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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第五章 煉獄篇」感想・・・のようなもの その5 [アニメーション]


※ネタバレ全開です! 未見の方はご注意ください。


▼第17話「土星沖海戦・波動砲艦隊集結せよ!」(前編)


■防衛軍司令部

太陽系各所でガトランティスとの小競り合いが。
大規模な侵攻の前触れと思われる。

司令部に詰めるのは藤堂、芹沢、そして第1話で二人の背後にいた面々。
ガミラス人もいる。いわゆる軍産複合体の面々ですかね。

白色彗星は木星に匹敵する大きさ。
それがワープしているとの報告に驚く一同。

ガトランティスの目的は破壊と殺戮。
覇権の拡大という発想もない。
よって、彼らとの間に話し合いの余地はない。

第11番惑星の生存者たちは月面に隔離されている模様。
蘇生体が混じっている心配から? スパイの存在を警戒して?
ガミラスの少女イリィの姿も。

時間断層工廠もフル稼働中とのこと。


■工廠の製造能力

今回の話で明らかになるけど、想像以上に膨大な数の地球艦隊が出現する。
今までどこに隠してあったのでしょうかね?

 あの艦隊、100隻じゃきかないよねえ、きっと。

そして、画面に登場した工廠一つであれだけの数が賄えたのかちょっと疑問。
(まあ、あの工廠の製造能力は分からないのだけど)
ひょっとして、同じものが時間断層内にたくさん建造してあったりする?
(時間断層の “広さ” は分からないからねえ)
もっといえば、”反重力特異点” は一カ所ではなくて、
地球上のあちこちにあったりして。


■地球艦隊集結

月軌道上には波動砲艦隊が集結。
藤堂のアップが映る。何を考えているのか。
時間断層の中にいる娘さん(?)のことを考えているのか。


■時間断層内

時間断層制御艦「LABORATORY PROMETHEUS」登場。

地球に残ったヤマトクルーも久々の登場。

桐生「CR増幅システム、通電を確認」
山崎「了解、波動炉心の増幅装置とセットで艤装する」

彼の背後には「CRS3」の表示が。
CRSってコスモリバースシステムのことですか?
公式サイトには、ヤマトから撤去されたCRSは
こちら(「波動実験艦 銀河」)に移設されたとありますが。

新見「人類生存の・・・要(かなめ)」

「なんとしても完成を・・・奴らが来る前に」
呟くのは新キャラの藤堂早紀さん。
建造中のフネ(「銀河」)の艦長さんだそうで。

「銀河」の出番は次章のようですね。
CRSが “人類生存” にどう関わってくるのかも、
そこで明らかになるのでしょう。

 物語も終盤にさしかかってきたのに、また新しい伏線が現れるとは。
 まあ、先の読めない展開は大歓迎ですが。


■地球へ向かうヤマト

帰路を急ぐため、ワープを繰り返すヤマト。
1日3回が限度のワープを5回行っているとのこと。

 旧作第1作では「1日2回の定時ワープ」をしてたことを思い出したよ。

地球からのデータ通信を受け取れるところまで来た。
それには、クルーの家族からの私信も含まれているらしい。

おそらくその中には真琴から加藤へ宛てたものもあって・・・
それが18話の加藤に繋がるわけだね。


■独房のキーマン

任務とはいえ、一時的にはヤマトを裏切り
クルー(古代)を撃ったのだから・・・かな。
キーマンなりのけじめなのでしょう。

高頻度のワープは傷に障るようで。隣の房の透子が声をかける。

「怪我人には酷ね。ワープの連続は」

しかし、拘束された者同士がこんなに簡単に
言葉を交わすことができるのはマズくないですか?

「俺は、裏切り者だ」
「あなたが裏切ったのはデスラーの方でしょ。
 なぜ一緒に行かなかったの。デスラーのことなら知ってる。
 あの男には人を人と思わない冷たい強さがあった。
 あなたのように。必要なら自分でも他人でも容赦なく殺せる強さ。
 わたし、そういうあなたが」

愛の告白・・・ではないでしょうねえ。
ガトランティス人と同質の ”冷酷な強さ” があると見込んでたのか。

「あのとき、母親の声を聞いた。
 もう何年も、夢に見ることもなかったのに。
 でも、そこにいたのは母親ではなくヤマトの山本玲だった」
「がっかりした?」
「いや。わけもなく、嬉しかった。
 これがテレサの言う縁というものかと」
「縁?」
「人と人との結びつきをそう言うらしい。
 絆、愛、言い方は様々だが、俺はこのフネでそれを見つけた気がする」

独房の外でそれを聞いていた山本。
表情は見えませんが、仕草が嬉しさを示してますね。

この二人、最後はどうなるのでしょうね。
二人そろってお亡くなりになるか、
どちらかがどちらかを庇ってお亡くなりになるか、かな?(おいおい)

 いやあ、ハッピーに終わってほしいのは山々なんですが
 なにせ “彗星帝国編” ですからねえ。
 旧作では一番戦死者が多かったわけで、この二人も予断を許しません。

「如何にも人間らしい、無責任で身勝手な言い草ね。
 その愛が人間の不幸の始まりなのに」

透子さんも頑なに “愛” を認めないんですね。


■月面のサナトリウム

病に苦しむ翼くん。かなり症状が深刻な様子。

「翼、父さんね、ヤマトのお仕事、もうすぐ終わるって。
 帰ってくるよ。肩車してもらいな、
 そんで、『おおきくなったな』って驚かせてやれ・・・」

泣き崩れる真琴。
こういうシーンは心が痛い。


■加藤

一方、ヤマト艦内のジムで汗を流す父。
「まだ2歳なんだよ・・・頼むよ・・・」
それを見つめる斉藤。これも伏線か。


■白色彗星

ズォーダーとガイレーンは、新たなゴーランド誕生の場に。
ノルも戦死したため、後継クローンを緊急 “出荷”。

 “出荷”、ですか・・・

先代ゴーランドのザイゼンが養育担当に。
さしずめ祖父か曾祖父にあたる役回り?

「なぜ笑う?」
「は?」
「機械的な作業に過ぎんのにあの者たちはなぜ笑みを浮かべるのだ」
「そ、それは・・・わかりません。
 ただ、製造直後の生体を見るとなぜかそうなってしまうのです。
 時には訳もなく涙が・・・」

捨て去ったはずの “親子の情愛” がガトランティスには残っている。

「テレザート星がまた隠れたとか。
 地球はテレサがコスモウェーブを送った先。
 だが、テレザートが消えたとなると」
「我々からは見えなくなったというだけだ。
 テレサは見ている。地球侵攻は予定通り行う
 そのためにも・・・」

二人が進む空間には、大戦艦(カラクルム級)が
謎の結晶に包まれてにょきにょきと生えている。
ここはガイゼンガン兵器群の製造工廠なのか。

「新たな白銀の巫女。ご要望通りに」

「サーベラー殿は我らガトランティスとは違う。
 ガトランティスを作りしゼムリア人。その純粋なコピー」

また新しい名前が出てきましたねえ。
《ゼムリア人》とはどんな種族だったのか。

「我らのようなクローンと違って生育に長い時間をかける必要もない。
 実に効率的だが」
「一個の人間の肉体と精神を再生するには
 これだけの記憶装置が必要になる。
 白銀の巫女。最後の人間でなければ許されぬ贅沢です」
「要望通り、と言ったな」
「はい、記憶の制限の引き上げに加え」
「情動の抑制、制御システムとの同調に問題はなかろうな」
「そこは万全に」

新たなサーベラーに近づき、顔を見つめる。
ズォーダーを見返すのは虚ろな眼差し。

「人形か・・」
「これでもう、ヤマトにとらわれたサーベラー殿と
 共鳴現象が起こることはありますまい」
「苦しむことも・・・」

サーベラーが ”もう苦しまない“ ことを知ったときの
ズォーダーの口調が、なにやら穏やかというかほっとしたような。
それは彼女への “思いやり” ではないのですか? 大帝陛下。


■デスラー艦隊

バレルの演説を見つめるデスラー。

ガミラスの植民地政策が民主化により劇的な変化を遂げつつあること、
しかし未だに、独裁体制への回帰を望む者たちが存在していること、
そしてガミラス国家警備警察が彼らを一斉摘発したこと。

ギムレーも拘束。「このままではガミラスは滅ぶ!」
捨て台詞ではあるのだが、一面の真実でもあったりする。

そこへミル君が登場。なにやら自信にあふれた表情で。

「大きな問題から目を背けてまずは民主化。
 もはやガミラスにあなたが返り咲く道は閉ざされた。
 その気があるなら、我々がデスラー総統の復権に
 協力させて頂いてもよい。条件次第ですが」
「貴様!」タランが激高するが
「ガトランティスの傀儡に成り下がるつもりはないよ」
「しかし滅び行くガミラスは救いたい。
 あなたは現実的な人間だ。甥御さんとは違う」
「!? 何者だ? 貴様」

 呼び名が “ミル君” ではなくなったことに注目ですね。
 そのミル君、不気味に笑って

「条件を伝える。ヤマトを倒せ」

このときのミル君は、ズォーダー大帝と
“ツーカーの仲”(死語?) になっていたのでしょう。


■トランジット波動砲

一方、ヤマト艦内では “トランジット波動砲” という聞き慣れない単語が。

 transitは「通過,通行」「(空港などでの)乗り継ぎ」
 「移り変わり,変遷,変化」とかの意味があるらしい。

 これに似た単語で『ヤマト復活編』に出てきたのは
 “トランジッション波動砲”。こちらの transition の意味は
 「移り変わり、移行、変遷、変化、過渡期、変遷期、変わり目」
 ちなみに化学用語の「遷移元素」は transition element。

