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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第五章 煉獄篇 を観てきました [アニメーション]


※本編のネタバレはありません。

初日の25日は仕事で行けず、26日になってしまいましたが
私も観て参りました。

予定ではかみさんも一緒に行くはずだったのですが
よんどころない事情がありまして。

最近、夜に夫婦でウォーキングをしている、って
過去の記事に書いたんですが、
4日程前にそのかみさんが腰を痛めてしまい
(何だか重いものを持ちあげたときに “やってしまった” らしいのですが)
接骨院に行ったら「一週間は安静に」って言われて、
(もちろん「ウォーキングなんてもってのほか」でした)
それ以来、家の中で大人しくして静養に務めてきました。

「ヤマト」も観に行く気は満々でいたのですが
結局26日の朝になっても思うほど改善せず、
本人曰く「遠出する自信がない」。

というわけで、私一人での参戦となってしまいました。
(腰痛が収まったら、改めて二人で観に行くつもりですが)

観に行ったのは新宿ピカデリー。
独り身の気軽さ(笑)で、上映開始時間のかなり前に着きました。
グッズ売り場もさほど混んでいなかったので
パンフレットもすぐに買えたのですが
グッズ類はあらかた壊滅状態でした。

そうこうしているうちに上映時間となり、場内へ。
ここではネタバレにならない範囲で一言だけ。

・デスラーの過去がいろいろとスゴい。
・キーマンの背景がいろいろとスゴい。
・地球防衛軍艦隊がいろいろとスゴい。
・白色彗星の本体がいろいろとスゴい。

すみません、語彙力がなくて。
でも、第五章は「いろいろとスゴい」ので・・・(笑)。
特に、予告PVにもあった
「白色彗星に向けて、防衛艦隊が波動砲を斉射するシーン」では
心臓の鼓動がいつになく高まっているのを感じました。

詳しい感想は、例によってイベント上映が終了する
3週間後あたりから載せていこうと思います。


家に帰ってきたらかみさんから質問攻め。
「デスラーって昔何があったの?」
「ナイショ」
「えー!? じゃあ、キーマンってデスラーの何なの? 親子? 兄弟?」
「ナイショ」
「えー!? 新見さんは出てくるの?」
「出てくるじゃん。だってPVにも映ってるし」
「それで?」
「それだけ」
「えー!? 何それ~」

夫婦仲が悪化しそうでちょっと危機感が(笑)。


本日の戦果。
パンフレットは滞りなく買えました。

IMG_0925.jpg
第一週入場者特典。

IMG_0926.jpg
古代と雪とアポロノームですね。

あと小説版の第三巻も、近くのセブンイレブンに到着済みってメールが
7netから来てるんだけど、今日は受け取りに行けませんでした。
明日の朝一番で受け取りに行く予定。


今回の「第五章」は、いつになく疲れる映画で
(悪い意味ではなく、観るにはある程度の気力が必要だということ)
帰宅して夕食をとったらそのままリビングで寝てしまいました。

起きたら午前1時。それから風呂に入り、そして酒を飲みながら
(何せ MIDNIGHT DRINKER ですから)
この記事を書いていたら、いつのまにかもう2時半を回っています。
そろそろ寝ることにしましょう。

それでは皆様、おやすみなさい。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」新聞3 入手! [アニメーション]


仕事が終わって帰宅し、夕食も済んで
茶碗や皿を食器洗い機に放り込んだところで、ふっと思い出した。
「今日って『ヤマト新聞』発行の日だよなぁ・・・」

いや、もちろん今日から「第五章」の公開だというのは知ってましたが
仕事でどうしても抜けられず、泣く泣く見送り。

明日の映画館のチケットはとりあえず購入してあったんだけど
“新聞” の方はすっかり意識から抜け落ちてました。

時計を観たら既に午後9時を回っているのだけど・・・
「ちょっとコンビニ行ってくる」
「え? 今から? 何買いに行くの?」
「今日は『ヤマト新聞』の発売の日だったのだよ」
「えー!? これから買いに行くの? 熱心ねぇ~」
かみさんの半ば呆れたような言葉を背に、
近所のセブンイレブンに出かけました。

しかし・・・売ってない!
売り切れなのか、そもそも仕入れてないのか・・・
でも、過去2回の新聞はどちらもこの店で買ったので
仕入れてないことはないのだろう・・・とも思ったが
無いものは仕方ない。

そこで、その次に近いセブンイレブンへ。

ちなみに車で出かけました。
最初のセブンまでは、自宅から車で2分。
次のセブンまでは、さらに車で5分。

しかし・・・売ってない!
ひょっとして「発売日って明日だったっけ?」って思って
スマホで検索してしまいましたよ。
間違いなく今日が発売日であることを確認し、
今度はそこから車で1分のローソンへ。

そしたら・・・ありました! 残り3部でしたよ(^o^)。
仕入れが何部だったかは知らないんだけどね(笑)。

これが表紙。

IMG_0922.jpg
これが裏表紙。プラモデルの宣伝ですね。

IMG_0923.jpg
中身は「第五章のストーリー紹介」「第一章~第四章の振り返り」

「地球連邦防衛軍メカ解説」「デスラー総統からのメッセージ(何と!)」
「デスラー名言集」「ガミラス/ガトランティス・メカ解説」
「書き下ろしリバーシブルピンナップ」
「神谷浩史インタビュー」「手塚秀彰×甲斐田裕子・スペシャル対談」
「中村繪里子インタビュー」「第六章大予測」
「徹底考察・『デスラー戦法』は可能か?」その他。

