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スクープのたまご [読書・その他]

スクープのたまご (文春文庫)

スクープのたまご (文春文庫)

  • 作者: 梢, 大崎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★

昨今「文春砲」なるものが、政治家・実業家・企業から芸能人まで
多くのスキャンダルを暴いてたいへんな話題になっているが、
その手の ”週刊誌” をつくっている人々を描いたお仕事小説である。

舞台は老舗出版社である千石(せんごく)社。
主人公・信田日向子24歳は、そこのPR誌の編集部で働いていた。
しかし2年目を迎えた彼女は「週刊千石」編集部への異動を命じられる。

 ちなみに、本書の出版元は株式会社文藝春秋。ということは
 「週刊千石」のモデルは「週刊文春」、なんだろうなぁ・・・
 あ、春秋戦国(千石)、ってことなのかな?

日向子と同期入社した桑原雅樹は、
「週刊千石」の事件班に配属されていた。
意欲的にバリバリ仕事をしていると思われたのだが、
彼はいつの間にか心を病んでしまっていた。

芸術性の高い文芸書を刊行する一方で、
下世話で下品の塊のような週刊誌もまた発行している。

桑原に代わって事件班への配属となり、戸惑う日向子。
彼女もまた、そんなスキャンダルばかり追いかけているような部署に
疑問を抱いていたのだが・・・

物語は、週刊誌編集部の同僚や取材対象の人々との出会いを通じて
日向子が週刊誌記者としての意義を見出していくまでが描かれる。

私も ”週刊誌” というものに対してはあまり好印象を持っていなかった。
とはいっても、記事の内容によっては買って読んだりするので
あまり悪口は言えないのだが(笑)。

本書を読むと、いままで週刊誌というものに抱いていたイメージが
ちょっと変わる(ガラッと変わる、とまではいかないが)。

例えば政治家や芸能人のスキャンダル記事なんて、
フリーの記者が自分から売り込んでくる企画じゃないのか?
って思ってたんだが、意外にそういう例は少なくて、
ほとんどの記事は正社員の記者によるものだ、とかね。
その理由も書いてあるけど、なるほどと納得できるもの。

時の政権だろうが大企業だろうが、
相手によって忖度しない、ということも書いてある。

 まあ実際には有形無形での圧力はあるだろうし
 それに負けてしまう媒体もあるんだろうなあとは思うが。

鵜の目鷹の目で人の醜聞や欠点をつつき回すような記事でも
それを書いている人は、意外と普通の人だったりする、らしいし。

職業に貴賎はない、という。
どんな仕事であっても、世の中で求められていることならば
それは意義のあるもののはず。

実際、毎週数十万部単位で売れるのであるから、
求めている人は決して少なくない。

そういうものを産み出しているのだから、
週刊誌をつくっている人たちはそれなりの自負と矜持を持っている。

もっとも、ものごとは結果がすべて。
そうやってできあがったものがどう評価されるかは
また別の話になるんだが。


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