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「ルヴォワール」シリーズ [読書・ミステリ]

丸太町ルヴォワール (講談社文庫)丸太町ルヴォワール (講談社文庫)
作者: 円居 挽

出版社/メーカー: 講談社
発売日: 2012/09/14
メディア: 文庫
烏丸ルヴォワール (講談社文庫)

烏丸ルヴォワール (講談社文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: 文庫
今出川ルヴォワール (講談社文庫)

今出川ルヴォワール (講談社文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫
河原町ルヴォワール (講談社文庫)

河原町ルヴォワール (講談社文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

「丸太町ルヴォワール」「烏丸ルヴォワール」
「今出川ルヴォワール」「河原町ルヴォワール」と続く四部作。

 ちなみに ”ルヴォワール” とはフランス語で、
 「さようなら」とか「また会いましょう」みたいな意味らしい。

いちおう各巻ごとに内容は一区切りついているのだけど
レギュラーメンバーをめぐる物語としては、
4冊を通じてひとつながりの流れがあるので
ひとまとめの記事にする。


第1巻「丸太町ルヴォワール」の序盤を紹介すると・・・

大病院の御曹司・城坂論語(しろさか・ろんご)。ちなみに本名。
3年前、論語は ”ある事件” で負傷し、城坂邸で養生していた。
怪我のために一時的に視力を失っていた論語の前に
”ルージュ” と名乗る正体不明の女が現れる。

彼女としばし、語り合った論語だが
その間に、屋敷の別室にいた城坂病院の創業者である
祖父・慈恩(じおん)が死亡していた。

警察の捜査によって「事件性はない」と判断されたが、
その3年後に論語が大学の医学部に合格して、
病院の後継者として頭角を現したことにより、
”お家騒動” が持ち上がる。

論語の叔父・純紀(すみのり)が「論語が慈恩を殺した証拠がある」と
声を上げたのだ。

かくして「双龍会(そうりゅうえ)」が開かれることになった・・・


この四部作は、毎回この双龍会を舞台とする。
双龍会とは、古(いにしえ)から京都で行われてきた ”私的裁判”。

検事側は ”黄龍”、弁護士側は ”青龍” となり、
実際に ”法廷” で相手と対決するメンバーは
両方まとめて ”龍師” と呼ばれる。

そして被告人は ”御贖(みあがない)”、裁判長は ”火帝” と呼ばれる。

黄龍側と青龍側は、御贖を挟んで論争を繰り広げ、
最後に火帝の裁決を受ける、というわけだ。

だからこのシリーズは法廷小説としての面もあるのだが
単なる法廷ものとは決定的に異なるところがある。
それは、必ずしも正しいか正しくないかが重要ではないこと。

あくまで ”私的裁判” なのだから、
火帝、そして傍聴人たちを納得させた方が勝ち、なのだ。

だから証拠だって、自分に不利なものなら隠滅し、
相手にバレなければ捏造さえ起こりかねない・・・
というとんでもない設定。
だから黄龍側も青龍側も、相手方の出してきた証人・証拠について
信頼性から疑ってかからなければならない。

そして、場合によっては詐欺的な行為さえも起こるので、
コン・ゲーム小説的な要素も大きい。

結果として、一方の組み上げた論理や筋書きが
相手側の指摘によって一気にひっくり返ってしまうシーンが頻出する。
それはもう二転三転なんてものではなく
四転五転は当たり前、場合によってはそれ以上・・・というわけで
この双龍会における、黄龍と青龍の果てしない攻防が
このシリーズ最大の読みどころとなる。

ミステリと言うよりは、少年マンガのバトルもの的なノリで
「聖闘士星矢」や「キン肉マン」みたいに(出てくる例が古いのはご勘弁)
主人公側が繰り出す技がことごとく返され、絶体絶命の危機を
最後の大技で起死回生、一発逆転・・・みたいな展開である。


