宝の地図をみつけたら [読書・ミステリ]
評価:★★★
山梨県に暮らす坂上晶良(あきら)と桂木伯斗(はくと)は幼なじみ。2人の祖母同士もまた幼なじみだった。
小学5年生のある日、祖母たちの会話を聞いていた2人は驚く。山中のどこかに六川(むつかわ)村というところがあって、そこには甲斐武田家の財宝が眠っているらしい。その村はいわゆる ”隠し里” で、外部との関わりを厳しく禁じられてきたのだという。
2人は六川村を探して山中に分け入るが、その最中に伯斗が突然「やめる」と言いだし、宝探しは中断してしまう。そのせいか2人は次第に距離を置くようになり、高校進学後は音信不通となっていた。
晶良は地元山梨で大学生になり、郷土史研究会に入ってサークル活動として宝探しを続けていた。
そんなとき、東京で大学生となっていた伯斗が突然現れる。9年前に中断した宝探しを再開しようというのだ。
伯斗がアルバイトをしている編集プロダクションでは、扱うネタの中に ”宝探し” もあった。集まった情報の中には、反社会的集団(いわゆる半グレとかヤクザとか)が武田家の財宝を求めて六川村を探しているというものもあった。
彼らよりも先に財宝を見つけてしまおうという伯斗に促され、晶良とともに再び山中に分け入っていく。しかし伯斗のもとに東京から連絡が入り、帰京することに。そしてそのまま彼は消息を絶ってしまう。
一方晶良には、山中で怪我人が発見され、診療所に収容されたという報せが入る。発見場所は六川村があると思しき場所の近辺だった。さらにその怪我人が診療所を抜け出して行方をくらますという謎の行動に。
晶良はトレッキング同好会の友人・吉井とともに、怪我人を探して山中に分け入ったが、彼らが遭遇したのは、宝探しにやってきた反社会的集団のメンバーたちだった・・・
終盤に入ると、敵と追いかけっこをしたり捕まったり対決したりと、かなりのハラハラシーンが続く。ミステリ要素もあるけれど、サスペンスもたっぷり。
主役の2人以外にも、なかなか個性的な脇役も多い。
山歩きの好きな吉井君は典型的な曲者キャラ。
晶良のサークルの1年上の先輩・カノコさんは清楚な感じで私の好みなんだが、やや出番が少ないかな。
カノコさんの叔父で診療所で働く医師の国分は、9年前の宝探しからのときからの因縁があるのだが、腹に一物抱えた胡散臭い人。
バイト先での年上の同僚・三咲さんに伯斗は憧れを抱いてるようだが、彼女もまた何らかの意図を隠し持って宝探しに関わってくる。
終盤はすっかり冒険アクションになってくるのだけど、いままでこういう路線の話は書いてなかったよね。これは新境地なのかな。引き出しの多い作家さんになったんだなぁと思う。