実は、見出しだけで本文はまだ読んでません。
このあたりは明日の鑑賞を終えてからじっくり読もうと思ってます。

なぁんて書いてるうちに日付が変わろうとしています。
明日のために英気を養うべく、今晩は早めに寝ます(笑)。

それでは皆様、おやすみなさい。

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GODZILLA 決戦機動増殖都市 [映画]

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昨年11月に公開された『GODZILLA 怪獣惑星』の続編にして
三部作のうちの第二部に相当する。

2048年、ゴジラに追われて地球を脱出した宇宙船アラトラム号。
乗り込んだのは地球人に加え、母星を失って宇宙の放浪者となっていた
異星人ビルサルドとエクシフ、合計5000人。
2万年の時を超えて彼らは地球へ帰還するが(船内時間では20年後)、
地球の生態系は激変し、その頂点にゴジラが君臨していた。

主人公ハルオ・サカキの「対ゴジラ戦術案」が採用され、
アラトラム号の中央委員会は攻撃部隊の派遣を決定する。

彼らは大いに善戦するも、最終的には
体長300mにも達するゴジラ・アースに破れて部隊は壊滅、
ハルオをはじめとする部隊のメンバーも散り散りになってしまう・・・
というのが前作のあらすじ。


負傷して意識を失ったハルオを助けたのは、
人類の末裔らしき “フツア” と呼ばれる人々。

やがてハルオは部隊の残存戦力と合流するが、
生存メンバーの一人であるビルサルドの技術士官・ガルグは、
フツアの民が使う狩猟道具に
“ナノメタル” が使用されていることを知る。

それはビルサルドの科学力が生み出した “自立思考金属体” であり、
彼らが建造し、そして起動に失敗してゴジラに破壊された
"メカゴジラ” を構成する素材でもあった。

フツアの民がナノメタルを採取している場所へ向かったハルオたちは
そこで驚くべき事実を知る。

そこはかつてメカゴジラの建造工場のあった場所であり、
メカゴジラ本体は失われたがその中枢部は生き残っており、
ナノメタルはその指令を受け、機能を停止することなく増殖を続けて
2万年の間に異形の進化を遂げていた。

 ちなみに、部隊の降下場所は現在でいうところの丹沢山系(神奈川)、
 メカゴジラ建造工場があったのは富士山麓。
 距離にしてそう遠くない。

ハルオたちはこの “かつてメカゴジラであった” 異形のものを利用して
ゴジラを撃退する戦術を立案、ゴジラ・アース撃退に挑む・・・


本作は、ビルサルドが主役と言っていいだろう。

このシリーズに登場する2つの異星人は
物質文明(科学技術)のビルサルドと精神文明(宗教)のエクシフ、
というように描き分けがなされていて
本作はビルサルドの軍人がメインの戦闘シーンを仕切ることになる。
(何せメカゴジラを建造したのは彼らだからね)

これから感想を書くのだけど、
どうしてもある程度のネタバレはしないわけにはいかないので
これから本作を観ようという方は
以下の文章は読まずに映画館へ行きましょう。


本作のキャッチコピーは『人類最後の希望が起動する』。
この「人類最後の希望」のところに
<メカゴジラ>ってルビが振ってあるし
なにより映画の宣伝ポスターの背後にはメカゴジラらしき姿も
描かれているんだけど・・・

なんと、メカゴジラが登場しないのだ。
メカゴジラが母体となって生み出された、
ある “もの” は登場するのだけど、これはメカゴジラとは言えない。

もちろん、映画的にはド派手な戦闘シーンは必要で
それはちゃんと描かれてはいるんだけどね。

でもちょっと肩すかしにあったような気分。

でもまあ、観終わって冷静になって考えてみれば、
硬質でリアル志向の本シリーズで、ゴジラとそっくりなロボットが、
本家ゴジラと組んずほぐれつのプロレスまがいの肉弾戦を繰り広げるのは
確かに、そぐわないのかも知れないけどね。


内容的には、前作よりも楽しめる要素が増えたかなとは思う。

新登場のフツアの民だけど、彼らを守護しているのは
どうやらモスラらしいこと。

 これはノベライズを読めばより明確に描かれているんだけど
 ノベライズについてはまた記事を改めて書く予定。

主人公ハルオと、その幼なじみであるユウコの仲も
今作では急進展するのだけど、それ故に
クライマックスシーンでハルオは究極の選択を迫られることになる。

ここでガルグがハルオに浴びせる言葉はけっこう重い。
ハルオの今後の生き方を左右するものになるのだろう。

そして何より、次作(完結編)での “アレ” の登場が確定したこと。
”アレ” なんてぼかしてるけど、ゴジラ映画だったら
やっぱり “アレ” の存在は欠かせないでしょう。