シリーズのレギュラーメンバーは
代々、龍師を輩出してきた龍樹(たつき)家の若き当主・落花(らっか)。
その妹で大学1年生の撫子(なでしこ)。
落花の友人で大学法学部4年生の瓶賀流(みかが・みつる)。
流の中学高校時代の後輩で、法学部1年生の御堂達也(みどう・たつや)。

さらには、第1巻では御贖として告発された坂崎論語も
双龍会の中で、自ら龍師としての才能を示していく。

この5人が、シリーズの4つの事件のなかで、
龍師としてあるときは共闘し、あるときは敵味方に分かれ
壮絶な ”論理戦” を繰り広げていく。

その中で龍樹家の秘密や、流と達也の過去の因縁が明らかになっていく。

そして、城坂論語にかけられた殺人容疑から始まった第1巻から始まり、
最終巻では、3年前に彼が巻き込まれて一時的にせよ視力を失うに至った
”ある事件” の真相が明かされる。
つまり論語に始まり論語に終わるわけで、このシリーズは4巻通して
1つの大長編として構想され、書かれていたのだろう。


最後に、このシリーズを読む順番について。
まあ、シリーズものをわざわざ2巻目や3巻目から読み始める人は
いないとは思うのだけど、いちおうの注意を。

このシリーズは、必ず第1巻の
「丸太町ルヴォワール」から読み始めること。

なぜなら、シリーズもの1巻目だけに使える、ある ”仕掛け” が
ふんだんに使われているから。

読む人によっては評価の分かれる手法なんだが、
これだけおおっぴらに、しかも
これでもかこれでもかと使われたら、むしろ天晴れ。

2巻目から読み始めると、冒頭から
1巻目のネタバレの嵐に見舞われるので
必ず、このシリーズを読むときは1巻目から読みましょう。

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蜜蜂と遠雷 [映画]

(10/9追記あり)


原作は直木賞&本屋大賞をW受賞したベストセラー、
今朝(10/6)の新聞を見たら150万部に迫る売り上げだそうで
スピンオフ(番外編)短編集も発売されたみたい。

そんな鳴り物入りの作品の映画化。
期待と不安を抱いて観に行きましたが・・・・

mitubachi_poster1.jpg
昔の角川映画のキャッチコピーに「読んでから観るか、観てから読むか」
ってのがあったが、この映画に関しては
原作を未読のまま観た方が素直に楽しめるんじゃないかなぁ。

私みたいに原作を読んでから観に行った人は、
原作と映画でいろいろ異なっている点が気になってしまい、さらには
見終わった後にモヤモヤしたものが残ってしまう映画だったように思う。


これからいくつか思ったことを書いていくのだけど
この映画が気に入った人にはオモシロくないかも知れない。
あと、原作と映画のネタバレを含みますので、
原作未読の方、映画未見の方はご注意を。


もともと文庫で上下巻、総計950ページくらいあるわけで
まともに映画化したら2時間に収まるわけはない。

最近流行の「前後編」二部作なんて手もあったかも知れないが
ネットのインタビューを読んでたら、原作者から
「前後編にはしないでくれ」って言われたとか。

原作者自身が「小説でしかできないことをやる」っていってたわけで、
原作通りの映画化はそもそもできないと思っていたのだろう。


ならば、制作陣はどのように映画化したのか。

まずは原作の刈り込み。

第一次→第二次→→第三次→本選と続くコンクールの流れのうち
まず第三次予選をばっさりカット。だから二次予選を終えるとすぐ本選。

亜夜のサポート役だった浜崎奏も、存在そのものが抹消。
私は世話好きな奏ちゃんというキャラが
けっこう好きだったので、これは悲しい。

ジュリアードの王子様・マサルと
蜜蜂王子・風間塵の描写も大幅に縮小。

その分、亜夜の描写に重きを置いている。
主要キャラ4人の描写比は、あくまで私の私感だけど
亜夜:明石:マサル:塵 = 5:2:2:1 くらいかなぁ。
原作でも、4人の中で亜夜がドラマ的にはいちばん
”背負っているもの” が大きいキャラだったけど、
映画ではさらに主役として ”格上げ” されている。