真田「反波動格子をブースターにして波動砲に絡めるのです」
島「取り除けないものなら、燃やし尽くそうってことか」

一度しか使えないが解放されるエネルギーは飛躍的に増大するとのこと。
その量は何乗倍にも達するらしい。

 二乗倍? 三乗倍? n乗倍?
 よくわかりませんが 要するに桁違いということでしょう。
 ということは最低でも10~100倍以上かな。

島「危険はないんですか?」
真田「ある」

 まあ、必殺武器というのはだいたいそういうもの(笑)です。

「その6」へ続く

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第五章 煉獄篇」感想・・・のようなもの その4 [アニメーション]


※ネタバレ全開です! 未見の方はご注意ください。


▼第16話「さらばテレサよ!二人のデスラーに花束を」(後編)


■アベルト&ランハルト 4

「総統・・・」
「面映ゆいな。その肩書きはおまえが求めていたもののはず」

 前章の「ぞっとしませんね」に続いて「面映ゆい」。
 またまた辞書で調べてしまったよ。
 「きまりが悪い」「照れ臭い」の意だそうで。

「テレサがここから連れ出せるような存在なら
 裏切りを疑わねばならんところだが・・・」
「あなたこそ、お一人で何を」
「たぶん、おまえと同じだ」

デスラーでも、自分の進むべき道に迷いを覚えることはあるのか?

「誰にでも心の支えにするものがある。
 己の力だけを頼りに生きてきたものなら、特に」
「だが、私はその支えに・・・」

イスカンダルを威嚇してコスモリバースを奪うことなく
外宇宙へと移住先を探してきた。
それは ”彼女” の平穏を保つためでもあったのか。

「ガミラス民族を移住させるため、
 根本から環境を作り替えるはずだったその星に
 彼女は救いの手を差し伸べた」

赤い地球をバックにスターシャの姿が。

 そうなると、地球への攻撃を遊星爆弾に切り替えたのは
 火星沖海戦に負けたからわけではなく、
 環境改造のためにあらかじめ予定されていたことだった、
 ってなるわけですかね。
 ガミラスの他の植民星と比べて、地球のどこが異なっていたのか、
 なぜ地球が選ばれたのかも知りたくなります。

「そのイスカンダルを救うために、あなたは・・・」
「コスモリバースは万能ではない。
 地球と違って、もとより滅びを定められたガミラスを
 救えるかどうか・・・
 私は外宇宙に新天地を求めた。しかしその結果・・・」

ここで「ふっ」と自嘲気味の笑い。
2202でのデスラーは、旧作では見せなかった顔を見せてくれる。

「おまえも知っての通りだ。
 あのとき、私は何を滅ぼそうとしたのか・・・」
「デスラー総統・・・」

ホント、何を滅ぼそうとしていたのですかね。
いろいろ背負うものが多くなりすぎて
一回リセットしたくなったのかな・・・とは思いましたけどね。

「だが、どんな理由があれ
 多くの臣民を巻き添えにしようとした事実は事実だ。
 その罪は償って償いきれるものではない」

その前に、地球人口の2/3を死に至らしめた罪も償ってほしいって
思う私は、やっぱりデスラーのファンではないのでしょうねえ。

ついでに言えば、植民星の二等市民たちも
デスラー総統の名の下に多くの者が虐殺されてる。
もっとも、そういう人々はもとから彼の眼中にはないのかも知れんが。

「この先、ガミラスの民がまた “デスラー” を求めるというのなら
 それはお前だ」
「それは・・・」

外した視線を泳がせて・・・こんな弱気なキーマンも初めて。

「お許しを・・・」

足早に立ち去るキーマン。

残ったデスラーにテレサが語りかける。

「あなたの心には、いつもあなた以外の誰かが。
 その誰かを、あなたは自分自身より大切に想い続けている。
 その想いがある限り、あなたには民を率いる資格があります」

「ふふっ、聞かれぬ事にはよくしゃべる」

上手いなあこの台詞。16話で一番好きだ。

ここで “花吹雪” を背に去って行くデスラー。
外連味たっぷりで、いやあカッコいいですねぇ。


■ヤマト

「これですべての縁が整ったようです」

雪に届いたテレサの声。
テレサは雪を無視していたわけではないのですね。


■ガミラス大使館

バレル大使がヒス長官(副総統から役職が変わったのですね)へ報告。
デスラー派の指導者がギムレーであることを。
ここでなにげに、ヒス君初台詞。
そして大使は保安情報局だったのですね


■クルー解放

ここで流れるBGMは、13話の波動砲発射シーンでのもの。
ああ、早くサントラ第2弾がほしい。

「思いを残せば・・・」

反波動格子が機能停止、そしてヤマトの波動エンジンが復活。
キーマンは見張りのガミロイドを倒し、古代たちを解放する。

「俺は・・・俺たちは何を信じればいい」
「何も。潜入中の工作員の言葉に真実はない。
 ガミラス保安情報局、内事部所属捜査官。それが俺だ」

 フリッツ少尉かと思っていたら如月行だったでござる(笑)。

「ヤマトへ戻るぞ。俺を殺すなら後にしろ」


■ランハルト造反

一方、タランと共にノイ・デウスーラへ戻るデスラー。

「造反?」
「先のお戻りになったランハルト様が、地球人を解放した模様です」
「好きにさせておけ。ヤマトも」

このときのデスラーの胸中はどんなだったのだろう。
甥(ランハルト)と共に、
重荷を分かち合う道を期待していたとは思うのだが・・・

ランハルトの決断を尊重したのか、
自分とは同じ道を歩むことはできない男だったのか、と諦めたのか、

周囲がどうであれ、もう自分はこの道を進むしかない、と
腹をくくっているから、造反も受け入れることができたのか。


■ヤマト復活

突然の波動エンジン復活に戸惑うクルー。しかし土方は決断する。

「いや、このまま飛ぶ! 島、発進準備にかかれ!」


■キーマンの真意

「バレル大使は情報部の出身で、
 民主化がガミラスの未来を作ると信じている。
 俺は大使の命を受け、正体不明の黒幕を挙げるために動いていた」
「しかし、君はデスラー家の」
「だからこそだ。ガミラスを真の民主主義に委ねる。
 それは独裁者の家系に生まれた者の、せめてもの罪滅ぼしだ」

とはいっても、彼本人には何の罪もないのだけどね。

「じゃあ、ヤマトに乗り込み、
 テレザートへ向かうよう誘導し続けたのも」
「すべてはデスラー派の信頼を得て、正体不明の黒幕にたどり着くため。
 それは成功した。だが、当のデスラーが現れるとは」
「なぜ彼と行かない?
 ガミラス星がじきに寿命を迎えるという話が真実なら・・・」
「そうだ。そういう選択肢もあった。
 しかし、女神に教えられた。
 考えるな、感じたことに従えと」

ヤマト艦内で暮らした何日かで
キーマンの中にも変化が訪れたのだろう。

そしてその理由は、「そこがヤマトだったから」なのだと思いたい。


■ノイ・デウスーラ脱出

斉藤と永倉がガミロイドと交戦。
連絡艇に乗り込む4人、ハッチを開放するキーマン。

敬礼する古代、答礼するキーマン。
最初はガミラス式、そして後半はヤマト式で。
ここはキーマンの変化、そして覚悟を示しているのだろう。

連絡艇は脱出、キーマンもツヴァルケに。
しかし一発の銃弾がキーマンの脇腹を貫く。

撃ったのはミル君。
あんたやっぱりそういう役回りなんですねぇ(笑)。

「あなたも予定にない道を選んだ。その衝動と感情が宇宙を滅ぼす!」
「そう・・・感情だ。だからこんなまねも」

リストバンドのスイッチを操作するとドック各所が爆発。
仕込みは充分だったんですね。さすが潜入工作員。

「貴様!」

そしてツヴァルケも脱出するも、古代たちはキーマン機を見失う。
すかさずヤマトからコスモタイガーⅠが発進。

「これまでか」

キーマンは海面に不時着。
ここからのBGMは「独裁者の孤独」。

「俺は一人だった。一人なら何でもやれた。でも、今は」

「今は」の続きは何だろう。
順当に考えれば「今は一人ではない」かな。
今では、彼を受け入れてくれるヤマトの仲間がいる。
そしてそこは「帰ることができる場所」でもある。

「一人でいることは虚しい」もあるかな。

沈みゆくツヴァルケ。

「母さん・・・」

死を覚悟すると、男というものは母の顔を思い出すものなのか。
フードをかぶった姿は、「999」の鉄朗の母みたいですね。
これは狙ってるんだろうなあ・・・。

「もう一度・・・」

そんなキーマンを必死に捜索する山本。

「救出する、絶対に!」

ついに不時着したツヴァルケを発見、
機と運命をともにしようとするキーマンを死の淵から掬い上げる。

 コスモタイガーⅠって、今回の海面上でのホバリングを含めて
 いろいろ不思議機能を満載してそう(笑)。


■テレザート消滅

テレザリアムから謎の発光が。

島「何だ、何が起きてる」
雪「テレサ・・・」
土方「雪、どうした?」
雪「テレサが・・・忘れないで、と」

テレサの声が人々の心に響く。

「さようなら、皆さん。
 私は私のいるべき場所に帰り、これからも祈り続けます
 でもそれは、どこか決まった星や
 人々のために祈るのではありません」

それはデスラーにも届く。
「所詮、手の内に収まるものではなかったか」

「星と星、時と時、そして、人と人。
 縁によって結ばれた命のフィールド」

古代を出迎える雪。
キーマンを抱えてコスモタイガーⅠを降りる山本。
出迎える古代たち。このときのキーマンの表情がいい。
もう誰も偽る必要がなくなったわけで、素の顔を見せているのだろう。

「この宇宙を支える力」

ノイ・デウスーラ艦内をさまようミル。
彼の脳裏に映し出されるものは・・・

「何だ、これは」

山本とキーマンを見下ろすカット。
つづいて古代たちを横から見るカット。
これは誰の視線なのか。やっぱ斉藤?

