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放課後スプリング・トレイン [読書・ミステリ]

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

放課後スプリング・トレイン (創元推理文庫)

  • 作者: 吉野 泉
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/02/27
  • メディア: 文庫

評価:★★★

主人公は福岡市内の学校に通う女子高生・泉。
彼女の周りで起こる不思議な事件をつづった、
"日常の謎" 系連作ミステリ。

「放課後スプリング・トレイン」
 2年生への進級に伴うクラス替えで、
 泉はモデル並の容姿とパワフルな行動力を併せ持つ
 朝名(あさな)と友人になる。
 ある日、泉は朝名から「彼氏を紹介するから一緒にきて」と誘われる。
 驚きながらも朝名に同行するが、その途中の鉄道の車内で
 二人はある女性の不思議な行動に出くわしてしまう。
 朝名の彼氏は小学校の新任教師・上原。そして一緒に現れたのは
 彼の友人で国立Q大学の院生・飛木(とびき)。
 飛木は泉たちの話から、女性の行動の意味を解き明かす。
 表題作兼登場人物の紹介篇、のわりには
 ミステリ的なネタがいまいちな感も。

「学祭ブロードウェイ」
 6月を迎え、泉たちの通う高校は文化祭。
 彼女のクラスは文化祭における「屋台権」(食品を販売する権利)
 のくじ引きに外れ、演劇を行うことになった。
 演目はクラスを二つに分け、
 「眠れる森の美女」と「シンデレラ」を上演することに。
 文化祭準備の熱気と混沌の中、演劇の練習は続く。
 そして文化祭の当日。
 楽屋として使用されていた部屋が荒らされ、
 シンデレラの衣装がなくなるという事件が起こる。
 しかし、泉たちから観客として招かれていた飛木は
 事件の裏に隠された事情を見抜いてしまう・・・
 明かされてみると、たしかに高校で起こりそうで、
 しかも高校でしか起こらないであろう事件だったりする。
 本書ではいちばんミステリ寄りな作品かな。

「折る紙募る紙」
 女子水球部というなかなかレアそうな部活に所属している泉さん。
 練習試合の紅白戦で負けてしまった彼女は、
 罰ゲームとしてボランティア部の募金活動へ応援参加することに。
 同じ水球部員の芽衣子とともに3日間の街頭募金に参加した泉。
 しかしボランンティア部の部長・徳永と芽衣子の行動に
 不審なものを感じ始めた泉は、飛木に相談するが・・・
 泉のクラスでの席替えで使用された "色紙" という
 二つの "謎" をうまく組み合わせて構成されてる。
 募金とかボランティア活動とかいうものについて
 いろいろ考えさせられる話にもなってる。

「カンタロープ」
 朝名と、その彼氏である上原先生の間がうまくいっていないらしい。
 心配になった泉は、飛木と一緒に上原の勤務する小学校へ向かうが・・・
 ミステリとしては、上原の抱えた悩みを飛木が解決するわけだが
 本書の最後におかれた本編で、今までの3編に "織り込まれて" いた
 ある "仕掛け" が明らかになる。


泉たちの通っている高校の描写がいい。
生徒たちのキャラも立ってるし、実に楽しそうに高校生活を送ってる。
授業風景とか試験の様子を読んでると、彼女らの通っている高校は
かなりハイレベルな進学校であることが伺われる。
このまま行けば泉は、難関であるQ大へ進学しそうだ。
(作中では明言されないけどQ大は明らかに九州大学のことだろう)
飛木は理学、それも生物学専攻の院生らしい。
泉さんも理系らしいので、理学部に入って彼の直系の後輩になりそう。

どうでもいいことなんだけど、読んでいて気になったのは、
ミステリ的な内容よりも、朝名の彼氏のこと(笑)。

上原先生は、朝名さんの元家庭教師だったという。
おいおい、ふつう女の子に男の家庭教師はつけないだろー、
ネコに鰹節じゃねえか・・・なぁんて
しばしイケナイ妄想に耽ってしまいそう(笑)。
 まあ、それだけ上原くんが朝名の親から信頼されてたってことか。
 家族ぐるみでお付き合いがあるのかも知れないしねぇ。
実際、作中での彼の描写は、画に描いたように真面目で誠実そのもの。
大学もたぶん国立Q大(おそらく飛木と同級生なんだろう)。
 まあ、親はくっつくならそれでもいいと思ってたのか。

それにしても、進学校に通っていてモデル並みに美人な
高校二年生を彼女に持つなんて、上原先生が羨ましすぎる(爆)。

 いけませんねぇ。還暦も近いというのに全く煩悩が抜けてない(笑)。

もし続編があるのなら、
大学生になった泉さんと院生の飛木くんという
"理系カップル" の活躍が描かれるのだろう。
それも読んでみたいと思う。

あ、朝名さんと上原先生の "その後" もぜひ(笑)。

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