終盤近く、明石が音楽祭事務局からの電話を受けるシーンもばっさり。
ここは大感動ポイントだったんだけどね~。

でも、この様々な刈り込みは亜夜にフォーカスするためには
仕方ないところかなぁ・・・とも思う。


私が最も残念に思ったのは、その主役である亜夜の
キャラ設定の改変と、それに伴うストーリーの改変。

原作での亜夜は、芳ヶ江コンクールに対して
やや醒めた態度で臨んでいたように思う。
以前の記事にも書いたけど、音大学長への借りを返すというか
結果は二の次で、自分のピアノへの気持ちに
区切りをつけるつもりで参加していた。

映画での亜夜は、もうちょっと ”崖っぷち感” が強めの設定に
なっているように感じた。
亡くなった母に対する思いも、未だに大きく引きずっている。

そして最も大きな差は、亜夜の成長の描き方。

原作での亜夜は、第一次→第二次→第三次と
予選のステージが上がるたびにその音楽的な才能が開花していく。

醒めていたはずの彼女が、明石の演奏を聴いたり、
風間塵やマサルと出会ったことが大きな刺激となって
ピアノの楽しさ、音楽の素晴らしさを再発見していき、
蛹が蝶になるように、蕾が大輪となって咲くように変貌していく。
そこが一番の読みどころだったと思う。

映画版の亜夜は、最後の本選の直前まで母の死を引きずっていて
7年前と同じく、本選での演奏を放棄しようとまでする。
まあ、直前で思いとどまって会場へ引き返すのだけど
ここに意味がよく分からないイメージシーンが挿入されていて
解釈に迷う(私のアタマが悪いだけかも知れないが)。

いったんはどん底まで落ちた天才少女が、トラウマを乗り越えて
完全復活を遂げるという、入口と出口は同じながら
その途中の描き方は大幅に異なっている。

段階的な成長を描くには、絶対的に尺が足りないってのが
理由であろう事は分かるんだけど、でもねえ。
繰り返すけど、ここが一番の読みどころだったんだよ・・・


それから、明石と亜夜の関係。
この二人は、原作では終盤に一度だけ会話をするのだけど
(そこも大感動ポイントだったんだけどね~)
映画の中では第一次予選後から言葉を交わす仲になる。

まあ、大事なシーンを削ってしまった分、
明石も本筋に絡めたかったのだろうけど・・・
あまり効果的ではなかったようにも思う。


文句ばかり書くのもなんなので、良かったところも。

映画なのでもちろん、画面と音がある。
当たり前なのだけど、絵も音も聞こえない小説にはないものだ。
これは頑張っていると思う。

画面が美しく、荘厳なコンサートホールの雰囲気もよく出てる。
オーケストラの演奏シーンもさすがの迫力。

長大な原作の細部を刈り込んで映画化すると、
そのあたりのことを説明する台詞が多くなりがちな気がするのだが
本作では、なるべく長い台詞は廃して
映像と音楽で見せようと苦心しているのは分かる。

一緒に観に行ったかみさん(原作は未読)も
そのあたりは気に入ったみたいだ。
「画面がきれい」「音楽が素晴らしい」「話もよくできてる」って
けっこう高評価みたいである。

最初にも書いたけど、この映画を観るにあたっては、
原作を知らない方が楽しめるのかも知れない。
なまじ原作を読んでると、上に書いたみたいに
小説版との差ばかりが目についてしまうからね・・・。


配役も良かったと思う。

亜夜役の松岡茉優さんは屈折したピアニスト役を好演してる。
ピアノを習っていた経験があるそうだが、
ピアノを弾くシーンも堂々としている。
クライマックスの本選では、オーケストラに負けない
圧巻の演奏シーンを見せてくれる。

明石役は松坂桃李も私のイメージ通りの配役だった。
悩めるサラリーマン・ピアニストが板についてる。
原作からの明石ファンとしては、もっと出番が欲しい。
やっぱり、あの ”電話を受けるシーン” は映画で観たかったよ・・・

