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灯籠 [読書・ファンタジー]


灯籠 (ハヤカワ文庫JA)

灯籠 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: うえむらちか
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/06/08
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

いちおう「ファンタジー」に分類したけど
「日常の謎系ミステリ」要素もあるし
読みようによっては「ホラー」っぽくもあるかな。
なかなか分類しにくい本です。


タイトルの “灯籠(とうろう)” とは、
お盆の時にお墓に供える飾り(盆灯籠)のこと。

表紙のイラストで女の子が手にしているものがそれで、
竹を6つに割いて色つきの和紙を貼ったものは広島県の習俗らしい。

そして、この女の子がヒロインの灯(ともり)。
幼少時に両親を交通事故で亡くしたことから
心を閉ざして孤独に育ってきた。


本書は二部構成になっている。


第一話「灯籠」は、主人公・灯の一人称で綴られていく。

8歳になった夏、盆灯籠を持って両親の墓がある山に登った灯は
その途中で、不思議な青年・正造と出会う。

彼と言葉を交わすうち、少しずつ惹かれていく灯。
その日から、二人は毎年の夏、山で逢うようになった。

正造がその場所に現れるのは、なぜか
毎年8月13日から16日までの4日間のみだった。
しかしその4日間を心の支えに、灯は孤独な日々を生きていく。

やがて灯は成長し、中学・高校へと進むが
相変わらず周囲の人に対しては心を閉ざしたままだった。
そして高校3年生の夏がやってくるが・・・


第二話「ララバイ」では、語り手が
灯の高校時代の同級生、“清水くん” へとバトンタッチされる。

高校の入学式の日に灯と知り合った清水は、以来
彼女の唯一と言ってもいい話し相手として高校生活を過ごしていく。

そして高校卒業後、東京の大学へと進み、
就職のために郷里に戻ってきた清水は
自らの生い立ちから過去を振り返り始める。

そして、いよいよ高校3年生の夏の、灯との間の出来事が
彼の視点から語られていくのだが・・・


ざっくり言ってしまうと、
孤独に生きてきた少女が、一人の青年と巡り会い、
彼のことを10年にわたり、直向きにそして一途に慕っていく話。

まあ、正造と灯の仲がどうなるのかはともかく
幸薄い灯ちゃんには、最後には幸せな日が巡ってくるといいなあ・・・
って思いながら読ませてもらった。

読んでいてまず気になるのは「正造とは何者なのか」だろう。

毎年夏、お盆の時期しか現れないなんてもう○○だろうとか
いやいや、某海外有名短編SFみたいに
○○○・○○○○○じゃないかな、とかいろいろ妄想するが
正造の正体は意外なところから判明する。

 もっとも、正体自体はあまり意外ではないが(笑)。

そして第二話に至ると、さらにいろいろなことが明らかになってくる。

高校3年生の夏の出来事に関する顛末や
清水くんの “○○○○○” にもちょっと驚かされるのだけど
何より、最後に彼の口から語られることがねえ・・・


はっきり書くと、このラストは好きではない。
この種のオチを持つ話には、時たまぶち当たるのだけど
私としてはちょっと裏切られたような気になってしまうので・・・

もちろん、叙情的でキレイな収め方だと評価する人もいるだろう。
まあ、そのへんは人それぞれだけど。

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