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HELLO WORLD [アニメーション]


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舞台は2027年の京都。

堅書直実(かたがき・なおみ)は高校に入学したばかりの1年生。
読書が唯一の趣味の、至って内気な少年だった彼の前に現れたのは
”10年後の世界からやってきた自分” と称する青年・ナオミ。

ナオミの言うところによると、直実が生きているこの京都は
無限大の容量を持つシステム《アルタラ》内に収められた、
膨大なデータからできている ”記録世界” で
直実も含めたこの京都は、すべてデータの集合体なのだという。

2037年の ”現実世界” から、過去である2027年の ”記録世界” へ
アクセスしているのだというナオミは、
さらに驚くべき ”事実” を直実に告げる。

「3ヶ月後、おまえは一行瑠璃(いちぎょう・るり)と恋人になる」
そして「つき合い始めた直後、瑠璃は花火大会の日に事故死する」と。

ナオミが10年前に ”介入” してきた理由は
瑠璃が事故死する記録を書き換えるため。
彼女が ”記録世界” の中で生き続けられるようにするため。

瑠璃は直実のクラスメイトで、二人とも図書委員を務めていた。
ナオミにとっては ”記録” かも知れないが
直実にとって彼女は、生きている ”現実” そのもの。

彼女を救うことを決意する直実だが、
そのためにはまず瑠璃と恋人にならなくてはいけない・・・


最初にあらすじを聞いた時の印象は
「ゼーガペイン」と「君の名は。」を合わせたような作品だなあ・・・

名作「夏への扉」(ロバート・A・ハインライン)を皮切りに
タイムトラベルものとラブ・ストーリーが相性がいい、というのは
SFの世界では古くから知られてきたことだけど
「君の名は。」が大ヒットしたせいか
最近やたらとタイムトラベルがらみの作品が増えてるような気がして
「ちょっと作りすぎじゃないの?」って思ってた。

そこへこの作品が出てきたものだから、
正直あまり期待していなかったんだけど・・・

いやあ、よかったよ。
私はこの作品、気に入りました。


美人なのだけど、堅物で無愛想な瑠璃に対して
最初は苦手意識しか持てなかった直実だが、
ナオミの助言を受けながら、彼女と仲良くなるべく奮闘を始める。
(10年前に実際に恋人になることに成功した人だからね)

生真面目で感情の表し方が下手な瑠璃と、内気で不器用な直実が
次第に距離を縮めていく過程は、ラブコメとしてもよくできていて
見ていてとても微笑ましい。
自然と直実を応援したくなってしまうあたり、
観客の感情移入を誘う展開もバッチリだ。

 「オレもこんな初恋がしたかったな~」って
 遠い目になってしまう(おいおい)。

”記録世界” に対して物理的な介入ができないナオミに代わり、
実際に行動しなければならないのが直実。
ナオミが直実に接触してきたのもそれが理由だ。
”二人” は、瑠璃の事故死を防ぐべく、準備を進めていく。

そして、運命の花火大会の日がやってくる・・・

物語は、ここから大転換に入る。
ライトノベル的な展開から打って変わって
”記録世界” の存亡に関わる事態へと進行していく。

その中で、ナオミの ”真の目的” もまた明らかになる。


この映画では、珍しく(?)最後の最後に
”どんでん返し” があることが予告されている。

YouTube等でも公開されている予告編を観ていただければ分かるが、
その最後に
「この物語(せかい)はラスト1秒でひっくり返る」
というテロップが出るのだ。


 ちなみに、ウィキペディアの
 「HELLO WORLD(アニメ映画)」の項目には、
 この問題のラストシーンについて、
 と~っても詳しくネタバレが載っている(笑)ので、
 これから映画を見ようという人は読まないことを推奨する。


では実際、どうだったか。
ネタバレをしない範囲で書いておくと、私はびっくりした。
というか、初見では何が起こったのかがよく分からなかった。

時間が経って冷静に考えれば、腑に落ちるのではあるが。
(ちゃんと伏線もあったし)
ま、アタマの回転が速い人ならすぐ分かるのかも知れないが・・・

これくらいは書いてもいいかな。
この結末によって ”すべて” が丸く収まる。
本作の基本設定をうまく活かした結末だと言えるだろう。


配役についても書いておこう。

直実は北村匠海さん。若手の人気俳優らしい。
うーん、よく知らないんだよね。若い男は興味ないから(笑)。
演技は達者。見ていて違和感ない。

瑠璃は浜辺美波さん。「アルキメデスの大戦」にも出てた若手女優さん。
映画やCMなんかでは ”元気なお嬢さん” ってイメージなんだけど
本作では一転、抑えた演技で通している。
瑠璃さん自体、そもそも地味なキャラなのでそれ自体はいいんだけど
彼女を起用したメリットがあまりないような気も。

ナオミは松坂桃李。
さすがに「侍戦隊シンケンジャー」で1年間鍛えただけあって上手。
戦隊ものでは、変身後の台詞はアテレコになるので、
戦隊出身者は概して声優がうまいからね(例外もいるけど)。

あと、直実と瑠璃のクラスメートとして登場する ”萌えキャラ”、
勘解由小路三鈴(かでのこうじ・みすず)さん。
なんとも、ものものしい名前なのだけどCVはなんと福原遥さん。
鑑賞中は分からなかったんだけど
エンドタイトルで名前を見つけてびっくりした。
おお、”まいんちゃん” じゃないですか。
こちらもNHKで4年間鍛えられたせいか、上手ですね。
登場するたびに背景に星が輝く(笑)という不思議ちゃんキャラを好演。


HELLO WORLD (集英社文庫)

HELLO WORLD (集英社文庫)

  • 作者: 野崎 まど
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/06/21
  • メディア: 文庫
この映画の脚本家にしてSF作家でもある野崎まど氏が
自ら書き下ろしたノベライズ。

内容的には、映画の流れをそのままなぞっていくのだが
もちろん、文章ならではの利点もある。

特に主人公・直実の心情描写が細かく書き込まれていて
物語中盤の「古本市」のエピソードあたりを読んでいたら
映画の時には出なかった涙が、なぜか大量に流れ出してしまって・・・

ちょうど電車に乗っているときだったので、これには困った(笑)。

やっぱり小説には小説のいいところもある。
私が読書を止められないのもそれが理由だろうな。

実は映画の中で1カ所、理解できなかった部分があったのだけど
本書をラストシーンまで読むとそれも解消された。

この本については「読んでから観る」より
「観てから読む」べきだと思う。
やっぱりまずは映画館の大画面で
あの ”ラストシーン” を体験するべきだろう。

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