エクシフの母星を滅ぼした存在として、満を持しての登場です。
とはいっても、映画館に置いてあった第三部のチラシをみれば一目瞭然。
公式が率先して盛大にネタバレしてるんですけど(笑)。

 私はメカゴジラが好きなので、まだ登場を諦めてないんだけどね。
 可能性は少なそうだが、完結編で姿を見たいなあ・・・無理ですかね。

もちろんモスラは間違いなく登場するでしょう。
第三部では、いよいよ「地球最大の決戦」が描かれるということですね。

三部作完結編「GODZILLA 星を喰う者」は2018年11月の公開。
これも観に行きます。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」TV放映決定 [アニメーション]


ここ10日ほど、ブログを放置しているんですが
別に体調が悪いとかではありません。
まあ一番の理由は私がナマケモノだからなんですが(笑)。

実は最近、夜にウォーキングをしているのです。
もともとはかみさんが早朝に近所を歩き回っていたのですが
10日ほど前から夜も歩きたいと言い出してきて。
さすがに女性が一人で夜道を歩くのは怖いというので
私もお供することになりました。

とは言っても、夜の9時頃に家を出て、
せいぜい30分くらい近所を歩くだけなんですけどね。
駅前まで行ってちょっとした買い物をしたりしてます。
それでも、公園の近所なんかを歩くと
けっこう同じような熟年カップルに出くわしたりして、
同好の士は意外と多そうな感じです。

しかしながら、たかが30分、されど30分。
かなり気合いを入れて歩くと、汗もかくし筋肉も使うし。
家に帰ってくるとぐったりして
そのままリビングで寝てしまうこともしばしば。

はっと気がつくと真夜中を回っていて。
3日前には、目が覚めたら2時半でした・・・orz

そんなわけで、ここのところブログの更新が滞ってます。
感想を書かなければならない本も10冊以上溜まってるんですが。

もう少し経って、体がこの生活に適応したら、
またそろそろと再開しようと思ってます・・・
って、果たしてその通りに行くのか本人も疑問ですが(笑)。

閑話休題。


さて、「ヤマト2202」の第五章公開も近づき、
公式サイトにもいろいろ新情報が追加されてきましたが、
その中に「今秋よりTV放映決定」というものがありました。

まあ、今の公開ペースでいけば「第六章」公開は2018年の9月頃、
「最終章」公開は2019年の1~2月頃だろうと思ってましたから
もしTV放映があるなら2018年10月~2019年3月くらいかなあ・・・
って思ってたので、予想の範囲内ではあります。
問題は放映時間帯ですね。できれば深夜はやめてほしいのだけど
こればかりはなんとも言えない。

 「2199」のときみたいな日曜17:00の枠はもうないみたいだし。
 案外「タイムボカン」(日テレ系土曜日17:30)の後釜だったり?

思えば私が20歳の成人を迎える年に観た「さらば」がリメイクされ、
60歳の還暦を迎える年にTV放映されるなんて
巡り合わせの不思議さを感じますし、感無量でもあります。

ただ問題は「どう終わるのか」、これに尽きます。


さて、「第五章」ですが、25日の金曜日は私の仕事の都合上、
やっぱり抜けるのは難しそうなので見送りになりそうです。
26日の土曜日はまだ未定ですが、
こちらはかみさんの都合で場所が決まりそうです。
とは言っても新宿の舞台挨拶の回は無理だったので
他の上映回か他の映画館になるでしょう。

どう転んでも、26日のうちには必ず本編を観るつもりですが。

いったいどんな「衝撃」が待っているのか。
期待よりも不安が大きいのですが(笑)
過度な期待はせず、とはいっても過度の悲観もせず
淡々とその日を待っているところです。

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闇の喇叭 [読書・ミステリ]


闇の喇叭 (講談社文庫)

闇の喇叭 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/07/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★

我々の世界とは異なる歴史を辿ったもう一つの日本。
そんなパラレルワールドを舞台とした連作長編ミステリのシリーズ。

冒頭、20ページほどをかけて第二次大戦終盤からの歴史が語られる。
我々の世界との “ずれ” も最初はわずかなものだったのだが、
それがだんだん拡大していく。

作品世界での日本は、第二次大戦末期に北海道がソ連の侵攻を受ける。
召和(しょうわ)20年9月の終戦後もそのままソ連の占領が続き、
北海道は<日ノ本(ひのもと)共和国>として独立することとなり
日本は分断国家として戦後の歴史を歩むことになる。

召和(しょうわ)24年、日本を舞台に
米ソの代理戦争となる<日本動乱>が勃発、
やがて休戦に至るも、二つの日本は「戦争中」のまま対峙を続けていく。

 要するに朝鮮半島の運命をそっくり日本に置き換えたような歴史が
 進行しているのだ。
 ちなみに朝鮮半島は<大韓共和国>として単一国家のまま存在してる。

そして作品世界の “現在” は、平世(へいせい)21年と呼ばれる時代。
準戦時体制を続ける日本は、
<日ノ本共和国>からのスパイ潜入などもあり、
“北” へ対抗姿勢を強め、国民の “統制” に注力するようになる。
同時に反米気運も高まり、方言の禁止と標準語使用の推奨、
そして外来語(英語)使用の自粛が進められていく。