「大いなる和のフネに願いを託し、私は祈り続けます」

テレザート星そのものが光に包まれ、消えていく。

第一艦橋からそれを眺めるクルーたち。
古代と雪は指を絡め・・・雪の婚約指輪が光る。

「縁・・・宇宙の・・・愛か」

旧作「さらば」でも ”宇宙の愛” なるものが出てきたが。

キーマンを看病する山本。

デスラーの艦隊は、さらなる後続の艦艇群と合流し、大艦隊となる。
こんなにいたんだねえ。
デスラー生存の情報で新たに馳せ参じたものもいるのだろうか。

ついでに、不穏な顔つきのミル君も乗せて(笑)。


■ヤマト反転

土方が語る。
「祈りは託された。
 我々はガトランティスを阻止せねばならない。
 この宇宙に生きるすべての命のために」

「針路反転! 両舷全速、ヤマト、地球へ向けて発進!」

ヤマトはいざ決戦の地、太陽系への帰還へと舵を切る。


■潜入工作員の孤独

15話が “デスラー回” だとしたら、
16話は “キーマン回” と言っていいだろう。

第2話で初登場以来、文字通りストーリーのキーマンとなり
ヤマトを、古代をテレザートへと誘導してきた。

確固とした信念に裏打ちされて、ときには冷酷非情にも見えた彼の、
その内面がついに明かされる。

その特殊な出自、そしてその真の目的。
そしてそれゆえにヤマト艦内では孤立した存在となって。

本人は覚悟して引き受けたことではあっても
ヤマト艦内での生活、クルーとの触れあいが彼を少しずつ変えてきた。
古代、加藤、斉藤、そして山本。
この回に至り、彼もまた ”ヤマトのクルー” の一員となったと思いたい。

 母とともに追放された幼少時の彼が、
 成長して工作員となるまでを描くスピンオフなんかも面白そうだ。
 外伝小説あたりで出ないかな。
 保安局にスカウトされたのも、その出自が大きかったろうし。

第五章の後半17・18話では
ストーリーに関わることはほとんどなかったが
来たるべき第六章、そして最終章では
ヤマトとともにガトランティスと戦うキーマンが見られると期待している。


「その5」へ続く

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第五章 煉獄篇」感想・・・のようなもの その3 [アニメーション]


※ネタバレ全開です! 未見の方はご注意ください。


▼第16話「さらばテレサよ!二人のデスラーに花束を」(前編)


■ヤマト無力化

オカリナみたいな反波動格子のコントロール装置を発動するキーマン。
それにより波動エンジンが突然の停止。
島の必死の操艦で着水する。

最近、島の出番があまりなくてかわいそうだなあ。
たまに出ても「ワープ!」ばっかりだったし。

でもまあ、振り返ってみると危機感あふれる局面が続いてきたので
島の超絶技術の操艦なしでは、
ヤマトはとっくに沈んでいたのだろうと思うけどね。
まさに縁の下の力持ちなんだよなあ・・・

 うまくいってて当たり前で、普段なかなか重要性を認識して貰えない。
 そんな部署で働いている人は世の中にはたくさんいるだろう。
 私もどちらかというとそっち系の地味な仕事を長いことやってたりする。


■囚われの古代

古代・真田・斉藤・永倉はノイ・デウスーラ艦内にとらわれの身。
キーマンの銃弾は古代のヘルメットをかすめ、
それで気絶させらせた模様。監視するのはガミロイド。

 小説版だと、ノイ・デウスーラ艦内には
 デスラーとミル以外に人間は乗っていないという設定。

 タランの艦隊と合流はしたが、ノイ・デウスーラの中には
 未だ人はいないようだ(いたとしてもごく少数なのでしょう)。


■真田の推理

真田はキーマンの正体と目的に思いを巡らす。
バレルも共犯、しかしデスラー本人の登場は想定外
古代は何を思う・・・


■アベルト&ランハルト

艦内を歩きながら会話する二人。
「あなたと同じです。地球人にテレザートの力を渡すわけにはいかない。
 だから彼らに同行して、そのときが来ればヤマトを無力化し・・・」
「テレザートの力をガミラスに持ち帰る。
 民主化に抗い、デスラー体制の復活を願う者たちのために」

『その力を得た者はあらゆる願いを叶えることができる・・・』
と宇宙に伝えられる伝説の女神ですからねぇ、彼女は。


■囚われのミル君

虜囚となっているミルに面会する二人。
彼の周囲には、コスモウェーブを遮る(?)あの謎結晶が。

「久しぶりだね、ミル君」
「外は大分騒がしかったようですが」
「なに、不逞の輩が大帝の宝を横取りしようとしていたのでね、
 成敗して取り戻したまで。
 テレザートは現在我が艦隊の支配下にある。
 ドアは開いている。自分の目で確かめたまえ」

銃を渡し、

「見るのが君の仕事だ。その上でズォーダー大帝との交渉に入りたい。
 大帝には謹んでテレザートを献上する。その代わり・・・」


■アベルト&ランハルト 2

ノイ・デウスーラの上甲板に出る二人
「彼らは交渉に応じますか」
「ズォーダー大帝は面子に左右される男ではない。
 我々と一戦交えて星ごとテレサを失う危険を思えば、
 条件を呑むだろう。
 ガミラス人が生きていける惑星の発見もしくは創造。
 ガトランティスならあるいは・・・」

古代アケーリアス人の超科学を手中にしているガトランティスなら、
そんな技術も持っているかも知れない。
もっとも、ガトランティス人はそれを “使いこなしている“ とは
言いがたいのではないかなぁ。
彼らが持っているのは “知的生命体抹殺のための超技術” であり、
その目的達成のために ”超技術に使われている” ような印象だが。


「ランハルト」
「はっ」
「アレはどんな船だった?」

 デスラーがこういう質問をするとは予想外。
 しかし考えてみれば興味が湧いても不思議はない。
 数々の幸運に恵まれたとはいえ、
 たった1隻でガミラスの包囲網をくぐり抜け、
 最後の最後にはデスラー自身までをも
 見事なまでに場外へうっちゃってしまったのだから。

眼下には波動エンジンが停止し、デスラー艦隊に包囲されたヤマトが。

「奇妙な船でした。乗員たちも少し変わっていて
 軍人というより、私には巡礼者に思えた」
「巡礼者か」

まあ、星の彼方で待つ女神様の元へと向かうのだから
ある意味、“巡礼” とも言えなくもない。


■ガミラス

なつかしやガミラス星の全景。やや緑が増えた?
倒れてるのはバレラスタワーですかね?

ランハルト(キーマン)がテレザートに到達したとの一報。
伝えたのはカーゼット。
第8・9話で登場したガミラス定期便船団の指揮官ですね

さらにデスラーの生存が伝えられ、驚く面々。
一同の視線が一斉に向く先には・・・

 初見では分からなかったけど、
 しっかりとあの特徴的なカップを手にしているんだよねえ・・・


■アベルト&ランハルト 3

「デスラー体制派の指導者は長らく謎のままでした。
 私も正体を知りませんが」
「出てくるだろうな。
 この局面、直接私と言葉を交わすしかあるまい」

そこへタラン。「本国から通信が」
スクリーンへ写る人物を見て「あなたは・・・」絶句するタラン。
キーマンも驚愕の表情。

「ガーレ・デスラー。総統、よくぞご無事で」


■いま明かされる、衝撃の真実!?

映った人物の右目には大きな傷跡。乗艦の爆発で負ったものか。

「まさか君が生きているとはね、ギムレー君」
「それはお互い様でしょう」

確かに(笑)。
そして彼の口から語られるのは、あの日(「2199」第23話)の真相。

「乱心の末、首都バレラスを巻き添えにヤマトを倒そうとした独裁者。
 民主派はそのように喧伝して総統を貶めております」

 旧作では実際その通りだったよねえ。
 考えたら、旧作続編群でデスラーの元に残存戦力が集まってきたのは
 疑問と言えば疑問。
 なぜ「狂気の独裁者」に付き従おうと思ったのか?
 彼しか頼る者がいなくなってしまったから?

