四畳半タイムマシンブルース [アニメーション]
森見登美彦による小説『四畳半神話大系』のキャラと、上田誠の戯曲『サマータイムマシン・ブルース』のコラボレーション作品であるとのこと。
『四畳半神話大系』は未読なんだけど、『夜は短し歩けよ乙女』『【新釈】走れメロス』『有頂天家族』は読んでるので、なんとなく雰囲気の見当はついてた。
ちなみに『四畳半神話大系』は2010年にTVアニメになっていて(これも未見)、今作でも声優さんは同じ方が出演されてるらしい。だけど本作は『-大系』の続編ではなくて、パラレルワールドという位置づけみたいだ。
キャラデザインや背景の絵柄が、強烈というか超個性的(笑)なので、好き嫌いはあると思う。私も最初はかなり抵抗があったけど、観ているうちに少しは慣れてきたかな。
好きな絵柄か? って聞かれたら、素直に「はい」とは言いづらいけど、映画自体は楽しく観られましたよ。
まずは内容紹介。
主人公の「私」は、京都のとある大学の三回生。
おんぼろアパート「下鴨幽水荘」で、1年後輩の明石さんに密かに思いを寄せつつも、無為な青春を送っている。
「私」が住む209号室には、なぜかそこにだけクーラーが設置されており、猛暑の夏には住人たちのオアシスともなっていた。
しかし8月のある日、その唯一のエアコンが動かなくなった。住人たちが騒いでいる時にコーラがかかって故障してしまったのだ。
そこに見知らぬ青年が現れた。”田村” と名乗った彼は、25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたのだという。
「私」は、彼のタイムマシンで昨日に戻り、壊れる前のリモコンを持ってくることを思いつく。ところが、タイムマシンに乗り込んだ住人たちが、リモコンを持ってくるだけにとどまらず勝手気ままに過去を改変しようとする。
さらに、「私」と明石さんは過去の改変によって自分たちの存在する世界が消滅する可能性に思い至る。
かくして、タイムパラドックス回避のためのドタバタ騒ぎが始まる・・・
冒頭から「私」によるマシンガンのようなナレーションが始まり、その長さと速さに驚かされる。キャラたちの台詞もそれぞれユニーク極まりないが、このへんはアニメ版『-大系』を見ている人には先刻ご承知なのでしょう。
1日前に戻って、エアコンのリモコンを持ってくるだけ、というシンプルな出だしから、予想外の事態が連続するスラップスティック・コメディへと変貌していく。
その原因の大半は、エキセントリックな住人たちの奇行によるもの。よくここまで奇人変人が集まってるものだと感心する。
基本はドタバタ喜劇で、楽しく見ていられる。途中で何か所か辻褄が合わないところが出てくるが、これこそタイムトラベルものの醍醐味(笑)。ラストまでには、きっちり帳尻が合うようになっていて、このあたりはとてもよくできていると思う。まあ、ひとつだけ疑問を覚えたところもあったのだけど、それを言うと野暮かな・・・。
謎の青年・”田村” の正体も、なんとなく見当がつくのだが、これは観てのお楽しみだろう。
見ていると、自分自身の大学時代をちょっぴり思い出してしまった。
私は実家通いだったのでアパート暮らしの経験はない。それ自体に不満があったわけではないけれど、こんな学生生活も楽しかったんじゃないかと思う。
演じているのは、みんな本業の声優さんで、ベテランで達者な方ばかり。そのあたりも安心して観ていられる。
中でも、声優の坂本真綾さん演じる「明石さん」はなかなか魅力的。映画製作に情熱を傾け、古本市を愛する。融通が利かなそうな雰囲気をまといつつ、天然ボケな一面もあったり。学生時代、彼女みたいな人がひとりでも周囲にいてくれれば、恋愛云々は別として、もう少し華やかな学生時代が送れたんじゃないかなぁ、って思ったり(遠い目)。
終わってみれば、明石さんばっかり見ていたような気もする(おいおい)。
雨を告げる漂流団地 [アニメーション]
映画館とNetflixでの同時公開。
映画館で観たかったのだけど、諸々の事情で配信での視聴となった。
まずは内容紹介。
小学6年生の航祐(こうすけ)と夏芽(なつめ)は、同じ団地内で姉弟のように家族ぐるみで育ってきた幼馴染だ。
しかし、航祐の祖父・安次の死をきっかけに2人の仲はギクシャクし始める。
かつて2人が暮らし、思い出の詰まった団地は老朽化のため取り壊しが決まり、「おばけ団地」と呼ばれる ”廃墟” となっていた。
夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに「おばけ団地」に忍び込む。そこで思いがけず夏芽と遭遇し、謎の少年・のっぽの存在について聞かされる。
その直後、「お化け団地」に入り込んでいた航祐と夏芽を含む6人のクラスメイトたちは、謎の現象に巻き込まれてしまう。
彼らが見たのは「お化け団地」が海上を漂流している光景だった。波をちゃぷちゃぷかき分け、雲をすいすい追い抜いていく ”ひょっこりひょうたん島” 状態になっていて・・・。
この例え、分からない人が多そうだなぁ(笑)。
はじめてのサバイバル生活のなかで子どもたちは力を合わせ、もとの世界に戻るための旅に出る・・・
航祐と夏芽を含む6人は同じ小学校に通う顔なじみなのだけど、そこに ”異分子” の存在が加わる。
彼らの前に現れた7人目の小学生で、夏芽が ”のっぽくん” と呼ぶ少年だ。彼もまた、団地で暮らしていたのだというのだが、航祐には彼を見かけた記憶がない。いったい、何者なのか・・・?
物語は、この7人だけのシーンが大半を占める。生き残るためのサバイバル場面と、”のっぽくん” の正体を巡る疑惑がストーリーの両輪になる。
ラストでは彼の正体とともに、6人が放り込まれた ”漂流空間” の意味(映画の中で具体的な説明はないが、感覚としては理解できる)も明かされる。
航祐と夏芽の間にあったわだかまりも消え、協調性に乏しかった6人も結束を高めていく。特に、序盤では頑なで一匹狼的だった航祐が、次第にリーダーとして行動するようになっていく変化は目覚ましい。
過酷な経験を通し、それぞれがちょっとずつ成長した姿で ”元の世界” への帰還を果たす。このエンディングは必然かつ正解。ジュブナイル作品としては王道展開といえるだろう。
・・・なのだけど、終わってみて思った。2時間はちょっと長いかな、と。
実際、途中で何回か時計を見たり、(配信だからできることだけど)残り時間を確認して「まだこんなに残ってるんだ」って思ったり。
映画館で観ていたら、かなり辛かったのではないかと思う。
大人がほとんど登場しないので、必然的に子どもたちだけで物語を回していくことになる。6人のこどもたちは一枚岩ではなく、他のメンバーに対して露骨に嫌悪感を表す者もいる。
”物語” である以上、波乱要素は必要で、ある意味 ”お約束の展開” だとわかってはいるのだけど、観ていてちょっとうんざりしなくもない。こどもたちだけだったら、こうなっちゃうよなぁ、と頭で分かってはいるのだが・・・
ほとんどのシーンが団地の屋内(+屋上)なので、風景(背景)の変化が小さいのも、刺激が乏しい理由のひとつかな。
そして、途中で(小さいイベントはちょこちょこ起こるものの)ストーリーを大きく動かすような転換点がないまま進んでいく。
そんなこんなで、私には中盤部がいささか冗長に感じられた。
”のっぽくん” の正体についても、けっこう早めに見当がついてしまう。でもまあ、製作側もあえて隠そうとはしていないみたいだし。
もう少し刈り込んで、90分くらいに収めた方が観やすい映画になったんじゃないか、とも思ったし、(”大人の事情” か何かで)もしも2時間という長さが必要なんだったら、何かプラスアルファの要素があったほうがよかったんじゃないかなぁ・・・とも思った。素人の浅知恵ですが・・・
声優陣については、専業の人が起用されていて、各キャラクターの演技には全く不安を感じない。いわゆる「有名芸能人」を引っ張ってきていない点は好感がもてる。
本作のターゲットは、どんな年齢層なんだろうって考えてしまった。主人公たちと同年代かちょっと上くらいの10代~20代かな。それとも、”12歳” という年齢にノスタルジーを感じるような、もっと上の世代かなぁ・・・。
ゴジラS.P [アニメーション]
ゴジラ S.P<シンギュラポイント> (ジャンプジェイブックスDIGITAL)
- 作者: 円城塔
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2022/07/26
2021年4~6月にかけて全13話が放映されたTVアニメのノベライズ・・・って言い切ってしまうのに、ちょっとためらいを感じる小説版。
まあ、そのへんは後で書くとして、アニメ版の感想は2021年7月に記事をアップしてる。
ストーリーのおさらいをしておくと、
舞台は2030年の千葉県逃尾(にがしお)市。
主人公・有川ユンは、そこにある町工場「オオタキファクトリー」で働くエンジニア。誰も住んでいないはずの洋館に気配がするということで調査へ向かうことに。
もう一人の主人公・神野銘(かみの・めい)は、空想生物を研究する大学院生。
指導教授の代理で、逃尾市にある電波管理施設 “ミサキオク” で受信された謎の信号の調査へ向かう。
まったく違う調査で、まったく違う場所を訪れた見知らぬ同士の2人は、それぞれの場所で同じ歌を耳にする。
その歌は2人を繋げ、世界中を巻き込む想像を絶する戦いへと導いていく。
孤高の研究者が残した謎、各国に出現する怪獣たち、紅く染められる世界。
果たして2人は、人類に訪れる抗えない未来<ゴジラ>を覆せるのか―。
ストーリーのおさらいはここまで。
もう少し捕捉しておくと、
「ゴジラ」といえば ”放射能” が代名詞なのだが、本作ではオミットされている。その代わりとして設定されているのが ”アーキタイプ” という仮想物質。
構造計算上では安定して存在するはずの分子なのだが、人間の手で合成することは不可能で、しかも通常の物理法則を超えた性質を持つというトンデモナイ物質だ。
