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天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和 [読書・ミステリ]

天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和 (宝島社文庫)

天才詐欺師・夏目恭輔の善行日和 (宝島社文庫)

  • 作者: 里見 蘭
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2018/04/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

以前記事に書いたアンソロジー『泣ける!ミステリー 父と子の物語』。
この中の一編「神様のペテン師」を第一話とする連作短編集。

かつて天才詐欺師として謳われたが、現在休業中の夏目恭輔。
その彼の前に、ある日突然一人の女子中学生が現れる。
彼女の名は藤川小春。かつて恭輔の恋人だった藤川みひろの忘れ形見だ。

母の残した「もし本当に困ったことがあったら頼りなさい」
という言葉に従い、小春は父親である恭輔に助けを求めにきたのだった。

・・・というわけで、突如として
思春期の娘の父親となってしまった恭輔は
小春のために ”現役” に復帰することになる。

「第一話 神様のペテン師」
恭輔と別れたみひろは修道院に入って尼となり、
小春はそこに併設されている児童養護施設で育った。
しかし修道院の建つ土地の地主・脇坂は、
その土地にマンションを建設して高値転売をしようと考え、
修道院に立ち退きを迫ってきていた。
”娘” の危機に立ち上がった恭輔は、脇坂の ”野望” を阻止すべく
一計を案じて仲間を集め始める・・・

「第二話 ユーチューバーが多すぎる」
工務店を営む大館夫妻には子供がいなかったため、
小春のいる養護施設から翼という男の子を引き取り、養子とした。
大館は翼のために発売予定の人気ゲーム機をいち早くゲットすべく、
発売日の朝に抽選券配布の列に並んだのだが、結果は外れ。
しかしその抽選に不正があったのではとの疑いを持った大館は、
小春を通じて恭輔に相談を持ち込んできた。
販売店の内情を調べ始めた恭輔は、事態の背後に
悪質なユーチューバー・グループが介在していることに気付くが・・・

「第三話 回転寿司とルーレット」
小春と同じ養護施設で育った竹村めぐみは現在26歳。
施設を卒園した後は就職して一人暮らしをしていた。
あるとき、加宮成道(かみや・なるみち)という男性と知り合うが
彼は結婚詐欺師で、なけなしの貯金までだまし取られてしまった。
恭輔は、加宮がいままでの詐欺で多くの女性からかき集めた金を
ごっそり吐き出させるべく、新たな仲間2人に声をかけて計画を立てる。

「第四話 怨霊と棲む男」
小春の同級生、山岡奈菜の祖母がインチキ祈祷師に傾倒し、
お布施と称して多額の金銭を欺し取られていた。
祈祷師の名は千里塚龍子(せんりづか・りゅうこ)。
小春の頼みで彼女の身辺を調査した恭輔は、
その背後に橋爪修吉という黒幕がいることを知る。
橋爪はかつて結婚詐欺で捕まって刑務所に入っていたことがあり、
恭輔は、彼こそが小春の真の父親ではないかと密かに疑っていた・・・

詐欺師という仕事にポリシーをもっている恭輔。
彼と、彼が率いる ”チーム夏目” のメンバーがとにかく魅力的。

恭輔の相棒となる蔵本はギャグ要員だが、詐欺師としての ”腕” は確か。
お洒落なイケメンで落とせない女はいない小次郎、
強力無双な巨漢で威圧感たっぷりの石動(いするぎ)、
ハリウッド顔負けのSFX系特殊技能を持つクァンとマイケル、
全くの別人のように変身してみせる変装の達人・”姫”、
ネット系の ”仕込み” を担当する ”ぼすとろるん”・・・

彼らが、市井の庶民を食いものにする悪党どもに鉄槌を下すさまを、
ユーモアたっぷりに描き出す痛快コン・ゲーム小説だ。

小春も折目正しい正統派の美少女で、こんなお嬢さんから頼まれたら
どんなお父さんだってイヤとは言えないでしょう。

第四話のラスト近くの小春さんの台詞は、
某有名アニメ映画のオマージュかな。
こんなこと言われたら、世のお父さんたちは泣いてしまうよ・・・
それに応える恭輔も、最高にカッコいい。

現在のところ、これ1巻しか出てないのだけど
できれば続きが読みたいなぁ。続編熱烈希望。


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