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SCS ストーカー犯罪対策室 [読書・ミステリ]


SCS ストーカー犯罪対策室 (上) (光文社文庫)

SCS ストーカー犯罪対策室 (上) (光文社文庫)

  • 作者: 貴久, 五十嵐
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: 文庫
SCS ストーカー犯罪対策室 (下) (光文社文庫)

SCS ストーカー犯罪対策室 (下) (光文社文庫)

  • 作者: 貴久, 五十嵐
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

 主人公・白井有梨(ゆり)は新品川署のSCS(ストーカー犯罪対策室)に所属する刑事。彼女自身も、「S」と名乗る人物から無数のメールを送りつけられるというストーカー被害に遭っている身だ。

 SCSに持ち込まれる、様々なストーカー案件に対応する有梨たちの活躍を描いていく。


「第一話 遠峰良子の事件」
 携帯への無言電話に悩む主婦・遠峰良子。相手は昔の浮気相手・前川と思われた。その良子が殺されてしまうが、前川にはアリバイがあった・・・

「第二話 松野公雄の事件」
 大企業のサラリーマン・松野公雄は、「誰かに見張られている」という強迫観念に囚われ、心療内科に通っていたが・・・

「第三話 篠崎未架の事件」
 朝ドラ出演で人気が出た新進女優・篠崎未架。彼女はドラマの中で死亡する役だった。しかし終了後から、夥しい数の「おまえはなぜ生きているんだ」という手紙が届くようになって・・・

「第四話 小山純子の事件」
 老人ホームに入った小山純子は、入居者の男性と親しくなる。しかしそれに嫉妬した2人の女性入居者が、純子の悪口を言いふらしているのだという・・・

「第五話 早川沙紀の事件」
 25歳のOL・早川沙紀に、彼女の生活を監視しているようなメールが届く。大学時代の交際相手・青山の犯行と判明するのだが・・・

「第六話 大高絵麻の事件」
 女子高生・大高絵麻がストーカー被害に遭っていた。相手は元交際相手の大学生・沖田。SCSは彼女の自宅を警備することになるが・・・

「第七話 小原雅代の事件」
 少子化担当大臣・小原雅代が主宰する、女性政治家の会合を中止せよとの脅迫が入る。犯人は雅代だけでなく、彼女の家族をもターゲットにするという・・・

「第八話 冬野未来の事件」
 女子高生・冬野未来が体育教師・榎本からストーカー行為を受けているという。学校が警察に相談したと知った榎本は姿をくらましてしまう・・・

「最終話 白井有梨の事件」
 「第一話」の段階で、半年前から有梨の携帯に頻繁にメールが入るようになっていたことが語られている。内容は、有梨のことを24時間監視していて、一挙手一投足まで把握しているかのようなものだった。
 「第五話」では、最大の容疑者と目されていた人物が死亡してしまうのだが、ストーカー行為はやまず、犯人は依然として不明のまま。
 「最終話」に至り、その正体が意外な人物であったことが判明する。


 「第一話」~「第八話」まで、さまざまなストーカー案件が描かれるが、そこはミステリ。それぞれひねりの効いた結末が用意されている。

 スマホやPCなど、IT機器とネット環境が普及した現代では、執着する相手の情報を得ることが(違法な手を使えば)昔より遥かに簡単になったし、匿名性を保ちながらさまざまな嫌がらせをすることも可能になった。つくづく怖い時代になったものだと思う。
 警察への相談も増加する一方らしいが、いかに警察とてマンパワーに限界はあるわけで、全てに対応するのは至難。それでいて、被害者が殺されでもしたらマスコミの格好の餌食、非難囂々になってしまうのだから・・・

 ストーカーと渡り合う警察の苦闘ぶりも十分に描かれた、連作ミステリ集。



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