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謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー [読書・ミステリ]


謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)

謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー (講談社タイガ)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

本書の刊行は2017年9月。
調べてみたら “新本格ブーム” を巻き起こした
綾辻行人の「十角館の殺人」の出版が1987年9月。
たしかに副題通り「新本格30周年記念」なんだね。

大学入学あたりから次第に読書の嗜好が変わって
SF・ファンタジー、そしてサスペンスばかり読むようになってた私を
再び本格ミステリの世界へ引き戻したのが「十角館の殺人」だった。

以来30年。今でも、私の読書の半分はミステリだからね。
つくづく、綾辻行人は偉大である。


「陽奇館(仮)の密室」東川篤哉
奇術界の大御所・花巻天界が殺された。
場所は山奥にあって建設途中だった「陽奇館」。
たまたまやってきた探偵・四畳半一馬(よじょうはん・かずま)と
その助手間広大(はざま・こうだい)。
4人の容疑者を前に、密室殺人の謎解きを始める四畳半探偵だが・・・
いやあこのトリックは面白い。
殺人と○○○○を同時にやってしまうという発想がスゴい。
普通のミステリでこれをやったらきっと噴飯ものなんだろうけど
作者お得意のユーモアたっぷりの世界なら「あり」かなって思わせる。

「銀とクスノキ~青髭館殺人事件~」一肇
女子高生・楠乃季(くすのき・のき)は、
同級生・七雲恋(ななくも・れん)を殺してしまう。
場所は通称 "青髭館" と呼ばれる廃屋。
大正12年に43人もの人間が忽然と消えたと伝えられる曰く付きの建物だ。
翌日、死体処理のために青髭館を訪れた楠だが、なぜか死体は消えていて、さらに罪善葦告(ざいぜん・よしつぐ)と名乗る謎の少年が現れて・・・
この作者の作品を初めて読んだ。
ミステリというよりはホラー、心理サスペンスに近いか。
まあ分類はどうでもいいんだけど、
ただこのオチは今ひとつ好きにはなれないかなあ。

「文化会館の殺人-Dのディスパリシオン」古野まほろ
井の頭文化会館で行われた東京都高校アンサンブルコンテスト。
吉祥寺南女子高校のホルン四重奏曲の冒頭、
第一奏者の御殿山絵未(ごてんやま・えみ)が
致命的なミスをしてしまう。そのショックからか
演奏終了直後に絵未は会場から失踪し、やがて
女子高の校舎から転落したと思われる絵未の死体が発見される・・・
臨床真実士・唯花さんが登場する一編。
短編だけど、恐ろしく手が込んだ文章になっていることが
ラスト1ページでわかる。いやあたいしたもの。

「噤ヶ森(つぐみがもり)のガラス屋敷」青崎有吾
噤ヶ森と呼ばれる深い樹海の奥に建てられたガラス製の館。
外壁・内装・屋根・天井・階段、そして家具までも。
宿泊用の客室の外壁以外は透明度抜群の屋敷へやってきたのは
女実業家・佐竹を中心とした5人組。
しかし到着早々、佐竹は客室で銃殺されてしまう。
現場の窓は内側から施錠され、
ドアから出入りした人物も一人もいない密室状態だった・・・
犯人がガラス屋敷を犯行現場に選んだ理由が、
ラスト1行で明かされるんだが・・・
このオチはバカミスと紙一重だよねぇ。

「煙突館の実験的殺人」周木律
”煙突館” と呼ばれる、50mもの高さの円筒空間を持つ建物の中で
目覚めた8人の男女。そこに突如響きわたる女声のアナウンス。
これは異端分子の選別を目的とした行動実験プログラムで
これから起こる "事件" の犯人を見つけださない限り、
外へは出られないという。
そしてその翌朝、メンバーのうちの一人が
煙突上部の空間に死体となってつり下げられていた。
どこにも足がかりがない場所で、50mもの高さにまで
どうやって死体を持ち上げたのか。そしてさらに殺人は続いて・・・
本書の中では一番スケールの大きなトリックかなあ。
ラストでの主人公の扱いがちょっとかわいそうだけど。

「わたしのミステリーパレス」澤村伊智
会社の同僚・匡(ただし)とデートの約束をした美紀。
しかし約束の時間に現れたのは匡ではなく、
彼の友人と称する三原という男だった。
三原によると匡は交通事故にあって入院したという・・・
そして、ウェブライターの殿田は、連載ものの取材のために
近所にある "謎の建物" へと赴く。
その洋館はいかにもつくりものっぽく、
玄関の上には「MYSTERY PALACE」と書かれてあった・・・
二つの物語が交互に描かれ、最終的に一つに結びつくんだが
「WHAT(何が起こっているのか)」そして「WHY(なぜ)」がメインの謎。
いやはや一人の人間の情念というか執念というのは凄まじい。
これも館ものミステリではあるのだろうなぁ。
終わってみれば、怪奇趣味を抜いた江戸川乱歩みたいな話、
って書いてもわからない人は多そう(笑)。

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