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もしもし、還る。 [読書・ミステリ]

もしもし、還る。 (集英社文庫)

もしもし、還る。 (集英社文庫)

  • 作者: 白河三兎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/03/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

「僕」の名は田辺志朗、大学を出て会社員をしている。

「僕」は異様な熱さで目を覚ます。そこは砂漠だった。
砂丘なんてものではなく、見渡す限り砂の海が広がっている。

そこへ突然、空から電話ボックスが降ってくる。
中に入った「僕」は、受話器を取り上げる。
電話線がつながっていそうもないのに、なぜか電話は通じる。

しかし、助けを求めてかけた119番では、
「砂漠にいる」と言っても信用してもらえない(当たり前か)。
と思ったら、謎の女性の携帯電話からかかってきたり。
彼女は海の上で、ボートに乗って漂流中だという・・・

物語は「僕」の一人語りで進行し、2つのパートが交互に語られていく。

【さらさら】と題された章では、砂漠の電話ボックスにいる「僕」が
なんとか電話を使って助けを求めようとしていく。

【ぐるぐる】と題された章では、幼少時から今までの出来事が
時間軸を前後しながら描かれていく。

職場の上司である課長との確執、
大学入学直後に知り合い、後にセックスフレンドとなる
”キリ” こと、遠藤桐子(きりこ)、
「僕」の両親、そして姉の楓(かえで)のこと。

過去の回想を綴っていく【ぐるぐる】に対して
【さらさら】の方では、発端からしてリアリティに欠けるし
その後においても幻想的な描写が目立つ。

おそらく、本書を読んだ人は途中で ”ある見当” をつけるのではないか。
これは、いわゆる○○○○○に○る○○○ではないのか、と。

ならば、本書のラストでは「僕」の○○が描かれるのではないか、と。

そういう展開を予想しながら読んでいくと、
俄然サスペンスが増してくのだが・・・

その予想が当たるか外れるかは書かないが、
【ぐるぐる】の終盤では、大きな ”事件” が起こる。

その事件の真相も含めて、【さらさら】【ぐるぐる】双方で
蒔かれてきた伏線が回収されて、最後に物語の全体像が明らかになる。

このあたりはミステリとしてもよくできているのだけど
ラストの扱いがねぇ・・・最後まで読者をやきもきさせるのが
この作家さんの持ち味なのかも知れないが。

登場人物の中ではダントツにキリ(桐子)さんがいい。
ちょっと変わった価値観を持つお嬢さんで
「僕」との関係もセックスのみと割り切っているものの
大学卒業後もつかず離れずの距離を保っている。
まさに「友人以上恋人未満」を地で行ってる人なんだが
そんな行動にも、原因というか理由があるのが次第に分かってくる。

キリさんには幸せになってほしいんだけど、無理なんですかねぇ・・・?

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