「しかし私は知っている。
 あれはガミラスとイスカンダル双方を救うための
 やむなき行為であったと。

 バレラス・タワー。あれはイスカンダルに突きつけられた刃。
 コスモリバースを奪い、
 ガミラスを滅びの道から救わんと企てた者どもが
 総統に断りなく作り上げた巨大な兵器」

なんと兵器だったのですね、バレラス・タワー。
(このあたり、後付け感は否めないのだけど)

発動したらどんな威力があったのでしょう。
案外その正体はデスラー砲だったりする?

もしそうなら、イスカンダルは
波動エネルギーを使った武器に狙われていたことになるわけで・・・

「軍はあなたを裏切った。
 彼らの裏をかいたあなたは、ヤマトの侵攻を利用して
 動力源たるコアシップをタワーから切り離した。
 そして裏切り者どもを一掃するために第二バレラスを・・・」

ここでいう軍とは誰なのでしょうか。
少なくともディッツ提督派ではないよね。あの頃は投獄されてたし。
ゼーリック派なのかな?
もっともこのときゼーリックは既にお亡くなりになってましたが。
その残党?
それとも、物語上では登場しない勢力が他にもまだあったのか?

「すべてはガミラスの救済とイスカンダルの平和のため。
 ガミラスの未来を救うには独裁体制による強権発動あるのみ。
 総統の大任を背負えるのは
 ランハルト様を於いて他にないと考えておりましたが
 あなたが生きておいでとなれば・・・」

「ランハルト、いいのか、私が請け負って」
「・・・無論です」

「すぐにガミラス臣民に伝えましょう。デスラー総統の凱旋を。
 蜂起の準備は整っております。一日も早いお帰りを」

総統生存の報で一気に盛り上がるデスラー派。


■囚われのヤマト

島「(上空のガミラス艦を見上げ)まるでハゲタカだ」

機関室では徳川の分析が続く。

一方、鶴見は宙葬用のカプセルに収められて・・・
沢村が号泣する横で、篠原の独白が。
「不思議だな。体はそこにあるのに。鶴見はもういない。
 どこに行っちまうのかな」

 人は死んだらどこに行くのか。それは永遠の謎だろう。
 私もこの年まで生きてきたので、肉親も何人か見送ったが・・・

 旧作からのヤマトファンも私と似たり寄ったりの境遇だろうが
 この問の答えは、永久に出せないだろうねぇ・・・


■ランハルトvsテレサ

単騎、ノイ・デウスーラを飛び立つキーマン。
やってきたのはテレザリアム。

「テレサ・・・・」

今まで見せたことのない自信のなさげな表情。

「俺は・・・わからなくなった。
 準備は整った。やるべき事は決まっている。でも・・・」

「テレサ! 時の果てを見通す女神なら教えてほしい!
 何が最善なのか? 俺が進むべき道は!?

初見の時は、何が起こっているのか分からなかったよ。
自信満々で揺るぎない信念に裏打ちされた行動を取ってきたキーマンが
突然、自らの中にある迷いを告白したのだからね・・・

テレザリアムの球体が輝き・・・そこに浮かぶのは
古代、島、加藤、篠原、沢村、斉藤、そして山本・・・

 山本が最後、っていうのがポイントなのでしょう(笑)。

「ヤマトに乗ってあなたが感じたことはすべて正しい。
 何が最善かはあなた次第で変わります。
 考えたことではなく感じたことに従ってください。
 あなたも大いなる和の一部・・・」

大宇宙の脅威たるガトランティス。
“滅びの方舟”・白色彗星を止めるのは
ヤマトを中心とした縁の力、大いなる和。
彼もまたその “和” に加わっているという。

「大いなる・・・和」

頬を一筋の涙が。それを拭い、不思議な表情を見せるキーマン。
それを見て、何事か納得した表情を示して・・・
そこへ突然、声がかかる。

「何をしている」

声の主は他ならぬデスラー総統。


「その4」へ続く

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第五章 煉獄篇」感想・・・のようなもの その2 [アニメーション]


※ネタバレ全開です! 未見の方はご注意ください。


▼第15話「テレサよ、デスラーのために泣け!」(後編)


■テレザリアムの攻防

一方、古代たちにも援軍が。
永倉「隊長、ご無事で」
斉藤「永倉、おまえ何やってんだ」
永倉「ただの令違反です」

 ホントに永倉さんは美味しいところを持って行くねえ。
 「星巡る方舟」で初登場したときは
 こんなに活躍するキャラに化けるとは思わなかったよ。

ヤマトは島の操艦で戦闘空母と交戦。
近接戦闘でのパルスレーザーは、これも「方舟」を思い出すね。


■キーマン回想

ヤマトから発艦したキーマンの脳裏を、バレル大使の言葉が。

「孤独な道だ。おまえはおまえに関わる
 すべての人間を欺かなければならん」

これは次の16話になると本当の意味がわかる。


■デスラー艦隊vsヤマト  その3

ヤマトに迫るノイ・デウスーラ。なかなか珍しい構図。
PVのときはてっきり併走してるんかと思ったが
実は追走してるんだね。
ノイ・デウスーラがでかすぎて遠近感がわからなかったよ。


■テレザリアム

「貴様たちとの戦(いくさ)は本当に先が読めん」
まあ、先の読まれる戦いをしていたらヤマトはとっくに沈んでますから。

その乱戦の中、古代がデスラーに銃を突きつける

「終わりにしないか、デスラー総統」
「まだ始まってもいないものを、どう終わらすのかね。ヤマトの坊や」

デスラーにとって古代はまだまだ “坊や” なんですかね。

「私はヤマト戦術長、古代進。
 直ちに兵を引きテレザートから退去していただきたい」
「古代、そうかあのときの坊やか」

「2199」第24話での白兵戦。そんなに強い印象があったのか。

「一度死んだ人間を、そんなもので屈服させられるとでも」
「この人形どもは私を撃つことはない。
 が、それは私が生きている間の話だ」
「さあ、引き金を引き給え」
「どうした、古代とやら その勇気がないなら」

動じないデスラー。素直にここはカッコいいと褒めておこう。
人生経験と肝の座り具合では
古代よりデスラーの方が一日の長があるということか。


■キーマン登場

そこへツヴァルケが乱入、永倉と協力してニードルスレイブは全滅。

そしてツヴァルケから降り立つキーマン。

キ「デスラー総統に伺いたい。あなたは何を願ってここに来られたのか」
デ「貴様、誰か?」
キ「我が名はランハルト・デスラー」

 一瞬 “ラインハルト” かと思ってしまったよ(おいおい)。
 さすがに「銀英伝」の主役とかぶるのはマズいよねえ。

ついに明かされるキーマンの本名。


■14年前 デスラー総統22歳

「なぜこうなった。
 アベルト・デスラーという人間には
 母の心を現世につなぎ止めておくほどの重みもなかった。
 そんな私が」

デスラーはマザコンとまでは言わないが
母の愛には恵まれなかったんだね。同情に値するとは思うが。

「叔父が成し遂げたガミラス全土の統一。
 そのすべてを託され、重すぎる秘密を。
 希望を失えば人は心を失う。
 自分たちに未来がないと知ればガミラスは・・・」

ガミラス人の未来を叔父と兄から託されたデスラー。
「あるべき未来とやらのために、自分の人生を生きられなかった」
がここへつながるのだね。

重ねて聞こえてくるのは重臣の言葉か。

「これが最も確実なやり方です。
 バレラスタワーはそのために建造されました。
 もはや後戻りはできません。
 ガミラスが生き残るためにはなんとしてもイスカンダルの・・・」

この台詞の意味は16話で明らかになる。
ガミラスがイスカンダルが持つコスモリバースシステムを
手に入れようとしていた。

 ガミラス人にとってイスカンダルは崇敬の対象ではあるものの、
 常に自分たちの頭の上にいることに
 反撥を覚えることもあったのかも知れない。

デスラー総統は、聴衆を鼓舞する演説をぶち上げる。

 青年らしい若々しい声。さすが山寺さん。

「イスカンダル平和主義のもと、宇宙に版図を広げよ!
 外宇宙にも目を向けよ! 拡大せよ!!」

このへんから「2199」につながってくるのだね。


■デスラーvsキーマン

キ「急激な拡大政策はガミラスに未曾有の富と覇権をもたらした。
  結果、生まれたのが支配者デスラーへの反撥。
  あなたは何度となく暗殺の危機にさらされた」
デ「身内にすら・・・か」

兄の妻だった女すら暗殺者になった。

 彼女を取り押さえたディッツとタラン弟が若い。
 ついでに言うと、周りの重臣たちも若い。
 ぜーリック、タラン兄、ギムレー、ヒス。
 ああ、懐かしい面々だねえ・・・

デスラーは兄嫁を処刑したと見せかけて追放する。
それは、かつて自分の命を救ってくれた兄への
せめてもの恩返しなのか・・・

ここでついにキーマンの素性が明らかになる。
デスラーの兄マティウスの遺児。彼にとっては甥にあたるわけだ。

「大きくなったな」

デスラーが肉親に対する情を見せる珍しいシーン。
というか、こんなのは初めて?

