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宇宙軍士官学校 -攻勢偵察部隊- 5 [読書・SF]

宇宙軍士官学校―攻勢偵察部隊― 5 (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―攻勢偵察部隊― 5 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/10/17
  • メディア: 文庫

大河スペースオペラ・シリーズ、第2部の5巻目。

前巻までの救出作戦を終え、有坂恵一率いる特殊長距離戦闘救難艦隊は
地球人を指導する上級種族ケイローンの母星シュリシュクへ帰還した、。

そこでは途上種族に対する評価試験が実施されていた。
AI相手の戦闘シミュレーションなのだが、そこには
恵一たちの後輩である地球の宇宙軍士官学校生の艦隊も参加していた。

士官学校生艦隊の指揮官であるウィリアムの戦績は5勝1敗。
その1敗も時間切れによるもので、限りなく勝利に近いものだった。

それを恵一に報告するときの、ウィリアムとその恋人エミリーの
掛け合いがまた絶品。この二人、ホントに好きだなあ。
最後まで生き残ってほしいものだ。

士官学校生艦隊は、さらに最終ステージに進むが、
これもウィリアムの機転で突破に成功。
いやあ生真面目なだけのキャラかと思ってたら
いつの間にかはったりをかますことまで覚えていて、たいしたもの。

そしていよいよ〈粛正者〉との決戦のために
ウィリアムたち士官学校生艦隊は新たな訓練戦闘に臨む。
その相手は、なんと恵一が率いる艦隊だった・・・

いつも「よくできてるスペースオペラだなぁ」と思っているんだけど
今回感じたのは「エスカレーションの案配」が絶妙だということ。

スペオペに限らず、バトルものでは話が進むにつれて
次第にいろんな要素でエスカレーションが進行していく。

本シリーズで言えば、舞台は太陽系から始まって天の川銀河、
そして第2部ではアンドロメダ銀河まで広がった。

規模もそうだ。恵一は地球人のみならず、
他の異星人も加わった連合艦隊の指揮官へと上り詰めていく。
位が上がれば指揮する艦艇数も当然増える。

そして戦術。太陽系防衛戦の頃は超転移航法(いわゆるワープ)にも
制限があって、大規模艦隊の移動には亜空間ゲートが使われていた。
だからゲートの攻防も戦略的に大事な要素だった。

この巻に至り、上級種族から ”高次推進システム” の技術開示があり、
超転移航法も抜本的に変更になり、その結果として
戦闘に関わる自由度が増している。

 まあ分かりやすく言ってしまえば『ヤマト』方式のワープから
 『スター・トレック』方式のワープへの転換なんだが。

それによって、作戦行動の自由度も大幅にアップするんだが
「何でもあり」にしてしまうとハチャメチャになってしまう。
しかし作者はその手前できっちりと収めて、
うまくストーリーに落とし込んでいる。

これができるのは、ストーリーの終着点までの構成が
既にできあがっているからだろう。

〈銀河文明評議会〉は天の川銀河とアンドロメダ銀河の中間点に
膨大な数の巨大要塞を建造中で、そこが〈粛正者〉との決戦場になる。

今回のウイリアムや恵一たちの訓練も、そこでの戦闘を想定したもので
最終決戦がそう遠くないことを伺わせる。

いままで順調に刊行されてきたんだけど
この巻が出たのが2019年の10月。
今までの間隔と比べるとちょっと間が開いてるかな。
次巻が出るのはいつなんだろう。


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