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シチュエーションパズルの攻防 [読書・ミステリ]

シチュエーションパズルの攻防 :サンゴ先生シリーズ (創元推理文庫)

シチュエーションパズルの攻防 :サンゴ先生シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 竹内 真
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/01/18
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

一浪の末に大学に合格した ”僕” は、入学と同時に
叔母が ”ミーコママ” として経営する
銀座のバー『ミューズ』でアルバイトをすることになった。

 考えてみたら、”銀座のバー” って単語はよく聞くけど
 私自身は一回も行ったことがないのに今さらながら気がついた。
 自宅も職場も片田舎の平サラリーマンにとっては ”異世界” だよなぁ。
 たまに都会へ酒飲みに行っても、せいぜいビアガーデンだもんなぁ。

『ミューズ』は有名な作家や出版社の編集者などが集う
いわゆる「文壇バー」だった。

そのなかでも、常連の辻堂珊瑚朗(さんごろう)は
酒とタバコと女が大好きな大御所ミステリー作家。
バーの中を飛び交う話題の中に謎を見つけた珊瑚朗先生は
素晴らしい推理力で真相を解き明かしてみせる。

というわけで、珊瑚朗先生の安楽椅子探偵ぶりが描かれる
日常の謎系ミステリー5編を収録した短編集。

「クロロホルムの厩火事」
『ミューズ』のホステスであるミリは、珊瑚朗先生のために
切れたタバコを買いに外出するが、そこで若い女が
口元に布を押し当てられて、ぐったりしたところを
車で連れ去られる光景を目撃する。
事件の可能性に怯えるホステスたちを安心させようと
自信たっぷりに ”解説” を加える珊瑚朗先生なのだが・・・

「シチュエーションパズルの攻防」
『ミューズ』のFAXが謎の文章を受信する。
そこに書かれていたのは ”シチュエーションパズル” と呼ばれる
思考パズルの問題だった。
 ここにその内容を書こうと思ったのだが
 wikiで ”シチュエーションパズル” を検索したら、
 そこに載っている「例題」と全く同じものだった。
 興味がある方は検索してください。
この問題の解釈を巡って、珊瑚朗先生と、そのライバル作家である
藤沢先生との間に議論が巻き起こるのだが
最大の謎は、誰が何の目的で『ミューズ』にFAXを送りつけたか、だ。

「ダブルヘッダーの伝説」
”僕” は、サークルの合宿で宿泊したペンションで見つけた
小説誌のバックナンバーの中に、珊瑚朗先生の記事を見つける。
今を去ること十数年前、珊瑚朗先生と藤沢先生の両方を手玉に取った
伝説的なマダムが銀座にいたらしい。
タイトルにある ”ダブルヘッダー” とは、
プロ野球用語で1日に2試合行うことを指すが、
ここではもちろん違う意味で用いられている。
詳しくは書かないが、まあそんな意味だ(おいおい)。
”僕” は、その ”伝説のマダム” が叔母のミーコではないかと疑い、
彼女と珊瑚朗先生に探りを入れるのだが・・・

「クリスマスカードの舞台裏」
実家の納戸を大掃除していた ”僕” は、
珊瑚朗先生が叔母(ミーコ)宛に出した絵はがきを見つける。
どんな経緯で出されたものなのか叔母に聞いたところ、
二人が出合ったきっかけとなった盗難事件が語られる。
本書の中ではいちばんミステリらしい作品。

「アームチェアの極意」
新人賞の受賞で作家デビューした甲町(こうまち)。
次作で「安楽椅子探偵もの」に挑戦することになったのだが
今までに書いたことのないジャンルに悩んでいた。
そこで『ミューズ』を訪れて、新人賞の選考委員の一人だった
珊瑚朗先生に相談してみるのだが・・・

たいていのミステリは、探偵役が真相を語ればそれで終わりなのだが
珊瑚朗先生の場合はちょっと異なる。
彼が推理を示し、解決したかと思われた後に「実は・・・」と
新たな解決が現れてきたりする。

では、珊瑚朗先生は無能なのかというと、そうとも言い切れない。
しっかり真相に到達しているのだが
謎解きの場が『ミューズ』なので、ホステスたちのウケを狙って
あえて異なる説を開陳しているようでもあるのだ。
このあたり、なかなか底が知れない御仁である。

本書のタイトルにもなっている ”シチュエーションパズル” だが、
wikiを見てたらいろんなことが書いてある。
なかでも、1960年代後半から70年代にかけて大ベストセラーとなった
クイズ本『頭の体操』(多湖輝)シリーズにも
”シチュエーションパズル” がかなり含まれていることも驚きだったし
このシリーズが最終的に23冊も刊行されてたのもびっくりだった。

私も初期の6冊位までは買った覚えがあるなぁ。
とっても面白いシリーズだったよ。
ミステリ好きならきっと楽しめると思うので、未読の方はぜひ。


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