「母は貧しい生活の中で死んだ」
「ガミラス星がじきに滅ぶというのは事実か」
「外宇宙勤務が長くなると肌身でわかる。
 我々生粋のガミラス人は、ガミラス星を離れて長くは生きられない」
「だから母星と同じ環境を持つ星を見つけて、
 あるいは人工的に作り出し、すべてのガミラス人を移住させる。
 半世紀以内に・・・」
「そんな途方もない計画を実現するために、
 あなたは宇宙に覇権を広げた。冷酷な独裁者と罵られながら」

ヤマトのクルーにすれば初めて知る事実ばかり。
しかもそれはガミラスが地球を侵略した理由にも直結するもの。

真「遊星爆弾による環境の改造」
古「本当なのか? ガミラスを救う、そのためにあなたは」
デ「知ってどうする。今更それが何だというのだ」

個人的には、これが15話でいちばん好きなデスラーの台詞だなあ。

遊星爆弾の目的も、“ガミラス人移住のための環境形成” という
 旧作に沿ったものへと改めて位置づけられたことになる。

そして、ここからのデスラーの独白が15話のクライマックスか。

「今の私は、何の力も持たない。
 無力な神に願いをかけるか、ガトランティスに取引を持ちかけるか。
 どちらも分が悪い・・・」

デスラーがここまで自らを卑下した台詞も記憶にない。
ある意味、とても “新鮮” に感じる。

カットバックでデスラー艦隊と交戦するヤマトが描かれ、

「だが、それでも」

ここでのBGM「デスラー・孤独」がまたいい仕事をする。

「それでも、わたしは」

キ「テレサの力を、本当に必要とするのが誰か」
デ「おまえにはわかるはずだ」

キ「母なる星、ガミラス。あなたはそのためにずっと」
デ「ランハルト。ここから先は修羅の道だ。
  私と歩むのなら感情は捨てろ」

自らの重荷を、マティウスの遺児にも預けようとする。
それはかつて、兄がデスラーに対してとった行動の再現か。

 「思いを残せば、私のように間違うぞ」

”間違えた” という意識はあるんですね(笑)。

斉藤「おい、そんなやつの言うことに耳を貸すんじゃねえ」

その斉藤に銃を向けるキーマン。次の瞬間、その先を古代に向け

キ「すまない、古代」

そして・・・銃声


■デスラー再評価

私は以前、旧作の続編群におけるデスラーに対して
否定的な趣旨の記事を書いた。

 実際、「2202」のデスラー再登場も
 「出ないとファンが黙ってないだろうなあ」
 くらいに思っていて、私自身はあんまり期待していなかった。

 実際、私のかみさんはデスラー(というか山ちゃん)が大好きで
 もし出なかったら、「2202」を観る気力の大半を失ってしまいそう(笑)。

しかし、15話のデスラーは文句なしにカッコいい。
後付け感は否めないものの、
「2199」との整合性に配慮して精一杯フォローしつつ、
なおかつ新たなデスラー像の構築に成功していると思う。

 優秀な兄がいて、その死によって
 否応なく代理を務めざるを得なくなった、という点では
 古代とも共通するバックボーンを持つ。
 このあたりは意識的に設定したのかも知れない。

これからヤマトとガトランティスの戦いにどう絡んでくるのか
本当に楽しみになってくる。

 願わくば旧作群みたいに、ヤマト(古代)に対して
 なし崩し的に友好的になったりしないでほしいとは思う。
 あれはやっぱり(私にとっては)違和感の塊だったからねえ・・・


「その3」へ続く

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第五章 煉獄篇」感想・・・のようなもの その1 [アニメーション]


※ネタバレ全開です! 未見の方はご注意ください。


▼第15話「テレサよ、デスラーのために泣け!」(前編)

最初に聞いたときは思わずびっくりな、
予想の斜め上をいくタイトルだったが
デスラー総統の ”秘められた過去” が明らかになったりして
「まあそうかな」と思えなくもない。
でもテレサは泣かなかったけどね。

 大体あの人、涙を流せるのだろうか?


■28年前 アベルトくん8さい

デスラーって、「2199」開始時点で32歳(地球歴換算)だったはずだから
「2202」のこの時点では36歳のはず。
(古代だって20歳→24歳になっているし)

 ちなみにこの「28年前」っていうのも地球歴換算だよね。

まず登場するのはデスラー家+側近・重臣の面々か。
話し合ってるのは母星の寿命について。

ちなみにここでいう ”母星” とは、サレザーの太陽のほうなのか、
ガミラス本星のほうなのかは判然としないが
後の話の展開から察するに、後者の方なのだろう。

「もってあと100年」「他の星では長く生きられない」
との言葉から、いずれにしろガミラス本星に
人が住み続けることができなくなる事態が発生するらしい。

 去年読んだ長編SF「華竜の宮」と
 その続編「深紅の碑文」(上田早夕里)を思い出したよ。
 この作品では、大規模な地殻変動(スーパープルーム)によって
 地球が人類の生存できない環境へ変貌することが
 スーパーコンピュータの予想によって明らかになる。
 しかもその変動が始まるのは半世紀後・・・という展開だった。

 具体的には、大規模な噴火活動で発生する噴煙によって太陽光が遮られ
 全地球規模での寒冷化が進行するわけだが。

アベルトくんの叔父であるエーリク大公を演じるのは井上和彦さん。

 すっかり大御所になってしまったねえ。
 最近では、主人公の父親や師匠役に回ることが多くなってきてるけど
 「サイボーグ009」の島村ジョー役や
 「蒼き流星SPTレイズナー」のエイジ役など、
 堂々と主役を張ってヒーローを演じてたころが懐かしい。

「移住先を・・・」と心配するのはアベルトくんの兄・マティウス。
こちらは草尾毅。

 私にとっては「鎧伝サムライトルーパー」の ”烈火のリョウ” の人。

マティウスは二等市民も見捨てない考え。さすが名君の片鱗を見せる。
しかしその場に潜んでいたアベルトくん、見つかってしまう。

あやうくエーリク大公自らのお手討ちになりかかったアベルトくんを
マティウスが止め、この場で “血の誓い” を行わせる。

「アベルト、ここで誓え!
 ガミラスの滅亡を防ぐ新たな移住先を生涯かけて見つけると」

そして

「おまえならできる」

これ、人を励ます魔法の言葉だが、悪魔のささやきでもあるかもなあ。
この言葉のせいでその気になって、後々苦しんだ者は数知れないだろう。
アベルトくんもまた然り。
この言葉が彼の生涯を縛り続けることになったのだろうから。

 ここで流れるBGM「独裁者の孤独」がまた、いい仕事してる。


■22年前 アベルト君14歳

「善人は長生きしない。とくにこんな時代は」(from「銀英伝」)
この言葉の通りなのかは知らないが、マティウスは亡くなる。
時期的には統一戦争の最終段階か。

雨中の葬儀。マティウス/アベルト兄弟の母を演じるのは池田昌子さん。

 往年の名声優。オードリー・ヘップバーンの吹き替えでおなじみだが、
 アニメファンからすればもう言わずと知れた「999」のメーテル。
 さすがに大御所。登場シーンはわずかなのに存在感は抜群だ。

参列者のささやきがアベルト少年の耳にも入ってくる。
「デスラー家は呪われている」
たぶん男子がことごとく早世しているのでしょう。
「器が違いすぎる」
これまたまたひどい言われようだ。
優秀な身内を持つと、比べられて苦労をするのは
「宇宙共通だな」 by キーマン (笑)。

 「栴檀は双葉より芳し」と「大器晩成」。
 相反する内容ながら、どちらも古くからあることわざだが、
 今まで60年近く生きてきて感じるのは
 「だいたい前者の方が正しいかなあ」ということ。
 優秀な人はだいたい若い頃から優秀だし、
 後者の例はあまり見た記憶がない。

「これでもう偉大なマティウスの弟と言われずにすむ・・・」
ここから山寺さんの演技だと思うのだが
素晴らしいの一言だね。まさか10代の少年の声を出すとは・・・

そして、アベルトくんはお母さんからも愛されなかったのだね・・・


■18年前 青年アベルト 18歳

イスカンダルを見上げる青年アベルト。
「スターシャ・・・」

ちなみに、このとき彼女は14歳のはず・・・
たぶんアベルトにとってスターシャは初恋の人であり
“永遠の女性” なのでしょうねえ・・・

でも、結局彼女からも愛してもらえなかったわけで
デスラーは女性からの愛に飢えた人生を送ってきたのかも。

 あ、セレステラさんを忘れてはいけませんね。
 でも、彼女の愛ではデスラーは満たされなかったのでしょう・・・


■回想から目覚めるデスラー

過去の記憶に浸っていたことに気づくデスラー。
これもテレサの超常の力なのか。
そしてニードルスレイブが来襲、しっかり総統親衛隊のブルー。

「あなたは何を願うのです?」
「テレザートの女神が伝説通りの存在なら、言わずともわかるはず」
「それでは、あの方たちには伝わりません よいのですか?」
「想像以上に不愉快だな、すべてを見通すものと向き合うのは」

 「2202」に再登場してきたデスラーは、いちいち台詞がカッコいい。
 考えてみれば旧作のデスラーは一度もテレサに会ったことがなく、
 もちろん言葉を交わしたことさえないはず。
 このあたりはやはりリメイクならではの醍醐味だなあ。


■デスラー艦隊vsヤマト

上空ではヤマトがデスラー艦隊と対峙。
永倉もまた連絡が取れないことがわかる。
そして、キーマンに艦隊の情報照会を命じる土方。


■デスラーvsテレサ

テレザリアムでは真田がデスラーに語りかける。

真「デスラー総統、テレサは都合良く
  人間の願いごとを聞き届けてくれるような存在では」
デ「承知しているよ。
  テレサに呼ばれた者はあるべき未来に従って為すべきを為す。
  まだ星の海を渡るすべを持たない頃から
  人間はテレサの啓示を受けてきた。操られていた、と言ってもいい。
  あるべき未来とやらのために、自分の人生を生きられなかった、
  この私も」

