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魔眼の匣の殺人 [読書・ミステリ]



魔眼の匣の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

魔眼の匣の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫)

  • 作者: 今村 昌弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/08/12
評価:★★★★☆

 「あと2日のうちに4人が死ぬ」との ”お告げ” を下したのは、人里離れた辺境に住む、”予言者” と恐れられる老婆。
 神紅大学ミステリ研究会の葉村譲(はむら・ゆずる)と剣崎比留子(けんざき・ひるこ)がその場所を訪れたとき、外界と結ぶ唯一の橋が焼かれてその地は孤立してしまう。
 そして、9人の滞在者の中から1人が行方不明になり、さらにもう1人が殺害される・・・


 「屍人荘の殺人」に続く、シリーズ第2作。

 前作で、〇〇〇に囲まれたクローズト・サークル内での殺人事件から生還した葉村と比留子。事件の背後には、”斑目(まだらめ)機関” という謎の組織が存在していたことが判明する。

 前作から数ヶ月後の11月。比留子は斑目機関の新たな情報を入手した。W県の真雁(まかり)地区という人里離れた場所に、”魔眼の匣(まがんのはこ)” と呼ばれる、斑目機関の元研究施設があるらしい。

 比留子は葉村とともに真雁地区へ向かう。途中で高校生の男女2人組、イケメンの会社員、元住人だった女性、大学教授とその息子、そして月刊雑誌の記者が登場し、総勢9人が ”魔眼の匣” を訪れることになる。

 そこにはサキミという老婆が、彼女に仕える女性と2人で暮らしていた。
 サキミはかつてこの研究施設で行われていた実験の被験者で、その研究内容は ”予知能力の解明” だったらしい。実際、過去にも様々な予言を行い、的中させてきたという。

 そのサキミが告げた。「あと2日のうちに、この地で4人死ぬ」と。さらに、外界と結ぶ唯一の橋が焼け落ちてしまい、真雁地区は孤立してしまう。

 その中で客の1人が行方不明となり、さらに客の女子高生が予知能力を持っているらしいことが判明、そして殺人が起こる・・・


 このシリーズの特徴は、特殊状況ミステリであること。本書の場合は ”予知能力の存在” なのだが、これによって犯人を当てるなんて安易な展開はもちろんしない。しかしこの設定を上手く生かした物語構成になっている。

 終盤で犯人を絞り込むロジックは、シンプルだが意表を突いたもので、しかも「なるほど」って膝を打ってしまうように、納得できる素晴らしいもの。これだけでも読む価値はあるけれど、その後にもさらなるサプライズを仕込んでいる。とても新人の2作目とは思えないくらいの堂々とした語りぶりだ。

 ミステリとしてもとてもよくできているけれど、もう一つの柱が主役の2人、葉村と比留子の関係性だ。前作での大学の先輩後輩という関係から、お互いに好意を抱く状態へと進んでいるものの、比留子は自分の ”宿命” に彼を巻き込むことを恐れ、その葉村はひたすら比留子のために行動しようとする。この状況が、2人にもう一歩先へ踏み出すことを躊躇わせている。

 このシリーズは ”サザエさん時空” ではなく、2人の関係は時間を追って変化していくようだ。この先どうなっていくのかも、このシリーズの読みどころだろう。

 そこはかとないユーモアが漂う文章はとても読みやすく、興味を引くストーリー展開と相まって、ページをめくらせる力が半端ではない。
 第1作もそうだったけど、今作もとても楽しく読ませてもらった。


 第1作「屍人荘の殺人」は映画化されている。それについての記事も書いた。
 葉村は神木隆之介、比留子は浜辺美波だった。なかなかはまり役だったと私は思っている。
 この第2作も、読んでいると脳内映像にこの2人が登場してきた。なかなか楽しい読書体験だったよ。

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