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巨神計画 / 巨神覚醒 / 巨神降臨 [読書・SF]


巨神計画〈上〉 (創元SF文庫)

巨神計画〈上〉 (創元SF文庫)

  • 作者: シルヴァン・ヌーヴェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/11
  • メディア: 文庫
巨神計画〈下〉 (創元SF文庫)

巨神計画〈下〉 (創元SF文庫)

  • 作者: シルヴァン・ヌーヴェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/05/11
  • メディア: 文庫
巨神覚醒〈上〉 (創元SF文庫)

巨神覚醒〈上〉 (創元SF文庫)

  • 作者: シルヴァン・ヌーヴェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/06/21
  • メディア: 文庫
巨神覚醒〈下〉 (創元SF文庫)

巨神覚醒〈下〉 (創元SF文庫)

  • 作者: シルヴァン・ヌーヴェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/06/21
  • メディア: 文庫
巨神降臨 上 (創元SF文庫)

巨神降臨 上 (創元SF文庫)

  • 作者: シルヴァン・ヌーヴェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/05/21
  • メディア: 文庫
巨神降臨 下 (創元SF文庫)

巨神降臨 下 (創元SF文庫)

  • 作者: シルヴァン・ヌーヴェル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/05/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

異星人が残していった巨大なロボットを発掘したために、
人類に危機が訪れる・・・なあんて、
「伝説巨神イデオン」みたいな設定だが、
そんなロボットアニメ的要素を真っ正面に押しだし、
大真面目に描ききったのがこの三部作だ。

第1部「巨神計画」はこんな話だ。

アメリカの片田舎に住む11歳の少女、ローズ・フランクリンが
遊びに入った森の中で発見したものは、巨大な ”手” だった。

さらに、それは6000年前からそこにあり、
しかもイリジウム合金製でできていて
全長60mにおよぶ巨大ロボットの一部であることが明らかになる。

17年後、物理学者へと成長したローズを中心に、
世界中に散らばった ”パーツ” を集めて
巨大ロボットを甦らせるプロジェクトが開始される。
メンバーは、アメリカ陸軍ヘリのパイロット、
カーラ・レズニックとライアン・ミッチェル、
言語学専攻の大学院生ヴィンセント・クーチャー、
遺伝学者のアリッサ・パパントヌ。

地球各地からパーツが発見されて、
巨大ロボットが ”組み上がって” いくにつれて
いくつもの問題が立ち上がってくる。

このロボットを造った者は誰か?
そしてなぜ残していったのか?

ロボットの胸の部分に操縦席らしきものはあるのだが、
いったいどうすれば動かせるのか?

パーツはアメリカ以外の地域にも多く埋まっていた。
発掘チームはそういう地域にも潜入して回収を進めるが
やがて世界各国もプロジェクトの存在に気づき始める・・・


あまり内容に深入りすると、未読の方の興を削ぐとも思うので、
まずはこのへんまで。
これから読もうと思われる人は
以下の文章は読まずに書店に行くことを推奨する。


これ以下では、第1部後半以降の内容を簡単に紹介しようと思うのだけど
どうしてもネタバレ的なことにも触れてしまうのでそのつもりで。


その第1部の9年後に始まる第2部「巨神覚醒」では、
発見・復元された巨大ロボットは ”テーミス” と命名され、
国連の管理下に置かれている。
そしてある日、ロンドンに突如2体目の巨大ロボットが出現し、
あたり一帯に壊滅的被害を与える。

その異星人のロボットに対抗すべく、
カーラとヴィンセントがパイロットとなったテーミスが実戦投入される。
二人の必死の奮闘によって異星人のロボットは無力化されるが
さらに13体のロボットが同時多発的に世界中の大都市に現れ、
人類に対して無制限の殺戮を開始する・・・


そして第3部「巨神降臨」は、第2部からさらに9年後が舞台になる。
人類は辛うじて滅亡の危機を脱するが
犠牲者は全世界で1億人に及び、さらに人類の間には
国家や民族、宗教とも異なる、新たな ”差別” が生まれていた。
(このへんは、現代の世界情勢も織り込んでるのは明らかだろう)
そして、地球上で巨大ロボットを所有する唯一の国家となったアメリカが
まさに ”世界征服” ともいうべき行動を起こしていく・・・


巨大ロボットを操縦するパイロットには、ある ”適性” が必要で、
誰でもできるわけではない。
このへんはロボットアニメにもよくある設定だったりするし、
第2部になると、その ”適性” の正体も明らかになるのだけど
これも昔のロボットアニメでよく見た設定だったりする。

また、この ”適性” が第3部における ”差別” の
遠因ともなっているのだけれど、これも
日本の某有名アニメ監督の某作品を彷彿とさせる。

第2部からは、カーラとヴィンセントの娘・エヴァが
新レギュラーとして加わるのだけど、彼女の命名が何に由来するのかは
日本のアニメファンならもう言わずもがなだろう。


第3部では、異星人の母星の様子も描かれるのだけど
地球人よりも数千年以上進んだ科学技術を持ちながら、
彼らの世界は決して理想郷ではない。
停滞と分断と差別と陰謀に明け暮れていて、
そのあたりはおよそ地球人と大差なかったりする。

1950年代のSFでは、科学的にも倫理的にも超越した異星人に
導かれて ”幼年期” を脱する地球人、なんてモチーフも見かけたが
本書では、およそ異星人を見ていても幻滅するだけだったりする。
目指すべき理想は自分で見つけなければいけない、ってことか。


巨大ロボットがメインなのは間違いないのだが、
その戦闘シーンはさほど多くない。むしろ少ないほうだろう。
多すぎるとリアリティを損なうとも思うので
これくらいがいい案配なのかもしれない。

 巨大ロボット同士の、派手なバトルアクションで
 スカッとした気分になりたい、なんて思って
 本書を読むと当てが外れるだろう。

それよりは、巨大ロボットに関わることによって
人生を狂わせられていく人間たちのドラマや、
異星人の実在に怯えて、次第に理性を失っていく人類社会のほうこそ
作者が描きたかったものなのだろうと思う。

 うーん、今書いてて思ったけど、
 このへんも「イデオン」っぽいかな。

ロボットアニメとSFと、どちらも好きな人なら
楽しい読書の時間を過ごせるだろう。
(どちらか一方だけだと、ちょっと苦しいかも)

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