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秋霧 [読書・冒険/サスペンス]

秋霧 (祥伝社文庫)

秋霧 (祥伝社文庫)

  • 作者: 大倉崇裕
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★

上尾誠三は、町工場を一代で世界的大企業に育て上げた伝説的な経営者。
しかし末期癌に冒され余命幾ばくも無い状態にあった。

前作『夏雷(からい)』の主人公で、月島で ”便利屋” を営む倉持は
その上尾から依頼を受ける。内容は八ヶ岳連峰にある天狗岳に登り、
その登山下山の全行程をビデオ撮影してくること。

引き受けた倉持はさっそく天狗岳に登るが、
何者かが彼の行動を追っていることに気づく。

一方、元自衛隊特殊部隊員の深江は山中で隠遁生活をしていたが、
警視庁の儀籐(ぎとう)と名乗る男から接触を受ける。

”霧”(フォッグ)と呼ばれる凄腕の殺し屋が、国内で活動しているという。
深江は儀籐から ”霧” の追跡を強要される。

本作で倉持とともにダブル主役を務める深江は
同じ作者の山岳サスペンス『凍雨』の主人公だった人。

 作者の他のシリーズ間でも、キャラのクロスオーバーが
 しばしば描かれているので、この二人も
 福家警部補や薄圭子や白戸修くんと同じ世界の住人なのかな。
 いつの日か「オールスター・キャスト」の作品が書かれると
 いいなあ・・・なんて思ってるが、
 この二人が加わったらまたひとつスケールが大きくなりそう。

下山して上尾に報告を終えた倉持も、”霧” の追跡を開始した深江も、
それぞれ何者かの襲撃を受ける。

上尾が倉持に与えた依頼の、真の目的は何か。
そして ”霧” の、次の標的は誰なのか。

主役級のキャラ二人が共演するので
文庫本の惹句には ”傑作バディ・サスペンス” とあるけど
これはちょっと言いすぎかなぁ。
中盤過ぎまでこの二人はほとんど別行動で、
組んで行動するのは終盤になってからだもの。

とは言っても、それぞれ長編で主役を張るくらいだから、
単独行動のパートも十分面白いんだけどね。

腕っ節のほうはからきしで、もっぱら ”痛めつけられ役(笑)” の倉持と
ゴルゴ13なみにタフで、圧倒的な戦闘力をもつ深江と
二人の ”活躍” も対照的。
『凍雨』の後日談もちょっぴり語られるのも嬉しいところ。

”敵” となる勢力も複数登場するし、
”いったい何が起こっているのか” がなかなか明らかにされずに
ストーリーは混迷するが、最後にはすべて ”謎解き” される。
このあたりは、さすがミステリが本業の人だけある。

さてこの二人、これからはコンビで登場するのかしら。
そうなれば惹句どおり、”傑作バディ・サスペンス” になりそうだが。


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