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かがやき荘西荻探偵局2 [読書・ミステリ]


かがやき荘西荻探偵局2 (新潮文庫)

かがやき荘西荻探偵局2 (新潮文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/02/28
  • メディア: 文庫


評価:★★★


 シェアハウス「かがやき荘」で暮らすアラサー女子3人組が、持ち込まれた事件を解決するために奔走する。すべては滞納している家賃を相殺してもらうため(笑)。シリーズ第2巻。


 西荻窪のシェアハウスに暮らすアラサーの女子3人組。女子高生のコスプレを普段着(笑)とする関礼菜、怪しげな関西弁を話す占部美緒、ミステリ・オタクの小野寺葵。3人とも働いていた会社をクビになってフリーター状態。

 家賃の支払いに困った彼女らは、大家である実業家・法界院法子(ほうかいん・のりこ)が持ち込む事件を解決するべく、”アラサー女子探偵団” となる。探偵活動の見返りに家賃をまけてもらうためだ(笑)。


「Case 1 若きエリートの悲劇」
 「磯村重機」社長の磯村佐和子は法界院法子の友人だ。彼女の息子・光一には星野香織という婚約者がいるのだが、息子がなかなか結婚に踏み切ろうとしないことに悩んでいた。
 ひょっとすると、他に意中の女性がいるのではないか? アラサー3人組は法子の命によって光一の尾行を始めることに。
 しかしその最中、当の光一が公園で撲殺死体となって発見される。しかも遺体は全裸にされていたのだ・・・
 死体の服を脱がす作品は過去にもあったけれど、これはまたユニークな理由だ。


「Case 2 ビルの谷間の犯罪」
 西荻窪のビル街で若い女性の刺殺死体が発見され、現場に居合わせた礼菜が容疑者になってしまう。現場は5階建てマンションと4階建て雑居ビルに挟まれた、幅1mほどの "谷間" だ。現場に向かった葵と美緒は、そこで被害者の同僚女性と出会う。
 彼女によると、被害者は上司と不倫していたという。そしてその相手は、現場のマンションの5階に住んでいた。しかしマンション玄関にある防犯カメラには、犯行時に彼が出入りする姿は映っていない・・・
 シリーズのサブレギュラーともいえる神楽坂刑事が、なかなかいい味を出してる。毎度のことながらキャラ同士の掛け合いが楽しい。


「Case 3 長谷川亭のありふれた密室」
 和食『はせ川』は有名料理店。オーナーの長谷川隆三が料理人としても腕を振るっている。
 法界院法子はそこで催された食事会に参加するが、泥酔してそのまま泊まることになってしまう。
 そして翌朝、料理人・富田正和の死体が密室の中で発見される。被害者は隆三の一人娘・綾乃の婚約者でもあった・・・
 密室トリックは早々に明かされる(それ自体は他の作家さんにも使用例がある)が、これはいわゆる "捨てトリック" で、そこから先の展開が真骨頂。
 葵の推理は、現場が密室になった真の理由、そして密室になったが故に連鎖的に派生していった出来事を解き明かしていく。他の作品と同様にコメディ調の作品なんだけど、ミステリとしては本書の中で最も骨太にできていると思う。


「Case 4 奪われたマントの問題」
 ゴスロリ・ファッションに身を固めた礼菜は、都内で行われたコスプレ・イベントの参加し、その帰りに公園内を歩いている時に何者かに頭を殴られ昏倒してしまう。
 怪我は軽傷だったが身につけていたマントが盗まれていた。それは限定100人しか手に入れられなかったという、マニア垂涎のアイテムだった。
 犯人捜しを始めた葵と美緒は、礼菜に似たファッションの女性がいるとの情報を入手するが、その女は既にアパートの自室で撲殺死体となっていた・・・
 犯人に対して、いささか都合のよい偶然が重なった感はあるけど、それもあまり気にならないのは、やっぱり作者が上手いんだろうなぁ。



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