探偵という存在もまた体制への反逆分子と見做されていた。
犯罪捜査は警察(国家権力)にのみ許された行為であり
民間人による捜査(私的探偵行為)は違法となっていたのだ。

シリーズの主人公は、東北の町・奥多岐野で父と二人暮らしの
高校2年生、空閑純(そらしず・じゅん)。

父は勇、母は朱鷺子(ときこ)。
純は名探偵と呼ばれた二人の間に生まれたが
彼女が14歳の時、母はある事件を調査中に消息を絶った。

勇と純は二人で母の故郷・奥多岐野に移り住み、
父は翻訳を生業に、娘は学生として生活しながら
母の実家で朱鷺子からの連絡を待っている。

ある日、奥多岐野の山道近くで男の全裸死体が、
さらに崖下からは別の転落死体も発見される。
殺人の嫌疑をかけられたのは純の友人の母親だった・・・


探偵行為が禁止されたパラレルワールドの日本にあって、
“名探偵の子” として生まれた宿命を背負った純の成長を描く、
おそらく大河シリーズになりそうな作品。

 もちろん、本作だけでもミステリとして成立しているし
 巻末の後書きによると、本来シリーズ化は予定しておらず
 単発の長編だったらしい。
 しかしその後、作者は続編の執筆を決意するのだが
 いざ書き始めるといろいろあって・・・というのは
 本書の内容には全く関わりのないことなので省略(笑)。


本書の終盤、純は “禁じられた私的捜査行為”、
すなわち探偵として事件に関わり、
最終的に父・勇の助力もあって真相解明に至るが
その “推理” の過程を警察に察知されてしまう。

そのため勇は、警察類似行為(=私的探偵行為)を行ったということで
警察に逮捕されてしまう。

一人残された純は、母を探し出すために高校を退学し、
叔父夫婦の住む大阪へ向かうことを決意するところで本書は終わる。

 実は今、その第2巻「真夜中の探偵」を読んでいるところ。
 叔父夫婦の世話にならず、大阪で一人暮らしを始めた純が
 ある殺人事件に巻き込まれていく様子が描かれている。


本格ミステリではあるのだけど、
パラレルワールドSFの雰囲気もけっこう濃厚。

 異世界の日本社会を取り巻く圧迫感・閉塞感が
 シリーズ全体のトーンを暗く、息苦しいものにしている。
 その世界ならではの約束事による事件やトリックを可能にするための
 SFミステリ的設定ともとれるし、我々の世界への風刺ともとれる。
 案外、そっちが主目的かも知れない。

探偵志願の少女が事件に巻き込まれる冒険小説の趣もあるけれど
純の人間的成長を描く青春小説としての要素が一番大きそうだ。


なにより、純が不憫でならない。
両親が探偵だったのは彼女のせいではないんだが
それによって彼女は過酷な運命を歩むことになる。
しかし純は挫けず、強い意志を持って生きていく。
とっても健気なその姿勢に、全力で応援したくなってくる。

いつの日か、彼女が心から笑える日は来るのだろうか。

第3作「論理爆弾」も手元にあるので近々読む予定。

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丑三つ時から夜明けまで [読書・ミステリ]


丑三つ時から夜明けまで (光文社文庫)

丑三つ時から夜明けまで (光文社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

警視庁の特別研究チームが、ある現象の観察に成功する。
死んだ直後の人間からある種の電気エネルギーが分離することを。

分離したエネルギーは、あたかも “意思” を持つように移動し
生きた人間に対し心臓発作を起こさせるなどの物理的影響力を持つ。

エネルギーの正体は、我々が従来 “幽霊” と呼んできたものに近く、
元々の肉体が持っていた人格に極めてよく似た “精神” を持っていた。

やがて、この “幽霊” に関して驚くべきことが判明していく。

消滅するまでの “寿命” が約1年であること、そして
肉体の死が衝撃的であればあるほど、生じる “幽霊” の力も強いこと。

つまり、突発的な事故や殺人事件の被害者などは、
きわめて強い霊力をもつ “幽霊” を生み出すのだ。

“幽霊” はエネルギー体であるのでどんな場所でも入り込むことができる。
厳重に警備された密閉空間であろうとも。
“幽霊” は、どんな不可能犯罪でも起こすことができるのだ。

“幽霊” による犯罪を取り締まる必要に迫られた警視庁は、
静岡県警に幽霊犯罪専門の特殊部隊を設立、試験運用を始めた。
それが静岡県警捜査五課である・・・


という設定のもと、展開される連作ミステリ。
“幽霊” というホラーな存在を “実在するもの” とし、
その特性もきっちり細部まで規定することで
ミステリの一要素として組み込んでいる。

収録作は5編。
「丑三つ時から夜明けまで」「復讐」「闇夜」「幻の夏山」「最後の事件」

この5つの事件に静岡県警捜査五課が挑むわけだが
当然ながら “幽霊” なんてものを相手にするのだから
メンバーもみな普通の刑事の枠から大きくはみ出している。

表紙のイラストに描かれているのが五課の刑事たちなのだが
とてもそうとはおもえないだろう。

全身黒ずくめで髪を後ろで束ね、丸いサングラスをかけた男。
攻殻機動隊のバトーみたいなのが五課の課長・七種(しちぐさ)。
そして白装束の怒木(いするぎ)、袴姿の車(のり)など
みんなおよそ刑事とは思えない出で立ち。
極めつけは入戸野(にっとの)。なんと人形を抱えた少女だ。