デスラーの見方も正しい。
未来をすべて見通しているテレサが人にはたらきかけるなら、
それは彼女の知る未来へと “誘導” しているとも解釈できるからね。

そして、幼い頃に “運命” を定められてしまったデスラーもまた
テレサのメッセージで導かれてここへ来たのだろうから。

「さあテレサ、運命に魅入られた哀れな人間たちに恩寵を。
 人にできないことがあなたにはできる」

「すべての命には定めがあります。でもそれは自らの選択の結果」

ヤマトでは鶴見のバイタルサインが途絶え・・・命の火が消える

「無駄に思えても不公平でも」

首を振る雪、歯を食いしばる玲。

「わたしは道を示すだけ。命の選択で道は変わる。未来も」

 進歩したAIがチェスや将棋で人間に勝利するようになったが
 それは数億通りもの "先読み" の中から、
 瞬時に最善手を計算しているらしい。

テレサに見えている未来もまた1本の道ではないのだろう。
宇宙の未来なんて、それこそ無限の分岐を持っているだろうから、
彼女にはその分岐した未来がすべて見えているということなのか。

そして、宇宙に生きるものが一つ選択をするたびに
未来もまた新しく無限の分岐を繰り返していくのだろう。

「あの世とこの世の狭間で宙吊りになり
 人の世の移ろいをただ見つめるしかない。
 神とは何と無力なもの」


■デスラー艦隊vsヤマト  その2

キーマンの照合でどの船も軍籍が抹消されていたことが判明。
3年間宇宙をさまよっていたというが、
もちろんその間、支援する星なり組織なりはあったのでしょうねえ。

 タランをはじめとするデスラー艦隊の人々は
 ガミラス星の運命を知っているのかな?
 少なくともタランは知っていそうな気がする。
 そうでなくては彼がデスラー派に身を投じた理由がわからないし。


そんなことを考えている間に、
相原がデスラー艦隊のシステムに侵入に成功する。
敵味方識別信号を書き換えたんだと。
あんたいつのまにそんな技術を身につけたんだい?

 40年も経つと時代も変わる。
 一介の通信士を凄腕のハッカーに変えるくらいにね。

効果は30秒。その間にキーマンがツヴァルケで発艦する。
そのためにヤマトは陽動に打って出る。


■デスラーの真意

ズォーダー大帝はテレサの力を封じようとしている。
そのテレサを手中に収めたデスラーは、大帝と交渉するつもりだという。

「古代アケーリアスの遺産は
 ガトランティスに不相応なまでの軍事力と科学力を与えた」
「彼らのその力を持ってすれば、我が望みを叶えるのも不可能ではない」
「神になど最初から期待してはいない。
 ここに来たのは、ガトランティスとの交渉材料を手に入れるため」

次第に明かされていくデスラーの真意。
すべてはガミラス人の移住先を確保するため。

真「その大帝が、なぜテレサの力を封じようとしているのか
  あなたは知っているのか。
  私が想像するとおりなら、仮にガトランティスが
  交渉に応じたとしてもそれは一時のことに過ぎない。
  大帝はテレサの力を・・・」

ここでタランから急報、ヤマトが動き出したと。
がミラス艦を蹴散らしながらツヴァルケを発艦させるヤマト。


「その2」へ続く

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宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Ⅲ 《総統帰還》 [アニメーション]


小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (3)

小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (3)

  • 作者: 皆川 ゆか
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: コミック
同題のアニメーションのノベライズ、第3巻。

サブタイトル通り、表紙にはデスラー総統が堂々と。


内容としては第10話の宇宙ホタルのエピソードから
第13話のテレザート上陸作戦までを描いている。

基本的にはアニメ版に則っているのだけど
そこはそれ今回も500ページ超えのボリューム。
映像版では描かれなかったエピソードや明かされた設定も多い。

追加エピソードとしては、空間騎兵隊関連が多いかな。

ヤマトの女子乗組員たちが、空間騎兵隊を怖がって
遠巻きに眺めているのを見て、餅つきを思いつく永倉とか。

 餅つき自体は旧作Part1のネタだけどね。
 「餅」というものを初めて見たキーマンのリアクションも抱腹もの。

あと、山本が機動甲冑に乗り込むに至った経緯とか
そもそも機動甲冑というものがいつ開発され、
いつヤマトの中に出現したのかも、ちゃんと時系列に沿って描いてる。

 このへん、アニメ版では登場が唐突だったからねえ。

斉藤が永倉を副隊長に任じた理由も案外深い。


これ以外にも興味深いエピソードの追加が。

例えば古代が遊星爆弾で両親が亡くなった日を回想するシーンとかも。
古代の叔父夫婦も登場するので「2199」第14話を思い出したり。

なんといってもテレサのメッセージが現れた後の徳川のセリフがいい。
「わしらは試されたのかな」から始まって
「あれから3年もの月日が経っておる。
 昔の〈ヤマト〉はクルーの価値観が一つだったが・・・」
続けて、いまのヤマトクルーの現状を的確に言い当て、それでも
「最善の結果を模索せねばならんのだ」にいたる一連の流れ。
さすが年の功。このセリフは徳川だからこそ言えるものだろう。
山崎さんがこういう台詞を言うには、もう10年くらいかかるかな(笑)。

 全部を引用するのは、さすがにはばかられるので、
 興味がある方はせひ本書を購入して確かめていただきたい(笑)

デスラーの襲撃~ワープ~チクワ侵入~脱出に至る流れも
アニメ版のような唐突な展開ではなく、
それなりに説得力のあるものになっていると思う。
ただまあ、小説版のような流れがをそのまま映像化してしまうと
リズムやらテンポなりの問題が出そうな気はするが・・・

そして鶴見たちを送り出したあと、
テレザートの岩盤前面にいる艦隊と交戦するヤマト。
ここでの土方のセリフが超絶にかっこいい。
いやぁ、なんでこれアニメで採用しなかったのかなぁ。

 たぶんこの辺はシナリオにあったけど
 尺の問題で・・・ってやつかなあ。

アニメ版ではサッパリ活躍シーンがなかったが、
テレザート上陸作戦でもしっかり航空隊の出番はあったりする。
まあ尺の問題ですね。はい。

そしてクライマックスはゴーランド艦隊への波動砲発射シーン。
ここは第4章のクライマックスだし、
全26話の物語の、前半を締める(ここは13話)シーンでもあるからね。
ここでは機動甲冑のみならず、発艦していた航空隊まで参加して
ヤマトを支える。

 さすがにここまで描くとテンポが悪くなりそうなので
 映像ではカットされたのかな。


これ以外にも、興味深い記述がいろいろと。

白色彗星内部に引き込まれたヤマトが
彗星中心部のデータを得るシーンがあったけど、
小説版では、アニメ版よりも情報量が多めに語られている。
これはもちろん第5章の公開に合わせたものだろう。

このとき彗星帝国のガス体内に遊弋していた艦隊が
アナライザーの計算では推定1000万隻以上、とか
ノイ・デウスーラは複数の波動機関を装備しているので
ワープ明け直後にデスラー砲を打つことが可能だった、とか。


ラスト30ページは鶴見が主役。
負傷した鶴見の回想シーンなのだけど
ここは雑誌に掲載された外伝部分らしい。
第5章で彼がたどる運命を知って読むとなおさら・・・

まずは、航空隊と空間騎兵隊が協力して
テレザート上陸に成功したことがきっちり書き込んであって。

鶴見に姉がいたこと、
同い年の優秀な従兄がいたこと。
彼と比べて、いかにも自分が凡庸であることに
コンプレックスをいだいていたこと・・・。

 このあたり、身につまされる。
 私自身、自分の能力のなさに悩む日々を送ってるし、
 他人と比較してのコンプレックスと
 一切無縁の人なんていないだろう。

でも、この後の加藤のセリフに救われる。
「〈ヤマト〉に特別な人間なんていやしないんだ」
から始まる一連のセリフはもう感涙ものだ。

かつて私が書いた記事と同じことが書かれていたことも思い出したよ。
「ヤマト2199」に関する駄文雑文集(3) ~「さらば」私的考察~

 そう、〈ヤマト〉とは、そういうフネなんだよ。
 そして、「普通の男たちの物語」なんだ。


著者は映像の補完のために書いてるつもりはないだろうけど
この情報量はとてもありがたいし、
本編の裏で展開していた物語を想像する助けになる。

このノベライズ・シリーズは、
”ノベライズ” というものの最適解の一つだと思う。

おしらく完結まであと3巻。楽しみに待ちたいと思う。


さて、肝心の「ヤマト2202 第五章 煉獄篇」の
“感想・・・のようなもの” ですが
今月は公私ともいろいろあって、まだ一行も書いてません(^_^;)

これから書き始めるつもりなんですが
まあ、焦らずにいきます。

 考えたら、「ヤマト」の “感想を書く” なんてことも
 この第五章を含めても、あと3回しかないかも知れないわけで・・・

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ラプラスの魔女 [読書・ミステリ]


ラプラスの魔女 (角川文庫)

