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今だけのあの子 [読書・ミステリ]

今だけのあの子 (創元推理文庫)

今だけのあの子 (創元推理文庫)

  • 作者: 芦沢 央
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/04/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

「女の友情」をテーマにした ”日常の謎” 系ミステリ短篇集。


「届かない招待状」
学生時代に仲のよいグループだった彩音が結婚することになった。
しかし、彼女と一番仲が良かったと自負していた恵にだけ
なぜか結婚式の招待状が送られてこない。
恵は、それでも結婚式に押しかけていくことを決めるのだが・・・
ミステリ好きな人なら、恵が呼ばれなかった理由に見当がつくと思うが
それでもなお、ラストシーンは感動的だ。

「帰らない理由」
中学生・くるみが交通事故で不慮の死を遂げてしまう。
同級生の須山は、くるみの家を訪ねすが、
そこで彼女の親友だった桐子と鉢合わせしてしまう。
二人の目的はくるみの日記。
死の2週間前に桐子はくるみと仲違いをし、
同じ頃に、須山はくるみの恋人になったと主張するのだが・・・

「答えない子ども」
育児熱心な直香は、娘・恵莉那(えりな)を絵画教室に通わせているが、
同じ教室に通うソウ君のママのズボラさに呆れていた。
ある日、恵莉那の描いた絵が行方不明になってしまう。
ソウ君の家に寄ってきたことから、彼が盗ったことを疑う直香だが・・・

「願わない少女」
私立中学に不本意入学した奈央だったが、漫画家志望の悠子と出会う。
彼女と友達でいたいがために、自らも漫画家志望と嘘をつく奈央。
二人は固い友情で結ばれ、プロデビューを目指していくが・・・
同じ作者の長編『悪いものが、来ませんように』を
読んだときに、この二人をちょっと思い出した。
この人、女性のこういうところを描かせたら本当に上手いと思う。
ミステリ的には本書でいちばん凝ってるとおもう。

「正しくない言葉」
老人ホームで暮らす女性・孝子のもとには、しばしば
息子夫妻が訪れていて、隣室の澄江はそれが羨ましかった。
しかしあるとき、孝子の嫁の麻実子が、夫に姑について
不満を漏らしているのを聞いてしまう・・・
ラストで明かされる、孝子の行動の理由は
短篇『許されようとは思いません』をちょっと連想させる。
本作の方が先に書かれているので、
『許され-』は本作の発展系と言えるのかも知れない。

全部で5編収録されてるんだけど、冒頭の「ー招待状」を除く4編は、
緩やかにつながっている。

「ー言葉」が「ー理由」の後日談でもあることはすぐわかるんだけど、
それ以外のつながりは、読み終わった時点では思いもしなかった。

でも解説が親切で、そこで教えてもらってびっくり。
これに気づく人は、かなり鋭い観察力(注意力)の持ち主かと思う。

もっとも、各作品はストーリー的には独立しているので
気づかなくても全く問題ないんだけど(笑)。


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