元へ孝三郎から連絡が入る。事件の依頼があって急遽出張するので、アリサの運動会の様子を撮影してほしいという。というわけで、良太は2台のカメラを駆使して2人の小学生の競技の様子を撮影するという、てんてこ舞いの状況になってしまう。
 さらに、観客の持っていた腕時計がなくなるという騒ぎが起こり、良太もそれに巻き込まれることに。結局時計は見つからず、犯人も分からずじまい。
 しかしその数日後、竹本洋輔が何者かに襲われ、意識不明の重体となってしまう・・・
 ビデオカメラの操作って、けっこう難しいもの。撮りたいシーンがとれなかったり、余計なものが映っていたり。それを上手く使ってミステリに仕立ててるのだけど、それをさらにもうひとひねり。上手い。


「第四話 名探偵、笑いの神に翻弄される」
 良太は、森恭子という女性と知り合いになった。彼女は男女の漫才コンビ『デニム&ルビィ』の片割れ、ルビィ恭子として芸能活動をしていた。相方の男はデニム内藤という。
 ある夜、良太は修理工場の2階で『デニム&ルビィ』が稽古しているのを目撃するが、その翌朝、多摩川の河川敷でデニム内藤の死体が発見される・・・
 作中、漫才のシーンがあり、そのやりとりの様子が描かれてるんだが、けっこう面白い。まあ、この作品集自体、全編がコントみたいなものなのだが。
 よく、泣かせるのは簡単だが笑わせるのは難しいという。作者はそれをほとんどの作品でやってるわけで、ほんとスゴいなと思う。
 そして、そういう笑わせるシーンの中にしっかり伏線を仕込んでおくのも流石だ。



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