マサル役は森崎ウィン。
天才でイケメンで人格者という完璧超人を演じた役者さんの
実年齢が29歳と聞いてびっくり。10歳も年下の役をやってたのか。

風間塵役は鈴鹿央士。
原作のイメージだと、もっと小柄な感じだったんだけど
映画では亜夜より背が高くてちょっとびっくり。
それ以外は破天荒な塵のイメージに合う人だと思った。


以下は余計なことをちょっと。


映画の原作としての小説って、どれくらいの長さが適当なのだろう。

『2001年宇宙の旅』(1968:上映時間141分)のたたき台となったのが
短編小説「前哨」(A・C・クラーク)だというのは有名な話。

短い原作をもとに、映画用にイメージを膨らませていくのが
一番無理がないのかも知れない。

『ローレライ』(2005:128分)は小説「終戦のローレライ」(福井晴敏)
が原作だが、文庫で1800ページくらいあったものを
2時間に収めるのはどだい無理な話だったね。
結果的に原作とは似て非なるものになってしまった。

最近観た中で『ハンターキラー 潜行せよ』(2018:122分)も
原作は文庫で上下巻。合計900ページくらいあったかな。
映画化にあたり、1/3くらいのエピソードをカットして、
さらに大幅なストーリーの改変もあった。
それでいて、出来はいまひとつ。


ちなみに、ついこの間観た『HELLO WORLD』(2019:98分)。
脚本家が自ら書き下ろしたノベライズは、文庫で約330ページ。
内容的にも過不足なく、よくまとまった出来。

2時間の映画の原作なら、文庫で400ページくらいが
無理なく作れる上限なのかな、なんて思ったりした。


追記

記事中に「意味がよく分からないイメージシーン」て書きましたが
あれは亜夜の心象風景の一つで、原作の冒頭にそのようなシーンが
しっかりあったそうです。

的外れな文章だったと言うことで、お詫びいたします。
申し訳ありませんでした。m(_ _)m

それにしても、読み割ってまだ2ヶ月くらいないのに、
すっかり忘れていたようで、私のアタマも
かなりボケが進行してるみたいですねぇ・・・

で、なんで分かったかというと、かみさんから指摘されたから。

映画を見終わった後、「原作が読みたい」って言い出したので
文庫上下巻を貸しました。それを読み始めた矢先に、
「あのシーン、原作の冒頭にあったよ」って教えてもらったというわけ。

ちなみに、まだ序盤しか読んでないみたいなんですが
「すごく面白い!」って喜んでおります。

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HELLO WORLD [アニメーション]


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舞台は2027年の京都。

堅書直実(かたがき・なおみ)は高校に入学したばかりの1年生。
読書が唯一の趣味の、至って内気な少年だった彼の前に現れたのは
”10年後の世界からやってきた自分” と称する青年・ナオミ。

ナオミの言うところによると、直実が生きているこの京都は
無限大の容量を持つシステム《アルタラ》内に収められた、
膨大なデータからできている ”記録世界” で
直実も含めたこの京都は、すべてデータの集合体なのだという。

2037年の ”現実世界” から、過去である2027年の ”記録世界” へ
アクセスしているのだというナオミは、
さらに驚くべき ”事実” を直実に告げる。

「3ヶ月後、おまえは一行瑠璃(いちぎょう・るり)と恋人になる」
そして「つき合い始めた直後、瑠璃は花火大会の日に事故死する」と。

ナオミが10年前に ”介入” してきた理由は
瑠璃が事故死する記録を書き換えるため。
彼女が ”記録世界” の中で生き続けられるようにするため。

瑠璃は直実のクラスメイトで、二人とも図書委員を務めていた。
ナオミにとっては ”記録” かも知れないが
直実にとって彼女は、生きている ”現実” そのもの。

彼女を救うことを決意する直実だが、
そのためにはまず瑠璃と恋人にならなくてはいけない・・・


最初にあらすじを聞いた時の印象は
「ゼーガペイン」と「君の名は。」を合わせたような作品だなあ・・・

名作「夏への扉」(ロバート・A・ハインライン)を皮切りに
タイムトラベルものとラブ・ストーリーが相性がいい、というのは
SFの世界では古くから知られてきたことだけど
「君の名は。」が大ヒットしたせいか
最近やたらとタイムトラベルがらみの作品が増えてるような気がして
「ちょっと作りすぎじゃないの?」って思ってた。

