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宇宙軍士官学校 -幕間- [読書・SF]


宇宙軍士官学校―幕間(インターミッション)― (ハヤカワ文庫JA)

宇宙軍士官学校―幕間(インターミッション)― (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 鷹見 一幸
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/03/31
  • メディア: 文庫
評価:★★★

大河スペースオペラ「宇宙軍士官学校」シリーズ、その番外編。
5つの短編が収録されている。

「中の人」
第一シリーズ終盤の太陽系防衛戦のさなか、増援艦隊の到着を受けて
有坂恵一は自らの指揮する防衛艦隊に48時間の休暇を命じる。
恵一自身も地球に降り、つかのまの安らぎの時間を得る。
赤城の温泉につかり、地元の老人たちと触れあう。
恵一の正体を知らない老人たちは
防衛戦争についても好き勝手なことを言うのだが・・・
しかし恵一というのは珍しいキャラだね。
真面目で素直で毒舌抜きのヤン・ウェンリー、ってところか。
「それじゃヤンじゃない」って意見には同意する(笑)。

「ホームメイド」
「中の人」と同じく、48時間の休暇をもらった
機動戦闘艇パイロットのウィリアムは、故郷である
北米自治区カンザス州にやってくる。
歓迎行事に沸く地元民に迎えられる中、そこへ
アイルランドへ向かったはずのパイロット仲間・エミリーがやってくる。
生真面目なウィリアムとツンデレ爆弾娘のエミリー嬢、
私、このカップル大好きなんだなあ。
最後まで生き残ってほしいよ、ほんと。

「オールド・ロケットマン」
アロイスとのファースト・コンタクトを経て
”銀河文明評議会” の頂点に位置する〈至高者〉(オーバーロード)の
精神介入を受けた人類は、国家を解消して統一政府を樹立したが
その動きに反抗する者たちとの間に「統合戦争」が勃発した。
機動戦闘艇の初代パイロットとなったウィンザー少尉はその戦いで
英雄として名を挙げ、15年後の今は中佐へと昇進して
地球連邦宇宙軍の駆逐艦艦長として太陽系防衛戦に参加していた。
〈粛正者〉の放った13万発もの恒星反応弾は、
何重にも張り巡らされた迎撃網で撃ち減らされてきたが、
いまだ100発以上の残弾が太陽に向かって飛行している。
ウィンザーたちの艦隊は最終防衛ラインであり、
彼らの後ろにはもう恒星反応弾を阻むものは存在しない・・・
ひとりの軍人の ”最初の戦い” と ”最後の戦い” が描かれる。
うーん、浪花節なんだよねぇ。そして、わかっちゃいるんだが
泣いてしまうんだよねぇ。昭和の人間だから。

「遅れてきたノア」
〈粛正者〉の太陽系侵攻によって引き起こされた
太陽活動の一時的な擾乱により、地球の生態系は大打撃を受けた。
地下シェルターやスペースコロニーに待避させた一部の生物を除き、
地球上の動植物・細菌類は絶滅したと思われた。
環境が激変した地上を調査し、生き残った生物がいれば回収する
任務を負った調査員、平泉乃愛(ひらいずみ・のあ)の日常を描く。
壮大な宇宙戦争も描ければ、たった一匹のカエルの生存に
涙するお嬢さんも描ける。たいしたものだ。

「日陰者の宴」
”銀河文明評議会”において、地球人の上位種族となるケイローン人。
そのケイローンの母星で、会議が行われる。
年齢・性別・階級・職種・経歴すべてがばらばらの30人が集められて。
共通点はただ一つ、”空気が読めない” こと。
要するに何者にも忖度せず、言いたいことは歯に衣着せずに言い放つ、
そういう面々ばかり、ということだ。
そして議題は「粛正者支配宙域への探査と侵攻」。
普段の生活では、なにかと ”黙らせられる” ことの多い者たちが、
ここぞとばかりに熱く語り始める・・・
第二部への橋渡しというか前振りみたいな短編なのだが
彼らの話すアイデアがだんだん過激なものになってきて、
ひょっとして〈粛正者〉は、とんでもない奴らに
けんかを売ってるんじゃなかろうか、とも思ったが、
そういう連中だからこそ滅ぼそうとしている、ってことなんだろう。


巻末にはボーナス特典として
「宇宙軍士官学校 大辞典」なるものがついている。
なんと40ページくらいもあるので結構読みでがある。

さて、第二部は来月あたりから読み始める予定。

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