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晴れた日は謎を追って がまくら市事件 [読書・ミステリ]

晴れた日は謎を追って がまくら市事件 (創元推理文庫)

晴れた日は謎を追って がまくら市事件 (創元推理文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/12/22
  • メディア: 文庫



評価:★★★

本書は、通常のアンソロジーと、いささか毛色が異なる。

冒頭に、架空の街である「蝦蟇倉市」なる地方都市の地図が掲げてある。
名所旧跡や主要施設が載っており、本書に収められた作品には、
どれにもこの蝦蟇倉市内の場所が登場する。

つまり、本シリーズは「蝦蟇倉市」を舞台に、ミステリ作家11人が
書き下ろしたミステリ・アンソロジーになっているのだ。
本書には、そのうち5人の作品が収められている。

巻末の解説によると、SFやファンタジーにおける、
「シェアード・ワールドもの」をミステリでやってみた、
ということらしい。

先行する作品例として、2002年に祥伝社文庫で展開された
「まほろ市の殺人」シリーズが挙げられてる。
おお、懐かしいねえ。これ読んだよ。

さて、本書である。

「弓投げの崖を見てはいけない」道尾秀介
 保育士の安見邦夫は、妻へのプレゼントを購入した帰りに、
 "弓投げの崖(地図に載ってる)" 近くのトンネルで、
 若者3人による接触事故に巻き込まれてしまう。
 3ヶ月後、事故の捜査を続ける刑事・隈島は
 邦夫の妻・弓子を訪ねる。
 ようやく事故を起こした車の特定にこぎ着けたのだ、
 しかしその頃、容疑者3人のうちの一人が殺害されていた・・・
 ラストで明らかになる事実には驚かされる。
 いやはや恐れ入りました。ただ、リドルストーリー風に
 結末を曖昧にしてあるのは蛇の生殺しだなあ。
 東野圭吾みたいに読者に推理させようって意図はわかるが。
 巻末の「執筆者コメント」で、
 作者自身が推理のヒントを教えてくれてるけど、
 私はどう頭を捻ってもわからなかったよ。とほほ。

「浜田青年ホントスカ」伊坂幸太郎
 「相談屋」の稲垣という胡散臭い男に雇われ、蝦蟇倉市の
 "スーパーホイホイ" の駐車場で、働き始めた浜田くん。
 意外と「相談屋」の需要はあって、来客は絶えないが
 稲垣の与える助言はほとんど犯罪同然で、危ういことこの上ない。
 そして1週間が経った時、稲垣は意外なことを語り始めた・・・
 終わってみればタイトルもよくできてる。

「不可能犯罪係自身の事件」大山誠一郎
 蝦蟇倉市では、不可能犯罪が年に15件も発生する。
 蝦蟇倉大学の史学教授である真知博士は、
 犯罪捜査にも非凡な才能を示し、蝦蟇倉警察署の
 不可能犯罪係をも兼任している。
 ある日、真知博士のマンションに、水島と名乗る人物が現れる。
 10年前、彼の父が密室状態の四阿で殺されたのだという。
 ところが、真知博士は水島の話を聞いている最中に
 突然の睡魔に襲われて気を失ってしまう。
 意識が戻った時、水島もまた殺されていたのだった・・・
 過去と現在の二つの密室事件を解くという欲張りな作品。
 明かされるトリックも非常によく考えられている。
 「人を殺すためとは言え、こんな面倒くさいことをするのか」
 なぁんて疑問はごもっともだが、大山誠一郎作品の良さは
 この「人工の美」にこそあると思ってる。

「大黒天」福田栄一
 大学生・輝之の祖母である照子は、和菓子屋を切り盛りしている。
 その和菓子屋にある日、男が現れた。
 「店先に飾ってある大黒様は昔盗まれたものだ。返してもらいたい」
 亡くなった祖父・庄介の無実を信じる輝之は、
 姉・靖美とともに調査を開始するが・・・
 調査が進むにつれて、次第に明らかになる若き日の祖父の姿。
 家族の絆をテーマにしたライトなミステリ。

「Gカップ・フェイント」伯方雪日
 タイトルからてっきり巨乳のお姉さんが殺されるのかと思った。
 そう勘違いしたのは私だけではあるまい(きっぱり)。
 蝦蟇倉市長・近藤は、元プロレスラー。
 彼がぶち上げた格闘技イベントが
 「蝦蟇倉グラップリングワールドカップ」、通称 "Gカップ" だ。
 世界中から集まった格闘家たちの宿舎となったのは
 近藤が経営するホテル、コンドー・パレス。
 しかし、ホテル横の広場で死体が発見された。
 しかも遺体は、高さ4mにおよぶ
 銅製の巨大仏像の下敷きになっていたのだ・・・
 格闘技高校生チャンピオンの "オレ" と、父親の刑事が事件に挑む。
 いやあ、久しぶりに直球ど真ん中のバカミスでしたね。


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