そこへこの作品が出てきたものだから、
正直あまり期待していなかったんだけど・・・

いやあ、よかったよ。
私はこの作品、気に入りました。


美人なのだけど、堅物で無愛想な瑠璃に対して
最初は苦手意識しか持てなかった直実だが、
ナオミの助言を受けながら、彼女と仲良くなるべく奮闘を始める。
(10年前に実際に恋人になることに成功した人だからね)

生真面目で感情の表し方が下手な瑠璃と、内気で不器用な直実が
次第に距離を縮めていく過程は、ラブコメとしてもよくできていて
見ていてとても微笑ましい。
自然と直実を応援したくなってしまうあたり、
観客の感情移入を誘う展開もバッチリだ。

 「オレもこんな初恋がしたかったな~」って
 遠い目になってしまう(おいおい)。

”記録世界” に対して物理的な介入ができないナオミに代わり、
実際に行動しなければならないのが直実。
ナオミが直実に接触してきたのもそれが理由だ。
”二人” は、瑠璃の事故死を防ぐべく、準備を進めていく。

そして、運命の花火大会の日がやってくる・・・

物語は、ここから大転換に入る。
ライトノベル的な展開から打って変わって
”記録世界” の存亡に関わる事態へと進行していく。

その中で、ナオミの ”真の目的” もまた明らかになる。


この映画では、珍しく(?)最後の最後に
”どんでん返し” があることが予告されている。

YouTube等でも公開されている予告編を観ていただければ分かるが、
その最後に
「この物語(せかい)はラスト1秒でひっくり返る」
というテロップが出るのだ。


 ちなみに、ウィキペディアの
 「HELLO WORLD(アニメ映画)」の項目には、
 この問題のラストシーンについて、
 と~っても詳しくネタバレが載っている(笑)ので、
 これから映画を見ようという人は読まないことを推奨する。


では実際、どうだったか。
ネタバレをしない範囲で書いておくと、私はびっくりした。
というか、初見では何が起こったのかがよく分からなかった。

時間が経って冷静に考えれば、腑に落ちるのではあるが。
(ちゃんと伏線もあったし)
ま、アタマの回転が速い人ならすぐ分かるのかも知れないが・・・

これくらいは書いてもいいかな。
この結末によって ”すべて” が丸く収まる。
本作の基本設定をうまく活かした結末だと言えるだろう。


配役についても書いておこう。

直実は北村匠海さん。若手の人気俳優らしい。
うーん、よく知らないんだよね。若い男は興味ないから(笑)。
演技は達者。見ていて違和感ない。

瑠璃は浜辺美波さん。「アルキメデスの大戦」にも出てた若手女優さん。
映画やCMなんかでは ”元気なお嬢さん” ってイメージなんだけど
本作では一転、抑えた演技で通している。
瑠璃さん自体、そもそも地味なキャラなのでそれ自体はいいんだけど
彼女を起用したメリットがあまりないような気も。

ナオミは松坂桃李。
さすがに「侍戦隊シンケンジャー」で1年間鍛えただけあって上手。
戦隊ものでは、変身後の台詞はアテレコになるので、
戦隊出身者は概して声優がうまいからね(例外もいるけど)。

あと、直実と瑠璃のクラスメートとして登場する ”萌えキャラ”、
勘解由小路三鈴(かでのこうじ・みすず)さん。
なんとも、ものものしい名前なのだけどCVはなんと福原遥さん。
鑑賞中は分からなかったんだけど
エンドタイトルで名前を見つけてびっくりした。
おお、”まいんちゃん” じゃないですか。
こちらもNHKで4年間鍛えられたせいか、上手ですね。
登場するたびに背景に星が輝く(笑)という不思議ちゃんキャラを好演。


