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バチカン奇跡調査官 秘密の花園 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 秘密の花園 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 秘密の花園 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/09/21
  • メディア: 文庫

評価:★★★


 カソリックの総本山、バチカン市国。
 そこには、世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対してその真偽を判別する調査機関『聖徒の座』がある。

 そこに所属する天才科学者の平賀と、その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第23弾。
 短編集としては6巻目。外伝的な短編3作を収録。


「生霊殺人事件」
 イタリアの保健大臣キエーザが殺害された。現場はローマ郊外の空き家。胸と腹を鋭利な獲物で切り裂かれた凄惨な死体は、椅子に釘で打ち付けられていた。
 これは5年前からイタリアで出没し始め、7人を殺した連続殺人犯・"釘男" の殺害方法と同一だった。しかし "釘男" は昨年、逮捕・収監されたばかりだった。
 そして事件が発覚した日の朝、獄中にいる "釘男" が看守に「キエーザを殺した」と自供し、さらに殺害現場の写真まで所持していたことが判明する。さらに「自分の体から離れた霊体が殺人を犯した」と主張しているのだという。
 この奇妙な事件の解決を命じられたのが、カラビニエリ(国家治安警察隊)のアメデオ・アッカルディ大佐。いままで数々の難事件を解決してきたから、という理由なのだが、実は彼の功績の裏にはローレン・ディルーカという天才的犯罪者の助けがあった。
 「今度こそ自分の力で解決するぞ」との意気込みで捜査するも五里霧中のまま。結局、またまたプロファイラーのフィオナを通じて、ローレンに泣きつくことになる・・・
 "霊体による殺人云々" のカラクリは、まあ見当がつくのだが、安楽椅子探偵としてのローレンとフィオナが容疑者を絞り込んでいく過程が独特で、ここがいちばんの読みどころか。


「エレイン・シーモアの秘密の花園」
 ウォール街で活躍する実業家ルッジェリ。苦学の末に、彼の第一秘書にまで上り詰めたエレインは、いつか "本物のセレブ" になることを夢見ていた。
 ルッジェリは彼女に「ジュリアの弱みを探り出せ」と命じる。ジュリアはヨーロッパ貴族の血を引く正真正銘のセレブで、ルッジェリは彼を脅威に感じていた。
 エレインはフランスへ飛び、ジュリアの執事であるコールマンへの接触に成功、屋敷へ招待されることに。
 ジュリアとの面会も果たしたエレインは、いよいよ彼の個人情報を得るために使用人の1人・アダンを取り込もうとするのだが・・・
 シリーズを通じての宿敵であるジュリアが、一介の秘書風情に簡単に尻尾をつかませるはずもないので、読む方としては、いつエレインの思惑がバレてジュリアに捕まってしまうのかな? と、いささか意地の悪い読み方になってしまうのは仕方がない。
 もっとも、結末の予想がつく話なのに最後まで面白く読ませるのは流石ではある。


「迷い猫」
 トラットリア(大衆食堂)で平賀の誕生日を祝ったロベルト。その帰り道、2人は猫を探す少女ジーナと出会う。猫探しを手伝おうと、2人は彼女の自宅へ向かう。
 手分けして探すが猫は見つからない。そのさなか、2人はジーナの両親を取り巻く深刻な事情を知る。彼女の父が経営する会社で経理担当者が資金を持ち逃げしてしまい、経営が傾いてしまった。自宅も抵当に入っており、3日後には立ち退かなくてはならない。
 平賀の機転で猫を見つけることに成功するが、ついでにその猫が会社の危機をも救ってしまう(!)という、"ちょっといい" 話。たまにはこんなエピソードもいいね。



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