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「ヤマト2202」感想・・・のようなもの 番外編 「サブマリン707」と艦長の資質の巻 [アニメーション]


「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」第4話冒頭で、
波動砲の封印と乗組員の安全との間で悩む古代が描かれる。
ここのシーンを観ていて想い出したのが
「サブマリン707」の、とある場面。

今回はそれについて書く。


■少年自衛官

「サブマリン707」には、水早賢次・日下五郎・海野千太という
3人の少年が登場する。

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いずれも身寄りがなく、ブラジルへ移民する(時代だねぇ)途中、
乗っていた船がU結社によって撃沈され、「707」に救助される。

やがて3人は少年自衛官として教育を受けることになり、
そのまま「707」の正式な乗員となる。
賢次と五郎は小型潜航艇・ジュニアの操縦員、
千太は烹炊員(炊事係)として腕を振るうようになる。

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 「707」は "潜水艦もの" としては艦長の速水一佐が主役だが
 少年誌への連載だったため、この3人は
 読者の感情移入がしやすいキャラとして登場させたものと推測する。


■謎のムウ潜団

「サブマリン707」では、もちろん潜水艦同士の
壮絶な戦闘シーンが見せ場になるのだけど、
その合間合間に、人間のドラマも垣間見せてくれる。

第二部「謎のムウ潜団篇」は、海底王国「ムウ」を征服した
かつての米国海軍士官・レッド大佐が大潜水艦隊を建造し、
地上世界の支配のために乗り出してくるというストーリー。


太平洋航路を往く艦船をことごとく沈めようとするムウ潜団。
海の平和を守るべく、周辺諸国は戦力を投入する。
日本政府もまた、ムウ潜団壊滅のために
「707」を含む5隻の潜水艦隊を派遣する。
(僚艦は「717」「727」「737」「747」の4隻)

■南郷の決断

その中の一隻、「717」を預かる艦長は南郷二佐。
彼は第一部「U結社篇」では
「707」艦長・速水一佐のもとで副長を努めていた男だ。
いわば彼の一番弟子と言っていい。

南郷が指揮する「717」は
ムウ潜団相手に手堅い戦いぶりを見せるが
そのさなか、敵の潜水艦と衝突事故を起こし、
沈没の危機に見舞われてしまう。

しかしその敵艦こそ、
ムウ潜団の首領・レッド大佐の乗艦だったのだ。

↓手前側の「401」がレッド大佐の乗艦。奥の黒いのが「717」。

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目の前にレッド大佐がいることを知った南郷は苦悩する。
「717」が生還を諦め、レッド大佐と運命をともにすれば
彼を葬ることができる。
そうすれば太平洋に平和を取り戻すことができる、と。
「717」の副長も覚悟を決めている様子だ。しかし・・・

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そのとき南郷は、「717」に乗っている
二人の少年(賢次・五郎)のことを思い出す。

 彼らは「707」"一世" が撃沈された際に
 海底王国「ムウ」に捕われの身となり、
 そこから辛くも脱出してきた。
 その後、紆余曲折があって
 このとき
「717」に保護されていたのだ。

南郷は「707」の副長時代から、この二人とは顔なじみだった。

彼は気づく。
「こんな子どもにまで犠牲を押しつけることはできない」と。

さらに彼は「艦長とは如何にあるべきか」を考えるのだ。

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実は、私が長大な「707」の物語でいちばん印象に残っているのは
このシーンだったりする。
派手な戦闘シーンや艦長同士の手の内の読み合いよりも。

南郷は乗員の生命を優先し、戦場を離脱する道を選ぶ。


一方、海底に残されたレッド大佐の艦は浮上能力を失っており、
乗員たちは死を待つばかりになってしまうのだが
その時にレッド大佐が副長に下す命令がまたスゴイ。
これもまたある意味「乗員の命を守る」命令なんだが、
極限状態で冷静にこういう命令ができる大佐もたいしたものだ。

結局、レッド大佐たちは仲間によって救出され、
ムウ潜団が誇る最新鋭潜水艦「ブラック・ジャック」に乗り込んで
再び日本の潜水艦隊の前に現れることになる。


その「ブラック・ジャック」が繰り出す新兵器に翻弄されながらも
最後まで果敢に抵抗を続ける「747」艦長・磯崎二佐の奮戦、
そして最終決戦での「707」と「ブラック・ジャック」の一騎打ちなど
読みどころも満載。

「謎のムウ潜団篇」は、シリーズ中の最高傑作だと思うので
一読の価値はあると思う。


■艦長の資質とは

南郷の行動にも、いろいろ意見があるかも知れない。

実際、生き残ったレッド大佐は「ブラック・ジャック」を駆って
「707」の僚艦を沈め、多くの死傷者を出している。

しかし、「サブマリン707」という作品において
艦の運命を握っている「艦長」という存在はどうあるべきかは
この一連のシーンによく現れていると思う。

速水一佐、南郷二佐、レッド大佐以外にも、
「サブマリン707」には潜水艦、水上艦を含めて
綺羅星のように多くの艦長が登場する。

彼らは目的を達するため、敵を倒すため、乗組員を守るため、
極限状態の中で、自らの "規範" に従って
(「何を優先するか」と言い換えてもいい)
決断を下し、そして戦い、ある者は生き残り、
ある者は敗れ去って海の藻屑と化していく。

「サブマリン707」とは、そんな艦長たちの
"決断の物語" と言っても過言ではないだろう。


■名艦長

「フィクションにおける名艦長を3人挙げよ」と言われたら、
私はたぶん、
「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長、
「終戦のローレライ」の絹見(まさみ)艦長、
そしてこの「サブマリン707」の速水艦長を挙げるだろう。

でも、この南郷艦長も忘れがたい一人だ。


■おまけ

アニメ、小説、マンガから一人ずつ挙げたので、
映画からも挙げておこう。

ここは何と言っても映画「眼下の敵」(1957・米/西独合作)でしょう。
アメリカ駆逐艦艦長マレル(ロバート・ミッチャム)と
ドイツUボート艦長シュトルベルク(クルト・ユルゲンス)。
この二人も別格かなあ。

序盤から中盤にかけての、
二人のチェスの名人同士のような手の読み合いも見応えがあるけど
終盤、絶体絶命の危機に陥ったマレルが繰り出す
起死回生の一手もシビれるし
何より、ラストでの艦長二人の決断、そして乗組員たちの
敵味方を越えた "人間ドラマ" が素晴らしい。

潜水艦映画、そして "艦長" を描いた映画の傑作である。
未見の方はぜひ。
一見の価値があると思う。


■おまけのおまけ

シュトルベルク艦長の副官の名は「ハイニ」。
そういえば「2199」で登場した次元潜航艦艦長・フラーケンの
副官もハイニさんでしたね。
このへんもわかってやってるんでしょうねぇ。

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