HELLO WORLD (集英社文庫)

HELLO WORLD (集英社文庫)

  • 作者: 野崎 まど
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/06/21
  • メディア: 文庫
この映画の脚本家にしてSF作家でもある野崎まど氏が
自ら書き下ろしたノベライズ。

内容的には、映画の流れをそのままなぞっていくのだが
もちろん、文章ならではの利点もある。

特に主人公・直実の心情描写が細かく書き込まれていて
物語中盤の「古本市」のエピソードあたりを読んでいたら
映画の時には出なかった涙が、なぜか大量に流れ出してしまって・・・

ちょうど電車に乗っているときだったので、これには困った(笑)。

やっぱり小説には小説のいいところもある。
私が読書を止められないのもそれが理由だろうな。

実は映画の中で1カ所、理解できなかった部分があったのだけど
本書をラストシーンまで読むとそれも解消された。

この本については「読んでから観る」より
「観てから読む」べきだと思う。
やっぱりまずは映画館の大画面で
あの ”ラストシーン” を体験するべきだろう。

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お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険 [読書・ミステリ]


お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) (創元推理文庫)

お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) (創元推理文庫)

  • 作者: 阿藤 玲
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/08/31
  • メディア: 文庫
評価:★★★

語り手である佐々木くんが入学した高校・御出(おいで)学園には
帰宅部なるものが存在する。それも学校公認の正式な部活動として。

というわけで、帰宅部に入部した佐々木くん、そして
同じ帰宅部の ”部員” たちが出会う事件を綴った連作短編集。


「小出君、夜歩く」
”小出君”とは、御出町のマスコットキャラクターで、
彼をかたどった看板が町内のあちこちに置いてあるのだが
その看板が夜中に歩き回っていたという目撃情報が出回る。
犯罪絡みとしては、これがいちばんミステリっぽいかな。

「たたかうにんじん」
町内の人気洋食店<アニトアネ>の経営者・水穂には
幼稚園児の息子・つばさがいる。
彼はにんじんが大好物だったはずなのに、
ある日突然「にんじんは食べない」と宣言してしまう・・・

「左利きの月」
新藤朔(はじめ)と新藤望(のぞむ)は双子の兄弟。
そっくりだった二人は、しばしば入れ替わりをして周囲を揶揄っていた。
朔に思いを寄せていた石本彩智は、思い切って告白したが
「俺は望だ。間違えるな」と言われてしまう。
しかしその直後、朔は不慮の交通事故で亡くなってしまう・・・

「お姫様たちの文化祭」
地元商店街と御出学園の卒業生によるコラボで実施される文化祭で
その中で行われる「お嬢様コンテスト」で優勝した者は
学園に対して校則の変更を要求できるらしい(無茶苦茶だなあ)。
今年の優勝候補の美少女が掲げた ”公約” は、
なんと「帰宅部の解散」だった・・・


解説によると、新人賞経由ではなく、
編集部への持ち込みで書籍化された作品だという。
中でも「左利きの月」が決め手になったのだとか。
確かにこの中ではいちばん物語的によくできてるとは思う。

いわゆる「日常の謎」系ミステリに分類される作品で
全体の印象としては「学園ラブコメ」と「学園ミステリ」の
二兎を追ってるみたいなんだけど、どちらもちょっと中途半端な感じが。

「左利きの月」なんかは恋愛ものとして面白いと思うけど
私としては、もう少しミステリ風味の濃い作品も読んでみたい。

いろいろ注文があるんだけど、本書の雰囲気自体は嫌いじゃないし
キャラたちがこれからどうなっていくのかに興味も感じる。

実は、本書にはもう続刊が出ているのだよね。
読むのはもうちょっと先になると思うんだけど・・・

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