タイトルの「SP」とは singular point の略で、作品中では ”特異点” と呼称される物理現象のこと。
”特異点” は ”こちらの世界” と ”アーキタイプの存在する世界” をつなぐ、いわばトンネルのようなもの。
ラドンやアンギラス、そしてゴジラなどの怪獣も、”特異点” から発生し、こちらの世界を ”浸食” してくる。
怪獣たちは ”アーキタイプ生態系” とも呼ぶべき世界に属する存在で、”我々の生態系” に対して、作品内で ”覇権争い” を繰り広げることになる。
”アーキタイプ生態系” が勝利してしまったら、人類の滅亡はもちろん、通常の物理法則が支配する世界自体が消滅してしまうかも知れない・・・
その破滅を回避すべく、有川ユンや神野銘をはじめとする多くの人々がゴジラの、そして ”特異点” の脅威に立ち向かっていく。
捕捉はここまで。
著者はアニメ全話の脚本を担当したSF作家・円城塔。彼の小説は、(私には)非常に難解に感じるものばかりなんだけど、本書は大丈夫でしたよ。
やっぱりアニメで一度は映像として頭に入ってるので、理解しやすくて楽しく読むことができました。
さて、冒頭で「ノベライズと言い切るにはためらってしまう」と書いたのは、これが通常の小説化とはいささか異なるから。
一口にノベライズと言っても玉石混淆で、あらすじをなぞっただけのような手抜き作品も過去に読んだことがある。
逆に、ストーリーはもちろん、映像では追えなかったキャラの心情や背景をていねいに書き込み、単独の ”小説” としても成立するような良心的な作品ももちろんある。
では、本書はどちらか。実はどちらでもないのだ。
本書は、読者が既にアニメ版を観ていることを前提に、本編のストーリーはほとんど追ってない。
その代わり、部分部分のシーンの裏側や、そのとき他の場所で同時進行していた事態や、そのときそのキャラが考えていたこと、抱えていた事情、そしてアニメ版では明かされなかった諸々の設定などが詳細に記述されていくのだ。
いわば本編の ”舞台裏” を延々と語っていくようなつくりになっている。
語り手も三人称だったり一人称だったり、章ごとに変わる。その一人称も、人間ならまだしも、AIが語り手になったり、時には ”怪獣視点” で語られる章まで存在する。
そういう意味では、映像では欠落していた(入りきらなかった)部分、映像にするとかえって冗長になってしまう部分の書き込みは十二分に行われている。
アニメ版を観た人からすれば、補完情報が豊富で嬉しいプレゼントだろう。
私にとっての最大の関心事は、アニメ版最終話の ”あの展開” がどう描かれるか、だった。あまりにも ”予想の斜め上過ぎる事態” の発生に、驚いたり戸惑ったりした人は少なくないと思う。
そのあたりは本書を読んでもらうとして、ノベライズの中で明かされるアーキタイプの特性や、作品世界の ”裏設定” を知っていくにつれ、「何が起こっても驚かない」ような気になってくる(笑)のが不思議だったよ。
うまく丸め込まれたような気がしないでもないが(おいおい)。←褒めてます。
このように、アニメ版を観た人には楽しみが尽きない出来ゆえに、未視聴の人には極めて不親切なつくりになっている。いきなり本書を読んでも、ほとんど内容を理解できないだろうし、ストーリーを把握することさえ困難だろう。
アニメ版を観た人には、オススメの本といえる。
観てない人は、まずはアニメ版を観ましょう(笑)。ネット配信ならいつでも観られる。ちなみに私は Netflix で視聴しました。
あの『ゴジラのテーマ』を新録したBGMも流れるし、ゴジラファン、怪獣ファン、SFファンなら、観て損はない出来だと思いますよ。
夏へのトンネル、さよならの出口 [アニメーション]
まずはあらすじの紹介から。
塔野カオルは高校2年生。通学電車の中で ”ウラシマトンネル” なるものの噂を耳にする。そこに入れば欲しいものがなんでも手に入る。その代わりに年を取ってしまうのだと――。
カオルの通う高校のクラスに転校生が入った。彼女の名は花城あんず。家庭の事情で東京から越してきた。クラスの女王・川崎小春は、さっそくに花城にちょっかいを出すが手ひどい反撃を喰らってしまう。
カオルはその日の夜、線路伝いに歩いて、謎のトンネルを見つける。トンネルの入口あたりを覗いたら、5年前に事故死した妹・カレンのサンダルと妹が飼っていたインコを見つけた。ここが噂の ”ウラシマトンネル” らしい・・・
カオルの家庭は、カレンの死によって崩壊していた。母は家を出て、父は酒浸り。このトンネルに入れば、カレンを取り戻すことができるかもしれない。
しかし、トンネルの中の時間の流れは外と違っていた。トンネル内で2分ほど過ごしただけで外界では3日が経っていた。
放課後にカオルは、一人で再度、ウラシマトンネルの検証を始める。とりあえず、亡くなった妹に会う方法を探るカオルだったが、そこを花城あんずに見つかってしまう。彼女にもまた ”手に入れたいもの” があり、2人は協力関係を結ぶことになる。
「”こちら” に帰ってくるのが1000年先の未来になってしまったとしても、”欲しいもの” を手に入れるために、2人でトンネルに入ろう」
そう約束したカオルとあんずなのだが・・・
2人とも、満たされない家庭環境にある。カオルの父は酒に逃避して家族を忘れ、あんずの両親は彼女の将来の希望に理解を示さない。
そういう状況からの脱出を願うのも、分からなくはない。彼らを支えてくれる大人が一人でもいれば、この映画のような選択はしなかっただろうから。
ボーイ・ミーツ・ガールのラブ・ストーリーとしてはよくできてると思う。2人が距離を縮めていくきっかけが、それぞれの家庭環境だったというのは哀しいところだけどね。
SFとしてはちょっと不満。”ウラシマトンネル” によって ”時を超える” 物語が可能になったのだから、もうひとひねりくらいほしかったかな。
とはいっても、作者にはSFを書くという意識が希薄なのかも知れない。”ウラシマトンネル” も、2人の ”愛の障壁” としての位置づけが大きいようだ。
上映時間が80分ほどというのも微妙なところ。Wikipediaの記述をみると、原作から削られた要素も相当あるみたい。もう20分くらいあったら、また違った印象を受けたかも知れない。
上映時間が80分ほどというのも微妙なところ。Wikipediaの記述をみると、原作から削られた要素も相当あるみたい。もう20分くらいあったら、また違った印象を受けたかも知れない。
最終的に2人は ”家族の呪縛” から解き放たれて、新たな関係を結ぶに至るのだが・・・このラストはどうなのだろう。
ネットでの感想をちょっと観てみたら、この結末を肯定的に捉えている人が多いみたいだ。だけど、私はちょっと引っかかるんだなぁ・・・。
まあカップルの数だけ幸福の形はあるのだろうし、本人たちが満足しているところに外野からいろいろ言うのは、それこそ「大きなお世話」なのは百も承知なのだが・・・まあ、昭和の親爺の戯言ですから(苦笑)
ちなみに、映画の入場者特典として、作者書き下ろしの ”後日談” がもらえます。文庫本サイズで26ページほどの掌編ですが、本作が気に入った人にはうれしいプレゼントでしょう。
最後に声優陣について。
周囲の脇役陣はベテランの声優さんで固めてるのですが、この映画は主役2人だけのシーンが大半なので、塔野カオルと花城あんずを演じる方の責任はかなり重大です。
カオルは鈴鹿央士さん。まだデビューして日も浅く、声優としての仕事もあまりこなしていないと思いますが、心配していたほど下手ではなかったですね(おいおい)。
カオルというキャラが、映画の前半ではあまり感情を見せないキャラなので、そこに救われているともいえるかな(笑)。でもやっぱり本業の声優さんを起用してほしかったかな、とは思ったり。
あんずは飯豊まりえさん。こちらは思ったよりも達者でした。聞いていて違和感もなかったし。Wikipediaによると、声の仕事はこれが4作目のようです(メインキャラを演じるのは2作目かな)。声優としては及第点だと思います。
犬王 [アニメーション]
まずはあらすじから。
公式サイトの「STORY」とwikiの記述をちょいと編集して・・・。
時は室町時代。2人の主人公の生い立ちから語られる。
京の都の猿楽の一座に生まれた子・犬王(いぬおう)は、その異形の姿から周囲に疎まれ、顔を瓢箪の面によって隠されて育つ。父に忌み嫌われる犬王は、芸の修業からは外されていたが、自ら舞や唄を身につけていく。
壇ノ浦に生まれた漁師の息子・友魚(ともな)。彼の一族は、海から昔の財物を引き上げることを生業にしていた。友魚の父は、かつて源平合戦で沈んだ三種の神器のひとつ、”天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)” を海から引き上げるよう依頼を受け、友魚もこれに同行する。
ちなみに ”天叢雲剣” は、別名 ”草薙剣(くさなぎのつるぎ)” ともいう。
しかし、剣を引き上げた父は ”呪い” を受けて命を落とし、剣は再び海へ。友魚もその ”余波” を受けて盲目となってしまう。
恨みを抱えて亡霊となった父の声に従い、友魚は京へ行き、出会った琵琶法師の所属する「覚一座」に弟子入りし、長じて自身も琵琶法師となる。
この2人が京の橋の上で出会う。盲目ゆえに犬王の異形を厭わない友魚。
名よりも先に、歌と舞を交わす2人。
友魚は琵琶の弦を弾き、犬王は足を踏み鳴らす。
一瞬にして拡がる、二人だけの呼吸、二人だけの世界。
「ここから始まるんだ俺たちは!」
壮絶な運命すら楽しみ、力強い舞で自らの人生を切り拓く犬王。
呪いの真相を求め、琵琶を掻き鳴らし異界と共振する友魚。
乱世を生き抜くためのバディとなった二人は、お互いの才能を開花させ、唯一無二のエンターテイナーとして人々を熱狂させていく。頂点を極めた二人を待ち受けるものとは――?