彼らが追うのは生身の人間ではなく、容疑者としての “幽霊”。
事件の関係者で、一年以内に死んだ者が対象だ。

現場にこんな異様な連中が乗り込んでくるんだから、
生身の人間相手の捜査一課の刑事たちが面白いはずがない。
当然ながら一課長・米田と五課長・七種は犬猿の仲。

物語は米田の部下である一課の刑事、“私” の視点を通して語られる。
一課の刑事でありながら霊感体質をもつ “私” は、
毎回、五課に協力する羽目になって事件に関わっていくわけだ。


ユニークな要素を取り込んだ、一種のSFミステリともいえるだろう。
でも、本書の星の数が今ひとつなのは、
この要素がうまく機能しているような感じがしないから。

“幽霊” ならではのストーリー、展開、トリックなどを盛り込んだ
面白いミステリが読めるかと思ったのだけど
あまりうまく活かしているように思えないんだよなあ。

一風変わったキャラクターを集めた五課の面々も
それぞれの特性や、五課に加わった生い立ちなんか掘り下げると
面白くなりそうな気もするんだけど、
キャラごとのユニークな特性が発揮される場面も少なく
なんだか人数あわせに揃えられただけみたいな印象もする。

まあこれは分量の問題もあるかな。
短編5編、トータルで一冊分の量では
そこまで描くのは無理だったのだろう。

ならば続編はどうかというと、掉尾の「最後の事件」を読むと
とりあえずこの設定での捜査五課の物語は本書で打ち切りっぽい。

舞台を改めて、試験運用ではなく
各都道府県で本格運用が始まった時代の物語がいつの日か語られるのなら、
彼らの活躍も再びそこで描かれるのかも知れない。

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二重螺旋の誘拐 [読書・ミステリ]


二重螺旋の誘拐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

二重螺旋の誘拐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/10/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

本書のタイトルを見て、昔『二重螺旋の悪魔』っていう
ド派手な長編アクションSFがあったのを思い出した。

内容はとっても面白かったんだけど、作者は
「SFってレッテルを貼られると売れるものも売れなくなる。
 この作品をSFって呼ばないでほしいし、私もSF作家ではない」
とかのたまわっていたなあ・・・

まあ当時は “SF冬の時代” とか言われてたから、
仕方なかったのかも知れない。
今なら堂々とSFって名乗ってもいいんじゃないかって思うんだけど。

ちなみに『-の悪魔』の方の “二重螺旋” はDNAの構造を指している。

本書『-の誘拐』の方の “二重螺旋” はどうかというと
薬学部が舞台になっているもののDNAはほとんど関係ない。
いや、まったく関係ないわけでもないんだが・・・

閑話休題。


香坂啓介は、大学の薬学部に助手として勤務している。
彼には15年前に交通事故で命を落とした茉奈(まな)という妹がいた。

妹の死のトラウマにとらわれたままの啓介は
やがて学生時代の先輩・佐倉雅幸の一人娘・真奈佳(まなか)に
妹の面影を重ねて可愛がるようになった。

その真奈佳が行方不明になり、やがて雅幸とその妻・貴子のもとへ
誘拐を告げる電話がかかってくる。

雅幸は海外で薬学を学ぶための留学資金を貯めようと
アルバイト生活の傍ら語学の勉強に励み、
妻・貴子も和菓子屋で働きつつ内職もこなしている。
経済的に決して楽ではない二人に、
身代金として課せられた額はあまりにも大きかった・・・

物語は啓介のパートと雅幸のパートがほぼ交互に描かれていく。

ミステリであるから、メインである誘拐事件も
当然ながら単純なものではなく、裏がある。

一方、啓介のパートにも、彼が誘拐事件に関わっている描写がある。

本書の裏表紙にある惹句には
「啓介の物語と雅幸の物語が二重螺旋のように絡み合う」
って書いてあるんだが、結末まで読み終わり、
改めて全体のストーリーを俯瞰してみると
この “二重螺旋” というのがまさに絶妙、
本書にぴったりなタイトルであるのがわかる。


作者はミステリ作家ではあるけれど、デビュー作以来、
どちらかというとラブコメ絡みのユーモア・ミステリを発表してきた。
しかし本作はいささか毛色が異なる。

幼女が交通事故死したり誘拐されたり、
両親が必死になって探したり金策に走り回ったりと
家族の苦悩が描かれるシーンが続き、
いつものライトな感覚はかなり控えめ。

そして、今までの作品ではラブコメ要素やSF・ファンタジー要素の
占める割合が大きく、ミステリ度としては “やや薄め” に
感じられるものが多かったのだが・・・

ネタバレになりそうなのであまり詳しく書けないけど
ミステリ度は今まで読んだ中ではいちばん高いと思う。

今までの作風から、ライトノベル的な軽いテイストで
楽しく読めるものを書く人だと思ってたんだけど
いつのまにかミステリ作家としても成長していたんですねえ。

 はじめから技量があったけどあえて隠してたのかも知れないが。

新境地を開いた、と言うと月並みな表現だけど
作者の持っている引き出しは予想以上に多そうです。

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セーラー服とシャーロキエンヌ 穴井戸栄子の華麗なる事件簿 [読書・ミステリ]


