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図書館の殺人 [読書・ミステリ]

図書館の殺人 裏染シリーズ (創元推理文庫)

図書館の殺人 裏染シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

風ヶ丘高校2年生の駄目人間(笑)、裏染天馬(うらそめ・てんま)を
探偵役とするミステリシリーズ、長編としては3作目。

9月。風ヶ丘高校では期末試験が行われている。
前期後期の2期制の学校なので、期末試験はこの時期なのだ

試験1日目の朝、風ヶ丘図書館の本棚の間で死体が発見される。
死因は撲殺。凶器は山田風太郎の『人間臨終図鑑』。
遺体の周囲には書棚から落ちた本が散乱していたが
遺体の手元にあった1冊の表紙には、
被害者が血で描いたと覚しき謎のマーク、そして床には謎の文字が。

死んだのは城峰恭輔。横浜国大の2年生で図書館の常連で
彼の従姉妹の城峰有紗は風ヶ丘高校2年生で図書委員長だった。

警察から依頼を受けた天馬は、独自の捜査を始めるのだが・・・

前2作での活躍が評価されて、晴れて殺人事件に関わることが
できるようになった天馬君だが、そのおかげで
殺人事件の捜査のパートと、天馬の高校での仲間たちとの
掛け合いのパートが実にすんなりというか、
シームレスにつながっているように思う。

捜査に関わる天馬の言動はなかなか奇矯で
ほとんど悪ふざけのようにも思えるが、その背後には
しっかりとした裏付けがあるのは流石だと思う。

シリアスな犯罪を扱っていながらも、ライトノベル的な
軽いノリやユーモアを感じさせるというのは、
簡単そうで実際にはなかなかできることではないのではないか。

天馬の幼馴染みで新聞部長の向坂香織、
天馬から助手のようにこき使われる袴田柚乃、
その兄で神奈川県警捜査一課の刑事・優作、そして仙堂警部と
レギュラー陣も賑やか。
さらに今回は女性刑事・梅頭(うめず)咲子も加わるが
事件に関わる男性陣を片っ端から品定めるするとか
彼女もなかなかユニークなキャラだ。

ダイイングメッセージというのは、いかようにも解釈するのが可能なので
実際の犯人指摘にはほとんど役立たないものなのだけど
本書では新しい切り口を見せてくれる。

終盤の謎解きシーンで、天馬は「犯人たり得る人物」の条件を挙げて
消去法で絞り込んでいく。
最終的に残った者が ”論理的” には犯人に間違いないのだが
私としてはちょっと納得できないものを感じた。
とはいっても、それは本格ミステリとしては
枝葉の要素なのだろう・・・なぁ。


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