Rのつく月は気をつけよう 賢者のグラス [読書・ミステリ]
Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス(祥伝社文庫)い17-7
- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2022/08/10
- メディア: 文庫
評価:★★★★
4人の男女が、うまい酒と肴を持ち寄って、宅飲み会を開く。そこで出てくる四方山話を巡って様々な解釈が飛び交い、やがて意外な "真相 "へ・・・
短編集『Rのつく月は気をつけよう』の続編である。
長江高明と渚、冬木健太と夏美、2組の夫婦は仲良く飲み会を開いていたが、長江夫妻の渡米に伴って中断。しかし2人が10年ぶりに帰国したことで、めでたく復活することに。
しかしその間に、冬木夫妻には大(だい)くんが、長江夫妻には咲ちゃんが誕生。4人だった飲み会は、小学生2人を加えての飲み会兼食事会となった。
その会では様々なことが話題に挙がる。職場の同僚たちやママ友たちのあれやこれやのエピソード。酒の席での他愛もない話なのだが、メンバーの一人・長江高明は、そこから意外な ”解釈” を引き出してみせるのだった。
「ふたつ目の山」
夏美のママ友の山野井家。旦那さんの上司が引っ越すことになり、不要になった電動マッサージ椅子を譲ってもらうことになった。しかし自宅マンションまで運んだものの、大きすぎて中に入らない。結局、料金を払って粗大ゴミとして回収してもらったのだが・・・
「一日ずれる」
大くんが通っている小学校の6年生に、香子(きょうこ)・桂子という双子の姉妹がいた。2人とも同じ習い事をして、同じところに通っているのだが、なぜか通うのが月水金と火木土と分かれていた・・・
「いったん別れて、またくっつく」
夏美の同僚・小倉美帆は、25歳で独身ながら妊娠し、産休をとった。26歳で出産、27歳で職場に復帰、そして28歳で職場の後輩・野本と結婚した。夫婦から来た年賀状を見た同僚たちは驚いた。子供の顔が野本にそっくりだったからだ。いったい2人には、どんな経緯があったのか・・・。
作中の台詞にもあるけれど、"美談" ではある。連ドラの原案になりそう。
「いつの間にかできている」
夏美のママ友の子、森山将希(まさき)と小杉乃愛(のあ)。2人の親の教育方針は対照的だった。森山家は高レベルの中高一貫校から一流大学を目指し、小杉家は落ち着いた私立の女子校でのびのび育てよう、というもの。しかし高明の評価は真逆だった・・・
「適度という言葉の意味を知らない」
健太の元部下・杉安は "適度という言葉の意味を知らない" 男だった。興味があるものはとことん追求するが、興味のないものにはぞんざい。その杉安が会社を辞め、転職してしまった。彼にその決断をさせたものは何か・・・
「タコが入っていないたこ焼き」
大くんの同級生・斎木真司くんの父親はエリート会社員。趣味に散財することも、酔って暴力を振るうこともないのだが、子育てに関しては非協力的。結局両親は離婚することになるのだが・・・
高明が指摘する、父親の ”思考の中身” が恐ろしい。本書の中で一番ブラックな味わいかな。
「一石二鳥」
夏美の知人である高坂明日香の息子・智樹は、夏休みの読書感想文をクラスメイトの楠本美紅(みく)ちゃんに代わりに書いてもらおうと、あれこれ必死の算段をするのだが、ことごとく失敗してしまう・・・
連作短編の最後を締めくくる作品で、見事にまとめましたねぇ。ほっこりした気分になれる素晴らしいエンディング。タイトルにある『賢者のグラス』の意味もここで回収される。
謎解きももちろんだが、各回の飲み会で供される料理類の美味しそうなこと。読んでるだけでビールのジョッキがほしくなる(おいおい)。
さて、このシリーズの続きはどうなるのだろう。これで終了っぽい雰囲気もあるけど、またシチュエーションを変えて続行しても面白いかな。この6人のその後も知りたいし。
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