セーラー服とシャーロキエンヌ 穴井戸栄子の華麗なる事件簿 (角川文庫)

セーラー服とシャーロキエンヌ 穴井戸栄子の華麗なる事件簿 (角川文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/08/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

作者のデビュー作であり、代表作の一つでもある「天帝」シリーズ。
本書はそのスピンオフともいえる作品。
時系列的には第1作「天帝のはしたなき果実」より前と思われる。

愛知県立勁草館高校の2年生、吹奏楽部員の穴井戸栄子のもつ
もう一つの顔、それが “名探偵” だ。
とはいっても、この作品世界での探偵は “探偵士” という資格がないと
名乗れず、その探偵士になるには大学で単位を取って
国家試験に合格しなければならないので、
もちろん栄子さんはまだ “探偵” ではない。
そこのところはうまく切り抜けてる(ごまかしてる?)のだけど、
そのへんは割愛。

シャーロキエンヌ(ホームズかぶれ)の栄子さんに振り回される
助手(というか下僕か奴隷)を務めるのが、
同級生にして栄子さんと同じ吹奏楽部員の古野まほろくん。

そんな二人が出会う怪事件を綴った連作短編集。


「獅子座連盟 THE LEO'S LEAGUE」
栄子の同級生・稀音(きねや)いずみが始めたアルバイト。
平日の午後7時から9時までの2時間、ひたすら文字を書くこと。
それも毛筆で、半紙1枚に漢字1文字ずつ。そして週給が24,000円!
この破格の待遇の裏に潜むものは何か。

「赤いルピア THE ADVENTURE OF THE RED RUPIAH」
栄子の “探偵事務所” のある姫山市を暴風雨が襲った夜。
パトロール中だった姫山警察署の鉄途隷人(てつと・れいと)警部は
不思議な人身事故に遭遇する。
二台の自転車が衝突し、一方は逃走。残った方に乗っていた女性は
「あたし、権現様のスイカを壊してしまったァ!」と叫んで
こちらも風雨の中に消えてしまったのだ・・・

「だんだらの紐 THE ADVENTURE OF THE DANDARAD BAND」
栄子の同級生・琴柱(ことじ)エリナの母が再婚した相手は
水野艪色人(ろいろと)子爵。華族ではあるが財産はなきに等しく
琴柱家の資産目当ての結婚であった。
そして母が他界した今、水野子爵はエリナとその姉、
二人を亡き者にせんとの野望を発動させつつあった・・・

「六つの家康公 THE ADVENTURE OF THE SIX IEYASUS」
関ヶ原390年を記念して、蹴田(けるた)商会が神君家康公の彫像を
500体、限定生産した。うち6体には特別に絵付け(彩色)して。
しかし、店頭に置いたそのうちの1体が
バラバラに破壊されるという事件が起こる。
どうやら犯人は、6体すべての破壊を狙っているらしい・・・


タイトルや内容紹介を見てもらえば、
有名なホームズ譚のパロディであることは一目瞭然。
だから元ネタどおりのオチのはずがない・・・と思ったりするが
そのへんが一筋縄でいかないのが本書。
“名探偵” 栄子嬢の “名推理”(迷推理) が楽しめる。

作者の作品は、大半が第二次大戦以降の歴史が異なる
パラレルワールドの “日本帝国” を舞台に展開しているが、
本書に登場する愛知県もまた我々の世界とは異なる時空になっている。

なにせ家康公を侮辱すると犯罪になるくらい
徳川家康が文字通り神格化されていたり、
家康の旧領5カ国を日本帝国から分離独立させることを掲げる
IRA(Ieyasu Restoration Association:家康公再興結社)なる
テロ組織まで暗躍しているとか。
そんなエキセントリックな舞台設定の中で
我らが栄子さんが大暴れするわけだ。

まあ、基本ラインがユーモア・ミステリなので
細かいことは気にしないで笑っていればいいんだけど。


そして、各編の冒頭と末尾には “銛矢挺(もりやてい)教授” なる
人物がらみの短いカットが挿入されていて、それぞれの事件の裏で
“教授” が糸を引いているらしきことが仄めかされている。

“銛矢挺教授” というのは「セーラー服と黙示録」シリーズの方に
登場している名前。時系列的には本書の少し後の話になると思われる
「-黙示録」シリーズは、作品の舞台も近いし
何よりまほろくんの妹・みづき嬢がレギュラーとして登場している。

今後、まほろくんが主役を務めている「天帝」シリーズの方にも
“教授” が登場してくるっていう伏線なのかしら?

