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ハケンアニメ! [映画]


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 タイトルの ”ハケン” とは ”覇権” のこと。
 毎年、膨大な数の新作アニメがTV放映されている日本で、同一クール中で最も話題になり、”売れた” アニメに与えられる称号が ”ハケンアニメ” だ。
 自分たちの生み出した作品が ”ハケンアニメ” となるように、日々奮闘するアニメ業界の人々を描く、辻村深月による同名小説を原作とした映画だ。


 それでは、公式サイトにある ”あらすじ” をちょっと加工して・・・

 主人公となる齋藤瞳[吉岡里帆]は28歳の新人アニメ監督。8年前に王子千晴[中村倫也]監督のデビュー作『光のヨスガ』に出会って衝撃を受けた。
 なぜそんなに彼女の心に ”刺さった” のかは、映画の中で明かされていく。

 国立大を卒業、県庁職員となっていた瞳だったが、「観る人に魔法をかけるような作品を作りたい」との思いに駆られた彼女は仕事を辞め、”自分の夢” へと向かってアニメ業界へ転職したのである。

 そして今期、彼女は連続アニメ『サウンドバック 奏の石』でついに監督デビューを果たす。だが、気合いが空回りして制作現場には早くも暗雲が漂う。何せ周囲のスタッフはみな彼女よりキャリアのあるベテランばかりだしね・・・

 瞳を大抜擢したプロデューサー・行城(ゆきしろ)[柄本佑]は、敏腕ではあるのだがビジネス最優先。作品のタイアップ企画やマスコミ対応に、ことごとく瞳を引っ張り出して廻るので、そのストレスだけでも半端ない。

 そして、運命のいたずらか『サウンドバック』は、王子千晴監督の新作『運命戦線リデルライト』と同一曜日・同一時間帯の放送と ”まるかぶり” 状態。期せずして瞳にとっての最大のライバル作品となってしまう・・・

 一方の王子千晴もまた、『リデルライト』に賭けていた。デビュー作『光のヨスガ』で高評価を得たものの、それ以降は長い沈黙の時間を過ごしていた。そこからの復帰作だったからである。

 王子千晴の復活に懸けるのは、その才能に惚れ抜いたプロデューサー有科(ありしな)香屋子[尾野真千子]。しかし、彼女も王子の超ワガママ、気まぐれに振り回され「お前、ほんっとーに、ふざけんな!」と、大大悪戦苦闘中だった。

 物語は瞳、行城、王子、有科の4人を中心に、周辺の制作スタッフ・声優をも巻き込み、熱い “想い” をぶつけ合いながら “ハケン=覇権” を争う戦いを描いていく・・・


 テーマがアニメであるだけに、作中作となる2本のアニメが登場するのだが、その扱いが半端ない。映画の中での登場は数分だが、実際にアニメが制作されており、映画の公式サイトには、このアニメ2作の ”公式サイト” まで用意されているのだ。


『サウンドバック 奏の石』
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 ある日突然、巨大ロボットに襲われたのどかな田舎町。地球を守るため、少年少女たちはロボットに乗って戦う。
 サウンドバックとは、「奏(かなで)」と呼ばれる石が、現実の音を吸い込むことによって変形したロボットのこと。その形状は音によって変わり、1話ごとにノックや風鈴など異なる音が捧げられ、毎回違う形のロボットが登場する。
 「奏」は戦いを終えると力を失い、ただの石に戻るが、捧げた音とそれにまつわる記憶はヒロインのトワコから奪われていくという秘密があった……。

 原作者である辻村が全12話分のプロットを書いたというのだから恐れ入る。
 ヒロインのトワコには、戦うたびに記憶を失っていくという過酷な運命が科せられている。映画の中では、第一話と最終話、合わせて数分ほどが描かれるのだが、それだけでも涙もろいオジサンである私は泣いてしまったよ・・・


『運命戦線リデルライト』
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 行方不明の妹を探す魔法少女の充莉は、自らの魂の力で乗るバイクを変形させ、ライバルたちとレースで競い合う。
 『プリキュア』と『仮面ライダー』を合わせたような、ありそうでなかった組み合わせ。その発想はなかった、ってか。
 「リデルライト」とは、少女たちが駆るバイクの総称。第1話に6歳で登場する充莉は、年に1度のバイクレースでのバトルを通して、仲間や敵対する魔法少女の清良たちとともに1話1歳ずつ年を重ね、いわゆる「成長するヒロイン」の姿が描かれる。

 しかし、デビュー作『光のヨスガ』でヒロインを殺せなかったことを悔やむ王子は、「今度こそ、最終回でヒロインを殺したい」と有科に告げる。

 しかし、スポンサー陣は猛反対。「夕方5時台のアニメでは人は死なない」なんてのたまうのだが・・・。両者の間で苦悩する有科。

 でも1970年代後半~80年代には、キャラがたくさん死ぬ夕方5時台アニメなんて掃いて捨てるほどあったけどね。
 ざっと思い浮かぶだけでも『○ンダム』『ダ○バイン』『ボト○ズ』『レイ○ナー』・・・。『ザン○ット3』『イ○オン』なんて、××エンドだったし・・・
 あ、だから『イデ○ン』は途中打ち切りになったんですかね・・・
 まあ、時代が違うということですかな。


 瞳も王子も、予定調和的なハッピーエンドを拒否し、「観た人の心に刺さる作品」となるようなエンディングを模索する、という点では全く同じ。
 それがまた周囲との軋轢を生んでいくのだが、それも映画で描く主要テーマのひとつとなっている。



 作中作に登場する声優さんも豪華。


 『サウンドバック』では梶裕貴さん、潘めぐみさん、速水奨さんなど。
ヒロイン・トワコは高野麻里佳さん。アイドルかと思ったら専業の声優さんで、『ウマ娘』で有名な人らしい。彼女は顔出しで台詞も多く、吉岡里帆と絡む役。

 『リデルライト』では花澤香菜さん、堀江由衣さんなど。
ヒロイン・充莉を演じる髙橋李依さんも、最近よくみる声優さんだ。


 瞳と王子の ”ハケン争い” は熾烈を極め、最終回までもつれ込むのだが・・・


 この作品をこれから見ようという人にアドバイス。
 映画が終わった後、エンドロールが流れるのだけど、その後にワンシーンある。そこが ”真のラスト” となるので、どうか席を立たずに待っていてください。
 アニメファンなら ”ニヤリ” とするエンディングになってます。



※追記


 実は今日(5/27)、2回目を観てきた。人間関係や細部がより深く理解できたせいか、1回目より感動した。

 終盤は、「瞳と王子のハケン争い」+「サウンドバック最終話」+「リデルライト最終話」のクライマックスが怒濤の三重奏で、目から溢れる汗を止めることができなかったよ。うーん、円盤買っちゃいそう。

 あ、映画の中では「DVD」とか「ブルーレイ」って単語は使わずに、登場人物みんな「円盤」って言ってましたよ。流石、よく分かってる。

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