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はるひのの、はる [読書・ファンタジー]

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/04/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

映画化もされた「ささや」シリーズの最終巻。

「ささや さら」のヒロイン・さやの息子、ユウスケが主人公。

小学生になったユウスケの前に、
ある日「はるひ」と名乗る少女が現れる。
初対面のはずなのに、なせかはるひは
ユウスケのことをよく知っているよう。

はるひはその後も、たびたびユウスケの前に姿を見せては
その都度、無理難題を押しつけるのだった。

やがて小学生から中学生となり、そして高校生になったユウスケは
入学式の直前、はるひにそっくりな少女・華(はな)に出会う・・・


読んでいると読者は最初のうち混乱するかも知れない。
詳しく書くとネタバレになるのだが
本書に描かれる世界は微妙にゆらいでいる。
過去にあったことがないことになっていたり、
死んだはずの人が生きていたり。

どうやら、SFで言うところのパラレルワールド的な
二つの世界のことが語られているらしいと見当がついてくる。

その二つの世界の関係が終盤になって明かされるのだが
その真相、そしてそれを現出させた "ある人" の想いに触れて
涙腺がゆるむ人もいるのでないかな(私がそうだった)。

 何といったらいいか。
 梶尾真治の一連の作品群に通じるものを感じる、って書いたら
 分かる人は分かるだろう。

本書をどのように読むか。
ミステリ要素もあるしファンタジー要素もあるし
もちろんSFとして解釈することも可能だ。
しかもその3つの要素がお互いに邪魔しあうことなく、
渾然一体となって、独特の雰囲気を醸し出している。

エピローグでは成人となったユウスケが描かれるが
彼をはじめ、登場人物みんなに幸福な未来が訪れる。
たまにはこんな温かい物語に身を委ねるのもいい。


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