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金田一耕助、パノラマ島へ行く [読書・ミステリ]

金田一耕助、パノラマ島へ行く (角川文庫)

金田一耕助、パノラマ島へ行く (角川文庫)

  • 作者: 芦辺 拓
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

日本のミステリに名探偵は数多く登場するが、
私くらいの世代の人に「和製名探偵の双璧は?」と
問いかけたら、「明智小五郎と金田一耕助」の
二人を挙げる人は多いだろう。

 もっとも、20代~30代くらいの人だと、
 「江戸川コナンと金田一少年」て答える人が
 大半かも知れんが(笑)
 それとも「ガリレオと火村」かなあ・・・


さて、本作は、芦辺拓による二大名探偵のパスティーシュ、
その3冊目である。前の2冊では短めの作品が多かったが
本書では文庫で100ページ超の中編が2作収録されている。


「金田一耕助、パノラマ島へ行く」
 本家「パノラマ島綺譚」の後日談の形式をとっている。
 伊勢でいちばんの大富豪・菰田(こもだ)源三郎が
 私財をすべて投入して建設した楽園も、既に廃墟と化していた。
 そのパノラマ島を、遊園地として再生させようと目論む
 風間俊六に誘われ、金田一耕助は島へと渡る。
 荒廃した施設群を巡った後、本土に戻って宿を取った二人だが、
 パノラマ島で身元不明の死体が発見されたとの知らせで再び島へ。
 現場近くでは「KOGORO」と刺繍された帽子が発見される・・・

「明智小五郎、獄門島へ行く」
 こちらも本家「獄門島」の後日談。
 瀬戸内海へと休暇旅行に訪れた明智小五郎&文代夫妻、
 そして小林少年を加えた3人は、獄門島へ立ち寄る。
 上陸前に船で島の周囲を一周するのだが、そのとき
 「獄門島」事件のことが明智たちの口を借りて語られる。
 上陸後も、事件に関わった人たちが少なからず登場する。
 鬼頭早苗や、千光寺の住職を継いだ了沢など、
 登場人物たちの数年後の姿が描かれるのも
 本書の読みどころのひとつだろう。
 しかし上陸した彼らの前に、次々と不思議な出来事が起こる。
 明智は当時をよく知る金田一に連絡し、二人の名探偵によって
 島に隠された秘密が暴かれていく。
 
 作者による「あとがき」には、
 事前に「獄門島」を読んでおく必要はない、って書いてある。
 実際、ネタバレもされてないんだけど、読んでおいた方が、
 本作をより楽しむことができるんじゃないかと思う。

 ちなみに、1977年の映画版(市川崑監督)では、
 当時28歳だった池田秀一が了沢を演じている。
 後にシャア・アズナブルの声優としてブレイクする2年前のことだ。

横溝正史は1981年に亡くなってるから、もう35年になるんだねぇ。
この文章を書くために確認したら、ビックリしてしまったよ。
今更ながら時の流れの速さを実感した。

そんな長い時を経ても、こんな風に描いてもらえる
キャラクターなのだから、幸せと言うべきだろう。

願わくば、もっと多くの作家さんに書いてもらいたいなあ。
何年かに一冊でいいから、金田一耕助の探偵譚を読みたいものだ。


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