あと、「穴井戸」って変わった名字だなあと思ってたんだが
どうやらDianaという女性名を逆読みしたものらしい。なるほど。

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行き先は特異点 年刊日本SF傑作選 [読書・SF]


行き先は特異点 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

行き先は特異点 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★

2016年に国内で発表された短編SFから選ばれた19編と
第8回創元SF短編賞受賞作1編、計20編を収録。
今回で通算第10巻を達成したとのこと。
昔と比べてSFを読む分量が格段に減ってしまった私には
国内のSF作家さんたちの現状を知ることができる格好のガイドである。

とはいっても、SFにはさまざまなサブジャンルがあり
100人の作家がいれば100通りの語り口がある。
このアンソロジー・シリーズの第1巻の頃から感じていたことだが
自分がトシをとってきたせいか
理解できない、アタマにサッパリ入ってこない作家さんが増えてきた。
だから評価も「いい・悪い」ではなく「わかる・わからない」が
メインになってしまうという、いささか格好の悪いことに。
でもまあ、そういう風にしか
SFに接することができなくなりつつあるので仕方がないかなあ。


○理解できたし、面白いと感じた作品

「行き先は特異点」藤井太洋
スマートフォン、タブレット、ドローン、自動運転車・・・
現在進行形の超高度IT化社会のほんのちょっと未来の姿。
これならわかる(笑)。

「人形の国」弐瓶勉
漫画作品。遙かな遠未来、文明が崩壊しつつある大都市が舞台。
長編作品の前日譚とのことだが、本編を読みたくなる。
ちなみに「シドニアの騎士」「BLAME!」もこの人の作品。
「シドニア-」は大好きでアニメも見てた。三期やらないかなあ・・・

「スモーク・オン・ザ・ウォーター」宮内悠介
悪性の脳腫瘍のために寝たきりだった父に起こった異変。
本作の内容とは関係ないが、私自身はタバコは吸わないのだけど
禁煙を強制するかのような最近の風潮に押しまくられる愛煙家の方には
ちょっぴり同情してる。

「性なる侵入」石黒正数
漫画作品。わずか8ページのドタバタ劇。
脱力もののオチなので “バカミス” ならぬ “バカSF” とでも言おうか。
でもこの作者、面白いなあ。もっと読んでみたくなった。

「悪夢はまだ終わらない」山本弘
児童小説を、というオファーで書いたらしいけどボツになったとのこと。
そりゃそうだろうなあ。特に小中学生には読ませられんだろこれ。
そうだね、よい子のみなさんは高校生になったら読んでみるといいかな。
いい意味で “SFショック” が味わえるかも。

「海の住人」山田胡瓜
漫画作品。人間型ロボット(ヒューマノイド)に
人間と同等の権利が与えられて、人間と共存している世界の物語。
短編読み切りシリーズのうちの1編なんだが
他の作品も読んでみたくなった。

「プテロス」上田早夕里
遠未来、遙かな異星での生態系を描いた直球ど真ん中のSF。
やっぱりこういうものも時には読みたくなるよねえ。


○理解はできたが面白さがわからない作品

「バベル・タワー」円城塔
この作者には珍しく、何が書いてあるのかはわかった(笑)。
ちょっぴり往年の筒井康隆みたいな感じを受けたけど
面白いかどうかまではよくわからん。

「幻影の攻勢」眉村卓
老境に入ると、SF作家というのはこんなことを考えるのかな・・・
という作品。内容は十分理解できるんだが
身につまされすぎて素直に「面白い」って言えない(笑)。

「太陽の側の島」高山羽根子
太平洋戦争中の、出征した夫と残された妻の間の往復書簡、
のように始まるのだが実は・・・という作品。
ただまあ、設定からして楽しい作品にはなりようもないので・・・

「玩具」小林泰三
なんと官能小説として書かれたらしい。たしかにエロい(笑)。
ラストはホラー。なんでこれがベストSFなのかはいささか疑問。

「古本屋の少女」秋永真琴(写真・スミダカズキ)
長編ファンタジーの導入部というかワンシーンという雰囲気。
これだけでこの作者さんを評価はできないなあ。
機会があったら長編を読んでみたい。

「洋服」飛浩隆(写真・スミダカズキ)
SFなのはわかるんだけど(笑)。

「二本の足で」倉田タカシ
“スパムメールが二本足で歩いてきたら” っていう発想はスゴいが。

「スティクニー備蓄基地」谷甲州
作者の代表作の一つ、《航空宇宙軍史》シリーズは
何冊か読んだんだけど、さほど面白いという印象がなかった。
本作はそれに続く《新・航空宇宙軍史》の1編。
ああ、“外惑星動乱” なんて懐かしい言葉だなあ・・・