ラプラスの魔女 (角川文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★

いまや大御所となった感のある東野圭吾氏。

初期の作品はけっこう読んでたし、
加賀恭一郎シリーズも途中までは読んでた。
でも今では、必ず読むのは
「ガリレオ」シリーズだけになってしまったなあ。

そんな私が本書を読もうと思ったのは、なんといっても
桜井翔と広瀬すずという2大アイドルスターの共演という話題性。

桜井くん演じるのが地球化学の研究者という役回り、
っていうのもポイントが高かった。

 要するに「ガリレオ」みたいなのを内心では期待していたんだね。

しかしながら、今日に至るも映画は未見(おいおい)。
実は本書を読み終わったのは5月初め。
映画封切りの直前だったのだが・・・


物語は、10歳の羽原円華(うはら・まどか)とその母・美奈が
北海道をドライブしているシーンから始まる。
しかし二人は、突如として発生した竜巻に巻き込まれ、
美奈は亡くなってしまう。

そして数年後。
円華は父親の勤務先である開明大学の敷地内で、
なぜか軟禁状態で暮らしている。
外出する際には常にボディガード兼監視役の
武尾(たけお)が同行することになっていた。

武尾は元警官だったが、円華の護衛役を務めるうちに、
不思議なことに気づいていく。
風に飛ばされた帽子が落下する場所を事前に察知していたり、
彼女が折った紙飛行機は見事な旋回を描いて飛翔し、
そして彼女のもとへ帰ってきたり、
雨の降りやむ時刻を正確に言い当てたり・・・

そしてある日、彼女はその “予想能力” を駆使して
武尾を振り切り、脱走してしまう。

一方、ある温泉地で映像プロデューサー・水城(みずき)が死亡する。
死因は硫化水素による中毒死と思われたが、
同行していた水城の妻・千佐都(ちさと)は
二回り以上も年下であったことから、殺人の疑いも捨てきれない。

泰鵬大学教授で地球化学の研究者・青江修介は
地元の警察の依頼を受け、現場の調査に赴く。
そこで修介は若い女性(円華)を目撃する。
どうやら、彼女は一人の青年の行方を追っているらしい。
彼は事件のあった前日に現場近くに宿泊していたのだ。

そして2か月後、別の温泉地でも同様の死亡事件が起こった。
調査に訪れた青江は、ふたたび円華の姿を目撃する。

二つの中毒死にはつながりがあるのか?
円華が探す青年は事件とどんなかかわりを持っているのか・・・?


読んでいて感じたのは何ともすっきりしない思い。

映画版ではおそらく主役となるであろう青江だが、
小説版ではややキャラが弱いんじゃないかなあ。

快刀乱麻に謎を解くわけでもなく、
どちらかというと円華嬢に振り回される役どころ。
地球化学の知識も事件解決にさほど役立つわけでもない。
年齢も40代で既婚、中学生の息子がいて、
颯爽とした桜井翔を期待して読むと当てが外れるだろう。

物語の展開も、犯人も、ある意味予想の範囲内で進行していく。
それでも先へ向けて読ませるのはさすがのわざだとは思うが。

そして、いちばん気になったのは、円華嬢の特殊能力である。


以下はネタバレに属する内容なので
これから本書を読む、あるいは映画を見る、という人は
目を通さないことを推奨する。


円華嬢の予知能力は、実は外科手術による
一種の脳改造によるものであることが明らかになる。
これにより、彼女はスパコン並みの演算能力を身に着けることになった。

 珠算の達人による暗算の様子なんかをたまにTVで見ることがあるが、
 あれを数億倍(?)にしたくらいの計算を
 瞬時にこなすようになったわけだ。

しかしこの手術、彼女自身が脳改造を自ら望み、
彼女の実の父・羽原全太郎(脳神経細胞再生研究の第一人者でもある)も
それに応じてしまうところはいささかひっかかる。
その背景には母親(全太郎にとっては妻)の死があるとはいえ
娘を人体実験に使うのではマッドサイエンティストだろう・・・

「それがなかったら話が始まらないだろう?」
って意見もあるのはわかるが。

 昭和のヒーローものみたいに、
 その手術をしなければ彼女の命が失われるとかの
 切羽詰まった状況でもあればねぇ。
 そういえば「仮面ライダーV3」(昭和48~49年)が、
 やはり主人公が瀕死の重傷を負い、
 彼の命を救うために改造人間にした、って展開だったなあ。

 ちなみに本作で謎の青年を演じているのは福士蒼汰。
 『仮面ライダーフォーゼ』の主役だったのは偶然だろうが。


しかし、以上の点は私にとってはあまり大きな問題ではない。

「脳がスパコン並みの演算能力を得ればなんでも未来がわかる」
ってことこそ、私がいちばんひっかかったところ。


これ以降の文章は、難癖というか重箱の隅をつつくというか
本作が好きな人にとっては不愉快な文章になってると思います。
ネットでは書く自由もありますが読まない自由もあるので
ぜひその権利を行使していただきたい。


どんなスパコンだって、データがなければ計算そのものが成立しない。

たとえば、冒頭にある飛ばされた帽子のエピソード。
彼女がその様子を見て、落下地点を当てることを考えてみよう。

飛ばされた帽子の質量、速度、角度、回転、そして空気抵抗、
そのときの大気の圧力やら密度やら
関わる要素はそれこそ無限にありそうだし、これを瞬時に、
しかも目で見ただけで数値化するのははたして可能なのか?


天気の変化を予知するのだって、
将来、気象庁にあるスパコンが今の数十倍に性能アップすれば
狭い地域のリアルタイムな天候変化を
瞬時に計算できるようになるかもしれない。
しかしそれは、無数の観測機械から送られてくる
データあってのことじゃないのか?

彼女が空を見上げて入手できる情報だけで
その場所における数時間後の天候の変化を計算できるものなのか?
どう考えても上空の温度とか風速とか湿度とか
最低でも周囲数十キロくらいの気圧配置とか雲の分布とかも
わからないと、まず不可能なのではないかい?


表題の「ラプラスの魔女」は、
「ラプラスの悪魔」から来ているのだろう。

Wikipediaからの引用なので恐縮だが・・・

フランスの数学者ラプラスによって提唱された概念で、
彼は自著において以下のような主張をした。

「もしもある瞬間における全ての物質の
 力学的状態と力を知ることができ、
 かつもしも
 それらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、
 この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、
 その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。」
                 — 『確率の解析的理論』1812年

このような “超知性” を「ラプラスの悪魔」と呼んでいるのだが
円華嬢は「かつもしも」以降の部分の能力は獲得していても
以前の部分の能力は有していないんじゃないのかなあ。

 実はもう一つ書きたいことがあったんだけど
 もういい加減書いてきたので割愛。


「フィクションなんだからそんなに固いこと言うんじゃないよ、
 野暮だなあ・・・」
って意見があるのは百も承知なのだが
なまじ理論的に説明しようとして
かえってリアリティを失っているような気がしてならない。

「大多数の人はそんなとこまで気にしないよ」
たぶんそうなのだろう。でも私は気になってしまうんだよなあ。

いっそのこと超常現象と割り切って
「予知能力なんです」って言いきってくれたほうが
なんぼかすっきりするように思うし、
私もこんなに長々と “難癖” を唱えることもなかったろうに・・・

 いやホントに、こんなに長く書くつもりなんて全くなかったんだけど
 書き始めたら止まらなくなってしまった。

これもまた “東野マジック” なのでしょうかねぇ・・・

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生者の行進 [読書・ミステリ]


生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)

生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 石野 晶
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★

島田隼人と藤原冬子(とうこ)は1歳違いの従兄妹同士。
家も近所で、幼いころから兄妹のように暮らしてきた。

しかし物心ついたころから、冬子は隼人に対して
強烈(!)な愛情を抱くようになり、
隼人は彼女の振る舞いに悩まされることになる。

隼人の周囲にいる女子はもちろん、男友達まで排除にかかるのだ。
自他ともに認める美少女である冬子は隼人の友人に恋を装って近づき、
相手が本気になったところを手ひどく振って捨て去る。
なんともはや、男心を弄ぶ、とんでもない悪女である。
隼人は何人の男友達、女友達を失ったことか・・・

 美人の従妹にこんなに慕われても、隼人にとって
 冬子は恋愛対象にはならない。
 まあ冬子嬢の過激すぎる性格もあるのだろうが(笑)、
 実はこの二人、隼人の家庭にまつわる、
 ある “秘密” を共有しているのだ。
 そのあたりはおいおい明らかになっていく。

隼人が高校2年生、冬子が1年生になったある日、
病院へかつての友人の見舞いに訪れた隼人。

 その友人は冬子に振られたショックで高校進学を断念、
 さらには交通事故で足を骨折と、なんとも悲惨な人生を送っている。

その病院で隼人は、階段で突如意識を失って
転落しかけた少女・細山美鳥(みどり)を助ける。

彼女は冬子の同級生で、はじめての親友といってもいい存在だった。
意識を取り戻した美鳥は言う。「ドッペルゲンガーを見た」と。

隼人と美鳥を見ていた冬子は、やがて隼人が
美鳥を愛するようになるのではないか、との予感におののくのだった。

やがて隼人と冬子の前に、美鳥にそっくりな人物・スオウが現れる。
そして二人が共有する “秘密” に、
美鳥とスオウも意外な形で関わっていたことも・・・


物語はほぼこの4人のみで進行する。
ちなみに表紙のイラストにある4人がそうだ。
左から美鳥、隼人、スオウ、そして冬子(で、間違いないだろう)。


なんといってもこの物語の推進役は、強烈な個性を放つ冬子さんだろう。
隼人に対するストーカー紛いの執着を除けば
意外にも(失礼!)、料理もうまいし家事もそつなくこなす、
いたって家庭的なお嬢さんだったりする。