まずは、幼少期の犬王の ”異形” ぶりに度肝を抜かれる。足らしい足がなく、両手の長さが極端に違う。そして目や口の位置が常人と異なる ”異相”。
これが主人公で、映画の中で延々とこの姿を見せられるのは辛いなあ・・・と思っていたら、どうやらこれは ”呪い” によるものであることがわかってくる。
平家の亡霊がその主体らしいのだが、それだけではなく、その真相は終盤に明かされる。
この呪いは、犬王が舞の技術を身につけて、その技量が一段上がるたびに、順々に ”解けて” いくようだ。まずは両足が復活して・・・というように。
映画の中で、犬王が次々に大舞台をこなし、人気実力ともに ”上り詰めて” いくうちに、残りの部分も順次呪いが ”解けて” いく。
こう書いてくると、これによく似たシチュエーションの物語を思い出す人もいるかもしれない。手塚治虫の ”アレ” である(あえてタイトルは書かない)。
この作品は史実を元にした室町時代の歴史アニメではなく、純然たるファンタジーである。登場する人々も、京の町も、みなファンタジー世界の中にある ”もう一つの京の都” だ。
足利義満も犬王も歴史的には実在の人物だけど、この映画の中ではファンタジー世界の住人なのだ。
その極めつけが犬王&友魚の ”舞&演奏”。これは強烈なまでに独特である。
それまでの猿楽&琵琶法師の語りを ”古典的伝統芸” とすると、彼らのそれは(当時からしたら) ”超先鋭的な前衛芸術” である。
友魚の演奏はまさにパワフルなロックのサウンド。彼の琵琶の音色にはいつしかエレキギターの響きが重なっていく。大きめの琵琶をコントラバスみたいに演奏する者や巨大な太鼓を持った者などの ”バンドメンバー” も登場する。
そしてそれをバックに舞う犬王は、縦横無尽にジャンルを超越していく。
あるときはバレエのように、あるときは体操、あるいは新体操のように。
舞台の上で、スポットライトを浴びながら伸びやかな手足で華麗に舞う犬王。
お堂の欄干の上を、あたかも平均台の演技のように舞う犬王。
両端を燃やした松明を回転させつつ投げ上げ、舞いながら受け止める犬王。
高所から垂らしたロープに体をつなぎ、観衆の上を飛びまわる犬王。
(おまえは堂本光一か、ってツッコミを入れたくなる。)
この時代にはどうみても不可能そうな演出もあるのだけど、彼らのパフォーマンスに圧倒されて、観ているうちにどうでもよくなってしまう(笑)。
京の人々は熱狂的に彼らの ”舞台” を受け入れる。そしてついに将軍の前で披露することに。しかし、彼らの人気をやっかむ ”旧勢力” の者たちもまた、暗躍を始める・・・
観終わった第一印象は、『竜とそばかすの姫』に近い印象。
映像と音楽はスゴいけど、エンタメとしてはストーリーが今ひとつかな、という感じ。
『竜-』の、電脳空間をゴリゴリのCGでこれでもかと描いたのとは対照的に、室町時代の ”前衛ロックコンサート” をこれまた独特の雰囲気で映像化してる。こちらもけっこうCGは使われてると思うのだけど、それを感じさせないのは上手いと思う。
音楽も、ロックの演奏と主役2人の素晴らしい歌声で、確かに ”聴かせる” ものになってる。
よく言えば超個性的、悪く言えばもの凄くアクが強いので、観る人を選ぶ映画かなぁとは思う。一番尺を取ってるのが犬王の ”ステージ” シーンなので、そこが受け入れられるなら、たまらなくハマる人もいるだろうし、全く受けつけない人も出るだろう。
私は、うーん、その中間かなぁ。
やりたいこと、訴えたいことは分かるのだけど、どうにもテンポが合わないというか・・・。”ステージ” シーンがちょっと長すぎるって感じてしまうのは、やっぱり波長が合ってないんだろうと思う。
声優について。
犬王は「アヴちゃん」という人。
シンガーソングライターで「女王蜂」ってバンドのボーカルもしてるとか。
声優としての評価はちょっと難しい。何せ演じてるのが ”ほとんど人外” なキャラなんで(笑)。
でも、(多分にアニメの絵柄に助けられてるとも思うが)見ていて違和感がないのは流石だ。この作品だけに限っていえば、彼の起用は正解だと思う。意外と(失礼!)伸びのある、いい声だと思う。歌のシーンもハマってるし。
今は歌を歌える声優さんも多いけど、彼のようなワイルドな歌声が出せる人はそうそういないと思うし。
友魚は森山未來。
この人も音楽活動してるみたいで、友魚の歌唱シーンにも違和感ない。
総じて主役2人の起用は正解かと思う。
将軍・足利義満は柄本佑。
まあ下手ではないと思うけど、『ハケンアニメ!』を観たばっかりだったせいか、彼の顔が浮かんでしまうのは如何ともし難い(笑)。
有名俳優さんを使うとこんなことが起こる。声優としては上手でも、演じてる俳優さんの顔が ”見えて” しまうんだよねぇ。21世紀に入ってからの宮崎アニメなんか特にそうだった。だから有名人の起用はやめてって何回も(以下略)。
犬王の父は津田健次郎。物語のキーパースンとなる人物だ。ベテランらしく安定の演技で、映画を盛り上げる。
『シン・ウルトラマン』にも出てたし、最近頻繁に ”出くわす” ような気が。ものすごく売れっ子になってるのを実感する。
友魚の父は松重豊。
とても印象的なキャラなんだけど、エンドロールを見るまで松重さんだと分かりませんでした(笑)。
最後に余計なことを。
終盤に登場する ”アレ” を見て、「○○○ン○○!?」って(心の中で)叫んでしまいました。
いったんそう思ったら、もうそれにしか見えなくなって困った(爆)。
バブル [アニメーション]
Netflixで配信もやってるけど、映画館へ見に行った。
では、まずはあらすじから。
ある日、東京に泡が降った。それと同時に中心部で謎の大爆発が発生する。局地的な重力異常も起こり、海面が上昇して冠水状態になった。人々は脱出した後、東京は立ち入り禁止区域となった。
しかし、大爆発で親を失った子供たちが東京に入りこんで住み始めた。彼らは重力異常で空中に物体が浮遊したりしている特殊な空間(当然ながら人間も通常とは異なる跳躍・移動も可能になる)を利用した ”東京バトルクール” と呼ばれる、5対5でフラッグ奪取を目的するパルクールの大会を行っていた。その商品は生活物資だ。
主人公・ヒビキも「チーム・ブルーブレイズ」のエースとして東京バトルクールに参加していた。
ある日、ヒビキは東京の中心部にあるタワーから聞こえる「謎の音」を耳にする。船でタワーへ向かい、登り始めるが途中で海へ落ちてしまう。
溺れる寸前だった彼を見つけたのは、ひとつの ”泡” だった。意思を持つその ”泡” は、自らを少女の姿に変えてヒビキを救い出した。
少女は「チーム・ブルーブレイズ」の仲間たちと一緒に暮らし出す。人間としての記憶も、名前すら持たない彼女を、ヒビキは「ウタ」と名づけるが・・・
※以下の文章には、映画の結末について言及している部分があります。
未見の方はご注意ください。
ヒロインのウタが ”泡の化身” であることは物語の発端から明かされている。人間の言葉を話せなかった彼女も、マコト(重力異常を調査している女性研究者)が本を読み聞かせることによって、次第に会話する力を身につけていく。
