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潜航せよ [読書・冒険/サスペンス]

潜航せよ (角川文庫)

潜航せよ (角川文庫)

  • 作者: 福田 和代
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/05/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★

作者自ら「日本一、運の悪い自衛官」と宣う
安濃将文一等空尉を主人公としたサスペンス・シリーズの第2作。

前作『迎撃せよ』で、新型ミサイルを搭載した
自衛隊の戦闘機がテロリストに強奪され、
日本政府を脅迫する事件に巻き込まれた安濃。

事件から3年、ほとぼりを冷ますための硫黄島での勤務が明け、
北対馬にある長崎県海栗島レーダー基地勤務を命じられた安濃は、
フェリーで対馬へ渡る。

そのころ、劉曉江(りゅう・ぎょうこう)を艦長とする
中国人民解放軍に所属する原子力潜水艦《長征七号》は
青島(チンタオ)を出航、日本海へ向かう。

《長征七号》が搭載する核弾頭ミサイルの発射管室で
謎の爆発が起こり、現場に残された破片から
何者かが爆破物を仕掛けていたことが判明する。

時を同じくして北京では、
クーデターを目論む一団が暗躍を始める。
そのメンバーの一人は、劉艦長の弟・亜州に接触しようとしていた。

安濃のかつての部下、遠野真樹一尉は福岡の基地に異動していた。
安濃が対馬に配属になったことを知った彼女は、
海栗島基地に連絡を入れるが、
電話に出た男が安濃ではなかったことに愕然とする。
何者かが安濃の名をかたっている・・・


いずことも知れない場所に拉致・監禁された安濃、
彼の行方を追う遠野一尉、
《長征七号》内部で進行する陰謀に苦慮する劉艦長、
そしてクーデター勢力に誘われる亜州。

物語はこの4つのラインで進んでいく。


基本的にはミリタリー・サスペンスは好きなんだけど
本書の評価がいまひとつなのはいくつか理由がある。

ここから先はネタバレなのでご注意を。

まず、安濃があんまり活躍してない。
主役ではあるのでもちろん出番がいちばん多いんだけど、
今回は監禁場所から逃げだすこと、追っ手を振り切ることに
かかりっきりで、ほぼそれだけで終わってしまう。
つまり肝心の事件の解決にはほとんど関わっていないのだ。
そしてヒーロー的に目立つのは、終盤の遠野一尉の大活躍(笑)。

《長征七号》内のごたごたも、結局は劉艦長の手腕で収束するし、
クーデター騒ぎにいたっては、安濃たちが全く関わらないまま解決する。

だいたいタイトルがよくないような気もしてる。

前作『迎撃せよ』だって、テロリストの操縦する戦闘機を
迎撃するシーンはなかったし。

本書だって、『潜航せよ』なんてタイトルがついたら
私みたいな「潜水艦もの」大好き人間は
爆発で手負いになった中国原潜vs海自潜水艦の
追いつ追われつの息詰まるような追撃戦が描かれるのかなって
勝手に思ってしまうじゃないか。

もっとも、エピローグまで読んでくると、
このタイトルがダブルミーニングだったことが
分かるんだけどねえ・・・

そして、同じくエピローグで、作者がこのシリーズを
どの方向に持って行こうとしていたのかが分かる。

 要するに、次作からこのシリーズは
 next stage に入ることが予告されるのだ。
 うーん、果たして安濃くんは
 和製ジ○○○・○○○ンになれるのでしょうか?

なんだか文句ばかり書いてるけど、決してつまらない訳じゃない。
安濃くんの人柄は好きだし、相変わらす沙代さんはいい嫁だし、
遠野さんの "戦士" ぶりもカッコいいし。

要するに、タイトルから想起されるストーリーと、
実際の内容の差が大きいように感じられるんだな。

 「おまえが勝手に妄想してるだけじゃん」って異論は認める。

内容に即した『脱出せよ』とか『脱走せよ』とかのタイトルだったら
また評価も変わってたかも知れない。

前作で登場していたテロリストのメンバーの一人が
今回も登場している。
ひょっとしたら彼はシリーズキャラクターになって、
今後も安濃の敵として登場し続けるのかも知れない。

劉艦長の弟・亜州も今後再登場しそうだし、
本書は今後のシリーズに登場するキャラの
"紹介編" だったりするのかも知れない。

とりあえず、next stage には期待してます。
すでに第3作『生還せよ』が刊行されているとのことなので、
文庫になったら感想を載せます。


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