 まったく、あの性格を除けば(笑)いい奥さんになれそうで
 隼人の父親など、冬子が息子の嫁になることを
 内心期待しているふしもある(笑)。

隼人も人間的には決して悪くはないんだが、冬子には甘いかなあ。
そこには秘密の共有者という引け目があるのかもしれないが。

何も起こらなければ、このままずるずるといってしまいそうな
二人の前に、突如現れた美鳥とスオウ。

この二人もまた複雑な家庭の事情を抱えていることが
後半明らかになってくる・・・


本書は、この若者4人が過去の軛(主に家族からの)から逃れ、
新たな道へ踏み出すまでが描かれる。
もちろんミステリであるから、そこにはある “犯罪” が
絡んでいるのだが・・・

ラブストーリーとしては、落ち着くところに落ち着く結末かな。
登場人物の描写も、少女漫画的というかライトノベル的というか。
このあたりは好みが分かれるかも知れない。

ミステリとしてはちょっと中途半端かもしれないが、読後感は悪くない。

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神の積み荷を守れ・上下 [読書・冒険/サスペンス]


神の積荷を守れ(上) (新潮文庫)

神の積荷を守れ(上) (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/28
  • メディア: ペーパーバック
神の積荷を守れ(下) (新潮文庫)

神の積荷を守れ(下) (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/28
  • メディア: ペーパーバック
評価:★★★

海洋冒険小説「ダーク・ピット・シリーズ」第21作。

第1作の刊行が1973年で、いまだに新刊が出るのだから、
もう45年も続いてることになる。
本作の原書が刊行されたのは2010年だけど、それでも37年。
もうそれだけでたいしたものだと思う。
ぜひ48作まで書いてもらって、
「男はつらいよシリーズ」と肩を並べていただきたい(冗談です)。


NUMA(アメリカ国立海中海洋機関)の特殊任務責任者として登場し、
様々な世界的陰謀を阻止してきた主人公のピットも
巻を追うごとに年を重ね、ついにはNUMAの長官へと登り詰める。
長年恋人関係にあった米国下院議員のローレン・スミスとも結婚し、
さらに成人した息子や娘も物語に加わるようになってきて
ここ何作かは「ピット・ファミリー・シリーズ」(笑)になってきた。


トルコ沖で沈没船の調査をしていたピットは
オスマン帝国時代と思われる船から引き上げた遺物を
トルコへ預けるため、イスタンブールへと向かう。

そこで外遊中の妻・ローレンと落ち合うが
二人が訪れていた博物館が謎の一団に襲撃される。

所蔵品の一部が盗まれ、ローレンは拉致され、強盗たちは逃走する。
ピットは直ちに追跡し、妻の奪還に成功するが、
これが中東地域を混乱に陥れる事件の幕開けだった。


オスマン帝国最後の皇帝メフメト6世の血を引く
実業家・セリク兄妹が今回の黒幕となる。

おりしもトルコは大統領選挙の時期を迎えていた。
セリクたちは歴史的遺物の強奪や聖地へのテロを重ねて、
イスラム教徒の怒りを誘おうとしていた。
兄妹の息のかかった急進的かつ過激な原理主義を標榜する候補を当選させ、
トルコ支配の実権を握るためだ。

それを阻止すべく立ち上がるダーク・ピット。
NUMAの長官職にあっても、相変わらず外洋を駆け巡っている。
今回も相棒のジョルディーノとともに、陸に海に大活躍である。

さらにピットの子供たちも見せ場がたっぷり用意されている。

息子のダーク・ピット・ジュニアはイスラエルの発掘現場にいたところを
セリクの一味に襲われ、危機に陥る。
ついでに発掘を仕切っているイスラエル人女性といい仲になるのは
父親譲りというかお約束というか。
親父が愛妻家になってしまったので、
そっち系の発展ぶりは息子の役回りになってきたのだね(笑)。

一方、娘のサマーは1916年に爆沈を遂げた
英国戦艦ハンプシャー号の謎に迫る。この船に乗船していた、
当時の陸軍大臣キッチナーの日記を追っていくうちに
沈没は事故ではなく、英国国教会による陰謀の可能性が浮上してくる。
どうやら、キッチナーの所持品の中に、
キリスト教徒の信仰を根底から揺るがすものがあったらしい。


さすがに長く続いているシリーズらしく、話の運びは手慣れたもの。
4世紀のガレー船に第一次大戦時の戦艦、
現代では小型潜水艇に大型タンカーと、
様々な艦船が登場するのはまさに海洋冒険ものならでは。
それらを駆使したアクションシーンもうまく盛り込んで
読者を飽きさせない。
そして最終的にはピット、ジュニア、サマーの話は
一つに収斂して結末へなだれ込んでいく。


水戸黄門的なマンネリ感を感じないわけではないが
いい方に考えれば、40年以上にわたって
安定した面白さをキープしてるわけで、それはそれですごいこと。
ひと時の読書の楽しみとしては十分なレベルだと思う。

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トッカンvs勤労商工会 [読書・その他]

トッカンvs勤労商工会 (ハヤカワ文庫JA)

トッカンvs勤労商工会 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 高殿 円
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/02/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

京橋中央税務署の新米徴収官・鈴宮深樹(すずみや・みき)。
口下手で言いたいことも言えずにグッと口ごもってしまうことから
ついたあだ名が “ぐー子”。

直属の上司は、“京橋中央署の死神” と恐れられる
特別国税徴収官(略して "トッカン" )の鏡雅愛(かがみ・まさちか)。

“ぐー子” と ”死神“ のコンビが
様々な税金滞納者と対決する、シリーズ第2弾。

日本橋の大衆食堂《からかわ》の主人・唐川成吉(なるよし)が自殺した。
遺体の傍らには遺書らしきメモ書きがあり、そこには
自殺する前日、税務署に行って鏡に会い、
滞納している税金について話をしたが
ものすごい剣幕で怒鳴られた、と記されていた。

成吉の妻・詠子から相談を受けたのは、
“勤労商工会” お抱えの弁護士・吹雪敦(ふぶき・あつし)。
彼は京橋中央署に現れ、鏡と国税局を相手に
公式な謝罪と損害賠償を求めて訴訟を起こすことを宣言する。

 ちょっとネットで調べてみたのだが、
 “勤労商工会” という名称の団体自体は存在しないらしい。
 経済産業大臣の認可のもとに地域ごとに設立される
 “商工会”というものがあるので、それがこのモデルだろう。

 本作中の “勤労商工会” は、税務行政の改革をスローガンに
 デモ活動なども積極的に行う、税務署の “天敵” として描かれている。

成吉の残した日記など、鏡にとって不利な状況にもかかわらず
本人は外回りや出張に明け暮れ、ぐー子と話す機会もない。
彼女の心配は募るばかり・・・


今回から登場する新キャラもまた濃いメンバーがそろっている。

“ナポリ育ちのジョゼ” と自称する
謎の弁護士・本屋敷真事(ほんやしき・まこと)、
唐揚げ作りの修行に明け暮れる
謎のプー太郎・里見輝秋(さとみ・てるあき)、
如何にも胡散臭いこの二人組は、鏡の幼なじみでもあるという。

 もっとも、鏡は栃木県出身なので、
 本屋敷の “ナポリ育ち” はもうそれだけで充分に怪しいのだが

“はるじい” こと、ぐー子の新しい後輩・錦野春路(にしきの・はるじ)は
古美術商の娘で、美術品の鑑定ではかなりの目利き。
錨貴理子(いかり・きりこ)も新しい同僚で、34歳の既婚者。
バリバリ仕事をこなしていくのだが、そこにはある秘密が・・・

そして今回、堂々の悪役を張るのは
「まあそこは、蛇の道は蛇で・・・」が口癖の弁護士・吹雪。
鏡の訴訟をステップに、何やらもう一段上のことを企んでいる様子。
嫌らしい物言いで、次第にぐー子を絡め取っていく・・・


鏡を相手取った訴訟騒ぎを縦軸に、
様々なキャラたちのユニークなエピソードを横軸に展開する
ユーモア・エンターテインメントの傑作だ。


前作では、自らの過去と向き合ったぐー子が
今作では「現在の自分」について悩み出す。

優秀な上司(自分はまだ独り立ちできていない)、
仕事の早い先輩(自慢じゃないが私は仕事が遅い)、
そして “特技” をもつ後輩(私にはそんなもんはない!)に囲まれ、
ぐー子の悪戦苦闘の日々は続く。

自分はこの組織の中でやっていけるのか、いや、自分に居場所はあるのか。
そして、どうやったら居場所を見つけられるのか・・・

訴えられた鏡のことも心配だ。
“残念女子”・ぐー子さんの悩みは尽きない。

時には悩んで逡巡し、時には後先考えずに猪突猛進する。
読者は前作に続き、この愛すべきヒロインにエールを送るだろう。

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