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妖草師 [読書・ファンタジー]

妖草師 (徳間文庫)

妖草師 (徳間文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★

京の公家・庭田家の次男坊、重奈雄(しげなお)。
紀州徳川家へ嫁いだ憧れの女性・徳子を忘れられずに
放蕩の限りを尽くして家を勘当され、
市井で草木の医師として暮らしている。

しかしその裏では、"異界" からこの世へ侵入し、
災厄をもたらす "妖草" を刈る "妖草師" として活躍していた。

花道の名門・滝坊家の門人の一人、お加代。
彼女の父・吉兵衛が夜ごとに奇行にふけるようになった。
毎晩東山へ向かい、山中で一夜を過ごしているのだ。

重奈雄に想いを寄せる滝坊家の一人娘、椿。
彼女から吉兵衛の一件の相談を受けた重奈雄は
奇行の背後に謎の尼僧・無明尼が暗躍していることを知る。

さらに、吉兵衛が元紀州藩士であったこと、
江戸の紀州藩の屋敷でも怪異が生じていることが判明し、
紀州徳川家への苛烈な怨念の存在が明らかになる。


人の心の闇や歪みを苗床に芽吹く妖草。
人の生気を吸い取ったり、焔を発してあらゆるものを焼き尽くしたり
妖草がもたらす災厄は千差万別。

無明尼は、その妖草を武器として御三家相手に復讐を企む。
それを阻止できるのは、同じく妖草を操る術を知る重奈雄のみ。
いわば 妖草師vs妖草師 の戦いが描かれていく。

シリーズ第1巻のせいか、主人公の重奈雄も、
いまだカンペキとはほど遠い人間だ。
初恋の相手・徳子への思いを未だ引きずり、
椿の思いにも応えることが出来ない。
妖草の知識も未だ万全とは言えず、
無明尼との緒戦でも完敗を喫してしまう。
そんな彼のがんばりと成長も読みどころか(笑)。

脇役陣も個性派が揃っている。
娘の想いよりも、家を守ることを第一に考える椿の父・舜海
庭田家当主にして重奈雄の兄・重煕(しげひろ)。
この二人は、重奈雄とは対立する位置にいる。
それとは逆に、重奈雄と行動を共にするのが
池大雅(いけの・たいが)&玉瀾(ぎょくらん)の画家夫婦や、
その同業者の曾我簫白(そが・しょうはく)。
この3人は実在の人物でもある。


「戦都の陰陽師」シリーズでは
ちょいと文句めいたことを書いてしまったが
本書は文庫で400ページと既発表の作品群よりも短め。
内容でも余計な(と言っては失礼か)、というより
どちらかというとあまり本筋に関係ない描写は少なくなり、
リーダビリティはかなり向上していると思う。

"妖草" というアイテムを得て開幕した伝奇アクション時代劇。
すでに第2巻が刊行されている。これもそのうち読む予定。


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