このとき詠む本が「人魚姫」。本作の基本のモチーフがこの作品であることは明らかで(wikiによると、監督も脚本家もそれが着想源だと明かしてる)、物語も「人魚姫」を近未来の東京を舞台に、SFファンタジーに仕立てたらこうなる、というふうに進行していく。ウタがヒビキと触れあうと泡になって(泡に還って?)しまうという設定が哀しすぎるよ・・・。
観ていて、これはどう転んでもハッピーエンドの目は無さそうだなぁ・・・と思っていた。まあこのラストをどう思うかは人それぞれだけど、主人公のヒビキが報われなさ過ぎだなぁ・・・
頑張ったって報われないことは、世の中に掃いて捨てるほどあるんだから、せめてフィクションの中だけでも、報われてほしいなぁ・・・って思う私は甘いのでしょうかね。
画面は素晴らしい。さすが「進撃の巨人」の監督さんだけ合って躍動感は凄まじい。廃墟と化し、かつ重力異常で異世界と化した東京の姿も魅力的。ネット配信もやってるけど、これは映画館の大画面で観るべきだと思う。
声優陣について。
主役のヒビキは志尊淳。ぶっきら棒な台詞回しは、演技なのか棒読みなのか。冒頭ではちょっと耳障りな感じだったけど、途中から気にはならなくなった。慣れたのかも知れない(笑)。
どうしようもなく下手なわけではないので、及第点かと思う。
ヒロインのウタはりりあ。本業はシンガーソングライターだそうです。もともと台詞が多くないし、人外(笑)の役なので、気にしなければ大丈夫。
上手いとは思わないけど許容範囲かなぁ。
でも、主役2人はやっぱり本職の声優さんを起用してほしかった。志尊淳とりりあ。を責めているのではなく、こういう配役をする制作陣には考慮をしてほしいということ。
声の仕事も達者な他業種の人もいるのは分かるけど、今回の2人については明らかに本職の人の方が上手いし。いい加減、話題作りでキャスティングするのは止めようよ。
女性研究者マコトは広瀬アリス。彼女は上手かった。これは素直に褒めます。てっきり本職の声優さんかと思ってた。エンドロールで「広瀬アリス」ってあるのを見てびっくりしました。
他には宮野真守、梶裕貴、井上麻里奈、三木眞一郎、羽多野渉、畠中祐、千本木彩花、逢坂良太とベテラン・中堅で脇役陣を固めているだけに、主役の2人が惜しいなぁ。
ネットの意見に、主役2人を畠中祐と千本木彩花で演じてほしかったってのがあった。「甲鉄城のカバネリ」での主役カップルですな。実生活でも夫婦になっちゃったし(笑)。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その5 [アニメーション]
※ネタバレを含みます。未見の方はご注意を。
■前章時点での予想(個人的な妄想です)
前章の記事で、デザリアムの正体を「並行世界における、時間断層を放棄しなかった地球の未来」が「並行世界(あちらの世界)のイスカンダルによってこちらの世界へ飛ばされてきた」のではないか、ついでに時間も何百年か過去に跳んでしまって・・・という予想(妄想)として書き散らした。
後章が公開され、さらにいくつかの情報が明らかになったことで、この予想をもう一度検証してみようと思う。
■後章で明らかになったこと
デザリアムの皆さんの台詞などからいくつか拾ってみよう。
○イスカンダルは「忌むべき星」
「一刻も早くイスカンダルを持ち帰るのだ。
この忌むべき星を我らの故郷に」(第5話)
○イスカンダルが持つ「呪われし力」=波動エネルギー
「その呪われし力が何をもたらすかも知らずに・・・」(第5話)
「波動エネルギーをもてあそぶ愚か者どもよ」(第6話)
「貴様たちには過ぎたる力だ。
いたずらにもてあそび宇宙そのものを破壊へと導く」(第6話)
イスカンダルが「忌むべき星」なのは、「呪われし力」を秘めているから。
そしてその「力」とは、波動エネルギーのこと。スターシャの発言からも、デザリアムの目的が「波動エネルギー」を我がものにすることだとわかる。
そして「波動エネルギー」が「何をもたらすか」をデザリアムは知っている。それは「宇宙そのものを破滅へと導く」こと。
デザリアムは波動エネルギーが引き起こす惨禍を見たことがあるようだ。あるいは、それは自分たち自身に起こったことなのかも知れない。
○デザリアムの歴史には断絶がある?
「おそらくは ”大喪失” に含まれる記録・・・あれは何者だ」(第5話)
過去のある時点で「大喪失」なるもの(おそらくは何らかの災厄)があり、そこで記録の喪失が起こって歴史に断絶が生じている。大喪失の時期のみの歴史が失われたのか、それ以前全ての歴史が失われたのかは不明だが。
デザリアムが地球の未来だとして、ヤマトのことを知らないのはこれで説明できるのだが・・・
○デザリアムは歴史を俯瞰して語る
「今という時を生きることしか知らない貴様たちには
しょせん理解できまいが・・・」(第6話)
未来人が過去の世界を見て言ってる台詞のようにも聞こえるが、単にデザリアム人が長命であることを示す台詞ともとれる。
デザリアム人が旧作のように機械化されているなら、たしかに長命になってるだろうが。
「既に次元潜航を実現していたとはうかつだった。
しかし潜航中の艦を捕らえて釣り上げる技術は
まだこの時空間にはあるまい」(第6話)
こっちの台詞こそ、デザリアムが未来人であることを示しているように思えるが。
○デザリアムは過去、イスカンダルと何らかの関わりがありそう
「忌むべき星イスカンダル。
その呪われし力は我らデザリアムの手で管理されねばならぬ」(第6話)
「忌むべきものを遠ざけるのではなく身の内に取り込む。
それでこそ我らは完全になれる。
我ら光と対をなす闇・・・イスカンダルを」(第6話)
デザリアムはこの時空で初めてイスカンダルと出くわしたのではなく、かつて何らかの関わりがあったように思われる。
”忌むべき星” 呼ばわりしてるくらいだから、過去にイスカンダルから ”ひどい目” に遭って、それには波動エネルギーが関わっていたのかも知れない。
しかも「対をなす」という意味深な単語。「光のデザリアム」と「闇のイスカンダル」は、過去のある時点で ”対等な関係” にあったか、あるいは ”もともと1つだったものが2つに分かれた” という解釈も可能だろう。
○デザリアム人は完全な機械ではなく、人間の感情を残したサイボーグ?
「揺らぎを感じます。お前の内深く生じた揺らぎを・・・」
「直ちに修正を」
「慌てずともよい。
その揺らぎこそ、デザリアム千年の夢が夢でないことの証し。
制御するのです」(第6話)
この辺の台詞の意味はよくわかりません。
私が考えたのは上に書いたけど、違う解釈もありそう。
○デザリアムのエネルギーは波動エネルギーと相性が悪い
「たった一発の爆弾がなぜ・・・」
「波動エネルギー・・・呪われた力よ」(第8話)
ゴルバ内部の誘爆が続くことからも、これは確からしく思える。ここは旧作の設定を引き継いでいるのか。
■潘恵子さんの起用
後章で一番のサプライズは潘恵子さんの起用。しかもデザリアムの「女帝」(?)役ともとれる立ち位置。
旧作「ヤマトよ永遠に」でサーシャ、同じく「ヤマトIII」ではシャルバート星のルダ王女を演じていましたね。
その彼女を起用したのは何故なんでしょうか。
[理由その1]
デザリアムの正体がサーシャ(イスカンダル)と何らかの関わりがあることを示す伏線?
[理由その2]
デザリアムの正体がルダ(シャルバート)と何らかの関わりがあることを示す伏線?
という可能性もありそうに思えます。
とは言っても、案外、旧作からのファンのための ”サービス出演” に過ぎなかったのかも。
■デザリアム再考
さて、後章で得た情報を付け加えて、さらなる妄想を組み上げてみよう。
[1] デザリアムの誕生
かつてイスカンダルとデザリアムはひとつで、過去のある時点で分かれたと仮定すると、ありそうなのはイスカンダルが武力路線(波動砲で大マゼラン銀河に覇を唱えた)を放棄することに決めた頃かと。
武力放棄に反対した好戦派が、イスカンダルと袂を分かった、それも、反乱を企てたが失敗し、追放されたのかもしれない。
イスカンダルへ並々ならぬ敵意を抱いていることから考えると、後者の方がありそう。
[2] シャルバート星
イスカンダルは天の川銀河の惑星をひとつ選び、コスモリバースでイスカンダルの環境を再現、その星に好戦派の者たちをエレメント化して封印した。その際、波動エネルギー技術も奪っておいた。これがシャルバート星。
その後、シャルバート星を訪れた異星人たちがエレメント化された超文明の一端に接し、神格化して敬うようになる。これがシャルバート教。
[3] ”大喪失” 発生
一方、時間断層を放棄しなかった地球では際限ない軍拡が続き、やがて内戦が勃発する。このとき、時間断層とともに歴史の記録の大部分が喪われてしまう。「波動エネルギーを弄んで破滅を招いた」わけだ。このとき、歴史/記録とともに波動エネルギー技術も失ってしまう。
地球は滅亡寸前まで人口が減り、人々の機械化・長寿化が進む。
[4] デザリアムによる併合
地球が内戦に明け暮れていた頃、デザリアムは数千年の眠りから覚めて自ら封印解除に成功する。行動の自由を取り戻した彼らは新たなエネルギー源を開発して内戦後の地球に侵攻、機械化した地球人を支配下に置く。
内戦で疲弊した地球はあっという間に併合されてしまう。ゴルバ内にあったアンドロメダの残骸は、このときに接収したもの。
[5] 並行世界への追放
地球を手始めにデザリアムは天の川銀河の征服に乗り出すが、それを知ったイスカンダルによって阻止されてしまう。
デザリアムは未来の地球人共々、並行世界の過去(ヤマト2205世界の過去)へ追放されてしまう。
[6] そして「2205」へ
ヤマト2205世界においても、デザリアムはイスカンダルへの怨みを忘れず、波動エネルギーの奪還を目的にリベンジマッチを挑むことに。それが「新たなる旅立ち」の物語。
デザリアムの目的は、”こちらの世界” を征服することか、”あちらの世界” へ帰還して ”本来のイスカンダル” に復讐することなのかは分からないが・・・
・・・この設定だと、”2205年のヤマト宇宙” のどこかにはシャルバート星があって、そこには古代イスカンダルの好戦派の方々が覚醒を待ってる、ってことになりそう。ただ、彼らが目覚めた世界には時間断層を放棄した地球があるわけだが・・・
うーん、とりあえず書いてはみたものの、いろいろしっくりこないところがあるなぁ。まあ所詮は一個人の妄想ですからね。
■「3199」予想
すでに「新たなる旅立ち」には旧作「ヤマトIII」の要素が多分に盛り込まれているので、「3199」もそうなると思われる。つまり「永遠に」にも「III」の要素が盛り込まれる。
上に書いた予想で、デザリアムの正体をシャルバートと絡めてみたのも、この流れを頭に置いて考えてみたもの。
さて、実際にはどんなストーリーになるのか全く予想がつかないけれど、いつも書いているとおり、ヤマトの新作について予想や妄想を展開できるなんて幸せな時代になったものです。
■終わりに
今回の記事は難産でした。最初の予定ではイベント上映の終了する頃に合わせて2月終わりくらいのアップを考えていて、2月中旬くらいから少しずつ下書きも始めていたのですが、途中からパタッと手が止まってしまいました。
いちばん大きな原因は私の怠慢なのですが、やはり影響が大きかったのはロシアのウクライナ侵攻のニュースでした。
連日の報道に心が痛み、フィクションとはいえ戦争を扱った記事を書くのに躊躇を憶えたことは否定できません。
そのくせ、読書録の記事は普通に書けてしまうのですから、なんとも自分の心理に不思議さを感じたり。ミステリだって人が死んでるのにねぇ・・・
いっそのこと記事のアップを止めてしまおうかとも思ったのですが、いやここで止めたら、それはそれで ”負け” なのではないか、とも思って何とかここまでこぎ着けました。
とはいっても、今までの記事と比べて、いささか切れ味の悪い内容になっているようでちょっと心残りではありますが・・・
それでも、何とか年度内には決着をつけたかったので、今はちょっとホッとしています。
つくづく思ったのは、カルチャー(サブカルチャー含む)は、平和があってこそ花開くし、心置きなく楽しめるということ。
1日も早く、世界に平和がもたらされることを願っています。
「3199」については公開時期さえ未だ明らかになっていませんが、早くても年末、下手すれば来年の春~夏頃じゃないかとも思ってます。旧作でも「新たなる-」と「永遠に」の間には1年ありましたからね。
多少時間はかかっても、しっかりストーリーとシナリオを練ってもらって完成度の高いものを見せてほしいと思ってます。
それまで、健康に気をつけて元気に長生きしなければね(笑)。
ここまで、長い長い駄文にお付き合いくださり、ありがとうございました。
m(_ _)m
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その4 [アニメーション]
※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。
最終話「こんにちは サーシャ」
なんとも大胆なタイトルです。スペースオペラの表題とは思えませんね。
■波動砲発射態勢
全てを達観したかのようなデスラーの表情、
そして宙空に手を伸ばすスターシャ。
しかし、発射3秒前に停止ボタン(そんなものあったんだ)を押す土門。
古代に銃を向けて
「もっと早くこうするべきだった」
■ゴルバにて
多脚戦車がデウスーラに取り憑く。さらに後方ではさらに降下してくる。
「3199」でもこんなシーンが見られるのでしょうか。
■艦内を走る土門
「力を貸してください 全員を助ける方法があるんだ」
土門が試作機の性能を知っていたがゆえに思いついた作戦か。これも前章で伏線があったね。さすがに防大主席はダテじゃない。
藪+新人クルーを招集、内火艇には既に古代が待機。
■譲れないもの
古代は語る。
「もっと早くこうするべきだった。お前は正しい。
でもその正しさが報われるとは限らない。現実は複雑で残酷だ。
理不尽なことでも受け入れた方が傷は少なくて済む。
それもひとつの正しさだ」
「でもそれでも、絶対に譲れないものが人にはある。
それを譲れと言われたら抵抗しろ。立場なんか気にするな。
お前がお前であり続けるために徹底的に戦い抜け」
かつて、イスカンダルへの旅で沖田から言われたこと。
そして、テレザートへの旅で古代自身が貫いたこと。
「忘れていた・・・ずっと俺は」
忘れていた、わけではないだろうと思う。彼はそんな忘れっぽい人間ではないよ。そんな大事なことを忘れられる人間だったら今までこんなに悩んでない。
時間断層の消滅、それに値する人間であるためには、失敗は許されない。
だから、そうならなように自分を押し殺していた。
あえて自分で自分を狭い枷の中に閉じ込めていた。
まっすぐに物事に向き合う土門の行動を見ていて、自分を貫く勇気を取り戻した、というのが本当のところだろう。
■副長・島
「そう、古代艦長がそう決めたのね。分かりました。直ちに準備します」
モニター越しに会話してるのは島。古代不在の今、ヤマトの指揮を執ってるのは彼。このあとの戦闘中でも指示を出してる。
旧作「III」でも副長だったはずだが、彼が指揮を執ってるシーンは記憶にない。ただ私が忘れてるだけかも知れないが(笑)。
■演説キャラ・真田
ヒュウガの艦長席から真田が檄を飛ばす。
「全艦、反転180度! 連合艦隊全艦に告ぐ!
これより地球艦隊はデスラー総統の救出作戦を敢行する。
志あるものは我に続け!
敵の陽動に貴官らの協力が不可欠だ。
移民船団は可能な限り遠くに退避せよ。
賛同する艦底は反転を以てその意を示せ!」
「2205」最終話でもそうだったけど、リメイク版の真田さんは演説が実に上手い。これを聴いたらみんな奮い立ってしまうだろう。
■暗号通信
イスカンダルで戦いを見守る姉妹のもとへ通信が。
地球からのものと気づくユリーシャ。ヤマトで旅した経験から、だろう。
■連合艦隊vsデザリアム艦隊
山本玲とメルダのツーショット。こういう、見たかったシーンを見せてくれるのがニクいね。しかもBGMがハマってる。
■コスモハウンド発進
旧作のコスモハウンドが、次元潜航艇としてこんなに大活躍するとはね。
このあたりのアレンジも上手いなぁ。
「地球軍初の次元潜航艇。三度に一度は動作不良を起こすバカ犬だけどな」
「マジか」「いいじゃんあんたに似合いだよ」
潜航し、イスカンダル王宮地下に出現するコスモハウンド。
■「ねえさん!」
「イスカンダルではどうだか知らない。
でも地球では自分の兄弟を愛してくれた人は家族になるんです。
兄を愛してくれたのなら、あなたは私の姉ということになる。
ほかのことはどうだっていい。一緒に地球に来て下さい。
私は・・・もう二度と家族を失いたくない!」
この台詞は藪くんにはことさら響くよねぇ・・・
「義姉(ねえ)さん!」
この台詞にはびっくりだったが、古代の必死の思いを伝えるという意味では、変に回りくどい表現をするよりこっちのほうがよかったと思う。
「あなたが脱出しないとデスラー総統も引き上げられないんだ。
ばかみたいでしょう? バカなんです人間って。
大切なもののためなら、割に合わないことも平気でしちゃうんです。
スターシャさん、あなたも人間ならバカになってください!
全てを捨ててこの墓場から抜け出す勇気を!」
このあたり、福井節満開。
「行きましょう、お姉様。過去を繰り返す亡霊じゃない。私たちも命。
予想のつかない明日に向かって生きる命のはずです。
1分でも1秒でもいい ただ一度の本当の命を私も生きたい!」
過去に縛られて永遠に生き続けるよりも、例えそれがどんな短い時間であっても、自分の意思で未来を生きたい。
■コスモハウンド攻防戦
発進したコスモハウンドを、ゴルバから放たれた ”網” が襲う。
「ソナーに感! 反応増大!」「こいつがガミラスの潜航艇を飲み込んだ」
「土門、お前の作戦だ。お前が指揮を執れ」
指揮官席に座る土門。各メンバーに指示を飛ばす。
古代も要所要所で命令を出す。
土門は作戦指揮、古代は一段上の視点から全体を統括。
コスモハウンドのコクピットは、いままさにヤマトの第一艦橋の縮図になってる。古代がそこにいて指揮を執っていれば、そこがヤマトだ。
かつての沖田の位置に古代が、古代のポジションに土門がいて。
これは彼ら新人クルーが成長した数年後のヤマトの姿なのかも知れない。
それにしても「勇ましいのは名字だけか? キャロライン」とか、古代は各メンバーのことをよく知ってるようだ。指揮官たる者、各クルーのデータはしっかり頭に入ってるのか。
■「ターゲット捕獲完了」
コスモハウンドの一部を内部に取り込んだゴルバ。
「敵機内に波動エネルギー反応」
「罠だ! 早くゴルバの外に出せ!」
波動掘削弾が爆発し、要塞内に誘爆が広がる。
デザリアムの使うエネルギー源と波動エネルギーとでは相性が悪そうなのだが、そこら旧作の設定を引き継いでいるのか?
■デウスーラ脱出
「デスラー総統、スターシャ女王は救出した。至急脱出されたし」
スターシャからの「アベルト・・」という呼びかけにも、なぜかデスラーの表情は晴れない。彼女がイスカンダルなしには生きられないと知っていたのだろう・・・なぁ。
■断末魔のゴルバ
「記録が歪む・・・デザリアム千年の夢が揺らぐ・・・」
この台詞の意味が不明。何かの伏線になってるのか?
「たった一発の爆弾がなぜ・・・」
「波動エネルギー・・・呪われた力よ・・・」
メルダーズ、デザリアムに殉ぜよ! 悪魔の艦を沈めよ!」
要塞砲の発射態勢に入るが、スターシャが自爆スイッチを押す。
イスカンダルの爆発で破壊されるゴルバ。
このときのスターシャも、全てを達観した表情。
そしてデスラーの後ろ姿・・・この後起こることを知ってたのだろう。
■別離の時
デスラーと対面するスターシャ。デウスーラ艦内か。
手を伸ばし、デスラーの頬に触れるスターシャ。
「その目・・・ずっと私を見ていてくれた
忘れません ありがとう・・・」
同時に、光となって消えていく。
腕を伸ばすデスラー、しかし抱くことは叶わず。
嗚咽が漏れる。
古代とデスラー以外のメンバーは驚く。やはり2人は知っていたようだ。
「私たちはイスカンダルの記憶。星とともに消えるのが定め。
でもこの子は違う。あなたたちの星のエレメント。
古代守とお姉様の間に生まれた命だから」
カプセルをみやこに渡すユリーシャ
「サーシャ、地球で楽しく、ね・・・」涙を流しながら消えるユリーシャ
「知っていたんですか? なぜ・・・こうなるって知っていたのならなんで!?」
「これで救われた心もある。たとえ一瞬でも最後に愛する人に会えて・・・
それだけで人は救われるんだ」
「最後に・・・父さん・・・俺を見て・・・」
第一話の回想シーン。この時の土門の父の笑顔について前章の時の記事にいろいろ書きましたが、私の気の回しすぎだったみたいですね。至ってシンプルな理由だったようで。
最近、自分の人生の残り時間が少なくなってきたせいか、自分の臨終のことを考えたりする。不慮の事故で死ぬなら仕方がないが、ベッドか畳の上で死ぬとしたら、自分が最後に見る顔は誰だろう? って。
順当に考えたらかみさんの顔なんだろうが・・・「これが俺の人生で最後に見る顔か」と思うと、不思議な感慨が・・・うーん、湧きそうで湧かないのは何故だ(おいおい)。
「人が・・・人にできるのは・・・それくらいしか」
「十分です きっと・・・それだけで十分なんです」
■「おかえりなさい」
アスカに帰還したコスモハウンドを出迎える雪
「これがスターシャさんの・・・」
「まずは検疫に回すべきだろうが・・・」
輝く球体が広がり、やがて赤ん坊の姿へ。
「サーシャ・・・」赤ん坊を抱く雪
「スターシャさんと兄さんの・・・」
古代の指を掴むサーシャ。「2202」最終話で登場した指はてっきり美雪の化と思ってたけど、サーシャだったのかも知れない。
微笑む古代。本作の中で、古代が笑ったのはここが初めて。
「おかえりなさい。こんにちは、サーシャ」
雪のもとへ、やっと ”彼女が愛する古代” が還ってきた。
■すばらしいこと
避難船の中で、家族と再会する藪。
「知ってるか? どん底の次にはもっとすばらしいことが・・・」
同時に主題歌「愛は今も光」が流れ出す。
■別れを告げる古代とデスラー。
「ガミラスの出自もいずれは民の知るところとなるだろう」
情報統制はしない模様。
「だが、我々はこれからもガミラスという名に誇りを持ち続ける。
誇りとは与えられるものではなく、自らの中に見いだしていくもの」
ガミラス人の将来を悲観しない。可能性を信じる。
これから国家を再興しようという指導者なら、そうあるべき。
「デスラー総統・・・」
「スターシャに会わせてくれたこと、礼を言う。ほんのひとときでも、
この先生きていくのに十分なものを受け取ることができた」
男なら、誰でも1人くらいは心の中に ”永遠の女性” を棲まわせている。
その女性を思い出すとき、同時に蘇る感情は様々だろう。
しかしすべては過ぎたこと。この思いは墓場の中まで持っていく。
「彼女の子を頼む。古代、手放すなよ。お前の愛する者を」
去って行くガミラス船団、地球へ帰還するヤマト艦隊。
■そして「3199」へ
「これが敵要塞の中に?」
「波動掘削弾を送り込んだ際 撮影に成功した映像です」
「アンドロメダ級・・・」
「あるいは捕獲されたのか。最初はそう思いましたが
実際に製造されたものよりはるかに桁が多いのです」
「デザリアム・・・一体 何者なのか・・・」
そして『ヤマトよ永遠に REBEL3199』のロゴが。
デザリアムについて、また少し考えたことがある。それは次の記事で。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その3 [アニメーション]
※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。
第7話「イスカンダル 滅びゆくか哀の星よ」
■スターシャは語る
「イスカンダルは長男。
たゆまぬ向上心と知識欲を持つ一方、貪欲で支配的で極めて利己的な長男」
まあ、ガミラスの扱いを見れば古代イスカンダル人の性格の悪さはよくわかるよねぇ(笑)。
ここで唐突にキーマンが登場。
なぜキーマン? ファンサービスなのかとも思ったが、神谷ボイスには否応なく納得させられてしまいそうな力を感じるので、そのへんが理由かな。
アケーリアス人はどこかへ旅立ったという。滅びたんじゃないんですね。
超古代文明を築いた民が別の次元・別の世界へ去ったというのはSFではよくある設定ではある。パッと思い出すのは、アニメ『ヒロイック・エイジ』の ”黄金の種族” か。
「彼らに追いつくにはこの宇宙の法則全てが足枷になる」
肉体をはじめあらゆる物理的な拘束を逃れたテレザート人は、アケーリアス人に追いつくことを目指していたのか?
