金田一耕助、パノラマ島へ行く [読書・ミステリ]
評価:★★★☆
日本のミステリに名探偵は数多く登場するが、
私くらいの世代の人に「和製名探偵の双璧は?」と
問いかけたら、「明智小五郎と金田一耕助」の
二人を挙げる人は多いだろう。
もっとも、20代~30代くらいの人だと、
「江戸川コナンと金田一少年」て答える人が
大半かも知れんが(笑)
それとも「ガリレオと火村」かなあ・・・
さて、本作は、芦辺拓による二大名探偵のパスティーシュ、
その3冊目である。前の2冊では短めの作品が多かったが
本書では文庫で100ページ超の中編が2作収録されている。
「金田一耕助、パノラマ島へ行く」
本家「パノラマ島綺譚」の後日談の形式をとっている。
伊勢でいちばんの大富豪・菰田(こもだ)源三郎が
私財をすべて投入して建設した楽園も、既に廃墟と化していた。
そのパノラマ島を、遊園地として再生させようと目論む
風間俊六に誘われ、金田一耕助は島へと渡る。
荒廃した施設群を巡った後、本土に戻って宿を取った二人だが、
パノラマ島で身元不明の死体が発見されたとの知らせで再び島へ。
現場近くでは「KOGORO」と刺繍された帽子が発見される・・・
「明智小五郎、獄門島へ行く」
こちらも本家「獄門島」の後日談。
瀬戸内海へと休暇旅行に訪れた明智小五郎&文代夫妻、
そして小林少年を加えた3人は、獄門島へ立ち寄る。
上陸前に船で島の周囲を一周するのだが、そのとき
「獄門島」事件のことが明智たちの口を借りて語られる。
上陸後も、事件に関わった人たちが少なからず登場する。
鬼頭早苗や、千光寺の住職を継いだ了沢など、
登場人物たちの数年後の姿が描かれるのも
本書の読みどころのひとつだろう。
しかし上陸した彼らの前に、次々と不思議な出来事が起こる。
明智は当時をよく知る金田一に連絡し、二人の名探偵によって
島に隠された秘密が暴かれていく。
作者による「あとがき」には、
事前に「獄門島」を読んでおく必要はない、って書いてある。
実際、ネタバレもされてないんだけど、読んでおいた方が、
本作をより楽しむことができるんじゃないかと思う。
ちなみに、1977年の映画版(市川崑監督)では、
当時28歳だった池田秀一が了沢を演じている。
後にシャア・アズナブルの声優としてブレイクする2年前のことだ。
横溝正史は1981年に亡くなってるから、もう35年になるんだねぇ。
この文章を書くために確認したら、ビックリしてしまったよ。
今更ながら時の流れの速さを実感した。
そんな長い時を経ても、こんな風に描いてもらえる
キャラクターなのだから、幸せと言うべきだろう。
願わくば、もっと多くの作家さんに書いてもらいたいなあ。
何年かに一冊でいいから、金田一耕助の探偵譚を読みたいものだ。
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