SSブログ

巴里マカロンの謎 [読書・ミステリ]


巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: 文庫
評価:★★★

なんと11年ぶりのシリーズ新刊なのだそうな。

穏やかで平和な小市民的な生活を目指す高校生、
小鳩常悟朗(こばと・じょうごろう)と小佐内(おさない)ゆき、
二人の学校生活の中で起こる事件を描いた日常の謎ミステリ。

「巴里(パリ)マカロンの謎」
有名パティシエ・古城春臣(こぎ・はるおみ)が、名古屋に店を開いた。
小佐内さんと常悟朗はそこへマカロンを食べに行く。
ドリンクとのセットで選べるマカロンは3種類まで。
二人が3つのマカロンの載った皿を前にしたとき、
店の向かいにあるビルの大時計が盛大な音楽を奏で始める。
思わず大時計に目を向けた二人が再び皿に視線を戻すと、
小佐内さんの皿のマカロンが3つから4つに増えていた。
誰が、何のために余計なマカロンを置いたのか・・・
ミステリ的なネタよりも、小佐内さんの
スイーツへのこだわりに驚かされる一編。

「紐育(ニューヨーク)チーズケーキの謎」
マカロン事件で知り合った古城春臣の娘・秋桜(こすもす)が通う
私立中学校の文化祭へやってきた小佐内さんと常悟朗。
秋桜がつくるチーズケーキを味わった二人は別行動で文化祭を回るが
校庭で焚かれていたキャンプファイヤーの側にいた小佐内さんが
走ってきた男子中学生に突き飛ばされてしまい、さらに
その男子を追ってきた一団に連れ去られてしまう。
どうやら、男子生徒が持っていた1枚のCDの行方を追っているらしい。
彼女を取り戻すため、CDの在処を推理する常悟朗だが・・・
短時間にあれだけの ”工作” をした小佐内さんの身体能力が驚異的。

「伯林(ベルリン)あげぱんの謎」
常悟朗たちの通う高校の近所に新しいパン屋が開店した。
ドイツでは、あげぱんの中にマスタード入りのものを仕込んでおいて
誰がそれに当たるかを遊ぶゲームがあるのだという。
高校の新聞部がそのパン屋を取材に訪れ、
その際に試作のあげぱん(ジャム入り)をもらってきた。
しかもその中の一つにはマスタードが仕込んである。
新聞部で、ドイツのあげぱんゲームを行うためだ。
ところが、あげぱんを食べた部員4人が4人とも
「自分のあげぱんにはマスタードは入っていなかった」と主張する。
たまたま新聞部の部室にやってきた常悟朗がその真相を推理するのだが。
こんなシチュエーションでもミステリになるんだねぇ。
そして、こんな状況から意外な ”犯人” を指摘してみせる
常悟朗くんがまたスゴい。

「花府(フィレンツェ)シュークリームの謎」
古城秋桜が停学になった。理由は、クラスメイトが主催した
年越しパーティーの席で飲酒したためだという。
秋桜はパーティーへの出席自体を否定したが、学校宛てに
パーティー会場にいる秋桜の写真が送られてきたのだという。
写真自体は精巧に合成されたものと思われたが、
誰が秋桜を陥れようとしているのか・・・


常悟朗と小佐内さんは、”互助関係” 、つまり
一緒にいた方が何かと都合が良い関係とお互いが考えてるわけで
決してつきあってるわけではない、と
作中で常悟朗君がわざわざ断ってるんだけど、
これくらいの、つかず離れず友人以上恋人未満の距離感で
当分進んでいくのでしょう。

でもまあ、二人の高校生活はまだかなり残っているし、
作者は続きを書く予定があるみたいだから、
これからも事件は起こり続けるわけで(笑)、
そのうち、関係性も変わっていく時が描かれるんじゃないかな。

しばらく続巻が出てないなあと思ったら11年ですか。
その間、作者は「このミステリーがすごい!」で
2年連続第1位を獲得したりして、ミステリ界でのステイタスが
爆上がりしましたからねえ。昔のシリーズでも
忘れずに続きを書いてくれることに感謝しなくてはいけないですな。

nice!(3)  コメント(3) 
共通テーマ: