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暗い越流 [読書・ミステリ]


暗い越流 (光文社文庫)

暗い越流 (光文社文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/10/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★

ミステリ短編集。5編を収録。

「蠅男」
本宮波瑠は6年前に自殺した心霊研究家・左修二郎の孫娘。
私立探偵・葉村晶(はむら・あきら)が波瑠から受けた依頼は
群馬県の僻地にある祖父の家から、母親の遺骨を持ち帰ること。しかし
無人の家を訪れた葉村は謎の男と遭遇、さらには死体を発見する・・・
葉村は毎回のように踏んだり蹴ったりの目に遭うんだが
今回も病院送りになるような悲惨な展開(笑)に。
でもそんな中でもしっかりアタマは回転していて真相を見抜く。

「暗い越流」
大量殺人で死刑が確定した磯崎保。
その磯崎にファンレターを出した人物がいる。
出版社の嘱託社員である “私” は、
「山本優子」なる差出人の素性を探ることになるが・・・
導入部からは予想できない意外な結末に驚くが、
さらにもう一段、不気味なオチが待ち構えている。

「幸せの家」
零細出版社の敏腕編集長・美浦節子が失踪した。
美浦は何者かを恐喝していた形跡があり、
中途採用社員の “わたし” は、美浦の残した資料を元に
失踪の鍵を握るかもしれない “被害者” を探し始めるが・・・
美浦節子の事件をきっかけに、登場人物たちの
“幸せ” の裏に潜むものが暴かれていくのだが
ラストはまたまた不気味なオチに。若竹さんはこのパターンが好きなのか。

「狂酔」
刈谷学(かりや・まなぶ)という青年の独白形式で綴られる。
どうやら、教会の中で行われている集会での発言らしい。
自らの生い立ちから始まり、かつて自分が巻き込まれた “事件” と
この教会との関わりについて語り続けていくのだが・・・
ラストはまたまた不気味なオチに。もうここまでくるとホラーかな。

「道楽者の金庫」
探偵仕事が開店休業状態の葉村晶は
古本屋のアルバイト店員として働き始める。
遺品整理人の真島とともに訪れた後宇多(ごうだ)家で
故人の蔵書を整理していた葉村だが、
そこに故人の娘・時実(ときみ)が現れる。
こけし収集が趣味だった故人の残したダイヤル式の金庫。
その解錠番号を記した “黄金のこけし” を探すことになった葉村だが。
今回は大量のこけしに “生き埋め” になるという
得がたい体験(笑)のおまけつき。


今回は最初と最後を葉村晶もので挟んで締めてるんだが
ミステリとしても真っ当(笑)で、彼女が主役の話は楽しい。
やっぱり後味は悪いよりは良い方が好みです。

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探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに [読書・ミステリ]


探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)

探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)

  • 作者: 東川篤哉
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

鯉ヶ窪学園探偵部副部長の霧ヶ峰涼と、
探偵部の仲間が出くわす事件を描いた連作ユーモア・ミステリ第二弾。


「霧ヶ峰涼と渡り廊下の怪人」
校舎と校舎をつなぐ渡り廊下の中央に倒れていたのは陸上部の足立。
どうやら頭を何かで殴られたらしいのだが、現場に凶器はない。
雨で湿った地面には犯人の足跡もない。
この不可解な状況に出くわした涼だが・・・
いかにも学校だからこそ起こりそうなオチ。

「霧ヶ峰涼と瓢箪池の怪事件」
鯉ヶ窪学園の文化祭当日。探偵部の出し物はなぜか「お好み焼き」。
上級生で部長の多摩川と八橋(やつはし)は調理に余念がないが
そのさなか、モテ男で有名な3年生の大島が学園内にある瓢箪池の前で
何者かに切りつけられるという事件が起こる。
犯人は凶器を放り出し、素手で逃走したが
なぜか現場から凶器が見つからない・・・
なかなか脱力感あふれる謎解き(笑)。

「霧ヶ峰涼への挑戦」
学園祭のミスコン会場へやってきた涼。しかしそこにいたのは謎の美少女。
彼女こそ、探偵部のライバル・ミステリ研究会に所属する大金うるる。
ちなみに彼女の姓は「おおかね」。「ダイキン」ではない(笑)。
エアコン対決ではなく(笑)、ミステリ対決をすることになった涼は
彼女の仕掛ける「架空の密室事件」の謎解きをすることに・・・
うーん、やっぱりこのトリックは反則だと私も思います。

「霧ヶ峰涼と十二月のUFO」
涼の通学路の近くに建つ鯉ヶ窪教会。
その敷地で神父が倒れているのが発見される。
しかし彼の周囲には彼以外の足跡はない。
発見者は鯉ヶ窪学園の地学教師・池上冬子。
UFOマニアの彼女は、「これは宇宙人の仕業だ」と騒ぎ出すが・・・
これもまた脱力ものの真相。

「霧ヶ峰涼と映画部の密室」
映画部の撮影に参加することになった涼。
しかし撮影を終えて学校に帰ってきたら、
映画部の部室に置いてあったはずの40インチの大画面TVが消えていた。
そしてそのTVは、破壊された状態で校内の焼却炉近くで見つかる。
しかし目撃者の証言から、部室と焼却炉の周辺で
大画面TVを抱えた不審人物はいなかったという・・・
いやあでもこのトリックは、ちと無理そうな気がするんだけどねぇ。

「霧ヶ峰涼への二度目の挑戦」
探偵部の集会場所に指定された家へやってきた涼。
しかしそれは、ミステリ研究会の大金うるるが仕組んだ罠だった。
睡眠薬で眠らされた涼が目覚めたとき、
目の前には死体(のふりをした同級生)があった。
しかも家の周囲には雪が積もっており、犯人の足跡がない。
“雪の密室” の謎解きをすることになった涼だが・・・
このトリックは斬新だけど奇抜すぎて、
シリアスな作品でこれをやられたら怒り出す人がいそうだが、
このシリーズなら許されるだろう。

「霧ヶ峰涼とお礼参りの謎」
卒業直前の3月1日。鯉ヶ窪学園では、毎年この日は
卒業する生徒が “お世話” になった先生に “お礼参り” をする
恒例の日となっていた。
生徒をビシビシ指導してきた体育教師・柴田は、
瓢箪池の端でマスク姿の学生に襲われる。
犯人は逃走したが、今回もまた凶器が煙のように消えてしまう・・・
このオチはついにバカミスの領域に入りましたねぇ。


探偵部の3年生である多摩川と八橋は最終話で卒業となるので
シリーズもここで一段落らしい。
でも巻末の解説によると、探偵部ではないけれど
鯉ヶ窪学園を舞台にした連作が雑誌連載されているらしいので、
ひょっとするとまた霧ヶ峰涼や大金うるるに会えるのかもしれない。

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