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陰陽少女 [読書・ミステリ]


陰陽少女 (講談社文庫)

陰陽少女 (講談社文庫)

  • 作者: 古野まほろ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/05/15

評価:★★★★

 田舎の温泉地で起こる怪事件。高校で爆発、直後に生徒は校舎から転落。
 探偵役は陰陽師の女子高生。東京からやってきた転校生をワトソン役に、事件に挑む。全編にわたりギャグマンガみたいなノリだが、推理は骨太。


 主人公兼語り手の水里(みなさと)あかねは、ある事情で東京から物語の舞台である実予温泉へと転校してきた女子高生だ。

 物語は彼女が実予空港に降り立つところから始まる。
 あかねが実予に来たのは、兄が警察キャリアで、地元警察で課長の任にあるから。しかしそのため、迎えに来た兄の部下たちからは "お嬢様" と呼ばれ、下へも置かぬ "おもてなし攻勢" を受ける羽目に。

 これはあかねが登校して教室に入ってからも続く。あかねが東京から来たと分かると大騒ぎになる同級生たち。それに加えて、担任までも実はあかねとは "因縁" があったりと、"隠し球" もたくさん潜んでいる。

 このあたりはほとんどギャグ漫画みたいで、この小説全般がそうなのだが、とにかくけたたましい(笑)。登場してくるキャラクターが(あかねを含めて)エキセントリックな人ばかりで驚いてしまう。まあ、これがこのシリーズの特色というかセールスポイントなのだろう。

 本書で探偵役を務め、タイトルにもなっている少女・小諸るいかも、あかねのクラスメイトの一人として登場する。
 この作品世界では、陰陽師は正式な職業として認知されているらしいのだが、終盤に明らかになるるいかの "肩書き" には、これも驚かされる。

 最近になって火事騒ぎが続き、不穏な実予温泉なのだが、あかねの学校でも事件が起こる。部室棟で爆発が起こり、その直後、教室棟の4階から生徒が転落したのだ。
 るいかはあかねを連れて事件の調査を始めるのだが・・・


 タイトルに "陰陽" と銘打つだけあって、式神や妖怪や魑魅魍魎の登場するシーンも出てくる。とはいっても、事件自体はオカルトや超常現象ではなく、人間が引き起こしたもの。
 世界設定こそ特殊だが、特別なルールを適用して解決することもなく、謎解き自体はオーソドックスに行われる。

 問題はトリックかな。理論上は可能でも、実行はとてつもなく大変そう。まあ、この作者は他の作品でもこの手のトリックを使ってるし。
 世界設定が風変わりで、登場人物がみな奇矯なのも、この雰囲気の中ならこのトリックも "あり" かも、って読者に思わせるためなのかも知れない。


 ミステリ的にはともかく、キャラ小説としては抜群に面白いのは確か。シリーズ2作目も文庫化されていて手元にあるので、近々読む予定。



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