それに対してイスカンダルは、記憶によって世界を変える力を手に入れた。
他の世界へ向かうのではなく、今いる世界を自分たちの思いのままに作り替える方を選んだ、ということか。
しかしその結果、イスカンダル人は ”大いなる停滞” に陥ってしまったのだろう。
■サンクテルにて
入り口から吹き上がる炎?のような者を見たとき、女王プロメシューム様が出てくるのかと思ったよ(笑)。
「あらゆる星のエレメントを保管する大記憶庫サンクテル。
無数の記憶が息づき、永遠の幸福を生きている」
古代の兄・守が、アベルトの伯父・エーリクが語る。
「コスモリバースシステムは記憶の中の文明を現実世界に再構築するシステム。
エレメントに収めるには現実世界に於ける存在を消し去る必要がある。
これが儀式。イスカンダルによる虐殺」
イスカンダル人がサンクテルに身を沈めた後、儀式という名の虐殺を行うために手に入れた奴隷がガミラス。
ガミラス星は、ガルマン星の原住民を自らの双子星に住まわせた。ガミラス星はコスモリバースシステムによってガルマンの環境を再現していた。
ん? ガミラス星にガルマン星の環境を再生させるなら、予めガルマン星をエレメント化(&ガルマン星の破壊)しておかないとできないのでは? でもガルマン星は残ってる。
まあ、(都合良く解釈するなら)そのせいでガルマン星のエレメント化が不十分だったので、環境改造されたガミラス星の不安定さにつながったのかなぁとも思ったり。
「奴隷の名はガミラス。その意味は ”ガルマンの人猿”」
自らの民族の名が、人間扱いされない蔑称だったとは。ガミラス人にとっては最大級の屈辱だろう。
■「これでも私を救いますか?」
すべては、イスカンダル人がガミラス人を奴隷として使役するために仕組んだこと。そしてそれが、ガミラス星を喪う遠因ともなっていた。
「イスカンダルはもう何千年も前にエレメント化をやめた。
過ちに気づいたからではありません。外界への興味を失ったからです」
徹底的に利己的なんだね、イスカンダルは。
寿命が近づいたガミラスに成り代わる星を求めて宇宙に侵略の手を伸ばしたガミラス。地球がガミラスの侵略を受けたのも、元をたどればその理由はイスカンダルに行き着く。
ガミラス人へガルマン星の情報を流したのもイスカンダル。
地球にコスモリバースシステムの情報を与えたのはイスカンダル。
いわば自分でつけた火を、自分で消しに回っている。いわゆるマッチポンプという奴か。
■スターシャvsデスラー
「なぜだ!? かつて君は早く大人になれと私に言った。
いつかこうして真実を伝えるためにか!?
私に自分自身を討たせるためにか!?」
「だとしたらとんだ自惚れ者だよ君は。
イスカンダルの女王一人の地で贖えるほど
ガミラスの民は矮小な存在ではない」
「贖おうとしたことなんかない。
地球に救いの手を差し伸べたのも
あなたがたにガルマン星のことを伝えたのも
全てわたくし自身を救うためにやったこと」
「独善で暴虐の限りを尽くしたイスカンダルの末裔として
サンクテルの管理を任された王族として
永遠に存在し続けることを定められた身が苦痛を紛らわすためにしたこと」
「あなたもそうでしょう?
ガミラス星を救えなかった痛みと苦しみを紛らわすために
あなたは私を救おうとしている。
それであがなえるものなど何もない。
わたくしたちは自分を慰めるためにお互いを必要としただけ」
もうこのあたりは論評を超えてますね。戦闘シーンを除けば、今作『新たなる旅立ち』の、ある意味いちばんのクライマックス。
旧作から43年。スターシャとデスラーがこんなふうに、お互いの本音をさらけ出して対峙する日が来ようとは。長生きはするものだ(笑)。
■古代守が教えてくれたこと
「生きることは変化し続けること。
あなたのお兄様からそう教わりました。
ここにあるのは変化を拒んで幸せな過去に浸る記憶の群れ。
もう死んでいるのと同じです」
「変化を拒むことは死んでいるのと同じ」・・・深い言葉ではある。
特に現代は「変化に適応できないものは、生き残れない」って言われてしまうしね。
でも、変化に適応できる度合いは、ひとそれぞれ異なる。変化できないものはどうしたらいいのか。最近、アタマが固くなってきて、新しいものを取り入れることが億劫になりつつある私なんかまさにそれ。
■「古代艦長から個別通信です」
「雪・・・雪・・・俺は・・・俺はもう分からない 何も分からなくなった」
「何があったの? 古代艦長・・・古代くん!」
この時の古代は、スターシャたちがイスカンダルを喪うとどうなるかを知ってたのだろうか?
でもまあ、この段階で古代が何を言ってもスターシャは聞き入れなかっただろうが・・・
■第一艦橋
「どうして! 引きずってでも連れてこなかった!?」島が激高する。
「あの人の決意は・・・固い」坦々と答える古代。
「いいんですか? それで・・・それでいいんですか?」
敢然と異を唱える土門。
そう、今回の彼は徹底して古代に楯突き、正論を吐く役回り。
■「別離」
ここで堀江美都子さんの歌声が聞けるとは思いませんでしたよ。
これ、「ヤマトIII」のエンディングだったよねぇ。
やっぱり「デザリアム編」は、旧作の「暗黒星団編」+「III」の路線なんでしょうかね。
「けれど終わりがあるというのはとても大切なこと」
「ただ一度の人生だからこそ、全うしようという強い意志が生まれるのです」
「終わるべき時に終わるもの、それが命」
実は後章を観にいく何日か前(1月末頃)に、ネット配信で『銀河鉄道999』(映画版)を観たんだよねえ。
ぽっかりと半日ほど予定が空いたので、家で映画でも見ようと Netflix を漁ってたら見つけたので。全くの偶然でしたが。
でも「999」を見た後にこの台詞を聞くと、とても気になった。
「999」に登場する「機械化人(機械の体になって永遠の命を得た人々)」って、旧作の暗黒星団帝国人に通じるイメージだし。考えたら、旧作の「新たなる旅立ち」と映画版「999」って、同じ1979年の夏なんだよね。「新たなるー」が7月31日に放映され、「999」は8月4日の公開だ。
■ユリーシャの実年齢
ユリーシャは地球への使者として「サンクテルから急遽引き出された命」なのだという。
ユリーシャは2198年には地球へ来ているわけだから、2205年現在では肉体を得てから7~8年くらいというところ?
2199年の段階では ”あの体” になって1~2年だった? だとしたら、当時の「不思議ちゃん」キャラも不思議ではなかったのかも。
■デウスーラIII世、反転
イスカンダルの移送を再開したゴルバから離れていく連合艦隊。
しかしデウスーラのみが反転する。
「すまん」
「いいのです。あなたはもう十分、人のために生きた。
最後くらいわがままにおやりなさい」
まさに忠臣タラン。彼はいいとして、その他のクルーはどう感じてるのかとも思ったが、
デウスーラに配属されてるのは、デスラーに身も心も捧げている者ばかりなんだろう。
デスラー砲を発射。BDに同封されている冊子によると
「ゴルバを守る位相変換装甲は装甲そのものの位相を変換し、逆相波を発生させることでエネルギーの波を打ち消すシステム。
デスラー砲のエネルギーを相殺している間ならこれを突破できると考えたデスラーは、座乗艦であるデウスーラIII世をゴルバに突撃させた」
■「古代 私ごと撃て!」
「このデウスーラに波動砲を撃ち込め! これしかないのだ、古代!」
「幻でも・・・ガミラスを謀ってきた悪魔の手先でも構いはしない。
私は・・・スターシャを愛しているのだよ」
旧作でも名シーンと謳われる場面。今回は、サンクテルでの対決を通して、より2人の結びつきが深く描かれている分、心に響くものになってる。
実際、見ていて涙腺が緩んでしまったよ。旧作の時はそこまで感情は高ぶらなかった記憶が。
「反転180度! 波動砲、発射準備! 引き金は・・・俺が引く!」
第8話へ続く。
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章 ーSTASHAー」感想・・・のようなもの その2 [アニメーション]
※ネタバレ全開です。未見の方はご注意を。
第6話「移民船団救出作戦・次元の壁を越えて行け!」
■ゴルバ登場
「デザリアム軍指揮官に告ぐ!・・・」呼びかける古代。
しかし、デウスーラIII世はデスラー砲をぶっ放す。
「すまんなランハルト 虚しかろうと人には許せぬことが・・・」
蛮行を繰り返す相手に対し、まず一発殴って止めてから話を始めようとする古代。そして、殴りだしたら止まらなくなったデスラー(笑)。
まあ、目の前で母星を破壊されれば頭に血が上るのも無理はないが。
しかし、デスラー砲をあっさり無効化するゴルバ。
公式サイトによると、「波動砲の直撃を無力化できるクラスの位相変換装甲を有する。位相変換装甲はエネルギー波を逆相波によって打ち消す」とある。アクティブノイズキャンセラの巨大版というところか。
「波動エネルギーをもてあそぶ愚か者どもよ。
今という時を生きることしか知らない貴様たちにはしょせん理解できまいが・・・」
「ふふふふふ。そんな石ころのようなエネルギー弾が
このゴルバに通用するものか」という台詞はなかったですね(笑)。
ちょっぴり期待してたんですが。
ゴルバの発生する重力場に翻弄される連合艦隊。
「忌むべき星イスカンダル。
その呪われし力は我らデザリアムの手で管理されねばならぬ。
貴様たちには過ぎたる力だ。
いたずらにもてあそび宇宙そのものを破壊へと導く。
もう関わるな、立ち去れ。
貴様たちにできることはない。デザリアムの調律に全てを委ねよ」
もう余裕というか歯牙にもかけないとはこのことですな。
しかし「忌むべき星」「呪われし力」とか意味深なフレーズ。このへんもデザリアムの正体に絡むところか。
■デスラー謝罪?
