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黄金餅殺人事件 昭和稲荷町らくご探偵 [読書・ミステリ]

黄金餅殺人事件-昭和稲荷町らくご探偵 (中公文庫)

黄金餅殺人事件-昭和稲荷町らくご探偵 (中公文庫)

  • 作者: 愛川 晶
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/10/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

前作『高座のホームズ 昭和稲荷町らくご探偵』に続き、
昭和の落語界の重鎮にして名人、八代目林家正蔵が探偵役を務める
ミステリ・シリーズ、その第2巻。

『第一話 黄金餅「殺人」事件』
噺家・桃寿亭龍喜(とうじゅてい・りゅうき)は33歳の二つ目。
弟弟子の龍丈(りゅうじょう)には人気・実力の面で
水をあけられてしまったが、2か月後には真打ち昇進が決まっていた。
そんなとき、師匠の龍鶴(りゅうかく)からお使い物を頼まれる。
彼の父の形見であった聖観音像を、久田良一に届けること。
龍鶴の兄・良一は菓子製造業を営む久田商会の社長で、
上野のビルに事務所兼自宅を構えていた。
しかし事務所の行く途中、龍喜は観音像を紛失してしまう。
詫びを入れようと久田商会を訪れた龍喜は、そこで良一の死体を発見する。
喉は切り裂かれ、右手には何か金色の物体を握り、
遺体の傍らにあった餅にも、金色の物体が埋め込まれていた・・・

『第二話 広い世間に』
龍喜は浅草亭東橋(せんそうてい・とうきょう)師匠に呼び出され、
真打ち披露に自分も加えて欲しいと頼まれる。
しかしその場にやくざ風の男が現れ、東橋に襲いかかった。
間一髪、東橋を救ったのは26年前に行方不明になった
浅草亭小馬道(こばどう)だった。彼は龍鶴師匠の息子でもあった。
小馬道は ”東橋” の名跡を弟弟子(いまの東橋)と争い、
それに敗れたのを苦にして、日本海で投身自殺したものと思われていた。
小馬道の生存は話題を呼び、神楽坂倶楽部の席亭は
嫌がる彼を無理矢理高座に上げてしまうが、
長いブランクを感じさせずに堂々と務めてみせるのだった。
一方、龍喜の元に神楽坂署の刑事が現れる。
東橋襲撃事件について不審な点があるらしい・・・

ミステリではあるけれど、作中にはさまざまな落語が登場する。
現代の人間が高座で演じる噺もあれば、過去に語られた噺もある。
当然ながら事件解決のヒントになる噺も。
また落語というものは、語る人間が異なれば
噺の内容も微妙に(時には大幅に)異なってくるものなのだそうで、
そのあたりも伏線として効いてきたりする。

とは言っても、古典落語に詳しくない人間(私がそうだ)でも、
ミステリとして読むことに全く支障は無い。
必要な情報は作中にしっかり書かれているし。

前作と同じく、本書にも「プロローグ」「幕間」「エピローグ」がある。
現在(2010年代)の人間の思い出話という形をとって、
昭和50年代(1980年前後)という過去への導入部となっているのだが、
ラストにもミステリ的な仕掛けが仕込んである。
これもうまくはまってる。流石です。


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