○申し訳ないが私には理解できない作品

「点点点丸転転丸」諏訪哲史
お笑い芸人の一発ギャグみたい。

「鰻」北野勇作
これも官能小説として書かれたらしい。
たしかにエロいが私の趣味ではないので・・・(笑)。

「電波の武者」牧野修
ホラーなのはわかりますが、それ以外は理解不能。

「ブロッコリー神殿」酉島伝法
この人が日本SF界にあって、とびっきりの個性派なのは認めます。
でも、私には無理(笑)。


○第8回創元SF短編賞受賞作

「七十四秒の旋律と孤独」久永実木彦
人類が超光速航法を手にして、宇宙に広がった時代。
主人公は貨物宇宙船の警備ロボット・“紅葉”。
超光速航行中、宇宙船が高次空間にあるのは74秒間だが
人間はその時間を感知できない(一瞬に過ぎる)。
そのときを狙って襲ってくる、人工知性体による海賊行為から
船を守るのがその任務。
“紅葉” と人工知性体との74秒間の戦いを描くスペースオペラであり、
そしてSFに登場するロボットが総じてそうであるように
“紅葉” もまた実に健気で、オーソドックスなロボットSFでもある。
そういう意味では実にわかりやすいし素直に感動できるSF。
選評にあるように新鮮味には乏しいかもしれないが
私はこの作品は気に入ったよ。
今後が楽しみな作家さんになりそうである。

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処刑までの十章 [読書・ミステリ]


処刑までの十章 (光文社文庫)

処刑までの十章 (光文社文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/10/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

連城三紀彦という作家は “超絶技巧な短編” に定評があって
今まで読んだ長編に対しては正直なところ、
そんなに “スゴい” という印象がなかったのだけど
(もちろん、水準作以上のレベルは備えているけれども)
本書は文句なくスゴい作品だと思う。

作者は2013年10月に逝去されたのだが
本書の親本(単行本)はその1年後の2014年10月の刊行。

作者には未刊行の長編がまだ何作かあるらしいのだけど
本作は “遺作長編” という位置づけらしいので
時系列的には最後に書かれた長編なのだろう。


まず章のタイトルからして奇抜だ。
「第一章 午前五時五十九分」、
そして「第二章 午前五時六十分」、
続いて「第三章 午前五時六十一分」・・・このまま続いて
最終章が「第十章 午前五時六十八分」となる。

この不可解な時刻表記だが、作中にたびたび登場してくる。
その意味するところもまた本書の謎の一つだ。


国分寺市に住む平凡なサラリーマン・西村靖彦。
妻の純子とは結婚して11年を数える。
しかしある朝、靖彦は出勤のため家を出てそのまま失踪してしまう。

目撃者の情報から、靖彦は国分寺駅で多摩湖線に乗ったことがわかった。
そのまま湖畔の旅館に向かい、そこで女と密会したらしい。

靖彦は蝶の蒐集を趣味としており、それを通じて
四国の土佐清水市在住の女性と知り合っていた。
密会相手はその女性と思われた。

一方、靖彦が失踪した日の早朝、
その土佐清水市では放火事件が起こっていた。
しかも前日には消防署宛に犯行予告ともとれる葉書が届いていた。
「明日午前五時七十一分、この町で燃え上がる火に気をつけてください」

火災現場からは男の焼死体が発見され、
発火直後に現場を立ち去った若い女性がいたことも判明する。


靖彦の弟・直行は、都内の楽器店勤務の傍ら
音楽教室でヴァイオリンを教えている。
彼は密かに義姉の純子への愛情を募らせていた。

直行は純子とともに靖彦の行方を追い始めることになるが
本書は主に直行の視点から語られる。

二度の流産を経て、靖彦との間の子に恵まれなかった純子。
そのせいもあってか、趣味に没頭するようになった夫。
10年を超える結婚生活にも微妙な陰りを見せ始めた夫婦仲。

純子を愛しながらも、その一方で実は彼女こそ
“裏ですべての糸を引いている” のではないかとの疑いを拭えない直行。
そんな二人の “危うい関係” をも描きながら物語は進行する。

やがて靖彦が会社の金を横領していたらしいこと、
直行が調査に訪れた高知では、
放火事件に関わる意外な事実が明らかになったり、
後半になるとバラバラにされた男の死体が四国各地で発見されるなど
次々に新しい展開が繰り出されていく。

一人の男の失踪と放火という、一見シンプルな事件なのに
この二つが組み合わさり、そこに複数の男女の愛憎が絡んでくると
とたんに複雑怪奇な物語へと変貌していく。


ミステリ的には “多重解決もの” と捉えることもできるだろう。
なにしろ長大な物語なので、途中で様々な “推理” が示される。
しかし上述のように新しい展開があったり新事実の判明によって
その都度、それがご破算となって再び新しい解釈が求められる。

そしてミステリ的な興味と同じくらい、
あるいはそれ以上にページをめくらせる原動力となるのは
作者の十八番ともいえる登場人物たちの恋愛情念描写。
特に純子と直行の、時に惹かれ合い時に反撥し合う “禁断の愛” の姿だ。


長さの割に登場人物は多くないが
序盤で脇役やモブキャラ的に登場した人物が
中盤以降、重要キャラとして再登場したりするので油断できない。
同様に、些細なこととして描かれていたものに
深い意味があったりするのでこれも見逃せない。
まあ、そのへんはミステリとしては当たり前かもしれないが
そういう意味では全編これ伏線。無駄がない作品とはいえるだろう。

そして二転三転する物語のラストで示される、真相の意外さは特筆もの。
ミステリを読み慣れた人でもこれは驚くだろう。
まさに “連城マジック” が炸裂する。

文庫で600ページ近い大作だけど、読み通すのに全く苦はなかったよ。
あの “連城マジック” を長編で堪能できた、至福の時間でした。

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