「ヤマトの諸君、いささか敵の力を見誤ったようだ」
「あれで謝っているんだよ」
デスラーが自らアヤマチを認めることは珍しい。
■作戦会議
イスカンダルにいる者たちの救出優先を訴える地球側。
デスラー砲(波動砲)が通用しない相手を武力で追い払うなんてことは、ほとんど不可能になってしまったからね。
古代にスターシャの説得を要請するメルダ。しかしそれを断ってしまう。
「恩人との約束を破り、目の前で波動砲を使った者の言葉に
スターシャ女王が耳を貸すとは思えない」
「イスカンダルの理念を自分の心を裏切るよう仕向けてしまったのは自分だ」
『2199』において、波動砲の封印を約束した沖田。しかし『2202』において、それを反故にした地球政府。そして古代自身もまた波動砲の使用を受け入れた。
もともと、今回のヤマト艦隊のサレザー恒星系訪問には、波動砲解禁についてスターシャへ説明(謝罪?)することも含まれていたと思う。
芹澤あたりがそれを行うはずだったと推察するが、彼は途中で置いてきてしまったからね。この段階において地球側の最高責任者は古代なのだから、(スターシャが受け入れるかどうかは別にして)彼には説明する責任があったはずだ。
「大人になるということは、できることとできないことの区別がつくようになるということだ」昔の某アニメにあった台詞だ。
要するに ”先の見通しがつく” ようになるということなのだろうが、先が見えてしまうと、「やる前から諦めてしまう」ということも起こりうる。この場合の古代がそうだろう。
しかし「相手が受け入れないから説明に行かない」という態度は、大人(社会人)として如何なものか。説明なり謝罪なりが必要なら、まず相手のもとに赴いて素直に頭を下げるべきだよねぇ。相手がそれを受け入れるかどうかはまた別の話になる。とにかくそれを行わないことには次に進めない。
「古代 お前は何をしにここに来たのだ?
我らを救いにか? それとも逃げるためか?」
「ランハルトが未来を託したのがかくも小さい男であったとはな・・・」
デスラーが皮肉るのも無理はないとも思う。ただまあ、彼に一般的な社会人としての常識があるかどうかは疑問だが(おいおい)。
■ハイニ、臨時艦長へ
生存者リストを眺める藪。慰めるハイニ。
二号艇の指揮を執ることになるが、これが死亡フラグだった。
■グレート・エンペラー登場?
ゴルバ内で何者かに報告するメルダーズ。
「揺らぎを感じます。お前の内深く生じた揺らぎを・・・
その揺らぎこそ、デザリアム千年の夢が夢でないことの証し。
制御するのです。忌むべきものを遠ざけるのではなく身の内に取り込む。
それでこそ我らは完全になれる。
我ら光と対をなす闇・・・イスカンダルを 早く・・・」
驚きの潘恵子さんの起用です。初見のとき、心の中で「えーっ!?」て叫んでしまいましたよ。
旧作で言うところの「グレート・エンペラー(emperor)」いや、女帝なら「グレート・エンプレス(empress)」ですかね。
とはいっても敵の親玉を演じたのは、旧作の「新たなる旅立ち」では木村幌さん、「ヤマトよ永遠に」では大平透さんというように、声優さんは異なりましたからね。彼女がそのままデザリアムの支配者であるかどうかは不明。
ここでもデザリアムは「光」、イスカンダルは「闇」、しかもこの2つは「対」と表現するなど、意味深な台詞が。
■「そのように飼い慣らしたから」
パレスにたたずむスターシャとユリーシャ。
「誰かを待ってるみたい。同胞を救うためだけじゃない。
デスラーは必ず私たちを救いに来る。それが彼らの本能。
そのように飼い慣らしたから」
ユリーシャさん、キツい物言いですな。
このあたりから第7話への伏線が始まる。
■ヒルデ・シュルツさん
「関係ないでしょそんなこと! 私には父親が2人います。
ザルツ人とガミラス人、2人の父親が。生まれなんて関係ない。
愛されたから。たくさん愛されたから、それを少しでも返したくて」
『2199』で登場し、予想外の人気を獲得したヒルデさん。
世の中の単身赴任/中間管理職のお父さん方が涙した存在(笑)。
素晴らしいお嬢さんに育ったねぇ。シュルツもヒスも以て瞑すべし。
考えたら、沖田、土方、徳川、シュルツ、ドメル、ヒス、多くの者たちがみな逝ってしまった。それでも、次の世代が物語を引き継いでいく。
■暗号通信
「ガミラスの同胞たちよ 脱出の時が来た
これは時間との戦いである 以下の指示に速やかに従え
各船の損傷を再確認 機密が保てない船は放棄せよ
霧に紛れて迅速に行動せよ
恐れるな 敵の目は決して下に向くことはない」
ここで流れるBGM「ドッグ・ファイト」がたまらなくいい。
■救出作戦
瞬間物質移送機で地球・ガミラスの航空隊が出現。これは胸熱なシーンだ。
坂本「どうせならデカブツの腹ん中に運んでくれりゃいいのに」
沢村「そう便利なものじゃねえんだってよ」
これは最終話への伏線だろうなぁ。
次元潜航艇が避難船の救出を行うが、メルダーズの戦況ディズプレイにはしっかり光点が出現する。
連合艦隊の砲撃が始まる。ヤマトとデウスーラが轡を並べて主砲の斉射するのが見られるとはね・・・
「同胞たちよ くじけるな 運命に抗え
新天地ガルマン星で 我らは生きる」
前章の時にも書いたけど、旧作といちばん異なるのが避難民の存在。
彼らがイスカンダルにいることで、デスラー/ガミラス艦隊の戦いにも大義が与えられるし、こんなにドラマ的に盛り上がるんだから。
■ハイニ受難
次元潜行艦を追う謎の光が ハイニの2号艇を捕らえ、ゴルバの内部へ。
デザリアムの多脚戦車が襲来。「3199」でも雲霞のごとく大量に出てきて地球を占領するのかな?
「これが最後のノイズ・・・既に次元潜航を実現していたとはうかつだった。
しかし潜航中の艦を捉えて釣り上げる技術はまだこの時空間にはあるまい。
ここまでだ」
地球/ガミラスの科学技術体系に詳しそうな台詞。これも伏線か。
■要塞砲vs波動防壁
ゴルバの要塞砲がエネルギー反応を示す。狙いは海上の移民船団。
土門の献策を受け入れ、ヤマトは敵要塞の射線上に定位し最大出力で波動防壁を展開する。ヒュウガとデウスーラIII世も追随、3隻で移民船団の盾となるが・・・
要塞砲に対して、波動防壁が保つのかという不安がよぎるが、BGM(元祖ヤマトのテーマ)が大丈夫だと教えてくれる(笑)。実際、要塞砲を遮ることに成功する。
ネットには ”ユニコーンバリアー” なんて揶揄する声もある。私も最初は「いくらなんでも都合良すぎではないか」とも思ったのだが・・・
でも、よく考えたらゴルバの目的は海上の移民船団を一掃することで、イスカンダル星本体に損傷を与えることは極力避けるはず。
ならば、要塞砲の出力はかなり絞ってあるはずで、戦艦の主砲レベルよりは大きいだろうが、波動砲と比べたら2桁くらい小さな出力だったんじゃなかろうか。ならば波動防壁で防ぐことができてに不思議ではないかな。
もっとも、古代や土門が切羽詰まった状態でここまで予想できるとも思えないのだけど・・・こうなることを読み切っていたらそれこそスゴい。
案外、真田さんあたりは分かってたりするかも。
とはいっても、第一撃を食らった段階で「波動防壁出力23%まで低下!」
やっぱり要塞砲の威力は半端ない。しかも要塞砲の第2射が迫る。
■猊下の介入
「やめてっ!」中空に浮かぶ巨大なスターシャの姿。
「観音様みたいね」とはかみさんの弁。
うーん、「スターシャ観音」はともかく、アベルト君ならガルマン星の総統府前広場に巨大なスターシャ像とか創りそう。
「真実を伝える時が来ました。ガミラスの・・・青い血の真実を・・・。
両軍の指揮官はクリスタルパレスへ。お待ちしています」
第7話へ続く。